月 山  標高1984m 
    自分の足で登らない山シリーズ第33弾   山形県の霊峰     
 
◆ 2018年8月13日

 この登らない山シリーズ、東北地方はまだまだ未開拓である。唯一登ったのが、福島県の安達太良山。この夏は猛暑が続くので、避暑を兼ねてもう少し北に足を伸ばしてみることにしよう。山岳信仰と万年雪で有名な山形県の月山である。事前リサーチによるとスキー場のリフトがあるので、比較的簡単に登れるらしい。



 
 8月10日、帰省渋滞が始まる前、車で朝5時に家を出る。圏央道からそのまま東北道に入り北上する。今日の宿泊地は、月山の麓の志津野営場というところである。そう、キャンプなのだ。この時期にホテルや旅館は混んでいる。
 圏央道のおかげで、あっという間に山形県に入る。それにしてもまだ朝の10時で、早く着きすぎるので、途中寄り道をしていくことにした。山形といえば、あの芭蕉も訪れた山寺、立石寺だろう。




  1 立石寺 その1                  2 立石寺 その2
   

  3 立石寺 その3
     

 この寺が紹介される時、たいていは断崖絶壁の写真が多いし、山寺というくらいなので、とんでもない山の中にあるのかと思ったら、そうでもない。むしろ平地から裏山に登るという感じだった。ただ、この寺は、階段が半端ないのが有名である。1時間ほどで一番上まで行って降りてくると、結構足に来ている。まあ、明日の準備運動としてはいいかもしれない。

 山寺観光で時間も潰せたので、途中の天童市内のスーパーに寄って食料や氷を調達する。寒河江市を抜けて国道112号線を西に向かい、志津野営場をめざす。



 4 山形県志津野営場

 弓張平公園というところで、受付手続きを済ませて、14時にキャンプ場に着いた。山奥だが、写真4のとおり美しいところである。ちなみに、オートキャンプ場ではなく、料金は独立したサイトが1泊1000円、広場のフリーサイトが1泊500円である。
 今日は天気が怪しいので、さっそく設営する。夕食を食べ終わってくつろいでいると、雨が降り出した。明日の登山に備えて9時に寝たが、夜中にフライを叩く雨と風の音がした。夜は気温が20℃以下になり、夜中にフリースを着こむはめになった。

 翌朝、目覚めると雨であった。風も強い。今日は山頂アタックを諦めて、ベースキャンプで停滞し、高度順応するしかなさそうである(とエベレスト挑戦のように書いてみる)。
 テントの外に出てみると、体の異変に気がついた。山寺の階段のおかげで、下半身が重く、筋肉痛もある。普段のトレーニング不足を痛感する。やはり今日は高度順応・体力温存が運命づけられている日らしい。

 しかし、雨の中、こんな山奥ですることもないので、車で出かけることにした。目指すは日本海である。ということで、8月11日は、鶴岡市と酒田市の観光に費やした(....高度順応はどうなった?)。

 翌12日、天気は快晴、絶好の登山日和である。が、ここでキャンプ場利用が足を引っ張ることになった。今日、月山に登るとして、下山してから、ここを撤収し、次のキャンプ地に入ってテント設営というのは、できないこともないが、時間的、体力的にかなりハードである。登山において、こういう余裕のない状況は事故の元である。ということで、南側からのリフトを使った月山登山は諦めて、今日は、移動日にあてることにしよう。
 幸い、天気は良いので、テントとタープを干す事ができた。そんなこんなでかなり時間がかかり、腰も痛くなる。

 今日と明日の宿泊地は、月山を挟んで反対側、北側にある休暇村羽黒のキャンプ場である。鶴岡市内のコンビニで食料を調達し、羽黒山方面に向かう。途中で国宝の文字が目を引いた。羽黒山は、出羽三山の信仰の中心地らしく、観光客で賑わっていたので、寄ってみる。

  5 祓川と須賀の滝                  6 五重塔(国宝)
   

 600年前の南北朝時代に建てられた五重塔は国宝である。

  7 三神合祭殿                    8 鐘楼と建治の大鐘(国重要文化財)
   

 無事お詣りを終えて、休暇村羽黒のキャンプ場につき、さっそくテントを立てる。面倒なのでタープはやめた。志津野営場は山奥でバイクのソロツーリング多かったが、ここは、典型的なファミリーキャンプ場で子供が走り回っている。おっさんが一人で泊まるのも場違いだが、どうせ昼間はいないのでいいだろう。テント持ち込みで一人だと一泊1440円で意外と安い。

  9 休暇村羽黒キャンプ場
     

 さて、ここを選んだのは理由がある。月山は、北側からの登山道もあり、こちらのほうが距離は長いが、湿原があってやたらと楽しそうな道なのである。一応、リスクヘッジしておいたわけである。しかし、ここも2泊の予定なので、明日は晴れてほしいものだ。ただ、この後はホテルの予約をしていないし、この状況だとキャンプ場は宿泊が延長できそうなのであせらず臨機応変にいこう。

 8月13日、朝5時に起きる。天候は良さそうだ。今日こそは月山山頂を目指そう。まず、車で、8合目まで行く。

 6時にキャンプ場を出発し、舗装された狭い山道を走る。途中で、森林限界を越えてしまい、雲海の向こうに浮かぶ鳥海山の絶景が見えた。

 10 雲海に浮かぶ鳥海山


 ぐんぐん高度を上げて、7時14分、8合目の駐車場につく。が、すでに駐車場は一杯だ。偶然1台出たところにすかさず車を入れることができて、いよいよ登山開始である。バス停があるので、ここまでバスが来るらしい。標高は約1400mであるが、すでに森林限界を越えているので、眺望や雰囲気は本州の2500mの感じである。駐車場からでも日本海側の眺望が素晴らしい。

  11 月山8合目バス停                12 登山口
   



 7時30分、出発。登山口から階段を登ると、いきなり平坦になり、湿原が広がり、登山道が空の向こうに伸びていた。

 13 弥陀ヶ原 その1


 あまりの素晴らしさに、最初からテンションがマックスである。

 14 弥陀ヶ原 その2


 大げさかもしれないが、生きていてよかったと思える瞬間である。まさに天国である。こう感じたのは、なにも私だけではない。羽黒山から月山を目指して巡礼する昔の修験者たちも、ここがまさに極楽浄土だと考えていたらしい。

 15 弥陀ヶ原 その3


 雲海の上、晴れ渡る空、涼しい風、遮るもののない開放感、緩やかな起伏とどこまでも続く登山道、これ以上を望むとバチが当たりそうである。

 16 弥陀ヶ原 その4




 17 弥陀ヶ原 その5


 高層湿原で池塘が点在するが、尾瀬ヶ原のように真っ平らというわけではなく、緩やかな傾斜がある。

 18  弥陀ヶ原 その6


 19 弥陀ヶ原 その7


 湿原が終わり、やや傾斜が出てきた。とは言っても息が切れるほどではなく、相変わらず軽快な登山道である。修験者の姿の登山者もいる。

 20 修験者                      21 仏生池小屋へ その1
  

 この先に、山小屋があるので、とりあえずそこを目指そう。

 22 仏生池小屋へ その2


 写真23のように、地形が何となく氷河によるカールっぽい感じである。そして、斜面に残る岩は多分モレーンだろう。昔、ここに氷河があったはずだ。

 23 仏生池小屋へ その3


 24 仏生池小屋へ その4


  25 仏生池小屋へ その5              26 仏生池小屋
   

 9時5分仏生池小屋に到着した。標高は1743m、山頂まで1時間15分と書いてある。350mの標高差を1時間半ほどで登ってきたことになる。もう半分以上来たわけである。

  27 仏生池小屋前
     



 小屋の前には池があった。

 28 仏生池


 小休止してから出発する。

 29 登山道から仏生池小屋と鳥海山を見下ろす




 少しずつ高度を上げていく。次の目標は、行者返という急坂である。

 30 行者返へ その1


 それにしても雄大な景色だ。

 31 行者返へ その2


 32 行者返へ その3




  33 行者返へ その4                34 行者返
   

 9時50分、行者返の下に到着した。岩のある急坂である。途中に神社があったので、お参りという名目で休憩する。

  35 行者返の水盆                  36 行者返途中の来名戸神社
   

 行者返はすぐに終わり、再びなだらかな斜面になる。

 37 行者返上部


 高山植物の群落が続き、その中を石畳の登山道が続く。地上の楽園である。

  38 山頂へ その1                 39 高山植物
   

  40 山頂へ その2
     

 右手の日本海側には、雪で削られた斜面が白い岩肌を晒している。なにしろここは日本有数の豪雪地帯である。その厳しい自然条件のおかげで、標高が2000mにも満たないのに、森林限界を越え、草原が広がっている。

 41 山頂へ その3


 正面右手に高い山が見えた。地図によると多分朝日岳だろう。

  42 山頂へ その4


 木道が現れて歩きやすい道になる。

 43 山頂へ その5




 屋根が見えた。多分あそこが山頂だろう。

  44 山頂へ その6                 45 月山神社
   
 
 10時32分、標高1984mの山頂に到着した。ちょうど3時間かかっている。頂上には神社があって、500円払うと祈祷してくれるようだ。展望は360度、素晴らしいとしか言いようがない。

 46 山頂から南西方向を望む


  47 月山神社から頂上小屋を望む            48 南側から頂上を望む
   

 49 山頂から日本海を望む


 50 山頂から北の日本海を望む


 写真50のように頂上にはいくつかの立派な碑がたっているのだが、よく見ると地元の個人の登頂記念碑である。しかも、古いものではなく、平成になってから建てられている。いくら神社の土地だからといって、国立公園のシンボルとなる山頂に、金に任せてこのようなものを無秩序に建てていいのだろうか。山岳信仰は自由だが、これは、明らかな自然破壊であるような気もする。

 51 山頂南部から姥沢(リフト方面)登山道を望む


 山頂の南端から見下ろしてみると、今回は断念したリフトから登るルートがよく見えた。おそらくあちらから登ってくる人のほうが多そうだ。



 52 山頂南端から山頂を望む


 時間があるので山頂にゆっくり滞在して、11時55分山頂を後にする。

 53 鳥海山を正面に下山する


 12時52分、仏生池小屋に到着。のどが渇いたので450円のジュースで喉を潤す。高いジュースだけあって冷えていてうまい。温度計をみると21.5℃である。関東は暑いだろうなと思いながら、飲み干した。

  54 仏生池小屋の気温
     

 14時に無事8合目に下山し、車でキャンプ場に帰った。

 GPSによる本日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録
 

 月山は、標高がそれほど高いわけではないが、緯度が高く気候が厳しいため、森林限界が低く、素晴らしい景観が味わえる山である。北側からのルートは、よく整備され、湿原の中から歩き始め、なだらかな高原の尾根を巡る極上の登山道であった。

 今回の東北遠征では、併せて鳥海山か八幡平に登ってみたかったのだが、月山でだけでかなり日数がかかってしまった。しかも、明日からまた天気が悪くなりそうなので、諦めることにした。山は逃げないので、また、機会を作って訪れることにしよう。

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