新崎川 探訪

箱根外輪山を源流として、幕山を経て、湯河原海岸で相模湾へ
2008年2月24日 河口(湯河原町中央・吉浜)〜源流(湯河原町吉浜)


 神奈川県の最西端、湯河原町に来た。この町は、温泉郷としてあまりにも有名である。今日は久しぶりにゆっくりと温泉に入りに来た...わけではない。
 この企画では、神奈川県の川を次々と制覇しているところではあるが、ややもすると東に偏っているきらいがないでもない。そこで今日は神奈川県の西端に来たわけである。
 湯河原の町並みは、2つの川に挟まれている。西側の熱海市との県境沿いに流れているのが千歳川、真鶴寄りの川が新崎川である。この新崎川を攻略するのが今日の目的だ。
 早速、観光地らしい明るくものんびりした湯河原駅前に降り立つ。空は青く、駅の背後には小高い丘が迫っている。にぎやかな通りを海に向かって降りていくと国道135号線にぶつかる。伊豆へ続く幹線道路で、休日は渋滞する道だ。

 1 湯河原駅                     2 河口から真鶴半島を望む
   



 河口は、埋め立て地と吉浜海岸の境にある。国道135号線が、アーチ型の吉浜橋で新崎川を越えている。季節柄、海岸に人はいない。海岸の石は白っぽいが、砂浜は茶色のいかにも溶岩が砕けた感じの砂である。

 3 河口と吉浜橋                   4 吉浜海岸 
   

 温泉町のどこかのんびりした住宅街を川沿いに遡る。正面には小高い山が見える。よい景色だ。

 5 吉浜橋から上流を望む               6 真砂橋から上流を望む
   

 川と同じ名前が付いた新崎橋の近くには、ほたるの里の標識がある。蛍がいるだけあって水はきれいだ。川の向こう側は吉浜地区で、緑の小高い丘になっている。

 7 新崎橋                      8 新崎橋から下流を望む
   

 9 新崎橋から上流を望む               10 中央4丁目付近 その1
   

 東海道線で河畔の道は途切れるが、強引に下を突破する。

 11 中央4丁目付近 その2             12 東海道本線鉄橋
   

 13 浜渡橋                     14 浜渡橋から下流、東海道線鉄橋を望む
   

 川沿いの果樹園は写真16のとおり、見事に黄色く色づいている。写真を撮っていたら、農家のおばあさんがじっとみていた。こんな昼間に堂々と盗りませんって....

 15 浜渡橋から上流を望む              16 ミカンの里
   

 17 宮渡橋から下流を望む              18 東海道新幹線の下
   

 新幹線の下には、お地蔵様が鎮座している。山里の風景だ。ふと前を見ると、正面の山が間近に迫ってきた。

 19 新幹線下の地蔵群                20 宮の入橋から上流を望む
   

 この先の幕山公園は梅林が有名である。季節柄、幕山公園に向かう車で道は渋滞しているが、それを横目でみながら、歩道をのんびり歩く。軒先のミカンや野菜は結構売れているようだ。

 21 軒先で農産物を売る               22 茶畑
   



 やがて、幕山公園に着いた。公園の中の遊歩道が快適である。

 23 幕山公園 その1                24 幕山公園 その2
   

 コンクリートの護岸もなくなり川はもうすっかり沢となって、公園の風景にとけ込んでいるが、完全に自然のままという感じでもない。
 背後にそびえる幕山は、標高625mであるが、、箱根火山の側火山だそうで、写真26の通り、山腹の岩山がすごい。柱状節理というのだろうか。いかにも溶岩が冷えて固まりました...という景色である。この岩があるおかげで、ロッククライミングの練習場にもなっているほどだ。地元の観光振興として、その山腹から新崎川にかけての山林を切り開き、梅を植えたのだが、木が生長し、背景の幕山の岩の雄大なスケールと相俟って、すっかり梅の名所として定着した。熱海の梅園の方が、歴史が古いが、こちらの方が見応えがあるようにも思える。梅林が山腹の斜面にあるため、下から全体が俯瞰できるのがすごい。

 25 幕山公園 その3                26 幕山公園 その4
   

 梅の花自体はまだ少し早いようで、山全体が赤と白に染まるとまでは行かなかった。

 27 幕山公園 その5                28  幕山公園 その5
   

 さて、新崎川は、梅の開花状態などに関係なく、さらさらと流れて谷を刻んでいる。

 29 幕山公園 その6                30 幕山公園 その7 
   

 31 幕山公園 その8                32 幕山公園上流
   

 幕山公園からさらに山奥に入っていく。昔から地元の信仰を集めている山の神の祠があった。ここからは、下世話な下界ではなく、神聖な「山」である。
 神聖な山でもご多分に漏れず、治水工事の名の下に巨大なコンクリートの堰堤が川を塞いでいる。堰堤はすでに大量の土砂で埋まっているが、この土砂を今後どうするのだろうか。多額の税金をつぎ込んで浚渫するのだろうか。
 戦後の高度成長の甘い果実を公共工事につぎ込んだ土建国家日本、その結果、川はダムとコンクリートだらけになってしまった。それなのに、一方では21世紀の今日に至っても、町中の道路は狭くて電柱が乱立し、小学校の校庭は芝生ですらないのはなぜだろうか。それに、こんなことをしていれば、湯河原の砂浜は近い将来消滅してしまうだろう。ホタルやイワナやヤマメも絶滅するわけである。

 33 鍛冶屋山の神                  34 幕山堰堤
   

 35 大石平の橋                   36 橋から下流の堰堤を望む
   

 大石平の橋の上から川を見るともう水は流れていない。上流も2つの沢があるが、石がごろごろしているだけである。
 おそらく、堰堤により、大量の土砂がせき止められて堆積ししたために、水流は地下に潜ってしまったのだろう。雨が降れば、このあたりも流れがみられるのだろうか。冬の渇水期だから水がないのだろうか。
 地図の上ではもっと上まで川が描かれているようであるが、残念ながら、堰堤のおかげでもう川の流れをみることができないので、一応ここを源流としよう。

 37 橋から上流を望む              38 大石平から目の前のピークを見上げる
   

 (注)2011年11月6日 にさらに上流に水流があると読者の方から情報をいただいた。機会があれば。探索してみたい。



 帰りは、川の左岸を下っていく。幕山公園の梅林のすぐ下には浄水場がある。湯河原町民の水はこの新崎川がまかなっているのだろう。高台からみる相模湾はどこまでも明るい。

 39 幕山浄水場                   40 鍛冶屋の里から相模湾を見下ろす 
   



 このあたり、鍛冶屋の集落は、まだまだ長閑な風景が残っている。なぜかほっとするようなバスの終点である、五郎神社の停留所から、湯河原駅に戻った。

 41 印象的な納屋?              42 五郎神社
      



 新崎川は、ハイキングコースとしてもちょうどよいが、幕山や梅林と組み合わせても、湯河原の明るい日差しを感じられるだろう。もちろん、温泉の好きな人にはいくらでも選択肢がある。

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