海岸線をどこまでも西へ 伊豆半島の旅もいよいよ下田から伊豆半島最南端をめざす 
◆第10日目 (2014年5月24日) 石廊崎 〜 入間海岸

 伊豆半島に足を踏み入れたのはそれほど昔のことではないと思っていたが、前回はついに伊豆半島最南端である石廊崎に到達した。つまり今日からは伊豆半島の後半戦、ここからは西海岸ということになる。熱海、伊東、下田と大きな街が続く東海岸が表伊豆だとすれば、西海岸は裏伊豆ともいうべきだろうか。都市もなければ鉄道もない、辺境、秘境だといっても良いかもしれない。

 そんな伊豆最南端の石廊崎を前回は海からみたが、今日はまず陸路で石廊崎の先端に行ってみよう。下田駅からバスに乗り換えて、9時50分に石廊崎港に着く。案内板に沿って土産物屋の先の坂道を登っていく。

  1 石廊崎港                     2 石廊崎へ その1
   

 3 現在地案内板




 写真4で石廊崎灯台バス停からの道と合流し、左折すると右手に芝生の緑が眩しい施設があった。気象観測所らしいが、無人らしい。伊豆半島は雨が多いことで知られるが、ここ石廊崎は海に突き出ている分、荒れると凄そうである。

  4 石廊崎へ その2                 5 石廊崎特別地域気象観測所
   

 廃墟のような建物が目立つが、これは石廊崎ジャングルパーク跡である。シャッターが閉まってちょっとさみしい道だ。

  6 旧ジャングルパーク                7 樹間から見える観光船
   

 灯台が見えてきた。やはり半島の先っぽ、最果ての地には灯台は不可欠なアイテムである。灯台がないとタダの岩場で、哀愁が感じられない。とはいえ、海上保安庁は、風景のために灯台を建てているわけではなく、船舶の安全のためであるが、スマホにGPSがついている時代になってしまったので、そのうち無用の長物になるのかもしれない。しかし、日本中の半島から灯台が無くなったら。私のような海岸放浪中毒者は、何を心の拠り所にして、どう生きていけばよいのか、途方に暮れるに違いない。
 とまあ、そんな感傷に浸りながら灯台の横の岩場を降りて行く。石廊崎灯台は中には入れないようだ。一方的とはいえ、こんなに慕っているのに冷たいものである。

  8 石廊崎灯台                    9 灯台の横を石廊崎先端へ
   

 10 石廊崎灯台解説板




 やがて道は岩場の断崖を急降下する。身のすくむような場所である。その階段を降り切ると、断崖に無理やり作られた木造家屋があった。神社である。

  11 石廊権現へ                   12 石廊権現
   

 13 石廊権現から石廊崎先端を望む


 14 石廊権現解説板


 内部は崖に作られたせいか狭く、木造の古さと頼りなさでお参りしても生きた心地がしない。板張りの廊下の一部分がガラスになっていたが、足元は木の柱があるだけで、この神社が空中に浮かんでいることがわかる。よくこんなところに神社を作ったものである。

  15 石廊権現内部                  16 石廊崎先端へ
   

 石廊権現をでると、岩の突端はすぐそこである。これも、岩場に無理やり作られた細い道をたどっていく。風の強い日は、人生に絶望して身を投げようという人以外には、絶対におすすめできない道である。

 17 石廊崎先端から西を望む


 18 石廊崎先端から東を望む


 ようやく先端部に着いた。小さな神社がある。

  19 伊豆七島展望図                 20 熊野神社
   

  21 GPS表示                    22 石廊崎先端から伊豆半島を振り返る
   

 アメダス石廊崎観測所の緯度経度は、資料によると北緯34度36.2分 東経138度50.5分だが、もちろんここはそれよりさらに南にあることを、現地のGPSは示している。それにしてもこんなところに神社を作ったことは、昔の人が石廊崎の最先端にこだわった、というよりも、おそらく海に付き出したこの場所に神の存在を見た、ということなのだろう。そして、潜在的には、海に囲まれた先端に立ちたい、という好奇心や冒険心もあったに違いない。

 この時は伊豆半島の最南端に立って満足した、と思ったが、後で改めて地図をみると、最南端は西側にあるもう一つの岩場ではないか。が、そっちは歩いていけるかどうかわからないし、とりあえず「ほぼ」最南端の場所に立つことがてきたので、良しとしよう。



 戻って、ジャングルパーク跡地を北に向かう。一応立入禁止にはなっているが、道路は機能しているようだ。

  23 廃墟となりつつあるジャングルパーク       24 ジャングルパークチケット売り場跡
   

 夢の跡の廃墟を抜けると、バス停である。もうだれも利用しない寂しいバス停である。石廊崎から先は、バスは一日数本しか走っていないはずだが、たまたまそのバスが通り過ぎていった。

  25 石廊崎灯台バス停                26 石廊崎を走るバス
   

 バスはおろか、車の通行もまばらになってしまった寂しい道をトボトボと歩くと、駐車場と公園の案内板があった。ユウスゲ公園というところらしい。

 27 ユウスゲ公園現在地案内板 その1


 28 ユウスゲ公園現在地案内板 その2


 現地の地図によると、前回観光船で通った大根島の北に見えた丘陵がこの公園らしい。

  29 伊豆半島の生い立ち解説板
       



  30 ユウスゲ公園へ                 31 鐘(名称不明)
   

 風が強いせいか草原の丘陵になっており、絶景としか言いようがない景色である。

 32 ユウスゲ公園からの眺め その1


 前回、観光船から見た丘の上に今立っている。

 32−2 海から見たユウスゲ公園(2014年5月11日 撮影)


 33 ユウスゲ公園からの眺め解説板


 34 ユウスゲ公園からの眺め その2


 火山とフィリピン海プレートと海が創りだした絶景がここにある。

    35 奥石廊崎解説板             36 ユウスゲ公園からの眺め その3
       

  37 ユウスゲ公園                  38 ユウスゲ公園からの眺め その4
   



  39 ユウスゲ公園から
     

 40 ヒリゾ海岸


 大根島とヒリゾ海岸に挟まれた海はアクアグリーンの深い美しさを垣間見せていた。

  41 南伊豆町ジオパークビジターセンター
     

 観光バスで賑わっている場所に着いた。地方から来たらしい中高年グループが景色に感嘆の声をあげている。

 42 南伊豆町ジオパークビジターセンターから見たヒリゾ海岸


 43 南伊豆町ジオパークビジターセンターから見た中木方面


 次の目的地は中木集落である。

  44 愛逢岬バス停                   45 中木へ その1
   



 46 中木へ その2

 47 長津呂遊歩道案内図


 ハイキングコースがあったが、歩く人はいないらしく、写真48のように草ぼうぼうである。

  48 長津呂遊歩道                  49 湧水
   



  50 小城トンネル                  51 仲木トンネル
   

 小城トンネルを過ぎて、仲木トンネルの手前の細い道が中木集落への近道である。

  52 中木への坂道                  53 仲木バス停
   

 中木と仲木という漢字が混在しているが、外部から隔絶された感じの不思議な雰囲気の集落である。ちょっと沖縄に似たような南国と異国のテイストが漂っている。

  54 中木マリンセンター
     

 マリンセンターは、もちろん最近有名になったヒリゾ海岸でのシュノーケリングツアーの拠点なんだろう。

 55 現在地案内板 その1


 56 ジオパーク解説板


 57 現在地案内板 その2


 そして現地の大きな看板によると、ここは柱状節理が有名らしい。

 58 柱状節理遠景



  59 柱状節理 その1                60 柱状節理 その2
   

 海岸線を回りこんでいくと、確かに美しい柱状節理が目の前で見られるのはなかなかすごい。

  61 柱状節理 その3
     

 62 柱状節理 その4


  63 柱状節理 その5                64 柱状節理 その6
   

 柱状節理を過ぎると静かな海岸がひっそりとその姿を現した。

 65 戸外浜 その1


 海の美しさはさすがである。

  66 戸外浜 その2                 67 タヌキ
   

 中木集落に戻る途中に、皮膚病で弱って人を見ても逃げることもできないタヌキがいた。



  68 南伊豆歩道入口
     

 コンクリートで過剰に固められた川をわたって、対岸が南伊豆歩道の入口である。この歩道については解説板のとおりであるが、ここ中木から入間へ海岸沿いのコースを抜けようというのである。

 69 南伊豆歩道案内図


 70 南伊豆歩道解説板


  71 宝永軒                     72 南伊豆歩道を入間へ その1
   

 お寺の横を登って行くとその歩道の入口はあった......にはあったが、写真72のとおり、雑草に覆われている。ちょっと躊躇したが、標識がしっかりしていたので足を踏み入れてみることに。



 だめなら引き返そうと登って行くと林の中は光が届かないらしく道が残っていた。

  73 南伊豆歩道を入間へ その2           74 南伊豆歩道を入間へ その3
   

  75 南伊豆歩道を入間へ その4           76 南伊豆歩道を入間へ その5
   

  77 南伊豆歩道を入間へ その6           78 念仏堂 その1
   

 古代遺跡のような念仏堂であるが、どうやってここまで大きな石を運んできたのだろうか。それとも元々ここにあった岩をくりぬいたのだろうか。謎である。

  79 念仏堂解説板                  80 念仏堂 その2
  

  81 念仏堂内部                   82 神の使い?
   

 ぼんやり歩いていると突然蛇が出てきたりして、結構ワイルドな道である。マムシではないようでホッとする。



 木がない斜面にでると、ここがまっすぐ海に落ち込む恐ろしい地形だとわかって、足がすくむ。強い風が嫌であるが、逆に風が強いからここには木が生えないのだろう。

  83 南伊豆歩道を入間へ その7
     

 84 南伊豆歩道から三ッ石岬方面を望む


 絶景の断崖の縁を道は頼りなく続いている。

 85 南伊豆歩道を入間へ その8



  86 南伊豆歩道から入間へ その9          87 イノシシのいたずら
   

 蛇の後は、イノシシによって畑と化した道や長ズボンの上からでもトゲが痛いオニアザミ地獄など、結構な試練が続く。

  88 あざみのトゲ地獄                89 南伊豆歩道を入間へ その10
   



  90 獣道                      91 南伊豆歩道を入間へ その11
   

 イノシシの痕跡が多い。最後にぬかるみ地獄を抜けるとようやく入間の里に出た。

  92 入間                      93 南伊豆歩道入口
   

  94 入間キャンプ場
     



 95 南伊豆歩道解説板

 この入間の集落も人がいない隔絶されたような集落であるが、コンクリートで固められ、今も砂浜でクレーン車が砂を均しているところをみると、必要もなさそうな公共工事だけが唯一の活力なのかもしれない。できれば、30年前のこの集落を見てみたかったものである。
 バス停があったが時刻表がなかったので、浜に向かう。

  96 入間バス停                   97 入間海岸 その1
   

 98 南伊豆歩道コースタイム


 99 入間海岸 その2
 



 閑散とした漁港と、釣り宿が1軒だけの寂しいところで、コンクリートだらけなだけに余計に殺風景である。
 コンクリートのトンネルの中で遊んでいる小学生の男の子が二人いた。仲良しのようだが、多分年の近い子供は二人だけなのだろう。多分一生の友だちになるはずである。

 彼らにバスの時刻を聞いてみる。一日数本あるらしく時刻を教えてくれるが、学校行きのバスのようだ。「時刻表はバス停にあるよ」というが、「なかったよ」というと親切にもバス停まで案内してくれた。なんと時刻表は崩れそうな壁の内側に貼ってあった。が、中木行きで、下田行きのバスはないようだ。途方に暮れて地図を見る。とりあえず入間口まで行くことにした。

  100 入間集落                   101 入間口バス停
   

 入間口バス停もジャングルの中にあるかなりのもので、周囲には潰れたペンションがあるだけだ。ここでバスを待つ。下田行きはないが、下賀茂行きに乗って終点で乗り換えれば下田駅に行けるようだ。あと1時間後だ。結局入間バス停で待っていたほうが良かったが仕方がない。
 さっき入間へいってから中木へ向かったバスがようやく戻ってきた。15時13分発下賀茂行きである。

  102 下賀茂行きバス
     

 バスの乗客は私一人なので、運転手さんがいろいろ話かけてきた。どこから来たとか.....南伊豆の海岸や海の美しさを褒めると、いや湘南のほうが都会的で....とか言いながらも、まんざらではない感じである。ただ、あまり嬉しくない情報ももらった。入間から先の南伊豆歩道は、夏場は歩く人が少ないので、雑草に覆われて無理だというのである。シーズンはゴールデンウィークまでらしい。たしかにこれから夏にかけては、ちょっときついかもしれない。
 次回はどうしようかな、と考えているうちに、南伊豆町の中心地である下賀茂についたので、下田行きのバスに乗り換えて帰路についた。

 現在地



 GPSによる本日の歩行経路 (時間:4h25m 距離:17.5km )


 今日の行程は西伊豆というよりも南伊豆といったほうが良いが、石廊崎から先は、交通の不便さと道の険しさと引き換えに、ワイルドな素晴らしい絶景の海岸線と、隔絶された小さな集落をつなぐ旅になった。伊豆半島でも最も南にある秘境といっても良いかもしれない。次回以降は西海岸を北上していくことになる。


 (本日の歩数:23350歩)  

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