海岸線をどこまでも西へ
伊豆半島の旅もいよいよ下田から伊豆半島最南端をめざす
◆第9日目 (2014年5月11日) 多々戸 〜 石廊崎
予定では今日あたり伊豆半島最南端である石廊崎に到達してもよい行程であるが、どうなるだろう。
現在地
もう9日目を迎える伊豆半島の旅も、下田を過ぎると鉄道がなくなり、さらにローカルでのんびりしたユルイ感じになってきた。前回は多々戸浜で終わったので、下田駅9時発のバスに乗って多々戸バス停で降りる。
1 多々戸バス停 2 ホテルジャパン下田入口
ホテルジャパン下田の派手な看板を過ぎると、入田浜の入口があったので左折する。
3 入田浜入口 4 入田浜 その1
朝のビーチにブラブラと散歩している人がいる。地元の人には見えない。キレイ目の洋服を着て、なんとなく高貴な雰囲気を醸し出している。
多々戸浜と入田浜は岩場で分断されていて、直接行き来はできないようだが、その間の丘に建っているのが、ホテルジャパン下田である。会員制高級リゾートクラブとして有名だが、特にここ、下田はそのロケーションの良さで有名らしい。
というわけで、散歩していたのは、そこに宿泊していたお金持ちということで、納得である。
5 入田浜 その2
6 入田浜 その3
7 無人販売所 8 田牛・大浜入口
下田から石廊崎までは、それほど大きくないビーチが岩場と交互に連続している。次のビーチは大浜であるが、ここは、今回最も楽しみにしていた海岸である。というのも、25年前以上前に訪れた時の鮮烈な印象が頭からはなれないからである。写真8を左折して、川沿いに下っていく。
9 大賀茂川 10 大賀茂川を下る
川沿いには、美しい遊歩道が作られており、大浜への期待で胸が高鳴る。
11 河畔の遊歩道
12 はまぼうブリッジ
河口が見えた。その右側に、当時、下田で最も美しいと思ったあの大浜が広がっている....はずであった。
13 大賀茂川河口 14 大浜海岸 その1
15 大浜海岸 その2
白い美しいビーチである。が、しかし、他のビーチと変わらない。昔とは似ても似つかない平凡な海岸になってしまっている。その理由はすぐにわかった。河口と海岸線には無残にもコンクリートの防波堤ができてしまい、砂浜を分断していたのである。
25年前、若くて元気が有り余っていた私と友人達は、ディンギーを車の屋根に積んで、南伊豆の海岸を順番に渡り歩いて、大浜に差し掛かっていた。車を停めるが、海は見えず、山のような白い砂丘が目の前に広がっていた。その丘を登りきった高みからみた大浜の姿は忘れられない。砂丘からスロープで広く白い砂浜が続き、その向こうには真っ青な海と空が広がっていたのだった。感動というよりも衝撃といったほうが良いかもしれない。その長いビーチをディンギーを引っ張って横切る作業も、あまりの興奮で全く苦にならなかった。その日は、強い風が吹いており、セールを全開にできないようなスピードだった記憶がある。
その白い砂丘と、どこまでも続く砂浜はどこへ行ってしまったのだろうか。砂丘は防波堤により破壊され、内側は駐車場になってしまったようだ。おそらく、写真17の左手の奥、建物があるあたりが砂丘の最も高い部分だったのだろう。日本の海岸土建行政のコンクリート至上主義の無神経さに腹が立って仕方がなかった。25年振りの同窓会で、クラスのアイドル美少女の変わり果てた姿をみるほうが、まだましである。
あの、思い出の大浜海岸はもうどこにもないのか。それとも、ただの勘違いで、元々そんな風景はなかったのか。ショックで、なんだかよくわからなくなってきた。
16 大浜海岸 その3 17 大浜海岸 その4
あまりのことに落胆しながらも、気を取り直して南へ向かう。
18 大浜海岸 その5 19 碁石が浜へ その1
20 碁石が浜へ その2
21 碁石が浜へ その3
22 碁石が浜へ その4
碁石が浜の山側は、開発されていた。別荘地なのだろうか。
23 碁石が浜 24 田牛へ その1
25 長磯バス停 26 リゾート
いくつかの短いトンネルを過ぎると、サンドスキー場の標識が現れた。
27 田牛へ その2 28 サンドスキー場標識
29 サンドスキー場を見下ろす
テレビでも紹介されることがある、サンドスキー場である。海岸の急斜面に砂が溜まっている不思議な光景である。
30 サンドスキー場案内板
長い階段を下って、海岸に降りてみる。
31 サンドスキー場前の海岸
32 サンドスキー場 33 岩脈
写真33は、岩の隙間の溶岩の通り道だそうである。
34 竜宮窟とサンドスキー場解説板
35 竜宮窟入口 37 竜宮窟 その1
竜宮窟へ暗い階段を降りていく。海に通じる洞窟が前方に見え、天井はぽっかりと抜けて、太陽の光が降り注いでいる。不思議な空間である。外国人の親子連れが盛んに写真を撮っていた。
38 竜宮窟解説板
39 竜宮窟 その2 40 竜宮窟 その3
41 竜宮窟 その4 42 竜宮窟 その5
空から見た竜宮窟
43 田牛海岸道路開通記念碑 44 田牛海岸 その1
再び外に出ると道路完成の記念碑があった。今から42年前、昭和40年代の完成であるが、それまではどうやってここまで来ていたのだろうか。青野川からの細い山越えの道しか無かったのだろうか。秘境のようなところだっただろう。
ここの地名は「田牛」と書いて「とうじ」と読む。現在でもこの海岸線を南に抜ける車道はなく、行き止まりである。そういう意味では、道路ができても最果て感たっぷりだ。
45 田牛海岸 その2
子供が小さい時に家族で泊まりにきたペンションがそのまま残っていた。懐かしい。ここに一泊した次の日、下田市内の大きなホテルに泊まったのだが、その時に子供が言った一言をよく覚えている。「パパ、今日は大きいホテルに泊まれてよかったね。」洋風民宿は、小さな子供にとってはお気に召さなかった様だ。わが子ながら生意気なクソガキ...いやお嬢様だな、と思ったのでよく覚えているのである。
46 田牛海岸のペンション 47 前の浜バス停
48 田牛海岸 その3
49 田牛観光案内
この美しい田牛海岸も一日数本のバスが来るだけで、のんびりしているが、徒歩なら弓ヶ浜方面に抜けられる道がある。タライ岬遊歩道というシーサイドトレイルで、これからそこを抜けていこうというワケである。
50 タライ岬遊歩道入口 51 現在地
52 民宿 53 タライ岬遊歩道のトンネル
トンネルを抜けてもしばらくは舗装道路が続き、最後の民家は小さなかわいらしい宿泊施設だった。ここは、
「今日、恋をはじめます」
という映画のロケに使われたらしい。
54 タライ岬へ その1 55 タライ岬へ その2
56 タライ岬へ その3 57 海岸に建つ慰霊碑
58 タライ岬遊歩道から見下ろす海岸
豪快な海岸の風景が続く。
59 現在地 60 タライ岬遊歩道未舗装部分へ
いよいよ舗装がなくなり、登山道になった。結構アップダウンがあり、登山と変わらない。
61 椿園解説 62 椿園 その1
63 椿園 その2 64 タライ岬分岐
65 現在地 66 タライ岬へ その4
分岐を左折して、タライ岬に向かおう。ジャングルを抜けて、いったん海岸に降りる。
67 タライ岬へ その5 68 タライ岬へ その6
69 タライ岬東側の海岸 その1
70 タライ岬東側の海岸 その2
再び岩場を登るとタライ岬だった。
71 タライ岬標識 72 タライ岬からの眺め その1
270度遮るものがないすばらしい眺めである。車道もないので、人が少なく、静かな絶海の孤島にいるような孤独感を感じる。
73 タライ岬からの眺め その2
74 タライ岬からの眺め その3
75 タライ岬からの眺め その4
76 タライ岬からの眺め その5
タライ岬の名前の由来であるが、写真76の岩を船から眺めるとタライに見えるという噂があるが本当だろうか。
77 現在地 78 健脚コース分岐
79 健脚コースの階段 80 らくらくコースと合流
健脚コースと楽々コースの分岐に着いた。距離は同じで、健脚コースは丘に登っておりるらしい。海岸線を少しでも忠実にたどるということだと、健脚コースになるので、疲れた足を階段に運ぶ。
山道を抜けるとひなびた海岸に出た。逢ヶ浜である。いかにも伊豆らしい奇岩の並ぶ静かな浜である。
81 逢ヶ浜 その1 82 逢ヶ浜 その2
83 逢ヶ浜 その3
84 逢ヶ浜解説板
85 別荘地 86 津波避難場所
きれいな別荘地を抜けて、ちょっと小高いところにトレーラーハウスがおいてあった。津波避難場所と書いてある。
87 弓ヶ浜へ 88 弓ヶ浜 その1
そして、その先を下って行くと、パームツリーの並木の向こうに弓ヶ浜が見えた。
89 弓ヶ浜 その2
90 弓ヶ浜 その3
91 弓ヶ浜 その4
92 弓ヶ浜 その5
93 弓ヶ浜 その6
名前のとおり、コンパスで書いたような恐ろしく整った円弧を描いている。コンクリート堤防もなく、大浜があのようになってしまった今、伊豆東海岸では最も美しいビーチと言っても良いかもしれない。津波とか高波対策という名目で、このビーチがコンクリートで破壊されないことを祈るばかりである。
ここでの津波対策といえば、写真94で、コンクリートの堤防よりずっとマシである。
94 津波避難タワー 95 喫茶店?
弓ヶ浜にずっと滞在したい気持ちを振りきって、北へ向かう。というのも、弓ヶ浜から南に青野川河口をわたる橋はないので、北に大きく迂回して、1km上流にある弓ヶ浜大橋を渡らなくてはならないのだ。
96 不思議な店 97 弓ヶ浜大橋へ
98 弓ヶ浜大橋から下流を望む
橋をわたって青野川右岸を河口に向かう。石廊崎方面への道路でもある。
99 青野川を下る 100 手石港
101 青野川河口
南伊豆を代表する海と川と空の風景にしばし見とれて、佇む。弓ヶ浜が美しい砂浜となったのは、この青野川が運ぶ砂のおかげだろう。この川もコンクリートで巻かずに出来るだけ環境を保全してもらいたいものである。
102 旧道のトンネル
伊豆半島は、岬すなわちトンネルを抜けると全く違う海岸風景になるのが面白い。連続パノラマである。
103 手石の弁財天岬方面を振り返る
104 下流漁港 105 漁協下流出張所
下流と書いて「したる」と読むらしい。
106 赤穂浦
赤穂浦から岬を越えると、海辺に学校があった。しかし、人家は殆ど無い。生徒はバスで通うのだろうか。
107 日の出が浦 その1
学校の前にはバス停があり、日の出が浦というバス停だったので、この海岸は、日の出が浦というのだろう。日の出が浦と名づけられた海岸から、朝日を見てみたいものである。
それにしてもこのバス停は、名前もさることながら、白いペンキで塗られ、後ろにはマリンブルーの海があるだけというロケーションはまるで映画のロケのために作られたようである。
108 日の出が浦バス停
109 日の出が浦 その2
110 日の出が浦 その3
111 大瀬漁港 112 石廊崎へ その1
大瀬漁港を過ぎると再び名もない岬を越えて、本瀬海岸になる。
113 石廊崎へ その2
114 本瀬漁港を見下ろす
115 本瀬海岸
116 走雲峡ライン 117 南伊豆亜熱帯公園 その1
写真116は北へ抜ける道である。そして、亜熱帯公園を過ぎると交番があり、さらに、古びたバス停があった。下田行きのバスの時刻を確認すると17時すぎまでないようだ。石廊崎といえば結構有名な観光地だと思ったが、バスがほとんど通っていないのは驚きである。
118 南伊豆亜熱帯公園 その2 119 石廊崎港口バス停
120 石廊崎港への分岐 121 石廊崎港バス停
写真120の分岐を石廊崎へ向かうと、数分で石廊崎の集落に着いた。ここにもバス停があるのだが、ちゃんと下田方面のバスの時刻が書いてある。よく読むと、石廊崎のバス停は複数あり、とてもわかりにくくなっている事がわかった。注意が必要である。帰りのバスの時刻を確認すると45分後であることがわかった。
122 漁協石廊崎出張所 123 石廊崎港
漁協を過ぎると正面に広い駐車場と港があった。観光船がもうすぐ出発するとアナウンスしている。観光船の所要時間は25分だといっているので、何とか次のバスに間に合いそうだ。せっかくなので、伊豆半島最南端の石廊崎を海側から見たいと思うと、体が反射的に船着場に向かって走りだしていた。
124 マリンバードおしどり 125 観光船に乗り込む
切符売り場で急いで1300円を払うと、マイクでアナウンスして出港を待ってくれた。急いで乗り込むと乗客は親子連れと私の2組だけであった。
126 船から石廊崎港を振り返る
船は細長い天然の湾になっている石廊崎港を出発し、湾の外に出て行く。
127 湾の外へ
128 石廊崎灯台
石廊崎灯台と観光客が見える。カメラを落とさないよう首にかけて写真を撮る。
129 船から石廊崎を振り返る 130 観光船客席
131 観光船から奥石廊崎方面を望む
132 観光船から大根島を望む
133 観光船からヒリゾ浜を望む
水がきれいな伊豆半島の中でも最も透明度が高く美しいと言われているのが、大根島と奥石廊崎に挟まれた海路、ヒリゾ海岸と呼ばれる一帯である。
ヒリゾ浜
に行くには、海路しかない。
134 ヒリゾ浜の透明度の高い海 135 観光船から中木を望む
水深はそれほどでもないので、シュノーケリングで素晴らしい海中が見られるらしい。
136 反転して石廊崎港へ 137 石廊崎へ戻る
伊豆半島の南端石廊崎を堪能できた船からの眺めであった。石廊崎といえば、御前崎や室戸岬とともに、台風の現在位置のニュースで有名でもあるが、今日のような日には、台風の暴風雨は想像できない穏やかさである。
15時に港に戻って、石廊崎港口まで坂道を登って行くと、建物の中にバス停があり、15時15分発下田行きのバスが待っていた。帰りのバスで疲れた体を座席に沈めながら、ぼんやりと景色を眺めて下田駅に向かった。
138 石廊崎港口 140 伊豆急車内での反省会
GPSによる本日の歩行経路 (時間:6h00m 距離:29.2km )
今日は、南伊豆相模湾側の美しいを余すことなく体感できた、素晴らしい一日だった。大浜は残念だったが、多すぎる漁港を除けば、海岸線にはまだ自然が多く残されており、亜熱帯の気候と素朴で美しく澄んだ海が我々を迎えてくれる。
最後に、伊豆半島最南端の地、石廊崎を海からみることができたのも、神様の図らいだったのだろうか。
(本日の歩数:32282歩)
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