海岸線をどこまでも 本州一周(になるかもしれない旅) 千葉県房総半島南端を踏破中 
◆第12+13日目(2008年11月3日)  平砂浦 〜 安房白浜

 7時からの朝食に間に合うように、6時に起きる。あいにくの曇り空だ。2日間、天気がよいといっていた週間天気予報はあまり当てにならない。朝食は定番のバイキングなので、昼食を食べないでも歩き続けることができるようにたくさん食べた...というのは表向きの理由で、単に食い意地が張っているだけとも言える。7時半にホテルを出る。これで、南欧リゾート風の美しい建物ともお別れである。

 1 ホテル内のレストラン              2 アクシオン館山 
    



 朝早いので、海岸には誰もいないと思ったら大きな間違いであった。等間隔に釣り人が並んでいる。これだけ人がいるということは、有名なポイントなのだろう。
 砂浜を東に向かって歩いていると、意気揚々と歩いてくる釣り人がいた。心なしか顔が得意げである。笑いたいのをこらえている感じ..。手元を見ると、大きなヒラメが躍っているではないか。どうりで、満足げな表情をしているはずである。ヒラメを写真に撮らせてもらおうと思ったが、カメラが間に合わなかった。写真4は後から撮ったもので、魚の向きが悪いので大きさは実感できないが、体長は優に40センチほどもありそうな大物である。おいしそうだ。

 3 平砂浦から布良海岸方面を望む             4 釣り人と釣果
     

 写真5のような、謎の木組みがある。何だろう。防風、防砂用だろうか。

 5 謎の構造物 その1              6 坂井川河口
   

 早朝の海には、釣り人の他に写真7のとおり、もう1種類の人たちがいた。
 写真8は、また謎の木組みである。これはサーファー用の風よけ?

 7 サーファー達                  8 謎の構造物 その2
   

 9 伊戸方面を望む                10 布良海岸方面
   



 やがて、渡渉できない川にぶつかり、川沿いに上ろうとすると、砂丘の小高い丘があった。上ってみると、夕日の丘という看板とベンチがあった。よほどすばらしい夕日が見られるのだろう。

 11 夕日の丘                 12 夕日の丘から見た伊戸方面
   

 13 夕日の丘から見た布良海岸方面        14 フラワーライン
   

 佐野橋を渡ってからは、浜に戻らず、しばらくフラワーラインを歩く。写真15,16のとおり定番のオレンジの屋根の南欧風のホテルが続く。リゾートで、これだけ広範囲に渡る統一的な景観地域はあまりないだろう。

 15 いこいの村館山               16 オーパヴィラージュ
   

 巴川という川を渡る。この川は写真のとおり、コンクリートで固められていない、自然のままの川である。こういう川は日本では非常に貴重な存在になってしまった。

 17 新巴橋から上流を望む            18 共立女子学園館山寮
   

 都内の有名な女学校の寮を過ぎると、相浜である。夏は海水浴場になるが、この日は1家族がバーベキューをしているだけであった。ここが、平砂浦の東端になる。4〜5kmはあっただろうか。すばらしいビーチであった。ここからしばらくは岩場が続く。

 19 海鮮料理店                 20 相浜海水浴場
   

 相浜漁港はこぢんまりとしたアットホームな感じの漁港である。港のはずれには、鮪延縄漁と安房節発祥の地という碑があった。まだ、新しそうだ。

 21 相浜漁港                  22 鮪延縄船・安房節発祥の地記念碑
   

  23 記念碑銘文
  



 24 富崎(布良)漁港              25 布良検潮所
   

 26 鯵の開き製造中               27 布良海岸の岩場 その1
   



 崖の途中には、海に向かって建っている、信仰の場所が多い。それだけ、昔の漁村の暮らしは厳しく、漁は命がけだったのだろう。今のように、天気予報も、大きなエンジン付きの漁船も、GPSも無かったのだから。

 28 駒ヶ崎神社                 29 布良海岸の岩場 その2
   

 30 御染弁財天                 31 布良浜入り口
   

 小さな峠道を越えると、写真31のような看板が建っていた。布良(めら)海岸である。岬に挟まれ、小さな弧を描く砂浜が、美しい。全体になだらかな斜面になっている。

 32 布良浜(布良海岸)全景 

 写真33の小さな入り江に、見覚えがある人は、おそらく、相当のドラママニアか、反町隆史(または竹之内豊)のファンだろう。(もちろん地元の人はよく知っているだろうが。)
 1997年に放映されたフジテレビのいわゆる月9ドラマ「ビーチボーイズ」のロケ地だ。25%を越える、今では考えられない高視聴率を叩き出したドラマで、「夏」「海」という永遠のテーマをモチーフとした典型的青春ドラマである。共演は、まだ幼い感じのする広末涼子と未婚の母役の稲森いずみだ。
 そのドラマの中で、反町君のルノーが海に突っ込んだ入り江が写真33である。

 33 布良海岸の小さな入り江           34 砂浜と岩場
   

 余談だが、個人的には、竹之内豊の恋人役の「さくら」ちゃんが、夏の民宿にはそぐわないほどの美しさだったのが印象に残っている。改めて調べてみると、秋本祐希という女優さんだった。モデル出身だそうで、道理で美しいはずである。そういえば、反町隆史、竹之内豊、稲森いずみもモデル出身である。このころから、俳優、女優もモデル出身者が多くなり、さらに背が高く、美しくなっていった時期である。
 二人が働く民宿「ダイヤモンドヘッド」のロケセットは写真35のようなものであった。現在は写真36のように、草が生えた空き地であるが、当時の映像を元にダイヤモンドヘッドを再現してみると、赤い線のような感じになりそうだ。
 ちなみに、右隣にある白い建物は、公衆便所である。「トイレ」ではなく、まさに「便所」と表現した方がピッタリくるような、汲み取り式の古いものだ。ロケセットのすぐ横にあるのだが、写真35には、写っていない。ドラマをよく見ると、絶対にこの便所を写さないよう、カメラアングルを工夫しているのがわかる。ロケ中も風向きによっては、臭いがしたのではないかと余計な心配をしてしまう。
 もしかして、反町隆史や竹之内豊も、この古い便所を使ったかもしれないが、広末涼子と稲森いずみは、絶対使わなかっただろうな...、いやロケセットの中にもトイレを作ったのかな、などとくだらないことを考えてしまった。
 ビーチボーイズについては、地元の方の詳しいサイトがあるので、興味のある方はぜひご覧いただきたい。

 35 民宿ダイヤモンドヘッド(録画映像)     36 現在のダイヤモンドヘッド跡地と想像図
   
  話が、下品な方向に脱線してしまったが、この海岸は写真37のように、周りを緑の山に囲まれ、ちょっとしたプライベートビーチのような景観を作り上げている。ロケ地に選んだスタッフも同じことを考えたのだろう。すばらしいロケ地を見つけたものだ。いっそのこと、ダイヤモンドヘッドを再建して民宿と喫茶店にすれば、結構お客さんが来るのではないだろうかと想像してしまうが、まあ、あまり観光地化するのもどうかと思うので、今のままの静かな海岸が良いのかもしれない。
 ところで、反町隆史と広末涼子が遊んでいた岩場を、よく観察すると、茶色の丸いものがあちこちに顔を出していた。写真38は、それを接写したものだが、貝の化石に見えなくもない。しかし、どう見ても貝に見えないものも多かった。あれは何だろうか、謎である....と書いたら、ネット上で、これは「ノジュール」というものだという指摘をいただいた。「ノジュール」とは、化石や砂粒などを核として、堆積物中の珪酸や炭酸塩などが濃集沈殿しながら固まってできたもの、だそうで、要するに岩から丸く分離できるもののことらしい。

 37 跡地から見上げた布良浜           38 貝の化石?(ではなくノジュール)
   

 ロケ地とは反対側の海岸の南側には、これまた南欧風の美しい建物が建っていた。別荘だろうか。

 39 ダイヤモンドヘッド跡地遠景         40 豪華な別荘?
   

 41 別荘側から見た布良浜             42 青木繁「海の幸」ゆかりの地記念碑
   

 ビーチボーイズに別れを告げて、坂道を上がる途中に、「青木繁」という人の碑が建っていた。不肖にも、この人のことを知らなかったが、放浪生活の後、若くして逝ってしまった天才画家らしい。布良のこの地で、「海の幸」という名作を生み出したそうだ。27歳という若さでこの世を去った青木繁であるが、一人の遺児がいた。それが後の福田蘭童という音楽家である。蘭童はあの財閥の石橋家から嫁をもらったのだが、二人の間に生まれたのが、クレイジーキャッツの石橋エータローである。福田蘭童は、父に似て放蕩な人だったようで、船の上で川崎弘子という当時の有名な美人女優と強引に関係してしまい、後に責任をとって再婚している。なんとも豪放磊落な系譜である。
 失意のうちに死んだ青木繁の絵は、現在は一部が重要文化財になるほどの評価を受けている。不思議なことに、その多くは石橋美術館やブリジストン美術館に所蔵されているらしい。福田蘭童夫人が石橋家の出身だったことが関係しているのだろうか。

 閑話休題。小さな岬を回り込むと、南房総市との境界の標識がある。館山市に入る前に、南房総市を通ってきたが、再入場だ。南房総市は、合併によってできたが、館山市を取り囲むような市域になっている。逆に館山市民が外に出ようとしたら、船か館山基地の自衛隊ヘリを使わない限り、南房総市を通らざるを得ない市域になっている。おそらくこの地方の経済の中心地は館山なのだろうから、外から見ると、館山市と南房総市が合併すれば良いと思うが、いろいろ事情があるのだろう。

 43 南房総市との境界              44 ドーム?
   

 椰子の木が並んでいる。山側がジャングルパレス、海側がフラワーパークである。

 45 ジャングルパレス              46 白浜フラワーパーク
   

 47 ガラス張りの別荘              48 根本海岸遠景
   



 少し赤茶けた砂浜が弧を描く海岸が見えてきた。根本海岸である。奇岩が並んでいる。なんだか火星のような光景である。怪獣映画のロケ地によいかもしれない。

 49 海藻の山                  50 根本海岸の奇岩
   

 写真51の岩は、動物が座っているように見えるが、顔は子供の頃に見た怪獣映画に出てくるガメラそっくりである。

 51 動物に見える岩               52 根本海岸
   

 砂浜は赤茶けており、海を映さなければ火星の光景といっても違和感がない。(火星に行ったことはないが...)
 砂浜は突端の岩礁に向けて延びている。

 53 御神根島を望む               54 根本海岸の砂丘
   

 広すぎて、人がいないと何となく茫洋とした雰囲気である。この砂浜は、珍しくキャンプ場になっている。

 55 根本マリンキャンプ場            56 フラワーラインとサイクリング道路
   

 ここからまた、フラワーラインのサイクリング道路に戻る。

 57 砂取漁港                 58 砂取付近の海岸風景 
   



 59 砂取から野島崎方面を望む          60 ビーチ沿いのサイクリング道路
   

 道路と海岸の間に、サイクリング道路が続いているが、自転車で走っている人はいないので、自分専用の遊歩道のような気がして気分がいい。この何もない海岸風景は、もう首都圏ではほとんど見られなくなってしまった貴重な原風景だ。日本の海岸はどこもかしこも、浸食、防潮、津波対策ということで、コンクリートやテトラポッドで固められてしまっている。
 南房総も、漁港の周囲などにコンクリート構造物がないわけではないが、まだこれだけ、自然の海岸が残っているということは、環境保全、景観の両面で真の宝物である。よそ者の勝手な意見で、住んでいる人にとっては迷惑かもしれないが、いつまでもこの風景が見られることを願いたいものだ。

 61 はまゆう群生地               62 浜の草原
   

 63 風紋                    64 謎の棒
   

 海岸にポツンと、杭のような物が立っていた。どうも、風や気候が厳しすぎて、椰子の木が枯れてしまったものらしい。人工物であるブランコも朽ち果てて倒れているところを見ると、台風の時などは、結構厳しい気象条件なのだろうか。

 65 棒の正体                  66 ブランコ台跡 
   

 橋を渡ると、銅像があった。後ろ姿だったので、二宮金次郎かと思ったら、海女さんの像であった。同じ海女さんでも「若い」というところがこの像のポイントなのかもしれない。いや、これは私が勝手に言っているのではなく、銅像のタイトルがそうなっているだけである。おばあさんの海女さんでは、彫刻家の情熱も湧かないだろうな、などとつまらないことを考えながら歩く。

 67 長尾川と七島橋               68 「若い海女」の像
   



 69 川下漁港                  70 生け簀
   

 漁港の先の生け簀をのぞくと立派な伊勢エビが入っていた。今日のホテルの夕食になるのだろうか。珍しく、茶色い岩場が続くこのあたりは、いかにもサザエ、アワビ、伊勢エビがたくさん捕れそうである。

 71 生け簀の中                 72 川下地区の岩礁帯
   

 73 茶色の岩場                 74 海岸遊歩道(サイクリング道路?)
   

 75 島崎地区の岩場              76 名もない小さな社
   

 野島崎に近づくにしたがって、観光客も増えてにぎやかになってきた。

 77 リゾートマンション             78 不思議な岩
   

 海岸に不思議な存在感のある岩があった。昔の人も同じ思いだったらしく、写真78,79のように御神体として祀られている。野島崎の灯台がずいぶん近くに見えてきた。

 79 渚弁財天                  80 野島崎を望む
   



 81 野島崎灯台入り口              82 野島崎灯台
   

 83 灯台解説板                 84 灯台横の広場
  

 解説板からも、この灯台が昔から非常に重要であったことがわかる。灯台横の芝生広場を抜けて、岬の先端を目指す。

 85 半島から川下方面を望む          86 彫刻と灯台
   

 87 遊歩道                  88 南側から見る灯台
   

 89 房総半島最南端の地             90 灯台横の建物
   

 ついに、房総半島の最南端に到着である。どこからが房総半島かは難しいが、仮にディズニーランド、つまり千葉県に入ってからが房総半島だと考えると、11日間を要して、やっと最先端までたどり着いたことになる。長かったが、とても充実した旅であった。
 この岬には、房総半島(つまり千葉県)最南端の海が見えるベンチがあるそうだ。そこで、これまでの苦労を思い出し、感慨に耽ろうと思い、ふと上を見上げると、ベンチにはすでにはカップルの姿が.......(写真92)。
 これは当分空きそうにない。冷静になって考えれば、おじさんよりも、若い二人があそこに座って愛と未来を語るのがふさわしいだろう。ここは、二人に座ってもらって、ついでに日本の少子高齢化を少しでもくい止めてもらうよう、彼らに託すことにした。

  91 最南端の碑       92 朝日と夕日の見えるベンチ
     

 93 野島崎東側海岸               94 白浜・野島崎バス停と休憩所
   

 野島崎を回り込むと、綺麗なバス停があった。千葉へ直行の高速バスが出ているらしい。さすが南房総を代表する観光地である。

 95 リゾートイン白浜             96 野島先から東へ
   



 さらに行くと、白浜音頭発祥の碑があった。おもしろいのは、碑にちゃんと未来の大会優勝者のスペースがあることだ(写真98)。この碑がいっぱいになる2031年には、自分はまだ生きているだろうか。少なくともパソコンのキーボードは打てなくなっているだろう。

 97 白浜音頭発祥の碑             98 未来の歴代優勝者
   

 今日は、出発が早かったため、まだ、12時半である。できれば、千倉に少しでも近づきたいと思っていたが、いくつか問題点が出てきた。
 まず、疲労である。足が重い。しかも、右足の親指の付け根が痛い。次に、天候である。天気予報では、午後から雨の可能性が高いと言っていたが、ついに小雨が降ってきてしまった。最後に交通の便である。このあたりでは、バスはこの白浜を中心に出ているのだ。この先、千倉まではたどり着けないだろうから、途中でリタイヤするとバスの便が心配である。
 なんだかんだといいわけを探しながら、要するに気力が無くなったので、時間はあるがここで引き上げることにした。日東バスの時刻表を見ると、館山行きは、あと1時間後である。仕方がないので、この公園で雨宿りをしながらカメラのセルフタイマーで遊んだりして時間をつぶす。
 時間はまだ早いが、安房白浜駅に向かうことにした。

  本日の気象衛星写真 (日本気象協会 tenki.jp)
     

 99 碑の建つ海岸の公園            100 海岸をうろつく不審な中年男
   

 南国ホテルの前で、館山行きのバスが向こうから来るのを発見した。なんとJRバスも出ているのであった。時計を見ながら「しまった!」と残念そうな顔をすると、なんと運転手さんがバス停でもないのに、止まってくれたではないか。神奈川中央交通では絶対あり得ない出来事に感激してバスに乗り込む。館山までは、結構な距離であった。

 101 南国ホテル
   

 平砂浦に泊まった2日目の旅も、楽しかった。釣りやサーフィンが盛んな、自然そのままの素朴だが美しい海岸。ビーチと岩場の間に点在する小さな漁港。ドラマのロケ地として有名な布良海岸もじっくり見ることができた。
 そして、房総最南端の野島崎の灯台と海岸。南房総の観光の中心地である、観光地特有の明るい雰囲気をもった白浜。親切なバスの運転者さん。
 こだわるようだが、今度来るときは、房総半島最南端のベンチから海を眺めてみたいものだ。いや、決してあの二人をうらやましく思っているわけではないので念のため....。

 NEXT ◆第12+14日目(2008年11月14日)安房白浜〜千歳駅    

 PREV ◆第12+12日目(2008年11月2日)館山駅〜平砂浦

     ご意見・ご感想はこちらまで