高尾山(たかおさん) 標高599m 登山開始地点標高460m

        自分の足で登らない山シリーズ第18弾 富士山についで日本で二番めに有名な山?
 
◆ 2014年2月5日

 久々の自分の足で登らない山シリーズは、高尾山だ。
 首都圏に住んでいて高尾山を知らない人はいない。ミシュランにより外国人にも大人気の山である。いや観光地といったほうがよいかもしれない。ハイキングの定番、登山を始める人が初めて登る山の代名詞でもある。なにしろ、東京のアウトドアショップで売られたトレッキングシューズの82%は、まずこの高尾山で試し履きされるという統計がある.....わけないか。
 しかし、Nikeがタカオというトレッキングシューズを出していたことは本当である。一時は、この靴を履いていないと高尾山の登山口の検問を通過できないというウワサもあったくらいである(あくまでウワサである)。

 交通機関について改めて書く必要もないが、首都圏に住んでいない人のために一応書いておこう。新宿から多摩地区を通って八王子方面に通じる京王電鉄の終点が高尾山口駅である。ちなみに京王の王は八王子の王である。少し歩くとケーブルカーの山麓駅があり、そのまま標高480mまで上がれる。高尾山の標高は599mなので、残り119mしかない。これでは登山とはいえないが、このサイトのコンセプト的には異存はない。



 町田駅で横浜線に乗り換えるが、平日なのでものすごく混んでいる。やっとのことで滑りこんでドアが閉まるがリュックが引っかかってしまった。悪いことにサングラスを外側に引っ掛けていたのである。駅員さんが開けようとするが、諦めたらしく、そのまま電車が発車した。サングラスは外に出ていて無事だが、ドアに隙間ができてしまい、満員の車内に寒風が吹き込んだ。女子学生が寒そうである。本当に申し訳ないがどうしようもない。次の駅まで何とか我慢してもらおうと目を伏せながら冷たい視線に耐えるが、古渕駅に滑り込んで開いた電車のドアは、無常にも反対側であった。通勤、通学の人たちの中で、明らかに遊びに行く格好の私に非難が集中しているようで、小さくなる。次の淵野辺駅でようやくドアが開いて、事態はやっと好転したのであった。

 高尾駅から京王電鉄に乗り換えると、登山の格好をした人が結構いる。快晴とはいえ、今日は平日にもかかわらずである。自分も含めて、この人達には共通の性質がある。それは、犬に似ているということである。つまり、雪を見ると興奮してその中で暴れたくなるという原始的な衝動を抑えられないという困った習性である。

 前日の2月4日は、低気圧が接近して、関東平野に雪を降らせていた。

 

  1 京王線高尾山口駅
     

 リハビリ中で、まだ登山は無理だが、高尾山なら何とかなりそうである。しかし、いくらなんでも普通の高尾山では面白く無いので、雪が降ったら行こうと思っていた。標高が低いので、白い高尾山はなかなか見られないのである。
 今日は、私の住む相模湾沿いでは雪はないが、ここに来る途中で町田あたりから雪が見られるようになり、八王子ではかなり白いものが目立つようになった。関東平野といっても広いのである。もちろん、ここ高尾は下界でも真っ白で、ケーブルカー駅へ行く道端の木々が白く輝いていた。

 2 ケーブルカー山麓駅へ




  3 山麓駅(清滝駅)                  4 リフト山麓駅
   

 ケーブルカーの駅につくが、残念ながらケーブルカーは動いていない。今日から点検のため4月まで動かないのである。ここで初めて知ったらショックだろうが、事前にリサーチ済みなので迷わずリフト乗り場へ回る。ここの標高は約200m、リフトで約260mを登る。

  5 リフトに乗る                   6 リフト山上駅
   

 リフトに乗っている人は少ない。こんな日に来る人は、自分の足で登らないとつまらないのかもしれない。
 標高460mの山上駅でリフトを降りた。興奮剤としてのカフェイン補給のため、140円という微妙な値段の温かいコーヒーを飲む。道を見るといきなり凍りついていたので、ゲイターとチェーンアイゼンをつける。すると、雪かきをしていたおじさんがそれは滑らなくていいな、どこで売ってるんだ、と聞くのでアウトドアショップで売ってますよ、5000円くらいかな、と答える。モンベルのじゃなくてもよいのならアマゾンで2000円くらいで売っているようだが、アマゾンってなんだと聞かれると説明が難しそうなのでやめておく。

  7 ケーブルカー高尾山駅へ
     

 9時30分、出発である。



  8 雪のベンチとトンガリ屋根

 すっかり雪山リゾート気分である。積雪は10cmくらいあるだろうか。

  9 ケーブルカー高尾山駅               10 ビアマウント
   

 ケーブルカー駅では、運休中にもかかわらずお店の人が雪かきをしている。

  11 高尾山薬王院参道 その1            12 サル園・野草園
   

  13 たこ杉                     14 たこ杉解説板
  

 たこ杉を過ぎると走る黄色い軍団に追いぬかれた。東京消防庁である。結構楽しそうである。訓練だろうか。

  15 走る救急隊員
     



 16 高尾山薬王院浄心門

 17 雪の参道

 雪景色の白い参道は趣がある。滑りやすいが、結構普通の靴で来ている人も多い。気温計を出してみたらちょうど0℃だった。これでは雪は溶けないだろう。

  18 現在気温                    19 男坂女坂分岐
   

 20 雪の階段




 まるで冬の中尊寺のような趣である。

  21 白い屋根帽子                  22 救助現場 その1
   

 参道に消防と警察が集まっている。すごい人数である。近づくと、人が一人倒れていた。救急隊の出動は何と訓練ではなく、本番だったのである。それにしても遭難するような場所ではないので、雪で階段から足を滑らしたのだろうか。

 23 救助現場 その2                 24 高尾山薬王院 その1
   

  25 高尾山薬王院 その3              26 高尾山薬王院 その4
   

 法螺貝とともに僧侶の一団が歩いて行く。まるで大河ドラマのような光景だ。

  27 法螺貝とともに歩く僧侶
     



 高尾山は、元々信仰の山である。冬の青空と雪の白と神社の朱色のコントラストが清々しい。

 28 高尾山薬王院 その5


 青空と雪の白と神社の朱色のコントラスト、ん? 神社? 現地では気がつかなかったが、このサイトを作りながら写真を見直すと、これはどうみても鳥居であり、すなわち神社である。寺だったはずだが?
 要するに、江戸時代は神仏習合が普通であっただろうから、明治時代の神仏分離を免れたということだろうか。まあ、神様仏様はたくさんいたほうが良さそうである。参拝客も何かと便利だろうし。

  29 雪をかぶったおみくじ              30 高尾山薬王院 その6
   

  31 白いお地蔵様                  32 高尾山薬王院 その7
   

 お地蔵様もすっかり白くなって寒そうである。急な階段は滑らないように手すりにつかまりながら登る。

  33 高尾山薬王院 その8              34 高尾山への階段
   



  35 トイレ
     

 2012年にできた、東京都自慢の1億5千万円をかけた豪華トイレである。頂上も近い。

 36 山頂直下




 10時15分、標高599mの高尾山山頂に到着である。広い山頂は、休日の混雑が嘘のように白銀の世界が広がっていた。

  37 高尾山山頂 その1               38 高尾山山頂 その2
   



 39 山頂から西方向・東京都下を望む


 40 雪のベンチ


 茶店は1軒だけ開いていた。ちなみに缶コーヒーは、さらに10円値上がりして、150円である。

  41 山頂の茶屋                   42 高尾山山頂 その3
   

 前日の雪のせいだろうか。空気が澄み切ったおかげで、ここからの展望は予想以上の素晴らしさである。ここまで見えるのは一年を通じてもそれほど多くないと思う。無粋だが、記録のために一応主な山の名前を下に入れておこう。

 43 山頂から南方向・相模湾/大山を望む




 44 山頂から南西方向・丹沢を望む




 45 山頂から西方向・富士山を望む




 46 高尾山山頂 その4




 ここまでほとんど登りらしい登りもなかったので、足の方は大丈夫である。城山まで足を伸ばすことにした。写真48の親切な道標は、道に迷う人が多いことを示している。

  47 もみじ台へ その1               48 標識
   



  49 もみじ台へ その2               50 高尾山周遊路
   

 広い登山道は真っ白だが、歩きにくいほど積もっているわけでもないので、軽アイゼンで軽快に歩けて楽しい。

  51 もみじ台 その1                52 もみじ台 その2
   

 小高い丘になっているもみじ台に着いた。ここも西側の景色が素晴らしい。

 53 もみじ台から富士・丹沢を望む


 54 一丁平へ その1



  55 一丁平へ その2                56 一丁平へ その3
   

  57 一丁平へ その4                58 大垂水峠方面分岐
   

 休日なら人の姿が途切れないこの道も、きょうは静かな雪道である。

  59 一丁平へ その5
     



 60 白い樹林


 いつのまにか巻き道に入ってしまったが、樹林帯と笹原が今日は趣を異にしている。

 61 白い笹


 11時12分、一丁平に着いた。ここの標高は約580mである。広々としたところである。春や秋には素晴らしい花や紅葉が楽しめるところだが、今日はモノクロの世界だ。

  62 一丁平 その1                 63 一丁平 その2
   



  64 一丁平道標                   65 大垂水峠方面への道
   

 ここから大垂水峠への道はトレースがついていないようだ。

  66 一丁平 その3                 67 一丁平 その4
   

  68 一丁平展望デッキ
       

 ここ、一丁平の展望台からの景色も素晴らしいが、昼近くになって富士や丹沢の山々にも雲がかかってきたようだ。

 69 一丁平から富士・丹沢を望む


 70 一丁平から大山・相模湾を望む


 ここで休憩したり、カップラーメンを食べている人も結構いる。広い登山道を城山へ向かおう。

  71 一丁平休憩所                  72 城山へ その1
   



  73 城山へ その2                 74 野生動物の痕跡
   

 途中でイノシシが暴れたあとがあった。土が見えているので今朝だろう。

  75 巻き道分岐                   76 城山へ その3
   

  77 中日本高速道路電波塔              78 大垂水峠方面分岐
   



 電波塔が見えると、城山頂上も近い。

  79 大垂水峠方面への道               80 城山山頂直下
   



 81 城山山頂 その1

 11時49分、標高670mの城山山頂に着いた。

 82 城山山頂から東京都下を望む


 写真82の拡大図


 雪がどけてあるベンチに座って、くつろぐ。さすがにここには沢山の人がいる。中にはノーアイゼンの人もいるのには驚く。高尾山とはいえ、滑る下り道の恐ろしさを知らないとはいい度胸である。

 座ったベンチの目の前には、東京の街並みの大パノラマが恐ろしいほどの透明感で広がっていた。都心の巨大な高層ビル群が大きな島のようにポッカリと浮かんでおり、スカイツリーや都庁もはっきりと判る。昔は新宿だけが目立っていたが、今は高層ビルが湾岸から池袋まで連続して広がっているのがよくわかる。

 隣りに座った中年の男性二人組が、ラーメンのお湯を沸かしながら「雪山は癖になるんだよね」などと話している。筆者のサングラスを見て、裸眼を後悔していた。アルプスでも高尾山でも雪山での紫外線は同じだ。半端じゃ無いのである。

 ここは、さすがに若いカップルや女性も多く、みんな、この絶景と眩しい世界でくつろいでいる。隣のカップルは、ラーメンやコーヒーなど、アウトドアでの食事の準備に夢中である。平和な雪の頂上であった。1時間ほど、音楽を聴きながら、冬の日差しの下でのんびりと東京を見下ろしていた。

  83 NTT電波塔                   84 山頂でくつろぐ
   

 85 城山山頂から南方向を望む

  86 城山解説板                   87 城山山頂 その2
  

 1時になったので、そろそろ腰を上げることにした。アキレス腱が痛み始めたので、今日は景信山は諦めて、小仏峠から降りることにしよう。この城山から北は、東京都と神奈川県の県境になっており、神奈川県一周で過去に歩いているし、今日はあくまでリハビリなので、無理をする必要もないだろう。

 ◆神奈川県一周 第21日目(2011年5月4日)境川源流 〜小仏峠

 ◆神奈川県一周 第22日目(2011年5月21日) 小仏峠 〜和田峠



 午後になって気温が上がってきたせいか、雪質が湿ってきて、チェーンアイゼンに団子がつくようになってきた。時々木の根や階段にぶつけて団子を落としてやると良さそうである。

  88 小仏峠へ その1                89 小仏峠へ その2
   

 90 白い枝




  91 小仏峠へ その3                92 小仏峠へ その4
   

 城山より先はさすがに人が少なくなってきたようだ。

  93 雪の中の祠                   94 小仏峠へ その5
   

  95 小仏峠 その1                 96 小仏峠 その2
   

 13時15分、小仏峠に着いた。大きな声で話している人がいた。地図読みの講習らしい。若いインストラクターが地図と実際の地形についてなにやら解説しているが、道標がたくさんあって現在位置がすぐにわかってしまう高尾山で、はたして意味があるのだろうか。受講しているのは、中年女性が多いが、地図も見ずに集団でぞろぞろ城山方面に移動していったのであんまり学習効果はなさそうである。

  97 小仏峠 その3                 98 小仏バス停へ その1
   

 この旧甲州街道を右折して、小仏バス停に向かう。



  99 小仏バス停へ その2              100 見上げる雪山
   

 途中で写真99のように土の道になったので、チェーンを脱ぐが、林道で再び凍結路面になって滑ったので、慌てて再び装着する。

  101 小仏バス停へ その3             102 一般道へ出る
   

 103 桜のような冬の輝き その1

 104 桜のような冬の輝き その2


  105 小仏バス停へ その4             106 宝珠寺
   



 八王子市内とは思えない景色の中を滑らないように注意しながら歩いて、14時5分に小仏バス停に着いた。高尾駅行きのバスが来ている。10分発のバスだったのですぐに乗り込んだ。ラッキーである。

 107 小仏バス停へ その5              108 小仏バス停でバスに乗り込む
   

 GPSによる本日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録


 高尾山はケーブルカーを使えば簡単に登れる観光地で、体力的にはちょうど御岳山と同じ感じだ。山岳信仰という点も共通している。日本一登山者が多い山という噂もあるので、改めて解説する必要もないが、雪が降った後は、深山幽谷の水墨画の雰囲気が手軽に味わえて、素晴らしいところだった。その奥の城山も、同様である。
 これを書いている今日、2月8日、窓の外には10年ぶりの大雪が降り続いている。この調子では、夜半までに高尾山は大雪に埋もれるはずだが、明日の日曜日は晴れる予報なので、犬に似た習性を持つたくさんの元気な登山者やカメラマンであふれるかもしれない。ケーブルカーは動いていないので注意が必要だが。
 それにしても、雪国の人たちから見たら、何と物好きなと思われるに違いない。人間とは、ないものねだりと好奇心の生き物なのである。
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