伊能忠敬の足跡を訪ねる旅      

 
このサイトにおいて師と仰ぐ伊能忠敬についてここで改めて紹介できるほど博識ではないが、忠敬に関する史跡を実際に訪ねてみたので、紹介しよう。知恵がなければ、体を使えということである。


◆出生地(千葉県九十九里町小関) 2009年5月2日

 忠敬は、1745年に上総国小関村の名主である小関家に生まれた。10歳で小堤村(現在の横芝町)の父の実家の神保家に引き取られるまで住んでいた場所がここだ。場所はこのあたり
 妙覚寺というお寺の近くで、明るい雰囲気である。昔は半農半漁の村だっただろう、という印象の場所だが、九十九里浜の海の恵が豊かな土地だったらしい。裕福だった生家は残っていないが、跡地は史跡として町が公園を整備し、銅像や解説板がある。かなり広い敷地である。
 実はここは「海岸線をどこまでも」というプロジェクトで九十九里町を歩いている時に訪れたところで、オリジナルの記録はこちらである。

 1 伊能忠敬出生の地案内板               2 
伊能忠敬記念公園 その1
   

  3 伊能忠敬記念公園解説板 その1
  

  4 伊能忠敬記念公園 その2             5 伊能忠敬記念公園 その3
   

 ここには、天体観測により緯度を図っているらしい忠敬の銅像がある。

  6 伊能忠敬記念公園解説板 その2
  

 公園の一角には、測量の様子を示した有名な浮世絵も。

  7 伊能忠敬記念公園の測量風景図
  

 忠敬は、1801年、56歳の時に房総半島を測量しているので、この故郷も歩いたはずである。どんな気持ちだっただろうか。


◆伊能家と佐原の街(千葉県香取市) 2010年12月19日


 忠敬は、長男ではなかったため、家督が継げず、17歳で佐原の名家である伊能家に婿入りする。当主が亡くなって傾きかけた家運を立て直し、家を再興したのである。その佐原、現在の千葉県香取市を訪ねてみた。
 駅を降り、まず向かったのが佐原公園である。ここに伊能忠敬の銅像がある。

  8 佐原公園の伊能忠敬像
   

   9 佐原公園の銅像解説板
  


 次に、本日の目玉とも言うべき、伊能忠敬記念館を訪ねてみよう。

  10 伊能忠敬記念館入り口                11 記念館外観
   

 外観は、古い町並みにマッチしている。外には、銅像と記念の一等水準点がある。ところで、水準点というものは移動させても良いものなのだろうか。

  12 記念館にある水準点の解説
  

 期待に胸をふくらませて中に入ってみる。さすがに、伊能図をはじめ、測量機器や記録文書等の展示が充実している。国宝も多く、まさに日本の天文学、地理学、測量技術の原点と言える素晴らしい物ばかりである。しかし、残念ながら写真を撮る事は禁止されているため、皆さんに紹介できないのは残念だ。せめて、パンフレットを載せておこう。

   13 記念館パンフレット その1
  

 14 記念館パンフレット その2


 記念館の前の橋を渡ると、伊能忠敬の旧宅がある。

 15 対岸から見た伊能忠敬旧宅


  16 伊能忠敬旧宅の標識                17 旧宅解説板
   

 伊能家の財力を物語るようになかなか立派な家である。

 18 旧宅外観


  19 ざしき                     20 書斎内部
   

 書斎は忠敬の設計らしい。

 21 書斎外観


 22 庭にある解説板


  23 伊能忠敬家訓の碑                 24 銅像と記念碑
   

 伊能忠敬が財をなしたのも、利根川水運の中継地点による佐原の繁栄があったからに他ならない。小野川を中心として古い町並みがよく保存されているので、歩いてみた。

       25 佐原の町並み解説板
  

 26 佐原子育て地蔵尊前


 27 諏訪神社 その1


 28 諏訪神社その2

  29 諏訪神社 その3                 30 諏訪神社 その4
   

 31 諏訪山展望台から見た佐原の町並みと利根川

  32 佐原の町並み その1              33 佐原の町並み その2
   

  34 佐原の町並み その3              35 佐原の町並み その4
   

 36 佐原の町並み その5               37 佐原の町並み その6
   

  38 佐原の町並み その7              39 佐原の町並み その8
   

 時代劇に出てきそうな見事な町並みである。

 40 佐原の町並み その9


  41 佐原の町並み その10              42 佐原の町並み その11
   

 43 佐原の町並み その12

  44 佐原の町並み その13              45 佐原の町並み その14
   

 舟にはこたつがあり、暖かそうだ。

  46 観光舟                      47 佐原の町並み その15
   

 48 佐原の町並み その16

 小野川を下ると、やがて利根川と合流する。

  49 小野川水門                   50 利根川との合流地点
   

 伊能家に婿入りした忠敬は、己の努力と才覚で成功し、その財力により、隠居後の学問と初期の測量を行うことが出来たのである。また、佐原の名士として、飢饉の時に村人を助けるなどの功績により、苗字帯刀を許されている。それだけでもすごいことだが、50歳を過ぎて隠居してからさらに江戸に出て学問をし、大きな仕事を成し遂げたのだから、やはり歴史に名を残す人は凡人とは違うものだ。


◆江戸の伊能忠敬(東京都台東区・江東区) 2010年12月29日


 1795年、50歳になった忠敬は江戸に出て、高橋至時(よしとき)の弟子になる。至時はまだ31歳ながら、幕府天文方、つまり当時の日本の天文学、暦学の最高峰に位置する学者である。至時が活躍し、忠敬も通った幕府の天文台は、浅草にあった。
 浅草橋駅から、江戸通りを北に行くと蔵前一丁目の交差点があり、その一角に解説板がある。

  51 蔵前一丁目交差点                 52 交差点横に建つ解説板
   

    53 天文台跡解説板
   

 当時の天文台の様子は、鳥越の不二(浅草天文台の図)に描かれている。実際の天文台は通りを一本挟んだ西側で、かなり広い敷地を占めていたようであるが、現在は写真54のようにビルが立ち並び、往時の面影はない。

  54 天文台跡の現在の街並
   

 伊能忠敬の江戸での住まいは、深川であった。
 忠敬の住居跡は、門前仲町駅を降りて北へ少し歩いた葛西橋通り沿いにあるが、電柱の影に隠れてうっかり見落としてしまいそうなところにある。もちろん、現在は建物が立ち並び、全く痕跡はない。忠敬はここから4kmほど離れた浅草の天文台に通ったのである。その距離を測量し、緯度から地球の半径を求めようとして至時に笑われたという逸話が残っている。しかし、それならばと、江戸から蝦夷地までの測量を実行し、それが評価されて全国の測量へと継ったのだから、やはりただ者ではない。

  55 伊能忠敬住居跡                  56 伊能忠敬住居跡石碑
   

 次は、測量の旅に出る前に立ち寄り安全祈願をしたという、富岡八幡宮である。

  57 富岡八幡宮                    58 境内にある伊能忠敬像
   

  59 伊能忠敬銅像解説板
  

 こうして、苦難を乗り越えてついに全国の沿岸と主要街道を測量した忠敬は、地図の完成を見ること無く、1818年、74歳で亡くなったが、当時それは秘密にされていた。地図の完成により、亡くなったことがやっと公表され、葬られたのが、上野浅草の源空寺である。
 その墓所は上野駅から東に歩いて10分ほどのところにある。

  60 源空寺                      61 墓所入口
     

 入口から入って最初に目につくのが、高橋景保の墓である。景保は至時の長男で、父の跡をついで幕府天文方となった。忠敬の死後、地図は景保の努力により完成し、幕府に上程されて絶賛される。しかし、その禁制の地図をシーボルトに渡してしまい、それが国外に持ち出されようとしたことから、景保は投獄され、獄死してしまった。これが、有名なシーボルト事件である。景保の墓は小さく墓石も新しい感じがする。罪人となってしまったためだろうか。

  62 高橋景保墓                    63 高橋至時墓
   

 その隣にあるのが、忠敬の師、景保の父である高橋至時の墓である。

  64 高橋至時墓解説板
  

 その奥にあるのが、写真65の伊能忠敬の墓である。なぜか左隣にある燈籠の向こうの高橋至時の墓よりも大きい。若くして亡くなった師の隣に葬ってほしいというのが、忠敬の願いだったそうだ。

 65 伊能忠敬墓


  66 伊能忠敬墓解説板
  

 このように、年は離れているが、伊能図の完成に深く関わった3人が仲良く並んで眠っているのは、なぜかほっとする光景である。あの世では、今も3人で地図の出来栄えについて話し合っているのかもしれない。


 伊能図は、幕府だけでなく当時日本を植民地にしようとしていた諸外国からも絶賛され、明治時代になっても使われていた。伊能図に取って代わる地図ができるのは、陸軍が行った近代測量まで待つことになる。

 
参考:伊能忠敬測量隊(渡辺一郎編著 小学館)     

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