音 楽
   
 

 音楽が好きだ。昔、仕事のストレスで出社拒否症になりそうな時でも、通勤電車に乗って音楽を聴くと、会社に行く元気が出たものだ。

 基本的には、ロックが好きだ。中学生の頃、エレクトリックギターを買ってもらえなかったので、夢だったロックスターにはなれなかった。もし買ってくれたとしても結果は同じだったろうが。
 年をとって日本の曲も聴くようになったが、やはり演歌だけはダメである。しかし、上司とカラオケに行く時のために、若い頃からちゃんと演歌のレパートリーも用意していたのは、いわゆる処世術というものである。不思議なもので、聴くのは耐えられないが、歌うのは大丈夫なのだ。
 そういえば、新入社員の頃はまだ軍歌を歌う先輩がいた。私よりも年上、団塊の世代くらいまでは演歌が多いが、フォークソングやグループサウンズなどバラエティに富んでくる。年下となると殆ど演歌は歌わないので、我々がカラオケで演歌を歌う最後の世代なのかもしれない。

 もう30年も前になるが、就職して最初のボーナスで買ったのが高級オーディオ装置だった。一度では買い揃えることが出来ず、次のボーナスもつぎ込んだ記憶がある。もちろん車の中ではカセットのカーステレオがいつも鳴っていた。そのうちに、レコードからCDの時代になって雑音がなくなり、ウォークマンがでてきて、歩きながら音楽を聴けるようになった。21世紀になると、PCで音楽がデータとして扱えるようになっていた。いつの間にか、怪しげなMP3プレーヤーで音楽を聴くようになり、Appleが革命を起こして、今では2台目のipodである。

 音楽がなぜデジタルで記録出来るのか、いつも不思議に思っていた。2進法、つまり、0と1がどこまでも並んでいる数字の列が、なぜ美しい音楽に変わるのだろう。理屈ではなんとなく理解できても、感覚的には今でも納得できない。しかし、そんな悩みも、この時代の便利さ、つまり、数回のクリックと、200円のクレジットカード払いで、聴きたい曲がその場で手に入るという、圧倒的な現実の前には些細な事である。


 もちろんこの文章も、ハードディスクに保存してある膨大なデータの中からiTunesによって選択された曲の信号が、ONKYOの小さなスピーカーのコーンを鳴らす、ささやかながらも快適な音楽環境の中で書いている。

                                     平成23年9月12日


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