海岸線をどこまでも西へ
伊豆半島の旅もいよいよ最南端の下田・南伊豆へ迫る
◆第7日目 (2013年9月29日) 下田プリンスホテル 〜 伊豆急下田駅
1 伊豆急下田駅 2 下田プリンスホテル前バス停
伊豆東海岸放浪の7日目、現在地は、白浜のプリンスホテルである。ここから下田市街までは直線距離なら数キロであるが、そうは問屋がおろさない。白浜の南には須崎という、岬というには大きすぎる、半島ともいえるような突起がある。今日は、須崎をめぐってから予定どおり下田にたどり着くことが出来るだろうか。複雑な海岸線ほど、辿るのに時間がかかるものはないのである。
今日は一旦伊豆急の終点の下田駅まで行って、そこからバスで少し戻るような感じでプリンスホテルまで行く。9時22分に下田駅に到着し、9時35分発のバスに乗る。
現在地
9時50分、プリンスホテルから南に向かって歩き始めると、すぐに赤い鳥居とたくさんの人に会う。白浜神社である。
伊古奈比当ス神社
(いこなひめのみことじんじゃ)がその正式名称らしく、地形図にもそう書いてあるが、こんな毎回舌をかんでしまうような神社の名前では不便で仕方が無い。白浜神社という通称が妥当だろうと思う。
3 白浜神社 4 白龍の柏槇
ここには御神木があった。枯れてから千三百年経ったが、その先端から再び青い葉を甦らせた不死身のビャクシンである。神社は小高い山になっているがその南には、再び白浜海岸が広がっている。プリンスホテル前のビーチがプライベートビーチだったのに対して、こちらはオープンである。そして広々とした浜の白砂が目に眩しい。
5 白浜海岸 その1
6 白浜海岸 その2
風が強いが、ウインドサーファーの上級者にとっては、好都合かもしれない。
7 白浜海岸 その3
ビーチは賑やかなので、レースが行われているのかもしれない。
8 白浜海岸 その4
9 白浜海岸 その5
まるで湘南海岸のような、派手なテントと音楽が、夏のようだ。夏はここは海水浴場になるので、9月はサーファーたちにとっては遅れてきたハイシーズンなのかもしれない。白浜海岸の南端には
ホテル伊豆急
がそびえ立っていた。つまり、白浜海岸は、北はプリンス(つまり国土)、南は伊豆急(つまり東急)というふたつの大資本によって押さえられているというわけである。伊豆急を通す時、国土が嫌がらせで白浜の土地を買い占めた結果、線路はトンネルで内陸部を通す事になった、という話があるが、本当だろうか。東急が買収しておいた鉄道用地の使い道がなくなってホテルを建てた、という話だと面白いのだが。ホテルの建っている場所は、実は伊豆急白浜駅になる予定だった、なーんて。まあ、白浜海岸には、そんな人間の欲望に駆られたつまらない喧嘩なんてまるで関係のない太古の昔から、波が打ち寄せている。
10 白浜海岸 その6 11 ホテル伊豆急
12 白浜海岸 その7
国道に出て、少し高台から見た写真12の白浜海岸は、白い波とエメラルドブルーの海とスカイブルーの空と弧を描くビーチのコントラストが素晴らしいとしか形容できない。
13 三穂ヶ崎へ その1
白浜に別れを告げて、岩場になった海岸線を進む。
14 三穂ヶ崎へ その2
15 三穂ヶ崎へ その3 16 板見漁港
17 三穂ヶ崎遊歩道入口 18 海の見える断崖に建つ家
三穂ヶ崎に行く遊歩道があったが、行き止まりなので今日は省略させてもらう。写真18の崖に立つ眺めの良さそうな家が気になった。道路の面が屋上で駐車場になっている。
19 18の家を振り返る 20 外浦海岸へ その1
煉瓦色の歩道を歩いていると左手に再びエメラルドブルーの海が現れた。外浦海岸である。
21 外浦海岸を見下ろす
22 フェニックス広場 23 外浦海岸へ その2
街道沿いのフェニックスとリゾートホテルと青い海、南国だぜ、と言って飛び跳ねたくなる(あくまで心の中であって、オッサンが実行にうつしたら通報されてしまう)ような気分である。国道の陸橋を降りて行くと、外浦海岸へ続く小径である。
24 外浦海岸入口 25 外浦海岸への小径
26 外浦海岸 その1
27 外浦海岸 その2
外浦海岸もため息が出るほど美しいビーチである。
28 外浦海岸 その3
ビーチが途切れると漁港があり、それ以上海岸沿いへは進めない。岩場だということもあるが、一般人は立入禁止なのである。須崎御用邸の敷地だ。
29 外浦漁港 30 須崎御用邸へ その1
山側へ寂しい道を登って行くと、分かれ道のところに学校があった。しかし、何かがおかしい。生気がないのだ。近寄ってみてみるとすでに廃校になっているようだ。
31 須崎御用邸へ その2 32 須崎御用邸へ その3
細い道を登って御用邸前の道路に出た。
33 須崎御用邸へ その4 34 須崎御用邸入口
須崎御用邸は、那須、葉山とともに現存する3つの御用邸のひとつである。何でもプライベートビーチがあるらしい。夏のご利用が多いようだ。写真を撮るときは、監視カメラに写っていることを覚悟しなければいけないが、まあ、公道上だし、悪いことをしているわけでもないので気にしないことにしよう。
35 無人売店 36 御用邸前の道から見える海
御用邸の反対側にあるパレスサイドヴィラを過ぎてしばらくいくと、左に下りていく小さな道がある。
37 九十浜へ 38 九十浜 その1
御用邸のすぐ横にある人知れぬ、忘れさられたような静かなビーチが、九十浜だ。松と海の日本画のような光景が現実に目の前にある。
39 九十浜 その2
40 九十浜 その3 41 海蝕洞
42 爪木崎へ その1
そのまま海岸を東へ向かう。
43 爪木崎へ その2
海の透明度がハンパじゃない。
44 爪木崎へ その3
45 爪木崎へ その4 46 爪木崎へ その5
次の目的地、爪木崎に向かおう。
47 爪木崎へ その6 48 爪木崎へ その7
49 芝生広場 50 爪木崎の売店
駐車場と売店がある広場に着いた。爪木崎である。
51 須崎歩道爪木崎側解説板
52 案内地図
案内板によると、ここから海岸沿いに須崎まで歩道があるらしい。これは行くしかないだろう。がその前にやることがある。眼の前にあるあまりにも美しい爪木崎の光景の中に、入っていくことである。
53 爪木崎 その1
54 爪木崎 その2
56 爪木崎 その3
この絵画のような景色の中にいる自分が、なんだか幸せな人生を送っているような錯覚に陥る。
57 爪木崎 その4
58 爪木崎 その5
59 爪木崎 その6
60 爪木埼灯台
今まで気の遠くなるほどの海岸線を歩いてたくさんの灯台を見てきたが、この灯台のシンプルで調和のとれた形、そしてそこまでのアプローチと周囲のロケーションは、ちょっと記憶に無いほどハマりすぎている。
61 灯台から東を望む 62 灯台から北を望む
63 爪木崎から北を望む
64 須崎から稲取方面を望む
65 柱状節理 66 柱状節理解説板
私が映画監督だったら、ぜひロケに使いたい場所だ。
67 爪木崎灯台を振り返る
再び売店のところまで戻り、花園を抜けて須崎歩道のシーサイドトレイルに向かう。
68 爪木崎花園 69 花園から須崎歩道へ
海岸のすぐ横によく整備された歩道が伸びている。まず、中間にある細間の段を目指すことにする。
70 細間の段へ その1 71 細間の段へ その2
72 細間の段へ その3 73 細間の段へ その4
74 細間の段へ その5 75 細間の段へ その6
写真75は、一見ただの階段に見えるが、よくみると岩を直接階段状に削っている。自然保護上はどうなのかと思うが、大胆な工法だ。海岸の崖の中腹を登ったり降りたりしながら道は続く。
76 細間の段へ その7 77 細間の段へ その8
78 細間の段へ その9 79 細間の段へ その10
80 細間の段へ その11 81 細間の段へ その12
再び海岸にでると写真81のようなお知らせがあった。なんと、写真82には海岸コースがあったということである。かなりヤバ目の道である。崖崩れはもちろん、波が高いときは命がけだろう。
82 細間の段へ その13 83 細間の段へ その14
84 細間の段へ その15 85 細間の段へ その16
再び急峻な道を階段で登って降りると、写真85の分岐点があり、海に向かって降りたところが細間の段である。
86 細間の段へ その17
87 細間の段解説板
しかし、採石場は、自然の岩かと思うほど侵食されている。たった数百年でこんなになるとは、自然の力はすごいものである。
88 細間の段
89 細間の段から西を望む 90 須崎海岸バス停へ その1
少し休憩して、次の目的地であるトレイルの終点、須崎海岸に向かおう。
91 須崎海岸バス停へ その2
92 利島を望む
93 須崎海岸バス停へ その3 94 須崎海岸バス停へ その4
95 須崎海岸バス停へ その5
すばらしい景色とアップダウンの続く山道を辿ると写真94で海岸にでた。岩場に無理やり階段を作っている。
96 須崎海岸バス停へ その6
97 須崎海岸バス停へ その7 98 須崎歩道終点
その先が海岸コースの終点、須崎漁港である。久しぶりの集落になんとなくほっとする。
99 須崎歩道須崎側解説板
100 須崎歩道案内
101 須崎港 102 須崎海岸バス停
103 須崎歩道解説板
104 御影石
105 御影石解説板
106 須崎漁民会館 107 恵比須島全景
さらに歩いていくと恵比須島が見えてきた。外観からも非常に興味を引く島である。何かがありそうだ。橋を渡って上陸である。
108 恵比須島 その1 109恵比須島 その2
110 恵比須島解説板
111 恵比須島 その3
小さいが、見所の多い神秘的な島である。
112 恵比須島遺跡解説板
ここで祭りがありどんちゃん騒ぎをしていたのだろうか。気持ちはわかる。
113 恵比須島 その4
114 恵比須島灯台
115 恵比須島南端 その1 116 恵比須島南端 その2
117 恵比須島の地層
118 恵比須島西側 119 恵比須島から須崎へ橋を渡る
橋で陸地に戻る。ここからは、海岸沿いの道がなく、やや内陸部を下田港を目指して歩いていくことになる。橋を渡ると地元の男の人たちが集まって西の方角を見ていた。何かあったのだろうか。
120 下田港へ その1
さっきから、ヘリが飛んでいる。サーファーが流されたかと思ったが、ヘリの数が異常に多く普通ではない。海の見える丘の上で、男性が3人で海を見ながらなにか話している。聞いてみると、海難事故のようだ。新聞でも報道されているという。
121 飛び交うヘリ 122 曳航される船
帰って調べてみると、確かに大島沖の海難事故が報道されていたが、まさかあの事故と関係があるとは思わなかった。転覆した船が大島沖からこの下田に曳航されて来たらしい。
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2013.9.27 12:24 [海難事故・水難事故] 産経ニュース
貨物船転覆、船長ら6人不明 衝突した外国船の中国人乗組員らは無事
27日午前1時25分ごろ、東京・伊豆大島の西約11キロの海上で、名古屋市の会社が所有する貨物船、第18栄福丸(498トン)が、西アフリカ・シエラレオネ船籍の貨物船ジィア・フイ(2962トン)と衝突、転覆した。乗組員6人が不明で、下田海上保安部などが巡視船5隻や航空機2機を派遣し、捜索している。
ジィア・フイには中国人とミャンマー人計13人が乗り組んでいたが、けが人などはないもよう。
下田海上保安部によると6人は船長の大川信悟さん(62)=三重県尾鷲市、次席船長の高井智昭さん(40)=静岡県焼津市、1等航海士の山本慶正さん(29)=三重県南伊勢町、機関長の本山規さん(57)=尾鷲市、次席機関長の西岡康典さん(57)=尾鷲市、1等機関士の三鬼多満男さん(61)=三重県熊野市。
栄福丸が転覆した状態で現場海域を漂流し、周辺に筋状の油が浮いているのを確認した。付近を航行中の船舶から「貨物船2隻が衝突したもよう」との通報があった。
貨物船と衝突し転覆した第18栄福丸(手前)と付近を捜索する海上保安庁の巡視艇=27日午前8時54分、伊豆大島沖
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123 下田港へ その2 124 木々の間から見える下田港
木々の間から下田港が見えてきた。
125 下田港(柿崎海岸) その1
下田港は静かで波が無い湖のような湾であった。さすがに黒船が来て開港した港で、自然が豊かななかにどこか異国情緒を漂わせている。
126 柿崎海岸 127 下田港(柿崎海岸) その2
128 柿崎弁天島近くの児童公園 129 柿崎弁天島 その1
130 柿崎弁天島鷺島神社 131 柿崎弁天島から下田港を望む
132 柿崎弁天島 その2 133柿崎弁天島斜交層理
134 柿崎弁天島斜交層理解説板
135 下田弁天島公園の吉田松陰像 136 吉田松陰像解説板
137 下田弁天島公園 138 間戸ヶ浜 その1
139 間戸ヶ浜 その2 140 間戸ヶ浜 その3
このあたりは、間戸ヶ浜と呼ばれいるらしいが、浜はコンクリートで固められている。弁天島とまどが浜公園は、埋立地になってしまっており、自然の海岸が失われているのは残念だ。
141 まどが浜海遊公園 その1
142 まどが浜海遊公園 その2
143 まどが浜海遊公園周辺案内図
144 坂本龍馬像
145 坂本龍馬解説板
うーん。ちょっと根拠が弱い。たまたまここに滞在し、勝海舟と話したというだけで像を建てるのはどうなんだろうか。これだと全国が坂本龍馬像だらけになってしまう。いくら龍馬の人気があるとはいえ、やりすぎではないだろうか。
146 黒船サスケハナ号 147 下田港全景
148 黒船ホテル
149 道の駅開国下田みなと案内板
150 下田市魚市場 151 道の駅開国下田みなと その1
152 道の駅開国下田みなと その2 153 伊東園ホテル
道の駅を過ぎる。今日のゴールとなる下田駅はもう近い。
154 みなとはし 155 みなとはしから駅へ
156 みなとはし近くの倉 157 みなとはしを振り返る
マイマイ通りという、寄り道したくなるような通りを横目に見ながら、15時50分、伊豆急下田駅に到着した。
158 マイマイ通り 159 伊豆急下田駅
16時12分の熱海行き普通列車に乗り込んで、帰途につく。車中でビールを飲みながら、今日の美しすぎるいくつかの海を思いだす。北上し、家に近づくに従って海の色は少しずつ濁ってくるのだろう。
160 下田駅のスーパービュー踊り子と普通列車
現在地
GPSによる本日の歩行経路(時間:6h13m 距離:26.1km 累積標高:+852m -850m)
今日は、白浜から出発して、須崎を周っただけで一日を費やした。複雑な海岸線の故である。
白浜と外浦海岸は、本州にもこんなところがあったのかというような、素晴らしいビーチであった。いや、フィリピン海プレートではこれが当たり前なのかもしれない。
その後の須崎の行程は、その素晴らしさを伝えきれたかどうか、自信はない。天皇家が別荘を作ったのも頷ける素晴らしい半島である。爪木崎の端正な灯台がよく似合う海岸美と景観は下田の代表的な観光地である。爪木崎から須崎までの歩道は、城ヶ崎海岸とともに伊豆を代表するシーサイドトレイルだった。最南端の恵比須島は、古代人と同じように島で焚き火をしてキャンプでもしたくなるところだ。
そして、下田港は歴史が息づく自然と調和した港であった。この先には、もう鉄道はない。次回からは、いよいよ南伊豆の核心部に入っていく。
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第8日目 (2013年2月1日) 伊豆急下田駅 〜 多々戸浜
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