東京都一周   三国山から山梨県境である笹尾根を北に向かって、奥多摩の山々を目指す

◆第1日目(2012年1月14日) 三国山大羽根山分岐

 多摩川河口からずっと続いてきた、東京都と神奈川県の都県境は、三国山で終り、それより北には尾根伝いに東京都と山梨県との境界が続いている。その三国山が、東京都一周の実質的なスタート地点である。日本一の都会である東京都一周なのに、なぜかいきなりの山奥というのも妙な感じだが、事実なのだから仕方が無い。
 三国山から、まず奥多摩の三頭山を経て、東京都最西端(島を除く)で最高所である雲取山を目指す。高尾山から三頭山までの長大な尾根は、笹尾根と呼ばれている。今日は、その笹尾根の一部である都県境を歩くことになる。



 三国山へは、上野原駅から井戸行きのバスに乗り、最後は一人だけになり終点で下車する。井戸は山あいの里で、写真2のように景色が素晴らしいところだ。折り返すバスをおばあさん一人が待っていた。

  1 井戸バス停                    2 井戸から富士山と西の山々を望む
   



  3 軍刀利神社入口                   4 軍刀利神社鳥居
   

 登山道入口は、軍刀利(ぐんだり)神社という変わった名前の神社にあるらしい。ほどなく写真3の神社入口の石標が目に入る。寒いので、ここで、自販機のコーヒーを飲もうとするとすぐ横におばあさんがいた。この店の人らしい。犬が吠えるのを叱っていた。自販機が生きているかと聞くが、大丈夫だという。ここから山に登る人は少ないのかと尋ねると、結構いるが、たまたま今日は少ないほうだということだった。やがて、奥からおじいさんが出てきて、どこまで行くのかと聞かれ、道を教えてもらう。コーヒーを飲み干して、気のいい老夫婦に挨拶して神社に向かった。

   5 軍刀利神社由来
   

 上の神社縁起に書いてあるように、ここは山梨県、戦国の世の甲斐国、つまり武田信玄の勢力範囲である。都県境の向こうは武蔵国、すなわち北条氏の勢力範囲なので、両者がぶつかり合う最前線だったことになる。戦国時代であれば、こんな国境をあてもなくウロウロしていたら、敵方の間者だと思われてすぐに忍者の刺客に狙われるところである。ほんとうにいい時代になったものである。(って、いったい何年生きてるんだよ?)
 神社の社務所ではもう人が集まっていた。歩き始めで寒いので、少しの間焚き火をしていたドラム缶で温まった。

  6 軍刀利神社社務所                 7 軍刀利神社石段
   

 古びた長い石段は、一直線に延びている。この階段はその雰囲気といい、長さといい、なかなかのものだと思う。

  8 軍刀利神社                    9 クマ出没注意看板
   

 本殿の奥には、奥之院があるがその前には途方も無い大木がある。日本昔ばなしのような風景である。

  10 軍刀利神社奥之院                11 三国山へ その1
   

 奥之院の上から登山道になる。



  12 三国山へ その2                13 三国山への分岐
   

 地面が乾燥しきって埃っぽい。1時間ほどで、見覚えのある写真14の神奈川県と山梨県の県境尾根に出る。ここから、左折して三国山に向かう。

  14 東京都神奈川県境に出る             15 三国山へ その3
   

 10時10分、三国山に到着である。

  16 三国山山頂                   17 三国山から南アルプスを望む
   

 誰もいない山頂からの眺めは、素晴らしかった。景色が霞んでいた昨年の6月4日に来た時とは季節が逆なので、同じ場所とは思えないほど遠望が効いている。

 18 三国山から西方向を望む




 いよいよここから東京都と山梨県の都県境が始まる。北へ続く尾根である。
 今日は冬の尾根歩きということで、上は最初からゴアテックスの雨具を着てきた。山に登る時はどうせ雨具は必携なので、最初から着ていたほうが荷物が減って合理的である。その下は薄いフリースだ。三国山に登る時は少し暑かったが、稜線上で強い風が吹くとそれでも寒いくらいである。

  19 軍刀利神社元社へ その1            20 軍刀利神社からの道の合流地点
   

 写真13の分岐を左に行くと、写真20の場所に出てくるようだ。やがて、尾根上に小さな神社があった。軍刀利神社元社である。元々はここに神社があったらしい。

  21 軍刀利神社元社へ その2            22 軍刀利神社元社
   

 ここからの展望も素晴らしい。

 23 軍刀利神社元社から富士山を望む


 大室山の上には暗い雲がかかっていた。こちらは良い天気だが、丹沢は雨か雪だろうか。

  24 軍刀利神社元社から大室山を望む         25 軍荼利山へ
   

 小さなピークについた。軍荼利山と書いてある。神社と同じ読み方(ぐんだりやま)であるが漢字が違う。神社解説によると最初は軍利夜叉明王社と称していたが明治の神仏分離令により仏式が廃され現在の社号である軍刀利神社に改めた、ということらしい。その時に漢字が変わったのだろう。山の名前は江戸時代以前の名称を引き継いでいるようだ。

  26 軍荼利山                    27 熊倉山
   

 10時45分、標高966mの熊倉山に着いた。まだ休憩する時間でもないのでそのまま先へ行く。

  28 栗坂峠へ その1                29 栗坂峠へ その2
   



  30 栗坂峠へ その3                31 東側の木立
   

 二次林だろうが、雑木林風の木々が心地よい冬枯れの県境尾根である。

  32 栗坂峠                     33 浅間峠へ 
   

 地面は乾燥してホコリっぽい上に、立派な霜柱が固く盛り上がっていて、見た目よりもずっと歩きにくい。

  34 霜柱                      35 カーブで振り返る
   



 11時35分、東屋のある広い浅間峠についた。なかなか歴史のありそうな峠である。

  36 浅間峠                     37 浅間峠の石塔
   

 左右に道が下っている。

   38 浅間峠から上川乗バス停方面への道       39 浅間峠から上野原駅方面への道
   

  40 日原峠方面道標                 41 日原峠方面への道
   

 直進して日原峠方面に向かうと左手に祠があった。昔の旅人が安全を祈願したのだろうか。

  42 小さな祠                    43 日原峠へ その1
   

 このあたりは、左右すなわち東京都か山梨県のどちらかが人工林になっており、それが交互に続くのが面白い。

  44 日原峠山へ その2               45 日原峠方面へ その2
   

 写真44の真下あたりに、檜原街道と上野原を結ぶ、つまり笹尾根(の下)を唯一横断している甲武トンネルが通っているはずだが、もちろん尾根を歩いていてそんなことは全くわからない。



  46 日原峠へ その3                47 日原峠
   

 12時30分、標高900mの日原峠に到着した。石仏が可愛らしい。それほど古くはなさそうだ。左は上野原町猪丸、右は檜原村人里である。

  48 日原峠の石仏                  49 土俵岳へ その1
   

 日原峠付近の左右は薄暗い植林地帯で、残念な雰囲気である。

  50 土俵岳へ その2                51 土俵岳へ その2
   

 12時40分、標高1005mの土俵岳に到着した。今日はじめての1000m越えであるが、何の変哲も展望もない尾根上のピークで、完全に名前負けしている。古そうな三角点があった。

  52 土俵岳                     53 土俵岳山頂の三角点
   

 暗い植林地を抜け、都県境登山道の左右に広がる笹がなかなかいい感じだ。尾根の名前の由来になったと思われる。

  54 小棡峠へ その1                55 小棡峠へ その2
   

  56 棡原への分岐                  57 小棡峠
   

 13時15分、小棡(こゆずり)峠に到着した。



  58 丸山へ その1                 59 丸山まき道分岐
   

 分岐では迷わず、巻き道ではなく丸山山頂への道を選ぶ。

  60 丸山へ その2                 61 丸山へ その3
   

 13時35分、標高1098mの丸山に到着した。毛糸の帽子が見えたので、てっきり山頂に誰か先客がいると思ったら、写真62に騙されてしまった。さらに、山頂標識が無いのでおかしいと思ったら、写真63のとおり、山名が消えていた。

  62 丸山山頂の帽子                 63 丸山山頂標識
   

 寒く感じたが、気温は5℃でそれほど低くはない。

  64 丸山山頂の気温                 65 巻き道と合流
   

 巻き道と合流する丸山の北斜面には、雪が残っていた。完全にアイスバーンになっていて滑りやすいが、傾斜が少ないので軽アイゼン無しでも何とか歩ける。少し迷ったが、とりあえず、トレッキングポールの先端のゴムを外し、急傾斜になったら軽アイゼンをつけることにして少し歩くと、やがて雪が消えて霜柱に替わったのでホッとする。

  66 ポールのゴムキャップを外す           67 凍結した道
   

  68 霜柱                      69 倒木
   



  70 笛吹峠                     71 笛吹峠の石道標
   

 13時58分、笛吹峠に到着した。「ふえふきとうげ」ではなく、「うずしきとうげ」と読むらしい。

  72 藤尾への分岐                  73 大羽根山分岐へ
   

 今日の都県境の目的地は、大羽根山分岐である。尾根からの下山口はいくつかあるが、大羽根山経由を第一選択肢に設定したのは、尾根道であること、傾斜が急ではなさそうなこと、そして、大羽根山からの展望が良いらしいこと、の3つの理由からである。時間が予定通りならば、ちょうどよい距離でもある。日暮れが早く、気温が低い冬の山での行動時間は十分な余裕をみておかなければならない。
 笛吹峠からその分岐点までは登山地図で所要時間25分になっている。時計を見ながら登りの道を歩き、25分経ってそろそろかと思ったところで、標識が見えた。デジカメの記録によると正確には14時22分、つまり、笛吹峠から24分で大羽根山分岐に到着したことになる。

  74 大羽根山分岐
  右に曲って尾根を下る。



 75 白樺?


 美しい林があった。

  76 大羽根山へ その1               77 大羽根山へ その2
   



  78 大羽根山直下
  14時42分、大羽根山に到着した。尾根の端である。

 79 大羽根山から御前山、大岳山と浅間尾根を望む


 大羽根山からの北側の展望は噂どおりである。三頭山、御前山、大岳山を奥多摩三山というらしいが、そのすべてが見える。

  80 落ち葉の道
   

 広い尾根下りは落ち葉で道がわかりにくい。左手に三頭山が大きく見えた。あの山が笹尾根の最高峰で、これから歩くことになるであろう都県境である。都県境は、三頭山を越えると、その向こうの奥多摩湖へと降りていくのである。

 81 三頭山を望む


  82 浅間尾根登山口へ その1            83 浅間尾根登山口へ その2
   

 落ち葉が厚く堆積した下り道は意外と歩きにくい。道の凹凸がわからないので、不用意に足を着くと捻りそうである。



 中央区のシイタケ栽培地に出た。

  84 シイタケ栽培標識                85 シイタケ栽培
   

 作業小屋があるが、黒いものが周囲に散らばっていたので、多分炭焼き小屋だろう。

  86 炭焼き小屋                   87 檜原街道へ
   

 まもなく、バス道路に出た。15時32分である。

  88 浅間尾根登山口バス停 その1          89 浅間尾根登山口バス停 その2
   

 15時46分の五日市行きのバスにちょうど間に合った。

  90 浅間尾根登山口バス停付近の残雪
  バス停の横の空き地にはまだ雪が残っていた。

 GPSによる今日の歩行経路


 GPSによる今日の歩行経路 (Google earth 3D)


 GPSによる今日の高度記録


 今日は、冬枯れの笹尾根と呼ばれる都県境を歩いた。三国山付近からの展望は素晴らしい。すべての都県境が尾根筋であり、歴史のありそうな峠やピークが続いている。標高がそれほど高くないせいか、残念ながら暗い植林地帯になってしまっているところも多く、そこでは尾根の名前の由来になった美しい笹が消滅しているのが気がかりである。
 これから先、東京都県境はますます険しい奥多摩の山に続いている。次回は、笹尾根の最高峰である三頭山を目指すことになるが、厳冬期に入り、寒さと雪が障害になりそうだ。なんといっても、道に迷うと即凍死の危険があるというのが難点である。バスも冬は途中までしか通じていない。春まで待つかどうか、考えなければならない。

 
(本日の歩数:34533歩)

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