海岸線をどこまでも
本州一周 (になるかもしれない旅) 千葉県を踏破中
◆第12+24日目(2010年1月2日)
飯岡
〜
外川駅
2006年に開設したこのサイトであるが、もう4回目の新年を迎える。お正月は家族揃って過ごすのが世間並みというものだが、なぜかいつも寒風吹きすさむ環境にいるような気がする。私には人並みの幸せを望む資格などないのだろうか。
正月にどこにいたのか、過去を振り返ってみよう。
2007年1月3日 横浜市(鶴見川)
2008年1月2日 川崎市(京浜工業地帯)
2009年1月2日 千葉県いすみ市
そして、2010年の新年早々、なぜか、ここ、千葉県の東端に近い旭市にいる。これからいったいどこまで歩き続けるのか、旅はいつ終わるのか、それは私自身にもわからない。もしかしたら、北の果ての海岸で行き倒れて、そのまま誰にも発見されずに土に還る運命なのかも知れない。
という、ハードボイルドな書き出しで始まった2010年であるが、今日も早起きして、東海道線、横須賀線を乗り継ぎ、東京駅から旅行気分で特急しおさいに乗り込んだ。旭駅に着くが、もうすでに陽は高い。ここから飯岡までのバスは、30分以上待たなければならない。朝食を食べて、ついでに昼食も買おうと思って駅前を見渡すが、コンビニの一軒すらない。駅の売店も閉まっており、自動販売機で暖かいコーンスープを買ってしのぐ。
旭駅は特急停車駅であるが、正月だということを差し引いても、なんとものんびりした駅前である。正面には、写真3のようなひなびた神社があるくらいなので、都会の駅前の賑やかなイメージは捨てなければならないようだ。ことわっておくが、個人的にはこんな駅のほうが好みである。
1 旭駅に着いた特急しおさい 2 旭駅
たった2人の乗客を乗せて出発したバスを飯岡の街で降りると、すぐに、いいおかみなと公園である。
3 駅前の神社 4 いいおかみなと公園 その1
天気は良く、広々した海沿いの公園は気持ちがいい。ところが、海に突き出した立地上、とにかく風が強く、尋常な寒さではない。凍死してもいけないので、トイレで帽子、上下を着込んで防寒体制を強化してから歩き始める。当日の天気図を見ても等圧線が密になっているのがわかる。
本日の天気図 (日本気象協会 tenki.jp)
5 いいおかみなと公園 その2 6 いいおかみなと公園 その3
7 いいおかみなと公園 その4 8 飯岡漁港から見た刑部岬
漁港を通り、地図に載っている、岬へ続く台地に上がる道を進む。途中には、写真10のような精々しい神社があった。
9 刑部岬への道 10 海津見神社
台地の上からみる景色は絶景であった。空が恐ろしいほど澄んでいる。
11 刑部岬への道からの眺め その1 12 刑部岬への道からの眺め その2
13 ちばてつやの碑 14 飯岡灯台 その1
地元出身の漫画家のモニュメントを過ぎて、飯岡灯台に着く。ここが、九十九里浜から正面に見えていたあの刑部岬である。ちなみに「ぎょうぶみさき」と読むようだ。
15 飯岡灯台解説版
灯台はとても小さく頼りない気がする。その隣にある展望館の方が大きく、立派である。
16 飯岡灯台 その2 17 岬から見た太平洋
18 屏風ヶ浦と刑部岬解説版
19 展望館と灯台 20 展望台
21 飯岡刑部岬展望館解説版
22 展望台から飯岡漁港と九十九里浜を望む
ここからの眺めは写真では表現できないほど雄大だ。長大な九十九里浜が終わり、ここからいよいよ屏風ヶ浦が始まるのだ。
23 展望台からのパノラマ
正月のドライブがてらにこの景色を見に来る人は結構いて、岬は賑わっている。
24 岬のレストラン 25 九十九里平野
岬からすこし戻って、東に向かう道を行く。屏風ヶ浦の上は台地になっているが、残念ながら海沿いの道はない。海は見えないが、集落の中を進んでいく。
26 上永井地区の石仏 27 素朴な神社
お正月ということで、道端の神聖な場所には、ちゃんと地元の人がお供え物をしている。
28 農道から海を見る 29 餅が供えられた石塔、石仏群
30 丘から海を望む 31 道端の祠のお正月
緩やかな起伏が続く。磯見川を渡ると、旭市から銚子市に入るが、雰囲気は農村風景そのもので少しも変わらない。
32 畑と海 33 石標群
歩いていると、このあたりの家々がどれもお城風で、やたらと立派なことに気がついた。お金持ちの農家なのか、家にお金をかける人が多いのかはわからないが、建物の趣味はなぜかみんな一致しているようだ。農村地帯でも、大抵は若い住人が場違いな洋風の家を建ててしまったりするものだが。
面白いので、豪邸の写真を並べておく。
34 旭市上永井〜銚子市小浜町付近の豪邸 その1
35 旭市上永井〜銚子市小浜町付近の豪邸 その2
36 八幡神社 37 台地上に建つ風力発電装置
遠くからでも目立っていた、風力発電の風車が間近に平坦な広い畑の中に立っている。屏風ヶ浦は一年中風が強いのだろう。畑の向こうは、屏風ヶ浦の断崖と青い海があるはずだが、ここからみることはできない。
38 畑の中の風車
39 海岸にある廃墟 40 銚子市衛生センター
台地が途切れた部分があり、久々に海が見えた。行こうと思ったが、残念ながら立入禁止であった。
41 海に続く道 42 豪邸
43 銚子特別支援学校 44 屏風ヶ浦上の畑
台地の端がギリギリまで畑になっている。畑の外側は草が生えておりそのまま崖になっているようなので、うかつに近づけない。突然の断崖絶壁になっていることだけは確かである。
45 崖上の畑からの光景
畑の真ん中には、巨大なショッピングセンターが完成し、静かに開業を待っていた。
46 イオンショッピングセンター 47 三崎橋
ここで、谷にぶつかり、迂回する。三崎橋からみる池は美しい。見た感じでは川を堰き止めた、人工的な溜池のようにも見える。
48 三崎橋から下流を望む 49 三崎橋から上流を望む
ここで、大きな道路に合流する。銚子ドーバーラインという愛称がついているが、起伏のある真っ直ぐな道路である。
50 道沿いのホテル 51 真っ直ぐな銚子ドーバーライン
海側に塀があったので、近づいてみると、牧場であった。見ていると、突然黒い牛が突進してきたので、慌てて塀を離れる。
52 肉牛牧場 53 屏風ヶ浦への降り口 その1
海へ降りる道があったので、危険崩落あり立入禁止という立て札を無視していってみる。当然のことながら、このような行為を推奨しているわけではないので、これを見て実際に行ってみようという方はあくまで自己責任でお願いしたい。
54 海へ降りる道 55 屏風ヶ浦断崖 その1
そこにあったのは、時にドーバー海峡に準えられる、日本とは思えないようなダイナミックな風景であった。
56 屏風ヶ浦断崖 その2
57 屏風ヶ浦断崖 その3
ロケ地として盛んに使われるのもわかるような、大自然が創り上げたなんとも雄大な光景である。
58 銚子ドーバーラインへ戻る 59 屏風ヶ浦への降り口 その2
再び、海に降りられる場所があったので、行ってみた。これらの道は、崖の景観をみるために作られたわけではなく、その目的は崖下の侵食防止のコンクリート構造物の建設や維持のためであろう。
60 崖上の不思議な空間 61 崖上から下を覗き込む
62 地層の間からの湧水 63 消波ブロック
屏風ヶ浦の侵食は半端ではなく、年間数mにもおよんだという。崖の下に続くコンクリートは、崖の侵食を止めたが、同時に九十九里浜への砂の供給も止まってしまったのである。景観的にも、テトラポッドは美しくない。ちなみに
本物のドーバー海峡の崖
にはこうしたものはないらしいが、狭い国土と土地に執着する国民性、利権に群がる土建国家日本の姿と先進国イギリスの
トラスト活動
を比較するのは酷であろう。
64 屏風ヶ浦断崖 その4
65 屏風ヶ浦断崖 その5
66 銚子ドーバーラインと風車 67 地球展望館を望む
正面に小高い山が見える。頂上には、あの
360度の展望で有名な施設
がある。
68 屏風ヶ浦への降り口 その3 69 銚子ドーバーライン
埋立地につく。銚子マリーナと千葉科学大学がある。
70 銚子マリーナ管理棟 71 ドッグラン
マリーナの横には、海に面して公園があった。そこは、あの屏風ヶ浦を一望できるところであった。
72 銚子マリーナ海浜緑地公園その1 73 公園から見る屏風ヶ浦
74 屏風ヶ浦パノラマ写真
崖が延々と続くが、先端はあの刑部岬だろうか。崖の上には白い風車が並んでおり、なかなか雄大な眺めである。
75 銚子マリーナ 76 海浜緑地公園の砂浜
77 砂浜から見る屏風ヶ浦 78 波打ち際から見る屏風ヶ浦
79 突堤から見る屏風ヶ浦
遊歩道が続いており、その横には夕陽でオレンジ色に染まった崖が続いている。屏風ヶ浦の延長である。よくみると、崖には侵食でできた海蝕洞があった。ということは、本来の海岸線はこの崖のはずである。つまりこの遊歩道は、崖を守る防波堤だったのである。崖は海との荒々しい戦いをしなくなって、心なしか手持ち無沙汰のような感じがする。
80 海蝕洞 81 夕陽に照らされる崖
82 突堤から見る崖と海蝕洞
83 千葉科学大学遠景 84 千葉科学大学 その1
海に面した大学は新しく、タイル貼りの建物が並ぶキャンパスは美しい。
85 千葉科学大学 その2 86 千葉科学大学 その3
87 千葉科学大学 その4 88 名洗港マリーナ完成予想図
89 犬若漁港 90 犬若食堂
港の片隅にポツンと建つ食堂が、夕陽に照らされていた。
91 外川漁港 その1 92 外川漁港 その2
93 千騎ヶ岩 その1 94 千騎ヶ岩 その2
95 千騎ヶ岩解説版
せっかくの景勝地も埋立と漁港によって見る影もない。下の地図の80番から90番にかけての地域が埋め立てられたのだろう。地図に書いてある埋立地背後の崖の線が昔の海岸線だと思われる。
96 外川漁港 その3 97 外川町の街並み その1
外川漁港の後ろには、坂の街が広かっている。
98 外川町解説版 その1
99 外川町解説版 その2
100 外川町の街並み その2 101 外川町の街並み その3
夕日を浴びながら漁村の面影を残す坂道を登っていくと、銚子電鉄線の終点である外川駅についた。
102 外川駅と夕陽 103 銚子電鉄外川駅に停る電車
まるで50年前に戻ったような駅舎と、それにふさわしい電車が止まっていた。
104 外川駅 105 外川駅出札口
106 銚子駅に着いた電車
銚子駅につくと、ちょうど東京行きの特急が待っていた。車内でビールを飲みながら沈みゆく夕陽を眺めて、今日の一日を振り返った。
今日は屏風ヶ浦がすべてであった。風車が林立する緑の台地が突然の断崖となって海に落ちていく、日本ではなかなか見られないダイナミックな景色だが、海沿いの道はないので、歩き通すのは大変だ。この大地を海が削っていく自然の摂理が失われてしまった今、本来は海に還り九十九里浜の砂になるはずであった屏風ヶ浦の台地は開発が少しずつ進んでいる。
次回はいよいよ銚子市中心部に迫る。
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