箱根外輪山一周 2  
◆ 2012年12月16日  宮城野分岐乙女峠

  2012年12月11日、箱根の入口、風祭で文明社会に別れを告げ、箱根外輪山を登り始めた第一次箱根外輪山遠征隊は、明星ヶ岳を越え、明神ヶ岳を間近に望む宮城野分岐まで到達した。今日の第二次遠征隊は、そこから明神ヶ岳、そしてあわよくば金時山をねらう。

 
  
  
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Hakone-map_01.pngより改変

  1 宮城野 その1                  2 宮城野からみた箱根中央火口丘
   

 小田原から朝早いバスに乗って、宮城野で降りる。出発は8時半。しばらく住宅地を歩くと写真1の青い大きな案内板が目印となる。標高481mと書いてあった。これなら道に迷うことはないだろう。宮城野からは、神山がよく見える。



  3 宮城野 その2                  4 働くヤギたち
   

 ヤギが空き地の草狩りをしていた。青い案内板に沿って登って行こう。

  5 宮城野 その3                  6 宮城野 その4
   

 別荘地の横を登っていくと、別荘地が終わり、写真7から本当の登山道になる。今日の行程は結構ハードなことが予想されるので、無理をせず意識的にゆっくりと登る。途中で、喋りながら息も乱さず登る若者二人にいとも簡単にぶち抜かれた。なさけない遠征隊であるが、隊長の歳を考えると、ペースを変えてはいけない。ウサギにはなれないので、カメに徹しよう。

  7 別荘地が終わる                  8 宮城野分岐へ
   

 急斜面を登りつめると、標高900mを超える宮城野分岐に到着した。9時50分だ。登山地図標準時間をオーバーするスローペースだが、先は長い。明神ヶ岳の標高は1169mなので、あと200mちょっとである。

  9 宮城野分岐                    10 宮城野分岐から明神ヶ岳を望む
   

  11 明神ヶ岳へ その1               12 明神ヶ岳へ その2
   



 もう杉、檜の植林はなく快適な登山道である。

  13 明神ヶ岳へ その3               14 箱根中央火口丘を望む
   

 高度を上げるに従って、前回の外輪山ルートや中央火口丘が一望できるようになる。

  15 明星ヶ岳を望む                 16 明神ヶ岳へ その4
   

  17 明神ヶ岳へ その5                18 路傍の信仰
   



 冬枯れたカヤのなだらかな道が続く。

  19 明神ヶ岳へ その6               20 明神ヶ岳へ その7
   

  21 明神ヶ岳へ その8               22 明神ヶ岳へ その9
   

  23 二宮金次郎柴刈り路ハイキングコース分岐     24 明神ヶ岳へ その10
   

 右手から、外輪山に向かって外側から登ってくる登山道が合流する。

  25 大雄山最乗寺への分岐              26 明神ヶ岳へ その11
   

  27 笹原の向こうに見える丹沢大山          28 明神ヶ岳へ その12
   

 そして、日本一の山が左手に姿を現した。今日は珍しく雲ひとつない秀麗な姿を惜しげも無く晒している。

 29 明神ヶ岳へ その13


 30 登山道から中央火口丘を望む



  31 明神ヶ岳へ その14              32 崩落した外輪山の内側
   

 言葉に出来ない素晴らしい展望が続く。

 33 登山道から大山、大磯丘陵、足柄平野を望む

 左側、すなわち外輪山の内側は、写真32、34のように崩落し、赤土と溶岩がむき出しになっている。箱根火山のカルデラは、元々は2700mもの富士山のような巨大火山で、その中心部が陥没して現在のような中央火口丘と外輪山、そしてその間のカルデラが形成されたと思われていた。つい最近まで、私もこの話を信じていたのだが、最近の調査結果から否定されつつあるようだ。何しろ、偉い火山学者が提唱したので、なかなか異論は唱えにくかったのだろう。現在は、複数の火山がそれぞれカルデラを作り、浸食によって繋がって一つになったという説が有力らしいが、イマイチ説得力と大胆さに欠ける気がする。ここは、大昔に富士山の弟分の巨大な火山があったとしておくほうが、夢があって良いのに、と思ったりもする。すると、写真32,34はその大陥没の現場ということになって、すげーな、ということになる。

  34 明神ヶ岳へ その15              35 大雄山最乗寺からの登山道分岐
   

 大雄山からの道が合流して、登山者たちが続々と登ってくる。明神ヶ岳は、南足柄市の大雄山から登ってきて頂上でお昼、午後は宮城野側に降りて温泉に入るというのが、多分一番ポピュラーなコースだと思う。



 というわけで、天気もよいせいか、頂上にはたくさんの人がいた。標高1169mの明神ヶ岳に、10時38分に到着である。

  36 明神ヶ岳山頂 その1              37 明神ヶ岳山頂 その2
   

 山頂から西を望む展望は、息を呑むばかりの圧倒的スケール感で、我々に言葉を忘れさせる。

 38 明神ヶ岳山頂から箱根外輪山、富士山、愛鷹山連山、南アルプスを望む


 山頂は居心地がいいので、たくさんの人がくつろいでいる。大雄山から登ってきた目の前のグループはストーブで料理を作り始めた。豚肉がどうとか、このストーブはいくらしたとか話している。楽しそうだ。端っこで一人寂しくカレーパンをかじる自分が惨めになるが、私には、遠征隊長としての責任がある。まだまだ先は長いのである。10分ほど休憩して糖質と水分を補給し出発である。次の目標は火打石岳だ。

  39 明神ヶ岳山頂 その3              40 火打石岳へ その1
   

 地形図によると、実際の山頂は写真42のあたりになるらしい。明瞭はピークはなく、細長くなだらかな山頂である。

  41 火打石岳へ その2               42火打石岳へ その3
   

  43 火打石岳へ その4               44 火打石岳へ その5
   



 はっきりとした下り道になると、これから歩く外輪山の尾根道とその向こうの富士山がいやでも正面に迫ってくる。ここは風が強いことでも有名で、高い木は育ちにくいのだろうか。笹と低い潅木が広がるおかげで、奇跡のような景色が広がる外輪山登山道である。やはり、反時計回りのほうがよさそうだ。

 45 火打石岳へ その6


  46 大雄山最乗寺への分岐              47 火打石岳へ その7
   

  48 火打石岳へ その8
  快適すぎて、足取りが軽くなりすぎる。

 49 火打石岳へ その9

 右手にも展望が開ける場所があった。長く神奈川県に住んでいるが、これほどスケールの大きい丹沢のパノラマは初めて見た。隣にいる女の子を連れたお父さんが、あまりの景色に興奮状態になり、娘さんに一つ一つ山の名前を解説し始めた。小学校高学年か中学生の娘さんには無駄だと思うが、どうにも止まらない。この感動を誰かに話さずにはいられないのだろう。気持は良くわかる、微笑ましい光景である。
 せっかくなので写真に山名を入れておこう。

 50 東丹沢を望む


 51 西丹沢を望む


 丹沢がよく見えるということは、逆に向こうからもこちらがよく見えるということである。そういえば、神奈川県一周の時に、甲相国境尾根から箱根が見えたことを思い出した。この写真の外輪山、左のなだらかな山が明神ヶ岳である。



  52 火打石岳へ その10
  気持ちのよい防火帯の中を歩いていく。

 53 火打石岳へ その11

  54 火打石岳へ その12              55 火打石岳へ その13
   



 56 明神ヶ岳を振り返る

 11時40分、火打石岳に到着した。ここから樹林帯に入る。

  57 火打石岳                    58 火打石岳解説板
   



  59 矢倉沢峠へ その1               60 矢倉沢峠へ その2
   

 樹林帯の後は背の高い箱根竹林に入る。登山道の変化が激しくて面白い。

  61 矢倉沢峠へ その3               62 矢倉沢峠へ その4
   

 63 外輪山と仙石原を望む

  64 矢倉沢峠へ その5
  竹が低くなると展望が復活する。 

 65 矢倉沢峠へ その6

 竹の高さは気象条件で変わるようで、尾根など風が直接当たる場所では丈が低くなるようだ。

  66 矢倉沢峠へ その7               67 矢倉沢峠へ その8
   



 富士山の姿はだんだんと隠れていき、真っ白な山頂だけが遠慮がちに頭を出す。代わりに、金時山が眼前に大きく迫り、主役の座を奪い取っていく。

 68 矢倉沢峠へ その9

 こちら側から見る金時山は麓の笹原と上半分の急峻な溶岩の山頂付近のコントラストが素晴らしく、なかなか絵になっている。しかし、尾根伝いと思っていたら、手前はかなり低く、そこからの登りがきなりキツそうである。

 69 矢倉沢峠へ その10

  70 矢倉沢峠へ その11
   

 笹原の中を矢倉沢峠へ向かっておりていく。

 71 矢倉沢峠へ その12



 12時45分に、矢倉沢峠へ着いた。竹林の中の峠である。ここの標高は880m、意外と低い。金時山まで、約350mの登りで、それほどでもないが、見た目が急なのと、隊長自身がここまででかなりの体力を使ったことが気がかりである。

  72 矢倉沢峠 その1                73 矢倉沢峠 その2
   

  74 矢倉沢峠 その3                75 矢倉沢峠 その4
   

 閉まっている茶店の奥に、写真77のベンチがあった。ふと見ると、宮城野からの登りでぶち抜かれた若者二人がおにぎりを食べていた。カメがウサギを追い越した瞬間である。歩みはのろくとも、休まず歩きつづけるものが真の勝者になるのである、などと馬鹿なことを考えている余裕はないはずである。

  76 矢倉沢峠 その5                77 矢倉沢峠 その6
   



 いよいよ今日最後の登りに入る。先ほど見たとおりの笹原の中を登って行くが、斜度も緩く、開放的な景色もあって、快調である。

 78 金時山へ その1

 途中の大きな岩で小休止する。家族連れが楽しそうに岩の上でくつろいでいた。

  79 金時山へ その2                80 金時山へ その3
   

 81 火打石岳を振り返る

  82 金時山へ その4                83 金時山へ その5
   

 途中の樹の枝にニットの帽子が忘れられていた。まだ新しそうだ。竹の中に少しずつ樹木が混じるようになってきた。

  84 帽子の忘れ物                  85 金時山へ その6
   



 目の前の金時山が手招きしている。

 86 金時山へ その7

  87 赤い実                     88 金時公園方面分岐 その1
   

 仙石原から金時山へのルートは、先程の矢倉沢峠経由の他に、その奥の金時公園経由の道もあるようだ。その合流点に着いた。あと20分の標識がある。

  89 金時方面分岐 その2              90 金時山へ その8
   

 ここからは、笹原がなくなり、樹林帯となって、坂が急になる。麓から見たとおりの変化である。



  91 金時山へ その9                92 金時山へ その10
   

 溶岩帯のかなりきつい坂だ。急峻な地形に霧まで出てきて、牧歌的な雰囲気から、風雲急を告げる、という雰囲気になってきた。

  93 金時山へ その11               94 金時山へ その12
   

 斜度があるため、数カ所にロープがある。

  95 金時山へ その13               96 金時山へ その14
   

 太陽電池のある登山者数計測装置があった。これには見覚えがある。神奈川県一周で足柄峠から金時山に登った時も頂上直下にこの機械があったはずだ。ということは頂上も近い。つらい登りの終わりは、写真98のようなタイムトンネルの出口に丸い光が輝く出口であった。

  97 金時山へ その15               98 金時山山頂へ
   



 まばゆいばかりの光の向こうに飛び出ると、そこは山小屋とたくさんの人がいる別世界である。

  99 金時山山頂 その1               100 金時山山頂 その2
   

  101 金時山山頂 その3              102 金時山山頂 その4
   

 若者が多い。登山、アウトドアブームなのだろうか。ひときわ大きな声が聞こえる。韓国語のようだ。集団で賑やかに鍋をやっているらしい。となりには日本人の女性二人がいる。鍋のお裾分けをしてもらったようだ。鍋グループは在日韓国人らしく、日本語も話せるようで、おばさんが、「美味しいでしょう」と、半ば強制的に催促している。聞かれた女性は「から〜い」と叫んでいる。いくら問われても笑いながらひたすら「すごくから〜い」の連発で、決して「美味しい」とは言わなかった。ある意味で芯が強いというか正直である。私だったら社交辞令も兼ねて「辛いけどあったまりますね〜」などと言ってしまいそうである。まあ、食生活習慣が違うので日本人には辛すぎるのは当たり前である。
 どこから来たのかという定番のやり取りの後、今度は鍋グループの息子の話になった。息子の嫁にという話になったようで、「でも、かわいそうだよ〜、息子さん若いんでしょ。私35だし〜」と明るくおどけていた。まあ、こんなにたくさんの人がいる山頂で自分の歳を発表する必要もないのに、と思いながらも、この女性の物おじしない明るい性格は好感が持てた。竹島問題などいろいろいある両国であるが、こうして一般人同士が山の上で仲良く日韓友好を体現しているのは素晴らしいことである。

  103 金時山山頂 その5
  風もなく穏やかである。

 104 金時山山頂からみた富士山


 あれほど晴れていたのに、富士山だけは雲がかかっていて不穏な雰囲気である。14時を過ぎたので、金時山を出発である。ここから先は、1年前に神奈川県一周でも歩いている区間だ。

 
関連サイト 神奈川県一周 第31日目(2011年11月26日) 駿河小山駅 〜 乙女峠

 金時山からの下りの急坂は、泥濘んでおり、滑って苦労した。江戸時代の人たちも箱根東海道の泥濘には難儀したらしい。歩きやすくするため、最初は箱根竹を敷いていたが、費用がかかりすぎて困ったらしい。そして生まれたのが有名な石畳である。

  105 長尾山へ その1               106 長尾山へ その2
   

  107 長尾山                    108 乙女峠
   

 15時に乙女峠に着いた。前回は、ここから右折し、御殿場方面に出てバスで御殿場駅に出たが、今回はちょっと迷った。同じ道では芸がなさすぎるが、箱根仙石原経由だと、道が混む可能性が高い。仙石原に降りる人が多いようだし、冬なので観光シーズンからは外れているということで、今回は神奈川県側の乙女口に降りることにした。



  109 乙女口へ その1               110 乙女口へ その2
   

 急斜面を降りていく。途中で女性たちが後ろから走ってきて、あっという間に抜かされた。トレランだろうか。

  111 乙女口へ その3               112 乙女口バス停
   

 乙女峠から40分ほどで乙女口のバス停についた。ちょうど湯本行きのバスが来る時間だ。女性たちは、バスの時間を気にして走っていたのだ。知らないほうが良いこともある。バスは少し遅れてきたが、最後の塔ノ沢〜湯本間が少し混んでいたほかは大した渋滞もなく、箱根湯本駅について無事電車に乗った。

 GPSによる本日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録


(本日の歩数:30009歩)

 外輪山の2日目、今日のルートは明神ヶ岳と金時山の両方を登るということで結構きつかったが、無事目的地の乙女峠まで到達でき、満足した。明神ヶ岳から西に向かう外輪山尾根の笹原の海の中をジグザグに続く登山道とその向こうに鎮座する金時山と富士山は、写真で見ていただいたとおり、いや現地ではその何倍もの素晴らしい景色であった。天候に恵まれたことも大きい。とにかく、外輪山のこの区間は絶対に反時計回りで西に向かって歩くべきである。

 さて、金時山で最北端を記録した外輪山は、この後、西側の静岡県境となって芦ノ湖の西側に弧を描いているが、1年前にすでに歩いているので、バトンタッチすることにしよう。乙女峠から先の外輪山の記録を読み返してみると、こちらも素晴らしい景色である。

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関連ページ ◆箱根山中央火口丘 (2012年11月25日)
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