北横岳 (積雪期) 標高2480m 登山開始地点標高2240m      

  自分の足で登らない山シリーズ第22弾 ロープウェイで簡単に登れる北八ヶ岳の2500m級の火山 雪山編
 
◆ 2014年3月15日

 
日本列島にも少しずつ春の気配が忍び寄り、前代未聞の豪雪であったこの冬もそろそろ終りを迎えつつある。しかし、年齢に逆らおうと陰で懸命に努力しているにもかかわらず、素知らぬ顔でテレビに出ているベテラン女優さんのように、里から登ってくる春に抵抗して、山はまだまだ冬の装いを続けている。おそらく今年最後の積雪期の山になりそうだが、今回はグッと標高を上げて標高2480mの北横岳の再訪である。



 前回訪れたのは、2012年8月26日、1年半ぶり、季節は正反対だ。前回は茅野に前泊したが、今日は日帰りである。
 あずさを降りて茅野駅に降り立つと、ものすごい人である。これが全部ロープウェイ駅に行くのかと思ったら、そうでもないようだ。間違って並んだ列は、渋の湯行きだった。ということは、1泊して天狗岳に登るのだろう。道理で本格的な装備の人が多いと思った。
 列を間違えたせいで、北八ヶ岳ロープウェイ行きのバス待ちは最後尾になったが、なんとか全員乗れた。
 標高1771mの北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅には、11時27分についた。時間的にはチョット遅いが、これが朝一番の公共交通手段なので仕方がない。懐かしい、チロル風の駅舎だ。

  1 茅野駅                      2 北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅
   

 ロープウェイはそれほど混んでいない。ロープウェイの窓から、南八ヶ岳がよく見える。今日は期待できそうだ。

  3 北八ヶ岳ロープウェイ               4 ロープウェイから八ヶ岳を望む
   

 11時56分に山頂駅についた。

  5 ロープウェイを降りる               6 山頂駅前 その1
   





 夏も素晴らしい景色だったが、冬もご覧のとおりの天国である。

  7 山頂駅前 その2                 8 山頂駅前 その3
   

 スキー・スノボのお客さんだけでなく、写真8のように、登山客も多い。それにしても、みんな本格的である。オバサンが冬用の登山靴にピッケル、アイゼンを普通に持っているなんて、すごい世の中になったものである。しかし、北横岳にピッケルが必要なんだろうか。チョット心配になってきた。とりあえず、サングラスをかけて北横岳へ向かって出発しよう。
 空は、そのまま宇宙に繋がっているように青く、雪はすべての光を反射して、いつもの2倍の光が凛と冷えた空間を満たしている。

 9 山頂駅から北横岳方面を望む


  10 坪庭へ登る                   10−2 2012年8月26日撮影
   

 坪庭に上がるときに、急な崖の道を階段で登った記憶があるが、今日は、写真10のような雪の斜面を一直線に登る。崖を雪が埋め尽くしたような光景である。しかし、写真は正直に記録しており、背の高い木は2年前と同じ位置で冬の寒さに耐えている。



 11 坪庭から山頂駅を見下ろす


 11−2 2012年8月26日撮影


 坪庭からロープウェイの駅を見下ろすと、その向こうに中央アルプスの白い峰々が...

 12 坪庭から雨池山を望む


 12−2 2012年8月26日撮影


 坪庭の象徴である溶岩の奇岩は、すっかり雪に覆い尽くされて、白い平原になっている。

  13 北横岳登山道分岐                14 北横岳ヒュッテへ その1
   

 左折して、いよいよ登山道に入る。といっても、明確な道があるわけでなく、踏み跡と登山道を示す竹の竿と赤い布が続いている。

  15 北横岳ヒュッテへ その2            15−2 2012年8月26日撮影
   

 写真15は、沢のあった谷であるが、現在は橋があったこともわからない。横に落ちたら、雪の中に埋もれてしまいそうである。



  16 北横岳ヒュッテへ その3
     

  17 北横岳ヒュッテへ その4            17−2 2012年8月26日撮影
   

 急坂を登って行くと、右手が開けて、思わず足を止めてカメラのシャッターを押した。

 18 縞枯山を望む


 19 坪庭・南八ヶ岳・南アルプス方面を望む


 20 冬と春の端境期の日差し


 ふと頭上を見上げると、枝に霧氷がついて太陽の光をキラキラと反射させていた。

  21 雨池山分岐                   21−2 2012年8月26日撮影
   

 雨池山の分岐に着いたが、夏にあった大きな岩はすっかり隠れている。標識は、新しいものに更新されているようだ。



 ここからは、少しなだらかになって、林の中を北横岳ヒュッテに向かう。夏の写真と比べると、枝の位置から、登山道には人の背の高さに近い数mの積雪があり、相当高い位置になっていることがわかる。また、見通しも断然良くなっている。

  22 北横岳ヒュッテへ その5            22−1 2012年8月26日撮影
   

 12時30分、北横岳ヒュッテに着いた。建物や手前の柱から見て、積雪量は1.5m程度だろうか。

  23 北横岳ヒュッテ                 23−2 2012年8月26日撮影
   

 温度計は前と同じだったが、温度表示の手書きの数字をマジックで書き直した事がわかる。そして、一番変わったのは赤いアルコールの表示位置である。現在の気温は−9.5℃、前回来た時は18.5℃なので、その差はなんと28℃もある。

  24 北横岳ヒュッテの温度計             24−2 2012年8月26日撮影
   



  25 北横岳山頂へ                  25−2 2012年8月26日撮影
   

 坂が急になって、雪がサラサラ過ぎて崩れるので、登るのに苦労する。つま先を蹴りこまないと登れない。

  26 大きな穴
     

 樹林帯を抜けると、一気に季節風が強くなって、冬山そのものになる。

  27 北横岳南峰直下                 7−2 2012年8月26日撮影
   



 12時46分、北横岳南峰に到着である。天気は最高だが、強風で極寒である。もちろん、座ってカップラーメンを食べている人もいない。しかし、ここからの景色は、これ以上望んだらバチが当たりそうなくらい素晴らしいものであった。

  28 北横岳南峰山頂 その1
     

  29 北横岳南峰山頂 その2             29−2 2012年8月26日撮影
   

 30 北横岳南峰から南八ヶ岳・南アルプスを望む


 31 北横岳南峰から小海方面を望む


 32 北横岳南峰の岩に着いた氷


 もはや言葉も無い。寒いのに光にあふれた、冬の北横岳の神々しい光景である。



 恐ろしいほどの風と寒さをものともしない雪のモンスター達が親衛隊のように両側に並び、真ん中の道を開けている。彼らが見守る中、一筋に続く真っ白に輝く道を歩いて、北峰へ向かおう。

 33 北横岳北峰ヘ その1


  33−2 2012年8月26日撮影
     

  34 北横岳北峰ヘ その2              35 北横岳北峰ヘ その3
   

  36 北横岳北峰山頂上 その1            36−2 2012年8月26日撮影
   

 ここも恐ろしく風が強く、寒い。ダウンジャケットを着る。だがそれがなんだというのか。何も言うことはない。ただ、この白く美しい山々の姿を目に焼き付けるだけである。

 37 北横岳北峰山頂から蓼科山・北アルプスを望む


 37−2 2012年8月26日撮影


 38 北横岳北峰山頂から南アルプス・中央アルプスを望む


 39 北横岳北峰山頂から南八ヶ岳・南アルプスを望む


 40 北横岳北峰山頂から浅間山・四阿山を望む


 それにしても、夏には蓼科山しか見られなかったが、今回の景色は聞きしに勝るものだ。蓼科山、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、中央アルプス、南アルプス、南八ヶ岳、浅間山、四阿山と、本州の中央部に位置する主要な高山がすべて見えるという驚くべき360度の展望である。



 もっと山頂にとどまっていたいが、帰りのバスの時間と寒さがそれを許さない。顔の皮膚の一部がちょっとヒリヒリする。凍傷の手前だろうか。

  41 下山 その1                   42 下山 その2
   

  43 北横岳ヒュッテ                 44 下山 その3
   

 樹林帯に入って、北横岳ヒュッテに戻ってきた。風が弱まり、絶好の休憩場所になっている。ここで、お湯を沸かしたり食事をしている人が多い。
 リーダーの声が耳に入った。雪山講習のグループらしい。「今日は、コンディションが良すぎます。こんなに条件のいい日は冬にはありません。止まっているだけで、帰りたくなるような寒さと風が普通です!!」と力説している。だとすると、冬山の練習にならない。意味が無いので、受講料を返すのかと思ったがそうでもないらしい。



   45 下山 その4                  46 坪庭その1
   

 フカフカでコケても痛くないし、体力は使わないし、暑くないし、景色はサイコー。下りは極楽である。

 47 坪庭 その2


 坪庭に着いた。

 48 坪庭から雨池山を望む


  48−2 2012年8月26日撮影
     

  49 北横岳登山道分岐                49−2 2012年8月26日撮影
   



 50 坪庭 その3


 51 坪庭 その4


  52 坪庭から降りる斜面
     

 写真52の場所は、確か立派な階段があったはずだが、今はただの雪の斜面である。

  53 雨池峠分岐点                  53−2 2012年8月26日撮影
   

 写真53はとても同じ場所だとは思えないが、今は、さすがに軽装のお年寄りはいない。



 54 縞枯山を見上げる


 

  55 山頂駅へ                    56 山頂駅前
   

 14時ちょうど、ロープウェイ山頂駅に戻ってきた。名残惜しいが、ロープウェイに乗ろう。

  57 下るロープウェイ                58 山麓駅でバスを待つ
   

 59 山麓駅付近の美しい林


  60 バスで茅野駅へ                 61 バスの車窓から見える蓼科山
   

 15時05分発のバスで茅野駅に向かう。16時20分茅野駅発、あずさ26号の9号車指定席では、定例の反省会が行われていた。

  62 茅野駅                     63 車内反省会
   

  64 甲府盆地から見える甲斐駒ケ岳と鳳凰三山     65 甲府からみる富士山
   

 甲府からでも富士山が見えるのは知らなかった。

 今日は、最高の天気だった。3月なので、厳冬期よりは暖かかったのだろう。登山用品の進歩のお陰で、寒さもそれほど感じなかった。これ以上の条件と展望は望めない、最高の一日であった。
 北横岳は、その標高と立地のわりには、危険な場所もなく、天候さえ良ければ、初心者でも楽しめる入門用雪山である。往復だけなら、東京からの日帰りも可能な素晴らしいロケーションである。冬の締めくくりとして充実した一日になった。
(本日の歩数:15777歩)            

関連サイト 北横岳 2480m 長野県南佐久郡佐久穂町/茅野市 2012年8月26日

     ご意見・ご感想はこちらまで  北八ヶ岳