箱根外輪山一周 1            
◆ 2012年12月11日  風祭駅宮城野分岐  

  2012年11月25日、箱根中央火口丘からみたのは、頂上に鎮座する神を守るべく、その座を取り囲むようにそびえる外輪山である。それは、新たなチャレンジを決意させるのには十分な存在感であった。単なる思いつきであると笑いたいものは笑えばよい。誰がなんと言おうと、心のままに放浪する自由な魂は、もう誰にも止められない。

     駒ケ岳山頂から見た箱根外輪山(明神ヶ岳・明星ヶ岳)
   

 という重厚だが意味不明な書き出しで始まったこの企画、まあ、簡単に言うと、箱根の外輪山をぐるっと一周、火山の縁を全部踏破しようということだ。下図の赤い山が外輪山である。見ればわかるように、完全な円ではなく、東の部分に一か所切り欠きがあり、箱根湯本から早川が流れ出ている。ここがスタート・ゴール地点だ。
 金時山から鞍掛山までは、静岡県との県境なので、神奈川県一周ですでに歩いている。今回は反時計回りで行こう。

 
   
  
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Hakone-map_01.pngより改変

  1 風祭駅                      2 風祭駅から外輪山へ
   

 早川の切欠きの北側スタート地点は、箱根登山鉄道風祭駅である。この早川が作った狭い谷間は、箱根への入口であるとともに箱根登山鉄道と国道1号線が並行して走る交通の要所でもある。標高はわずか38m。まさに海岸から外輪山を登るのに等しい。





 3 風祭の外輪山末端


 麓からは、外輪山の末端終末部に当たる緑に覆われた標高200m程度の山が見える。これより東は尾根がはっきりせず、地形が複雑な丘陵地帯となって足柄平野と相模湾に落ちていく。その末端は、小田原城である。といっても現在の低地にある小田原城ではない。初期の小田原城は、この箱根外輪山末端の山の上、現在の小田原高校付近にあったとされている。戦国時代初期の城といえば山城であり、平地に城が作られるようになるのは、城下町が発達した織田信長の時代からだ。
 里からの緩やかな坂道を登っていくが、写真5の地点で行き止まりになってしまった。仕方なく西に向かい、みかん山の農道を登っていく。

  4 外輪山の尾根へ                  5 通行止めになった道
   

 6 みかん畑から小田原市街地と相模湾を望む


 みかん山からの景色は最高である。しかし、小田原では、みかんは最盛期ほど作られていない。神奈川のみかんは美味しくないことで有名だからである。愛媛、和歌山、静岡のみかんに味で負けてしまうのは、気象条件から仕方のない事である。なぜならここ神奈川県西湘地区は、みかん栽培の北限なのである。



 みかん山の農道に入ってしまってからは嫌な予感がした。農道は、林道と異なり、突然終わるからである。地図を見ても、尾根を走る林道に通じているのは、ごく一部の道だけだ。しかも、今日は地形図は用意しておらず、縮尺の大きい登山用地図しかない。
 予感は当たり、ミカン小屋で農道は途切れた。途方に暮れる。上を見上げると尾根はそれほど遠くなさそうだ。尾根には林道があるはずだ。腕時計で方位を確認し北西に向かって突入する。道無き道をいく、いわゆる藪漕ぎである。幸い今の季節はまだ楽だ。ヤブの中には、獣道が縦横無尽に走っているので時々利用させてもらいながら、ひたすら高い方へ登って行き、ふと下を見ると、アスファルトが見えた。崖を降りて林道に生還である。すでに泥だらけだ。
 里山なら良いが、山奥でこれをやると転落か道迷いで遭難する確率が高いので、良いことではない。やはり地図での事前ルート把握が大切である。素直に、風祭駅から右に行き、林道に出るべきだったと少し反省する。

  7 ヤブの中を北へ                  8 林道に復帰
   

 次のポイントは林道から塔ノ峰へ分岐する登山道入口である。通り過ぎないように注意しなければならない。写真10で道標を見つけたので、左へ入る。

  9 林道を西へ                    10 塔ノ峰への登山道入口
   

 このあたりから、明確な尾根が塔ノ峰まで続き、外輪山としてすこしずつ高度を上げていく。途中で朽ち果てた車があったが、車道が通じているわけでもなく、どうやってここまで来たのか不思議だ。

  11 塔ノ峰へ                    12 打ち捨てられた車
   

  13 倒木のゲート                  14 塔ノ峰山頂 その1
   

 倒木のゲートをお辞儀しながら通過すると、標高566mの塔ノ峰である。箱根外輪山の初めての山らしい山の頂上だ。時間は、10時8分、藪漕ぎなどでだいぶ時間がかかってしまった。登山道の標識と地図によるとこの下はちょうど塔ノ沢になるらしい。普通は塔ノ沢から登ってくるのだろう。



  15 塔ノ峰山頂標識                 16 塔ノ峰山頂 その2
   

 展望は全くない。気温はそれほど低くないといっても良いだろう。

  17 山頂の気温                   18 足柄幹線林道へ その1
   

 山頂から写真18のような気持ちのよい道をたどると、右側、すなわち外輪山の外側の木が伐採されているところに出た。前方には、これから登っていく、明星ヶ岳、明神ヶ岳といった箱根外輪山北側の山々が遠望できる。

 19 塔ノ峰山頂西から明星ヶ岳、明神ヶ岳を望む




  20 山頂西の疎林                  21 イノシシのいたずら
   

 イノシシが暴れた場所を過ぎると右手の展望が開ける。そこから見る足柄平野と大磯丘陵、そして青い相模湾が素晴らしい。せっかくの伐採地なので、スギなどの植林をせず、ぜひ自然林に戻してほしいものだ。

 22 山頂西から足柄平野を望む


  23 足柄幹線林道へ その2             24 足柄幹線林道合流地点
   

 やがて下って舗装路に出る。足柄幹線林道である。しばらくこの道路を歩かなければならないが、かなり交通量が多い。実は、この道は林道とは名ばかりで、宮城野から小田原へ抜ける事ができる国道1号線の裏道として、地元の人達によく使われている道なのである。信号がないため、かなり快適である。この日も、営業や役所の車だと思われるバンが次々と走り抜けていく。
 キーッという金属が軋む音がする。箱根登山鉄道だ。線路のカーブが急なため、車輪と線路の摩擦で出る音が、谷を超えてこの外輪山まで響きわたっている。金属同士が削れてしまうのを防ぐために、箱根登山鉄道ではあることをしているそうである。まあ、一番良いのは、油を撒くことである。つまり、その名のとおりの潤滑油であるが、とんでもない急勾配の登山鉄道でこれをやったら、スリップして登れなくなるのは目に見えている。では、どうするか。なんと水を撒くそうである。摩擦の軽減だけでなく、摩擦熱による車輪の温度上昇を防ぐ意味でも確かに理にかなっている。

 林道をしばらく歩いてから、明星ヶ岳への登山道が右側に現れた。写真25がその入口である。

  25 明星ヶ岳登山道入口               26 明星ヶ岳へ その1
   



 ここからは本格的な登りになり、筋肉中のグリコーゲンがどんどん減っていくのがわかる。辛いががんばろう。

  27 明星ヶ岳へ その2               28 明星ヶ岳へ その3
   

 高度を上げるにつれて、植生は、写真27、28の人工林から、写真29の二次林、そして、写真30の箱根笹の群生へと変わっていく。

  29 明星ヶ岳へ その4               30 明星ヶ岳へ その5
   

 笹の背は高くて展望はないが、所々で笹が低くなり、景色が良い所があるので楽しい。いつのまにか、神山などの中央火口丘が大きく見えている。

 31 外輪山から箱根中央火口丘を望む




  32 明星ヶ岳へ その6               33 明星ヶ岳へ その7
   

 正面に明星ヶ岳山頂の姿がはっきりしてきた。

  34 明星ヶ岳へ その8               35 明星ヶ岳へ その9
   



  36 石仏 その1                  37 明星ヶ岳へ その10
   

 このあたりで標高は800mを超えており、山頂に向かって比較的なだらかな登りが続く。

  38 明星ヶ岳へ その11              39 石仏 その2
   

 古いんだか新しいんだかわからない奇妙な石仏群を過ぎて、笹原の快適な道が青空の下に伸びていく。

  40 明星ヶ岳へ その12              41 明星ヶ岳山頂直下
   



 12時9分、ついに標高924mの明星ヶ岳山頂に到着した。

  42 明星ヶ岳山頂 その1              43 明星ヶ岳山頂 その2
   

 山頂の神社は、小さく素朴ながらも、なかなか趣がある。

  44 明星ヶ岳山頂その3               45 山頂から東を振り返る
   

 この山は登山ガイドブックには展望のない山として紹介されているが、実際はそうでもない。今きた道の向こうには海が見え、左手には駒ケ岳が頭を覗かせている。山頂直下には、大文字焼きの場所があるらしい。

  46 山頂から駒ケ岳を望む              47 明星ヶ岳山頂 その4
   

  48 山頂から宮城野への分岐             49 明神ヶ岳へ続く道
   



 今日の富士山は、いつもの様に雲がまとわりついていてスカッと全貌を現すことはない。

 50 外輪山から富士山と金時山を望む


  51 中央火口丘を望む
     箱根の坂 中   箱根の坂 下

 明神ヶ岳のどっしりとした山体が正面に見えた。

 52 明神ヶ岳を正面に望む


 笹原の中を、これから歩く登山道が続いている。ここまで登ってきたかいがあったといえる極上の景色を見ながら、外輪山の尾根を進んでいく。正面には外輪山の明神ヶ岳、尖った溶岩ドームの金時山、その向こうには富士山、左手には箱根中央火口丘というロケーションである。

 53 明神ヶ岳と金時山と富士山




  54 中央火口丘と強羅                55 笹原の中を北へ
   

  56 和留沢への分岐                 57 学校林跡地解説板
   

  58 宮城野分岐へ その1              59 宮城野分岐へ その2
   



  60 宮城野分岐へ その3
  宮城野分岐に着いた。標高は900mちょっと。

 61 明星ヶ岳を振り返る


 62 明神ヶ岳を望む


 目の前には明神ヶ岳の丸い頂きがすぐ近くに見えるが、現在の時刻は13時ちょうどである。ここから明神ヶ岳まで標準時間で45分かかるが、かなり疲れているので1時間は見ておく必要があるだろう。下山が2時間かかるので、今の季節の日没時間を考えるとかなり厳しい。ここは、安全策を取り、この宮城野分岐から宮城野の里に下ることにしよう。どっしりとそびえる明神ヶ岳が逃げることもないだろう。

  63 宮城野分岐                   64 宮城野へ その1
   

 急で溶岩が多い道を下っていく。だんだん傾斜が緩くなってくる。



  65 宮城野へ その2                66 宮城野別荘地
   

 標高670m付近で写真66の車道に出る。別荘地がこんな高いところまできている。

  67 宮城野へ その3                68 宮城野登山道入口
   

  69 宮城野から明星ヶ岳を望む
     

 無事宮城野の国道138号線までたどり着いた。

 GPSによる本日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録


 明星ヶ岳は、1000mに満たない山であるが、今日は結構疲れた。標高が低い風祭から、まるまる外輪山を登ったので、GPSの累積標高は1300mとなっていた。
 今日は、早川左岸から立ち上がる外輪山をしっかり歩くことができ、明星ヶ岳から先では、圧倒的な眺望の中で笹原を歩く天上道を快適に歩くことができた。次回は、いよいよ明神ヶ岳を目指すことなる、箱根外輪山一周の旅である。

(本日の歩数:25115歩)       

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関連ページ ◆箱根山中央火口丘 (2012年11月25日)
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