滑 川 探 訪             

 古都鎌倉を流れ、由比ヶ浜に流れ出る風情あふれる小河川
◆2009年7月12日

 今日訪れる滑川(なめりがわ)は、小さな河川であるが、ただの川ではない。その価値は、古都鎌倉を流れているということにつきる。鎌倉の北東の山間に源を発して、若宮大路をかすめて由比ヶ浜に注ぐ全長5.6kmの河川だが、地理的スケールはともかく、歴史的なスケールは大きい川である。鎌倉を訪れる人が誰でも目にする由比ヶ浜に注ぐ滑川の源流はどうなっているのか、この目で確かめるとともに、古都を流れる川の風情を楽しみたい。
 鎌倉駅に降り立つ。天気は曇りだが、この季節に晴れるととんでもなく暑いので、良しとしよう。

 1 鎌倉駅                        2 若宮大路の街角
   



 若宮大路を海へ向かうと、視界が開ける。由比ヶ浜である。滑川の標識の先には、木製の仮設橋があった。海水浴シーズン限定だろうが、なぜか心が和む橋である。

 3 河口の滑川の標識                   4 河口の木橋
   

 河口は写真5のとおり、淡々と海に流れ込んでいるが、その上流では、子供たちが実に楽しそうに遊んでいた。

 5 河口                        6 河口に遊ぶ人々
   

 国道134号線は、滑川橋で川を越える。この橋から見る上流側は、古都の雰囲気はあまり感じられない。むしろ、海側のリゾートとしての景色が記憶に刻まれる。

 7 滑川橋から上流を望む                8 海岸橋から下流を望む
   

 次の橋は警察署近くの海岸橋である。このあたりは、鎌倉らしく、落ち着いた住宅街となるが川沿いの道はない。

 9 海岸橋から上流を望む                10 材木座の住宅街
   

 11 材木座1丁目付近その1              12 材木座1丁目付近その2
   

 コンクリートで固められた味気ない川であるが、緑が比較的多いのが救いだ。街中にも関わらず、白サギを発見したのも自然が残っている証拠だろうか。

 13 材木座1丁目付近その3              14 逆川合流地点
   

 ここで大町方面から流れてくる逆川と合流する。

 15 上河原橋から逆川上流を望む            16 風情のある店先
   



 川は再び若宮大路に近づく。ここに架かる閻魔橋は、古都らしい大仰な名前であるが、かつて荒井閻魔堂という寺院があったかららしい。

 17 閻魔橋から下流を望む                18 閻魔橋から上流を望む
   

 川沿いの道がないので、若宮大路を歩くと、琵琶橋という場所に出た。この橋は、滑川の支流の佐助川に架かる橋である。しかし、よほど注意して歩かないと見落としそうな小さな橋だ。

 19 琵琶橋(佐助川)から滑川合流地点を望む      20 琵琶橋
   

  21 琵琶橋解説板
     

 次の橋は、延命寺の隣にあるので延命寺橋というらしい。これはわかりやすい名前だ。川は相変わらず緑が多く、水も比較的澄んでいる。

 22 延命寺橋から下流を望む              23 延命寺橋から上流を望む
   

 24 大町橋から下流を望む近              25 大町橋から上流を望む
   

 横須賀線と平行して架かるのが、大町橋である。鎌倉駅にも近く、観光地らしい賑やかな雰囲気が漂う。映画 Back to the Future でリビアのテロリストが使っていたワーゲンのワゴン車は、ここではアイスクリーム屋さんである。この映画では、マイケル・J・フォックスのガールフレンドがかわいかった。

 26 大町橋と横須賀線                 27 移動アイスクリーム屋
   

 支流に架かる小町橋を通って下川橋に向かう。

 28 小町橋から滑川側を望む              29 小町の店先
   

 30 下川橋から下流を望む               31 下川橋から上流を望む
   



 夷堂橋にでた。正面には、お寺の門が見える。石標によると、この橋は鎌倉十橋の一つらしい。

 32 夷堂橋                      33 夷堂橋から下流を望む
   

 34 本覚寺                           35 夷堂橋標
      

 橋の周りは写真のとおり古都らしい雰囲気で、鎌倉らしさ全開である。

 36 本覚寺前の茶店                  37 夷堂橋から上流を望む
   

 本覚寺の反対側には、妙本寺がある。古都を流れる川の本領発揮である。

   38 妙本寺解説板
     

 山門の隣にある六角形の建物は、お寺の宿坊か何かと思ったが、よく見ると幼稚園である。名前も比企一族と地名にちなんでおり、これほど歴史を感じさせる幼稚園も珍しい。

 39 妙本寺山門                    40 比企谷幼稚園
   

 たしかに、この古色蒼然とした建物の横には遊具があり、この建物が間違いなく幼稚園であることを証明している。

 41 園庭                       42 妙本寺参道
   

 次は、琴禅橋という美しい名前の橋である。子供が乗る人力車に出会った。鎌倉ならではの光景である。個人的には、子供は人力車に乗せるべきではないと思うが....。

 43 琴禅橋                      44 琴禅橋から下流を望む
   

 この橋の周辺は、落ち着いた高級住宅街で、川の緑も写真のとおりなかなか美しい。

 45 琴禅橋から上流を望む               46 日蓮上人辻説法跡
   

  47 辻説法跡解説板
    

    48 妙隆寺解説板
    

 川沿いの道がないので、街道沿いを歩くと鎌倉らしい旧跡が続いている。



 行き止まりの小径にはいってみると、住宅街の中を流れている滑川を見ることができた。

 49 小町3丁目の小路                      50 49の突き当たり
      

 橋の袂に落ち着いた喫茶店のある、東勝寺橋に出る。川と緑と周囲の調和がすばらしい静かな場所である。アーチ橋ということだが、橋の上からはその形は見えない。
 このあたりの河床は、川の名前の由来にもなった滑らかな岩盤が露出している。

 51 東勝寺橋横の喫茶店                52 東勝寺橋から下流を望む
   

  53 東勝寺橋解説板
    

 54 東勝寺橋から上流を望む              55 宝戒寺橋から東勝寺橋を望む
   

 上流の橋から、東勝寺橋のアーチを見ることができた。

 56 宝戒寺橋から上流を望む              57 小町3丁目付近
   

  58 紅葉山やぐら解説板
     

 このあたりは、鎌倉幕府の実権を握っていた執権、北条氏ゆかりの地らしい。

 59 紅葉山やぐら                   60 大御堂橋
   

 61 大御堂橋から下流を望む              62 大御堂橋から上流を望む
   



 ここで、二階堂川が合流する。

 63 荏柄天神社の鳥居と参道               64 歌の橋から二階堂川上流を望む
   

 犬懸橋の名前の由来は、関東管領である犬懸上杉氏の屋敷があったからだそうである。犬懸上杉氏は滅亡するが、一族である山内上杉家は、戦国時代に小田原北条氏に駆逐され、関東から追い出された後、越後の長尾家を頼った。そして、上杉家の関東管領職を譲られたのが、あの「長尾景虎」改め「上杉謙信」である。最後の関東管領であった謙信は、残念ながら北条氏を滅ぼして関東を奪還することはできなかったが、関東管領に就任した際には鶴岡八幡宮に参拝している。

 65 犬懸橋から上流を望む               66 犬懸橋から下流を望む
   

 このあたりは、街道沿いの何でもない川にしか見えない。

 67 浄妙寺3丁目付近                 68 飲食店の私橋
   

 69 廣瀬橋から下流を望む               70 華の橋
   

 華の橋の名前の由来は、コレがあったからだそうである。

 71 華の橋から下流を望む               72 華の橋から上流を望む
   

 73 華の橋付近の人力車                74 街角のカフェ
   

 ここの人力車には、白人の夫婦が乗っており、なかなか絵になっている。川の水量はやや少なくなった。

 75 青砥橋から上流を望む               76 虹の橋から下流を望む
   

 77 虹の橋から上流を望む               78 西泉水橋から上流を望む
   

 79 二ツ橋から上流を望む               80 川面のカモ
   



 81 明石橋                      82 明石橋から下流を望む
   

 83 十二所バス停付近の橋から下流を望む        84 もりと橋から上流を望む
   

 このあたりは、十二所といい、低い山並みが近づいてくる。

 85 十二所神社付近                  86 十二所に架かる小さな橋
   

 87 86の橋から下流を望む              88 86の橋から上流を望む
   



 谷戸の入り口で、朝比奈切り通しと鎌倉霊園からの流れが合流し、滑川となっている。地図上では鎌倉霊園の流れが長いようなので、一応そちらを本流として、遡ることにする。

 89 県道204号線から見下ろす滑川          90 鎌倉霊園から落ちるコンクリート滝
   

 鎌倉霊園は写真のとおり、公園のような美しい墓地公園である。しかし、滑川源流の自然は、完全に破壊され、ごらんのように直線的なコンクリートの溝となっている。

 91 鎌倉霊園 その1                 92 鎌倉霊園内の源流 その1
   

 93 鎌倉霊園内の源流 その2             94 霊園事務所
   

 霊園の事務所には人があふれ、ちょうど高速道路のサービスエリアのような雰囲気である。土地柄、きっとこの墓地には有名人も多く眠っていることだろう。

 95 鎌倉霊園 その2 


 写真95のどこまでも続く整然と並んだ墓標をみて、何とも言えない気持ちになった。人の一生という限られた短い時間と、延々と続く人の営みを美しく切ないと感じる気持ち、そして、古都の谷戸の自然をこれだけ完全に破壊してしまった人間の欲、業の深さを考えさせられる気持ちが入り乱れ、複雑な心境である。

 96 鎌倉霊園 その3                 97 鎌倉霊園内の源流 その3
   



 コンクリートの源流では、最後に水を見たのは写真97の地点である。写真99では、コンクリート溝は乾燥している。したがって、この地点が滑川の最初の一滴ということになる。何とも味気ない結末であった。地図上の予測では、霊園のさらに上流の谷から流れていると考えていたのだが...。

 98 鎌倉霊園 その4                 99 鎌倉霊園内の源流 その4
   

 霊園の北端で川は二股になっている。写真100が西側、101が東側の川である。残念ながら水は流れていない。おそらく雨が降ればこの上が源流になるのだろう。

 100 鎌倉霊園内の源流 その5            101 鎌倉霊園内の源流 その6
   

 古都を流れる滑川の源流は、以外にも霊園内のコンクリート溝であった。朝比奈峠側の支流の方が源流らしいのかもしれない。 

 102 鎌倉霊園からみた空               103 鎌倉駅ホームから
   

 滑川は典型的な都市河川の割には、緑の多い川である。途中には、鎌倉の隠れた魅力を感じさせる風景も数多く、なかなか楽しい行程であった。惜しむらくは、古都を流れる川という視点からの観光資源としての活用がされていないのが残念である。抜群のロケーションを生かした川沿いの散策ができる道も少なく、何とももったいない感じがした。緑と調和した河川内の歩道を整備すれば、人気スポットになることは間違いないと思う。そんなことを考えながら、鎌倉駅のホームで横須賀線に乗った。
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