草津白根山  標高2160m 登山開始地点標高2010m        

  自分の足で登らない山シリーズ第6弾      草津温泉と志賀高原の間にある2160mの活火山
 
◆ 2012年10月13日

  自分の足で登らない山シリーズの第6弾は、草津白根山である。読者の方の推薦もあり調べてみると、道路が山頂まで続いている。2000mを越える火山であるが、ほとんど歩かないでも行けるということで、このシリーズとしてはぴったりの素材だ。そして何よりも、今も盛んに噴火を繰り返している活火山だというのが興味を引く。



 ちなみに白根山はあちこちにあるので、区別するために草津白根山と呼ぶのが一般的らしい。

 交通事情を調べてみた。草津温泉から白根山行きのバスが出ている。草津温泉に行くには、JR吾妻線長野原草津口駅からバスだ。長野原草津口駅までは、在来線の特急草津に上野駅から乗るという手があるが、時刻表を調べてみると時間が遅すぎて、日帰りは苦しい。そこで、早朝の新幹線で高崎まで行き、普通列車に乗り換えることにした。

 4時起きして6時8分東京駅発のMaxとき301号に乗り込む。自由席だがさすがに空いている。今日の天気予報は晴れ。確かに関東地方平野部は晴れていたが、新幹線の車窓から北の山々をみると、雲がかかっている。嫌な予感がする。

 9時前に長野原草津口駅に着き、バスで草津温泉へ。草津温泉バスターミナルで9時55分発の白根火山行きのバスに乗り換える。標高約1200mの草津に着くと空はすでに曇っていた。

  1 東京駅のMAXとき301号              2 草津温泉バスターミナル
   

 バスは山道をグングン登って、白根火山バス停に着く。「白根山」とか「白根山山頂」ではなく、「白根火山」というバス停の名前が只者ではない。今にも噴火しそうなバス停である。10時28分、標高はすでに2010mもある。
 本来なら、青空の下に白根山と本白根山の山頂がすぐ近くに見える、というのを想像していた。しかし、現実はバス停はミルク色の霧で覆われていた。しかも、異常に寒い。予想外である。まずレストハウスに入って、服を着て手袋をつける。それにしても深い霧だ。本白根山に行く予定だったが、これでは道に迷って遭難してしまう。凍えそうなので、とりあえず、建物の中に入って様子を見るが、小雨まで降ってきた。
 今日の天気予報は晴れだが、やはり高山の天候は違うのだ。甘く見てはいけない。

  3 白根火山バス停                  4 白根山標識
   



  5 レストハウス                   6 湯釜方面立入禁止
   

 しかも悪いことに、湯釜方面の道は火山活動のため閉鎖されていた。今日は、青く輝く湯釜を見ることはできないだろう。がっかりである。気温を測ってみたら6℃しかなかった。平地の真冬並みである。30分ほど待っていたら、写真8のように少し霧が晴れてきた。

  7 気温計                      8 霧が晴れた
   

 せっかく来たので、とりあえずダメ元で展望台まで行ってみることにする。白根山山頂の斜面は少し紅葉が始まっていた。晴れていたら素晴らしい景色だろう。火山だからか高山だからかわからないが、樹木はほとんどなく、森林限界を超えているようだ。

 9 白根山展望台へ その1


 展望台への道は舗装されて、ハイヒールOKである。実際殆どの人は普通の格好をしている。入口にはストックがおいてあり、無料で貸してくれるようだ。

  10 無料ストック                  11 白根山展望台へ その2
   

 湯釜の西側にある展望台は、2160mの山頂の直下になる。多分標高は2130m程度だろう。つまり、車できても100mの標高を舗装された遊歩道で登れば山頂付近まで来ることができる、究極に楽ちんな山である。

  12 山頂直下                    13 火口展望台標識
    

 とにかく風が強い。霧の晴れ間の一瞬に湯釜を撮った。青白く怪しく光っているのが、噴火口にお湯が溜まっている湯釜である。天気が悪くて手前の紅葉が暗く沈んでいるのが残念だ。

 14 展望台から湯釜を望む


 上の写真は湯釜だけが浮き出るように光っているが、別に写真を加工しているわけではない。雲の切れ間から差す光がたまたま湯釜を照らした一瞬である。あそこからいまにもゴジラが出てきそうな不気味さだ。

 湯釜に溜まっているお湯は、pHが1.0という強酸性である。濃硫酸そのものだ。多分死体を投げ込んだら骨まで溶けて、完全犯罪が成立するに違いない。ただし、死体を捨てるときに硫化水素ガスで自分も死ぬ可能性が高いので、全国の殺人犯の方々には絶対に悪用しないようにお願いしたい。犯人の死体も溶けてなくなったら、事件は迷宮入りになって警察が困るからである。しかしよく考えてみると、死体がなれければ、そもそも単なる失踪事件になるので警察はかえって楽になるかもしれない。
 温度は沸騰しているわけではなく、普段は18℃、気温より10〜12℃高いだけらしい。もちろん噴火したら高温になるのだろうが。青白い色は、多分硫黄とアルミニウムと鉄の色だろう。



  15 遊歩道から弓池と逢ノ峰を見下ろす
   再びレストハウス前の駐車場におりてきた。

 16 弓池


 霧が少しだけ晴れて、弓池がその美しい姿を現した。ここも昔は噴火口だったのだろうか。
 さて、天候と時間の関係で、今日は本白根山方面を諦め、心に秘めておいたもう一つの目的地に向かうことにする。それは、渋峠である。渋峠へは、国道292号線をたどるが、距離が6kmほどあるので、まず、その手前の山田峠を目指すことにしよう。山の尾根をかすめながら道は続いている。もちろん、歩いている人など一人もいない。

 17 山田峠へ その1                 18 万座スキー場のリフト?
   

 19 森林限界を超えた山々

 20 山田峠へ その2
  木のない山をどこまでも歩いていく。

 21 火山情報掲示板




 22 山田峠付近から東、芳ヶ平方面の谷を望む


  23 山田峠                    24 山田峠標識
   

  標高2050mの山田峠についた。何もない、誰もいない、天気も悪い、冷たい強風が吹き荒れる、長居したくないような寂しい峠である。昔の街道がここを越えていたのだろうか。

 25 山田峠から西の谷と笠ヶ岳を望む

 道はここから少しずつ標高を上げながら渋峠を目指す。

  26 渋峠へ その1                 27 国道292号線と白根山遠望
   

  28 国道最高地点を望む

 国道の標高最高地点は渋峠ということになっているが、実際はその手前らしい。国道はゆるやかにカーブして登りながら、その頂点が肉眼でも判るようになってきた。

  29 国道最高地点へ                 30 国道最高地点
   

 13時5分、我が国の国道の最高地点、国道292号線が標高2172mに達した地点に今、こうして立っている。ちょっとした駐車スペースがあり、車やバイクが停まっている。立派な標識もあり、結構有名なところなのかもしれない。今日は天候が悪かったが、ここだけはぜひ来たかった場所である。2つめの目的を達成することができ、心は晴れ晴れしたが、なぜか実際の天候もいつのまにか青空が見えてきた。

  31 国道最高地点標識                32 国道最高地点解説文
  

 このシリーズの3回目で北八ヶ岳を訪れた時に、国道で2番めの標高を誇る麦草峠に行ったが、実は、その時に違和感を感じていた。私の記憶では、麦草峠が国道で最高地点だと思っていたからである。昔、車かバイクか忘れたが、通った時も確かにそう認識していた。そこで、国道292号線と渋峠のことを調べてみると、意外なことがわかった。この道は、以前は志賀草津道路という有料道路だったのである。国道になって無料化されたのが、1992年のこと。つまり、それまでは麦草峠が国道で一番標高が高かったのである。謎が解けた。
 標高2360mの大弛峠、2172mの渋峠、2127mの麦草峠と、2000m超級の日本車道3大峠(そんなものがあるのか?)を征服した今、私にとって恐れるに足る道はないのである。(誇大妄想気味)

 33 国道最高地点から白根山を望む


 34 国道最高地点から草津温泉方面を望む


 渋峠付近は笹原の中に針葉樹がところどころに生えており、高山の森林限界ギリギリという感じだ。東側の眺めは素晴らしい。しばらく景色を楽しんだ後、渋峠へ向かう。

  35 国道最高地点付近の森林             36 渋峠へ
   



 ゆるやかに下って、13時17分に渋峠に到着した。写真38の標識には標高2172mと書いてある。これはヘンである。国道最高地点にも2172mと書いてあったはずだ。そこからこの渋峠までは間違い無く下っているので、どちらかが嘘を書いていることになる。しかし、これは、上の地形図を見ればすぐ解決する。ここ、渋峠の標高は正しくは2152mである。写真38や40が間違っているのである。

  37 渋峠                      38 渋峠バス停付近
   

  39 渋峠ホテル                   40 渋峠の志賀高原入口標識
   

 ここは、群馬・長野県境でもあるのだが、その境界線上に建っているのが、テレビなどでも時々紹介される渋峠ホテルである。泊まるときは、どちらの県側に泊まるのか選べるのだろうか。会社によっては、県内と県外とでは落とせる経費が違ってくるかもしれない。長野県はここから志賀高原のエリアになる。

 さて、この渋峠の上にはさらに山がある。横手山である。山頂の向こうにはまさに青空が広がっている。今日は、天候に泣かされてきたので、青空に憧れる気持ちが抑え切れなくなってきた。しかし、バスで白根火山まで戻らないと、今日中に帰れなくなる。バスの時刻である14時8分まで、残された時間は40分である。リフトの係の人に聞くと山頂まで往復で30分だそうだ。頂上に滞在できる時間は約5分である。迷っている暇はない。1400円払って、リフトに飛び乗る。

  41 横手山リフト                  42 横手山山頂
   

 リフトに乗っていても、やたらと風が強くて寒い。フリースを着ないと耐えられない寒さだ。震えながら冷えきった体で頂上に立つ。トイレに行って、フリースを着こむ。寒いわー、などと言いながらのんびり歩く観光客をかき分けて、展望台に駆け上がり、写真を撮ったらもう時間がなくなっていた。



 43 横手山展望台から北方向、千曲川、苗場山を望む


  44 展望台から笠ヶ岳方面を望む           45 展望台の横手山山頂標識
   

  46 展望台から万座方面を望む
  標高は標識では2305m、地図では2307mである。

 47 展望台から山頂ヒュッテと赤石山方面を望む

 実は、この横手山は初めてではない。昔、志賀高原にスキーに来た時にリフトで登っているはずである。もちろん冬だったので、印象は全く違う。

 時間が切迫しているので、急いでリフトに乗って渋峠まで戻り、定刻より数分遅れたバスに乗り込む。自分の足で歩く必要がなく、寒さもしのげるバスのありがたみを噛み締める。車窓からの景色も素晴らしかったので、窓越しに写真を撮った。晴れているにもかかわらず、道路際にあった電光掲示板の気温計は、4℃と表示されていた。平地の真冬並みである。

 48 バス車窓から白根山を望む


 49 白根山の紅葉


 50 白根山山腹の草原


  51 万座への道を見下ろす              52 白根火山バス停に戻る
   

  53 バスで草津温泉へ
      

 54 武具脱の池


 草津温泉でバスを乗り換えて、長野原草津口駅に戻ってきた。普通列車に乗り、高崎から新幹線に乗って帰京した。
  55 長野原草津口駅                        
   

 天候は今ひとつだったが、白根火山の直下まで伸びる山岳道路を堪能した一日であった。読者の方に教えていただいたのだが、本当にほとんど歩く必要もなく簡単に山頂付近の火口湖に行ける。この白根山、立入禁止区域があったり、避難シェルターがあったりと、まさに活火山である。そのおかげで、草津や万座、志賀といった日本有数の大温泉地が形成されているのだろう。
 そして、日本の国道最高地点・渋峠は、すでに秋とはいえ冷涼な高山の雰囲気が漂う、素晴らしいところであった。
 夏の避暑に始まった「自分の足で登らない山シリーズ」の第6弾は、もう冬の足音がすぐそこに聞こえる標高2000mを超える活火山と峠が、道路と車という文明の利器によって誰でも簡単に味わえる旅であった。

(本日の歩数:18376歩)
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