三原山 (伊豆大島)   自分の足で登らない山シリーズ第32弾   
               東京都にあるバリバリの活火山 標高758m
 
◆ 2018年6月1日

  久々の自分の足で登らない山シリーズである。今回は、東京都内の山になる。東京都の代表的な山というと、奥多摩や高尾山を思い浮かべるが、今回はバリバリの活火山だ。東京の活火山、そう、伊豆諸島である。日本列島でも有数の活発な火山で、三宅島や大島の噴火は記憶に新しい。というわけで、伊豆大島の三原山に登ろう。




 大島へ行くには、東京都心からだと飛行機か船になるが、神奈川県から行く場合は、熱海から海を渡るのが便利である。ということで、調べてみると、意外と運賃が高い。季節によって変動するらしいが、片道で4520円もする。ところが、ネット上で割引チケットを見つけた。なんと、往復で、3500円である。いくらなんでもディスカウントしすぎだが、まあ、利用者にとってはありがたいのでさっそく予約した。元の料金がボッタクリなのだろうか。

 天気も上々、熱海駅前からバスで熱海港へ移動する。歩いても行ける距離だが、乗り遅れてもいけない。

  1 熱海駅前バスターミナル              2 熱海港
   

 熱海港の東海汽船ターミナルは、けっこうローカルな感じで、地元の人、釣り人や若者がくつろいでいる。初島行きの船もここから出港していた。

  3 初島行きの船                   4 大島行きジェット船
   

 乗るのは、ボーイング929だ。と書くと驚く人も多いと思うが、事実なので仕方がない。といっても飛行機ではなく、ジェット船である。ボーイングが軍事用に開発したジェットエンジンで進む船で、時速80kmも出るらしい。ボーイングの設計だけあって、写真5のように、船内の雰囲気も座席も飛行機そっくりである。出港すると、飛行機の離陸と同様、船体が水上に浮くのであるが、その時は、シートベルト着用、トイレ使用不可になるところも、飛行機そのものである。

  5 船内 
     

 飛行機の弱点として、バードストライクがあるが、同様に、この船の欠点は、速すぎることだ。海上に浮かんでいるものとの衝突事故が結構あるらしい。特にクジラとぶつかることが多いようだ。

新聞報道を見つけたので紹介しよう。

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毎日新聞2016年2月13日 19時47分(最終更新 2月13日 19時55分)

13日午後1時ごろ、神奈川県小田原市酒匂の海岸にクジラの死骸が漂着しているのが見つかった。同市環境保護課と県立生命の星・地球博物館によると、全長15メートルのマッコウクジラで、背びれと尾びれに鋭利な切断面があった。6日朝に大島沖で東海汽船の高速船とクジラが衝突する事故があり、その死骸が漂着した可能性が大きいとみられている。環境保護課は15日に関係者と協議して、対応方法を決める。【澤晴夫】
                    
                      小田原の海岸に漂着したマッコウクジラ=2016年2月13日午後2時45分ごろ、澤晴夫撮影
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 熱海港を9時10分に出港し、伊東港に寄っても十分速いこの船は、クジラにぶつかることもなく、10時15分に大島元町港に無事到着した。

  6 元町港

     

  7 元町港ターミナル                 8 元町港前
   

 元町港から、三原山行のバスに乗り、10時54分に山頂口バス停に到着した。ここは、外輪山の上にあたり、これより内部はカルデラになる。標高は約560mである。

  9 三原山頂口バス停                 10 外輪山警備派出所
   

 派出所があるが、活火山なので安全が保証されているわけではない。御嶽山のような事故が起こっても、あくまで自己責任であり、その確率はゼロではない。此処から先は逃げ場がないだろうから、覚悟を決めなければならない。



 11 三原山の歴史解説板


 ここから、雄大な火山と変化し続ける自然、そして、幾筋かの溶岩流の爪痕がはっきりわかる。1986年の噴火の時の溶岩流である。この時は、3箇所の噴火口が爆発したが、正面に見えるのは、従来からある中央の火口(A火口)からの溶岩がカルデラ内に流れ出た跡だ。それ以外の場所は、大きな木はないが、かなり緑が復活している。

 12 山頂口から中央火口丘を望む




 今日は日帰りで、バスと船の時間があるので、時間的制約がある。下図のルートを想定した。ここから、中央火口丘に登り、火口を一周して、裏砂漠を横断して大島温泉ホテルに至るルートである。


                        
出典 https://oshima-navi.com/geopark/mihara_trek.html

 中央火口丘への道は、よく整備されている舗装道路で、登山道のワイルドさはないのが残念である。スニーカーでも全然大丈夫だ。

 13 火口展望台へ その1


  14 火口展望台へ その2              15 溶岩流先端部
   

 トンネルのようなものがある。シェルターだろうか。写真15のここが、A火口から溢れた溶岩の到達点である。

 16 溶岩流解説板


 もう30年以上経っているが、まだ結構生々しい。と言っても溶岩はもう十分冷えているが。

  17 溶岩流先端部の溶岩 その1           18 溶岩流先端部の溶岩 その2
   



 19 火口展望台へ その3


  20 火口展望台へ その4              21 溶岩流の跡
   

 中央火口丘までは、100mちょっとの登りで、舗装されており、登山というほどのものではない。

  22 火口展望台へ その5
     

 上から見ると1986年の溶岩の流れがよく見える。

 23 登山道から外輪山、山頂口を望む


 車が停まっていた。もちろん一般車ではなく、気象庁伊豆大島火山防災連絡事務所と書いてある。と言っても、噴石に耐えられるような特別の装甲が施してあるわけではなく、普通のSUVである。

  24 気象庁の車両                  25 火口展望台へ その6
   



 火口の周囲は平になっており、火口原といった感じである。溶岩が溜まって、ここから溢れ出したわけだ。

  26 アグルチネート                 27 三原神社
   

 28 アグルチネート解説板


 火口を一周するコースは、2.5kmの道のりだ。

  29 案内板                     30 火口展望台へ その7
   

 31 伊豆半島・山頂口・溶岩流


 11時40分、展望台についた。かなり頑丈そうな建物で、いざという時はシェルターとしての機能を果たすのではないだろうか。簡易トイレもあった。

  32 火口展望台                   33 火口一周 その1
   



 活火山であり、住民もたくさん住んでいるので、観測体制は充実しているようだ。

  34 地殻変動観測施設                35 火口一周 その2
   

 ここまで順調なので予定どおり反時計回りに一周しよう。西側には伊豆半島が横たわっている。

 36 火口西側から伊豆半島南部を望む


 西から南に回り込んでいくと、大島より南にある伊豆諸島がよく見えた。

 37 利島・新島・神津島を望む


 火口の西側に当たるここは、ものすごく風が強い。とはいっても、写真には写らないので雑草を撮った。吹き飛ばされないように、体を低くして歩く。

  38 強風                      39 火口一周 その3
   



  40 火口一周 その4
     

 風が強いだけでなく、荒涼とした風景で誰も歩いていないので、少し寂しくなる。南側の海岸も見えた。実は、この孤独感、最果て感が大好きだ。たまらない。結構やみつきになるものである。

 41 間伏海岸を望む


 42 北方向を振り返る


 北側の火口原は表砂漠と呼ばれているが、1986年の噴火では、溶岩流は流れなかったようで、緑がかなり再生している。

 43 表砂漠


 火口の南側に一段と高まったところがある。ここは、地図では三原新山となっている。

  44 火口一周 その5                45 火口一周 その6
   

 三原新山の南の高まりを越える。



  46 地殻変動観測施設
     

 47 中央火口(火孔)解説板


 ここからは、火口がよく見えた。間近に見えるので、ものすごい迫力である。むき出しになっている地球の本当の姿を目の前にして、畏怖の念、感動すら覚えるほどだ。1986年の時は、ここは恐ろしい光景だっだろう。

 48 三原山火口


  49 火口一周 その7                50 火口一周 その8
   



 白い噴気が上がっている。

 51 火口原と外輪山


 外国人の男性と日本人女性のカップルとすれ違ったので、この先の火口だけはぜひ見るように話しておいた。

 52 火口周囲


  53 地殻変動観測施設                54 最高地点高度
   

 このあたりは剣ヶ峰といい、標高は749mである。高度計は19mの誤差があった。



 55 火口一周 その9


 こちら側からだと火口の中はあまり見えない。やはり、写真48の場所が最高だ。

 56 南東側から見る火口


 57 どこまでも広がる裏砂漠


 58 B火口解説板


 右手に、割れ目噴火のあったB火口が見えた。A火口が噴火したのが、1986年11月15日だが、11月21日には、このB火口で、割れ目噴火が始まった。溶岩は北方向、つまり裏砂漠、大島温泉ホテル方面に流れ出したようである。

 59 B2火口




 大島温泉ホテルルートの分岐についた。時刻は12時17分である。時間を計算すると少し余裕があるので、一周してついでに火口見学道に行ってみることにした。

  60 大島温泉ホテルルート分岐            61 溶岩の柱の中を進む
   

  62 火口展望台へ戻る                63 火口見学道入口
   

 A火口に向かう見学道に入る。しかし、こちらから見る火口は、写真48の地点ほど迫力はなかった。やはり、火口を見るなら、1周コースをお薦めしたい。

  64 火口見学道                   65 火口見学道終点から火口を望む
   

 12時46分再び大島温泉ホテルルート分岐点に戻ってきた。今度は左折して、裏砂漠へ進んでいく。

  66 大島温泉ホテル入口                67 大島温泉ホテルルート その1
   



 68 裏砂漠から外輪山越しの伊豆半島を望む


 69 大島温泉ホテルルート その2


  70 大島温泉ホテル その3             71 大島温泉ホテルルート その3
   

 こちらのルートは、人が少なく、舗装もされていない溶岩のままの歩きやすい道である。周囲の景色も荒々しい感じの溶岩の景観で、おそらく、B火口から流れ出た溶岩流の跡ではないかと思う。樹木はないが、若木が少しずつ育ち始めていた。

  72 樹木の再生
     



 73 溶岩の奇景


 これだけ広大で荒涼とした景色は、なかなか日本では見られない景色である。

  74 大島温泉ホテルルート その4          75 テキサスコース分岐
   



  76 大島公園方面標識
     

 77 植物の再生解説板


 78 大島温泉ホテルルート その5


 左手に低い外輪山が水平に伸びている。

  79 大島温泉ホテルルート その6              80 どこまでも続く溶岩
   

 アグルチネートなのだろうか。人の背より高い大きな溶岩の柱が立っている。

  81 溶岩越しの三原山                82 溶岩の柱
   



 はるか向こうの外輪山に見えるホテルに向かって、気持ちの良いほど一直線の道が伸びている。

  83 大島温泉ホテルルート その7           84 大島温泉ホテルルート その8
   

  85 大島温泉ホテルルート その9          86 標識
   

 段々と樹木が多くなってきた。

  87 大島温泉ホテルルート その10         88 大島温泉ホテルルート その11
   

 ついに写真88の場所からは、樹林帯に入る。



 温かい島特有の広葉樹の森である。

  89 大島温泉ホテルルート その12         90 大島温泉ホテルルート その13
   

  91 大島温泉ホテルルート その           92 つつじ園入口
   

 つつじ園についた。外輪山の麓になる。

 93 案内板


 13時41分、裏砂漠を抜けて無事大島温泉ホテルに到着した。久しぶりの人里にホッとする。

  94 大島温泉ホテル                 95 大島温泉ホテル駐車場地層
   

 96 大島温泉ホテル地層解説板




 地層を見学して、ふと駐車場をみると、全部軽自動車、それも品川ナンバーである。ホテルの従業員専用駐車場かと思ったが、レンタカーもあった。考えてみれば、道は狭く、高速道路もないのだから、島内観光は軽のレンタカーで十分だろう。

  97 大島温泉ホテル駐車場              98 三原山温泉バス停
   

 バスの出発時刻は、14時17分なので、少しバス停で待つ。行き先は、未定である。そんなバカなと思うかもしれないが本当だ。
 正確には出港地行きである。風向きや波の状況によって、元町港か岡田港かが決まるので、どこに行くかはその日の気象状況によるわけだ。
 バスの行き先は風まかせというのも、面白い。今日は天候が安定しているので、行き先は元町港である。

 ちなみに、バス道路からかなり奥に入ったところの山腹に、C火口があるが、レンタカーかタクシーでないと行きにくい位置にある。この火口は、元町の上にあり、その溶岩が元町市街地まであと数百メートルに迫ったことから、1986年の噴火では、全島民が島から避難するという事態になった。
 私は、当時、海の見えるマンションの8階に住んでいたが、ドーンという噴火の音と、相模湾に浮かぶ大島に真っ赤な溶岩が縦に噴水のように噴出して、夜空を赤く染めていた衝撃的な光景をはっきりと覚えている。それが、自宅から見えるということが信じられなかった。
 あの噴火は、明らかに割れ目噴火であった。B火口かC火口か、どちらだったのだろう。どちらにしても、大島島民にとっては、もう逃げるところはない、切羽詰まった状況だったのである。当時の映像いくつか残っている。

 バスは、14時35分に元町港に着いた。最終便熱海行きの出港時間は、16時25分、少し時間があるので、海に面した温泉に行くことにしよう。浜の湯である。

  99 元町浜の湯へ                  100 元町浜の湯入口
   



 浜の湯は、素朴な温泉だ。が、受付で前の人が水着を借りているのをみて、驚いた。混浴、水着着用なのである。しまった、と思ったが、前の人に倣って、おそるおそる水着を借りたいというと、すんなりと貸してくれた。なんと、無料である。

  101 元町浜の湯
     

 近代的な日帰り温泉のイメージを抱いていたが、全てが想像と違っていた。簡単に言うと地元の人のための素朴な公衆浴場といった性格の施設らしい。料金が300円なのも納得である。

 平日なので人も少なく、お風呂の写真まで撮ることができた。下の写真を見ていただければわかるが、これ以上の開放感があるだろうか、というほどの素晴らしい露天風呂である。夕日の時間であれば、空が真っ赤に染まるのだろうが、残念ながら今日中に帰らなければならない。しかし、船が出るまでまだ時間はまだたっぷりあるので、心ゆくまで楽しませてもらった。

 102 元町浜の湯露天風呂


 ゆっくりと海辺の温泉に浸かり、さっぱりしてから、元町港に戻る。東京行きと熱海行きの船が出るので、ターミナルは結構混んでいる。風呂上がりの缶ビールがうまい。
 やがてアナウンスが有り、16時25分、熱海行きのボーイング929は定時に元町港を出発した。

  103 元町港に別れを告げる             104 ジェット船に乗り込む
   

 熱海港に17時30分に到着した。バスで熱海駅に移動して、東海道線に乗れば、神奈川県はすぐである。俺の家も近い....

 島、活火山という、いつもの登山とは異なる要素が新鮮な体験であった。まさに生きている火山、荒涼とした砂漠、そして何度焼かれてもたくましく再生する植物、火山島の悠久の歴史は今も続いているのである。

(本日の歩数:22385歩)                        

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