|
よこやまの道(多摩丘陵)
歴史を感じながら多摩丘陵の尾根を歩く都市近郊の手軽なトレイル |
◆ 2015年1月11日
神奈川県境を一周した時に、多摩丘陵の尾根で迷い込んだ遊歩道が「よこやまの道」である。多摩市が多摩丘陵の尾根道を整備して設定した遊歩道だが、県境は途中から左に逸れてしまったため、全線を歩くことができず気にかかっていた。今日は、そのよこやまの道を全線踏破することが目標である。
この尾根と遊歩道については、私が書くよりも、多摩市の解説に詳しいので、掲げておこう。
多摩市HP「よこやまの道」から抜粋
多摩市HP「よこやまの道」から抜粋
素晴らしい着眼点だと思う。このトレイルを作ったのは、多摩市である。しかし、市役所関係者の方には申し訳ないが、市職員や議員がこういう斬新な発想をするだろうか。違和感を感じていたら、市のホームページや現地の解説板の監修者に宮田太郎という人のクレジットがあった。地元の歴史・古道研究家らしい。おそらくこの人の発案だろう。歴史に焦点があたっており、地形や自然についてはあまり触れられていないのもそのせいである。蛇足であるが、この宮田さんのホームページを見ると、火曜サスペンスに出てきそうな、かなりのイケメンである。
もちろん、実現のための整備や土地利用関係の調整は多摩市他関係自治体や住宅・都市整備公団(UR都市機構)が苦労したはずなので、多くの人の努力によって実現したということは間違いない。
さて、市のホームページには下のような地図もついていて、なかなか親切である。
よこやまの道東半分(丘の上広場〜一本杉公園)
今日は東端から歩く予定なので、スタートは丘の上公園である。ここへの最寄り駅は、多摩市作成の地図でも、それを元に書かれたであろうWikiでも京王若葉台駅となっているが、これは誤りである。小田急多摩線はるひ野駅の方が明らかに近い。では、なぜ、多摩市は事実を曲げてまで京王電鉄を贔屓するのだろうか。若葉台駅が多摩市内にあるのならわからないでもないが、実際は稲城市と川崎市との境界上に駅はある。
おそらく、はるひ野駅が2004年に開業したことが理由だろう。調べてみると、よこやまの道は、2003年4月5日に、多摩東公園の丘の上広場から大妻女子大までの7.5qが一般開放されたようだ。全線開通は2006年である。つまり、よこやまの道の部分開通時には、はるひ野駅はまだ無かったわけだ。だから、上の地図にも、はるひ野駅が書かれていないのだろう。
その後は、まさか市の担当者が気がつかないということはないだろうから、まあ、その程度ならいいか、という安易なお役所仕事になって、そのまま10年以上放置されているのだろうか。地図を書き直すのはお金がかかるかもしれないが、小田急線のほうが便利な人もいるので、せめてホームページに追加情報を載せるくらいはやってもよさそうである。これが入場料を取る民間企業だったら、考えられないことである。
よこやまの道西半分(一本杉公園〜長沼公園)
多摩市HP「よこやまの道」から抜粋
地図によると、西側の終点は長池公園らしい。鶴見川の源流を探索した時に辿り着いた懐かしい場所である。全長は約10kmなので、一日あれば楽勝である。ただ歩くだけなら、半日でもイケるかもしれない。
というわけで、湘南地方に住む私にとっては小田急線のほうが便利なので、はるひ野駅で降りる。スタート地点の丘の上広場までは、約1kmの距離である。ちなみに、若葉台駅からは、1.6kmである。上でごちゃごちゃ書いたが、要するに自分が便利な鉄道会社を使えば良いだけのことで、決して京王電鉄に恨みがあるわけでもなく、若葉台駅を使うべきではないと言っているわけでもない。でも、これだけ「はるひ野駅」を宣伝してあげたのだから、小田急電鉄から優待券か菓子折りの一つでも届くことを、期待していないわけでもない。
1 はるひ野駅 2 丘の上広場 その1
時刻は、8時56分。いよいよ丘の上広場から西へ向かおう。
ちなみに、丘の上広場の東側に続く尾根は写真3のように、道路や建物で開発されてしまっている。西側には、写真4のとおり、尾根地形と緑が残るよこやまの道が続いている。
3 丘の上広場から東の尾根を望む 4 丘の上広場 その2
5 丘の上広場から北を望む 6 諏訪岳へ その1
前回も感じたように、ここからの景色はほんとうに素晴らしい。尾根道も快適としか言いようがない。よく尾根地形が破壊されずに残ったものだ。尤も、多摩ニュータウンの開発にともなって、ほとんどの尾根と谷戸が破壊されたので、意図して残したというよりも、県境である尾根の一部だけが残ったというのが真相かもしれない。昭和30年代の多摩ニュータウン計画時にこの尾根を遊歩道にして残すという発想があったとは思えない。
7 諏訪岳へ その2 8 尾根からはるひ野駅を望む
9 諏訪岳へ その3
10 雑木林の解説
11 諏訪岳へ その4 12 諏訪岳
9時15分、標高144mの諏訪岳に到着したが、登頂記念の写真は撮らなかった。休日の冬の朝なので、ジョギングの人たちが通り過ぎるだけである。前回は写真13の分岐を右に行ったが、今回は左の道を行ってみると、川崎市営水道の配水池があった。ここは、丸山城址とされているようだが、詳細はよくわからないらしい。単なる烽火台・狼煙台だったという可能性もあるようだ。水道に圧力を掛けるための配水池があるくらいなので、附近で一番の高台であることは間違いない。
13 尾根道分岐 14 川崎市水道黒川高区配水池
写真13を右折して階段をあがると写真15の道に出る。どちらの道も写真16の展望広場に通じている。別名を防人見返りの峠というらしい。
15 展望広場へ 16 展望広場 その1
17 展望広場 その2
ここからの眺めは素晴らしい。よこやまの道でも随一の展望である。
18 展望広場から奥多摩・秩父方面を望む
19 展望広場から奥多摩方面を望む
20 展望広場から富士・丹沢方面を望む
21 展望広場 解説板
ここから展望できる山々については、上の解説板があるのだが、読みにくいので、今回撮影の写真を元に再構成してみた。
22 山座同定 その1(秩父方面)
23 山座同定 その2(奥多摩・奥秩父・七生丘陵・大菩薩方面)
24 山座同定 その3(奥多摩・富士山及び周辺の山々・西丹沢)
25 山座同定 その4(富士山・丹沢・大山)
丹沢が前にあるために富士山の裾野は見えない。こうしてみると、西には山々があるが、東には大きな関東平野があり、山がないことが実感される。
26 国士舘大学 27 川崎市黒川方面への道
国士舘大学についた。ここから都県境は左にそれていくのだが、そちら方面の道が大規模に改変されていた。明治大学の農場の開発によるものらしい。この辺りの秘境感もだんだん少なくなってくるのが少しさみしい気がする。
27−2 27と同じ場所(2011.1撮影) 28 鎌倉街道へ その1
そして、ここから先は未知の領域である。なお、前回歩いた記録はこちらである。
参考サイト 神奈川県一周 ◆第15日目 (2011年1月2日)はるひ野駅〜柿生駅
ここまでの素晴らしい尾根道がこの先も続くと思って期待していたが、残念ながら舗装道路やマンションが出てきて、ちょっと興ざめである。
29 鎌倉街道へ その2 30 鎌倉街道へ その3
31 中央卸売市場多摩ニュータウン市場 32 鎌倉街道の道標
広い市場では、消防署が集結してなにやら騒々しい。大規模な訓練でもやるのかと思ったら、出初式だったようだ。
33 鎌倉街道を越える 34 鎌倉街道解説板
陸橋で谷を渡る。谷は鎌倉街道だそうだ。
35 鎌倉街道の古道
それにしても、せっかくの貴重な歴史解説の解説板が汚れているのは残念である。作りなおさなくても、せめて簡単なクリーニングだけでもやれば良いのにと思う。
36 現在の鎌倉街道 37 一本杉公園へ その1
左へ入って再び尾根道になる。
38 一本杉公園へ その2 39 一本杉公園へ その3
尾根を登って下り左折すると、恵泉女学園大学である。ここで自販機の缶コーヒーを飲んで温まってから、一本杉公園に入る。一本杉公園到着は、10時29分、出発から1時間半かかっている。
40 恵泉女学園大学 41 一本杉公園 その1
池や古民家があるかなり大規模な公園である。このあたりでちょうど半分の行程だ。
42 一本杉公園 その2 43 旧有山家住宅
44 旧有山家住宅解説板
45 一本杉公園 その3 46 一本杉公園 その4
47 一本杉公園 その5 48 鎌倉裏街道(小野路道)
写真48の場所には杉並木が残り、鎌倉裏街道が確認されたという。新選組の土方歳三や沖田総司が日野方面から小野路での出稽古に通った道でもあると書いてあった。
49 一本杉公園 その6 50 すだじい
大きな木はスダジイである。
51 すだじい解説板
52 中坂公園へ その1 53 中坂公園へ その2
住宅地を抜けてわずかに残る崖の上の尾根を進んでいく。
54 中坂公園へ その3 55 キヤノンイーグルスグラウンド
左手にサッカーグラウンドが見えたと思ったら、ラグビーであった。道路でいったん尾根が分断され、写真56の案内に沿って再び坂を登ると中坂公園である。時刻は10時7分。
56 中坂公園へ その4 57 中坂公園
58 中坂公園から尾根を振り返る 59 中坂公園から西へ続く尾根
左の町田市側には怪しい施設があり、さらに進むと右側が南野の住宅街となる。
60 大妻女子大へ その2 61 多摩市南野/町田市小山田町境界
62 住宅街を西へ 63 テニスクラブ横の遊歩道
住宅街を進み、標識どおりに左折してテニスクラブの裏を抜けていく。
64 多摩市南野3丁目附近の道標 65 緑地と事業所に挟まれた小径
よこやまの道は、尾根幹線に合流し、コンビニを過ぎてから、写真67のところを左折するのだが、うっかり見落としてしまい、直進してしまった。
66 多摩ニュータウンの南端を行く 67 左折の道標
尾根幹線とゴルフ場の間に遊歩道が続いている。
68 東京国際ゴルフ倶楽部北 69 東京国際ゴルフ倶楽部
再び標識に基づいて右折すると、勝負塚である。
70 勝負塚 71 よこやまの道開通記念植樹とYの字橋
72 勝負塚解説板
73 新田義貞鎌倉攻め解説図
ここには珍しい分岐のある歩道橋が架かっていた。
74 Yの字橋 75 Yの字橋から尾根幹線を望む
76 ゴルフ場横を西へ 77 尾根幹線と並行するよこやまの道
78 印象的なデザインのビル(KDDI) 79 ゴルフ場にそって進む
右手には、公共施設が立ち並んでいるが、歩いている時はわからないので、何だかお金の架かっている大きな建物があるなあ、という感想を持っていた。
80 丘の上の建物(市立温水プール)
81 多摩市総合福祉センター
特に、写真81の中世ヨーロッパの城と城壁のような建物は、威容を誇っている。まさに要塞である。福祉施設なので、攻められることはないと思うが、レンガ造りの擁壁は、一兵足りとも寄せ付けないぞ、という気迫に満ちている。まあ、はっきり言ってやり過ぎだと思うが、多摩ニュータウンはパルテノン多摩を始め、この手の勘違いが多いような気がする。もっともそれが街の特徴なのでよそ者の感想など大きなお世話なんであるが。
82 城壁 その1 83 城壁 その2
その城塞の前の横断歩道を渡り、再び静かな尾根道になった。
84 尾根道に入る 85 広い尾根道
広い尾根道を行くと開けた場所に出た。
86 開けた尾根
広々としているのは、馬の牧場跡?らしい。
87 多摩丘陵の原風景解説板 88 小山田氏と小山田城解説板
平氏に属し、牧場経営をしていたらしい小山田氏もやがて頼朝に降伏しているが、戦国時代に武田家の重臣として、大月・都留・富士吉田あたりを領した小山田氏と繋がっているかもしれないということである。戦国時代には、当然この辺りは北条氏の領地だろう。
89 小山田緑地分岐 90 町田市側に広がる畑
写真90は町田市側、91は多摩市側で、尾根を挟んで対照的な景色である。
91 多摩清掃工場 92 雑木林の中を行く
93 尾根を下る 94 小田急喜多見検車区唐木田出張所
再び尾根を下ると右手に、小田急多摩線の終着である、喜多見検車区唐木田出張所が見える。右側の複線は相模原方面への延伸用だそうだ。
95 多摩市唐木田2丁目/町田市小山田町境界 96 大妻女子大附近 その1
97 高台への横道 98 鎌倉道・奥州古道交差
標識に導かれて脇道に入る。突き当りは写真98の高台だが、旧尾根道らしい。元の道に復帰すると、左手は里山、右手は女子大となり、気持ちの良い広い尾根道が続く。
99 多摩市唐木田2丁目/町田市小山田町境界 100 尾根から唐木田駅方面を望む
101 KDDIデータセンター 102 小山田町方面分岐
右側には巨大な建物があった。あの建物の中には、数えきれないほどのサーバと、天文学的なデータの出入りがあるのだろう。
写真102の三叉路に着くとバイクが停まった。若者かと思ったら中年男性である。ものすごい爆音でエンジンをふかしている。わざわざ人家のないところまで来たようだ。
ここを右に曲がって、北に向かうと、104の広場に出た。この北側は現在崖になっており、下には自動車学校があるが、現地解説板によると以前はここから北の蓮生寺方面にも古道が続いていたという。
103 尾根を北へ 104 東急自動車学校南の尾根
105 尾根から京王堀之内駅方面を望む 106 尾根を西へ
松並木があって、古道の雰囲気がでてきた。
107 松のある尾根 108 東京都水道局唐木田配水所裏
109 東京都水道局唐木田配水所 110 山王塚へ
水道の配水塔の横が山王塚である。鶴見川流域最高度三角点の標識もある。標高は168mである。そして、右側は多摩市と八王子市の境界になる。
111 山王塚 112 八王子市別所/町田市小山田町境界
下ってタマホームの裏の左手の藪は、7年前の2007年に鶴見川源流地点からこのあたりに這い上がってきた場所であることを思い出した。
関連サイト ◆特別編鶴見川源流(町田市上小山田町)の追加調査
113 尾根幹線へ 114 鶴見川源流直上附近
115 タマホーム裏 116 尾根道の終末点
ついに一般道に出るが、特に標識はない。おそらく、ここは八王子市なので、多摩市が標識を立てることをしないのだろうが、終点としては、あっけない気がする。
117 陸橋から尾根幹線東方面を望む 118 尾根幹線西方面を望む
車両通行止めで廃道のようにとなった道で尾根幹線を渡って、長池公園を目指す。
119 廃道を長池公園へ 120 長池公園よこやまの道方面口
121 公園入口のよこやまの道案内マップ 122 長池公園 その1
長池公園の入口には、よこやまの道の丁寧な案内図が掲げてあった。
123 長池公園 その2 124 清水緑地南側入口
よこやまの道の西側のアプローチは、公式サイトによると京王堀之内駅となっているようだが、今日はさらに西の南大沢駅に出ることにする。長池公園の西側か出口から道路に出て交差点を越えると、清水入緑地が南北に続いている。
125 清水緑地案内図
126 清水入緑地 その1 127 清水入緑地 その2
多摩丘陵の原型を残す清水入緑地である。南大沢駅への丁度良い緑のアプローチになっている。
128 清水入緑地 その3 129 清水入緑地 その4
緑地を抜けると南大沢駅はもうすぐだ。
130 南大沢駅前郵便局 131 南大沢駅前
14時05分、京王電鉄南大沢駅に到着した。5時間かかっているが、寄り道や撮影時間が多かったので、普通に歩けば4時間位で踏破できると思う。
132 京王相模原線南大沢駅
よこやまの道は、多摩地区や神奈川県北部に住む人にとっては、近くて手軽、歴史と自然を感じられ、一日で歩くにはちょうどよい距離のトレイルである。特に東側のコースは展望も素晴らしい。左右で丘陵の開発が対照的なところも面白い道である。
GPSによる本日の歩行経路 (歩数:OMRON HJ-326F
33560歩/iPod 33401歩)
今日は2つの歩数計を比べてみたが、3万歩以上歩いて両者の差は、0.47%なので、民生用としては極めて優秀な計測機器である。加速度計やソフトの進歩だろうか。
ご意見・ご感想はこちらまで
|
|
|