天城山 標高1405m 登山開始地点標高1050m      

  自分の足で登らない山シリーズ第23弾 伊豆半島最高地点だが1000mを越える登山口から簡単に登れる山
 
◆ 2014年5月2日

 島を除けば、日本列島唯一のフィリピン海プレート (つまり伊豆半島であるが...) の最高峰、それが天城山である。もっとも、箱根山や赤城山と同様、天城山という固有の山はなく、総称である。一番高いのは、万三郎岳(ばんざぶろうだけ) 標高1405mだ。その東側には 万二郎岳という 1299m の山があり、その北側にある登山口は、なんと標高が 1050mもあり、バスも通っている。つまり、簡単に山頂に立てるというわけである。

 伊豆半島は晴れていた。伊東駅7時55分発のバスに乗る。ほとんどの乗客が登山者だ。しかし、下界がこんな良い天気にもかかわらず、バスの車窓から見る天城山頂だけは、雲に覆われていた。

  1 伊東駅前                     2 天城高原ゴルフ場
   

 1時間弱で、天城高原ゴルフ場に着いた。千円払ってバスを降りる。すでに標高は1000mを越えている。
 残念ながら、下から見たとおり、ここはもう厚い雲に覆われていた。写真1と2の空の色を見比べていただければ一目瞭然である。海からの湿った風が山にぶつかる地形のため、この天城山は日本有数の降水量がある場所で、当然の事ながら今日のような天気になる事が多いのである。
 登山客用の駐車場は広く、トイレもある。



 9時ちょうど、登山口を出発だ。入口には、大きな地図がある。ここは、天城縦走路ともいって、天城峠方面に抜けられるロングトレイルなので、車ではなくバスで来たほうが面白いと思う。今日はとりあえず八丁池に抜けてみるつもりである。

  3 天城縦走路登山口                 4 利用者数計測装置
   

 太陽光で動く登山者計数装置を通って山の中に入っていく。



 最初は下って、新しい橋を渡る。

  5 万二郎岳へ その1                6 新しい木橋
   

  7 トウゴクミツバツツジ               8 万二郎岳へ その2
   

 なだらかな登りのあとは、沢伝いに何度か渡渉を繰り返す。

  9 渡渉 その1                   10万二郎岳へ その3
   

 沢も登山道も急ではなく、ウォーミングアップにはちょうどいい感じである。曇っているのも暑くなくてかえって良いかもしれない。

  11 渡渉 その2                  12 渡渉 その3
   



 沢も広くて、水深が無いため渡るのも容易である。ただし、雨が降ったら要注意かもしれない。

 13 渡渉 その4

  14 万二郎岳へ その4               15 万二郎岳へ その5
   

 道標も完備している。字が少し小さいのが難点だが、目的地までの距離がしっかり書いてあるのはとても良い。

  16 道標                      17 万二郎岳へ その6
   

  18 万二郎岳へ その7               19 万二郎岳へ その8
   

 開けた場所を抜けると、写真19の地点から少し階段が出てきて登山道が急になる。この辺りで標高1150m程度だ。

  20 万二郎岳へ その9               21 万二郎岳へ その10
   

  22 万二郎岳へ その11              23 万二郎岳へ その12
   



 標高にして100mほど登ると、写真24のように地形が平坦になり、頂上が近いことを予感させる。

  24 万二郎岳へ その13              25 万二郎岳山頂
   

 10時12分、標高1299mの万二郎岳に到着した。大した疲労もない。10人位の人がいるだろうか。ただし、展望はあまりなく、木立の中で石に腰掛けて休憩である。15分ほど休憩して、次の目的地である伊豆半島最高峰の万三郎岳をめざす。まず、馬の背という鞍部にむけて出発だ。

  26 馬の背へ その1               27 馬の背へ その2
   

 28 馬の背へ その3


 下って行くと、正面に万三郎岳らしきピークが見える。

 29 前方の万三郎岳を望む


 種類は分からないが、下向きに咲く白い花が綺麗な木があった。

  30 馬の背へ その4                31 馬の背へ その5
   



 32 馬の背へ その6

  33 馬の背へ その7                34 馬の背へ その8
   

  35 馬の背へ その9
     

 36 馬の背へ その10


 花やはしごなどバリエーションに飛んだ楽しい道を経て、馬の背を通過する。

  37 馬の背
     

 麓をバスで登ってきた遠笠山と登山口のあるゴルフ場がよく見える。

 38 遠笠山


  39 石楠立へ                    40 アセビのトンネル入口
   

 アセビのトンネルという、解説板が立っていた。

  41 アセビのトンネル その1
     

 42 アセビのトンネル その2


 地形図上は、この辺りが万二郎岳の西にある1325mのなだらかなピークのはずである。



 このピークを下った鞍部が石楠立(はなだて)で、案内板が立っていた。もう、万二郎岳から万三郎岳への行程の半分以上歩いたことになる。

  43 石楠立 その1                 44 石楠立 その2
   

  45 ブナの巨木                   46 万三郎岳へ その1
   

 この辺りは、蛇のように根を張ったブナ林が続いていて、深山の雰囲気満点の尾根道である。

 47 素晴らしいブナ林 その1

  48 素晴らしいブナ林 その2            49 万三郎岳へ その2
   



 50 万三郎岳へ その3                51 万三郎岳へ その4
   

  52 万三郎岳へ その5
     



 なだらかな尾根から遠笠山を遠目に坂を登りると、もう万三郎岳の頂上は近い。

 53 遠笠山


 11時40分、万三郎岳に到着である。伊豆半島最高峰の割には、あまり展望はなく、地味な山頂である。森林限界ではなく、暖かく雨の多い山なので、樹木もよく育つのだろう。それでも、標高は1400mを越えているので、丹沢や奥多摩に負けてはいない。

  54 万三郎岳山頂 その1              55 万三郎岳山頂 その2
   



 登山者の皆さんはゆっくりしているが、この先も結構距離があり、バスの時間にそれほど余裕が有るわけではないので15分ほどで出発である。下ると次の鞍部が片瀬峠という場所だが、万三郎岳より先は、一気に人が少なくなった。車で天城高原ゴルフ場登山口まで来ている人は、ここから戻るのだろう。頂上でもそんな会話をしていた。

  56 片瀬峠へ その1                57 片瀬峠へ その2
   

  58 万三郎岳下分岐点
     

 頂上直下の分岐点では右に行きたくなるが、ここは左が正しいルートで、標識をよく読む必要がある。

 59 ブナ原生林解説板
   

  60 片瀬峠へ その3                61 片瀬峠へ その4
   



  62 片瀬峠へ その5                63 片瀬峠
   

 片瀬峠はその名のとおり鞍部になっている峠であるが、残念ながらその峠道は現在は廃道になっており、写真64のとおりロープが張ってある。つまり、現在は峠としての機能はないのだ。

  64 廃道                      65 小岳へ その1
   

 次に目指すのは小岳という1360mのピークである。

  66 小岳へ その2                 67 見事なブナ林 その1
   

 それにしても、見事なブナ林である。丹沢や奥多摩よりもブナの広がりや密度が大きい気がする。

 68 見事なブナ林 その2

 12時24分、小岳に到着。ブナ林は続く。

  69 小岳山頂                    70 戸塚峠へ その1
   



  71 戸塚峠へ その2                72 戸塚峠へ その3
   

 下って、戸塚峠へ向かう。

  73 戸塚峠へ その4                74 戸塚峠
   

 戸塚峠の北側に地図上でも明らかに周囲と異なる平坦で円形の地形がある。皮子平(かわごだいら)というが、3000年前というかなり最近の噴火口である。ここには、ブナとヒメシャラの不思議な原生林が広がっているらしいのだが、残念ながら今日は時間がないので、見に行けない。



 後ろ髪を引かれながら白田峠へ向かう。

  75 白田峠へ その1                76 白田峠へ その2
   

  77 白田峠へ その2                78 無残な杉林
   

 ここまで、ブナをはじめとする素晴らしい植物相であったが、写真78のように突然杉林が出現した。密度といい幹の太さといい、人工林の可能性が高いが、もちろん、手入れもされず放置されている。そして、ブナの木がしっかりと根を張っているのとは対照的に、無残に倒れている。火山性の土地では生育は無理なのだろう。白田峠の北に林道が通じているので、ここに植林をしたのだろうか。ブナを切り倒して、無理やり杉や檜を植えた人間の愚かさを、自然に笑われているような、シュールな光景である。



  79 白田峠へ その3                80 白田峠へ その4
   

  81 白田峠
     

 13時38分に白田峠を通過する。

 82 白田峠案内地図


  83 美しいブナ林                  84 醜い杉人工林
   

 再び倒木混じりの荒れ果てた杉林が出現した。ブナが全面的に伐採されなかっただけでも幸運であったのかもしれない。生育に適さない土地だということがわかったので植林計画が中止になった可能性もあるだろう。



 白田峠から八丁池へは高低差が少ない、ブナを見ながら歩ける快適な道で、距離の割には時間がかからない気がする。

  85 八丁池へ その1                86 八丁池へ その2
   

  87 赤い火山岩                   88 八丁池へ その3
   

  89 廃屋                      90 八丁池へ その4
   

 廃屋を過ぎると、周囲が開けて明るくなり、標識があった。正面に八丁池が見えた。蛙の声がする。天然記念物のモリアオガエルである。



 14時29分、標高1170mの八丁池に到着。

 91 八丁池 その1

 92 八丁池案内板


 1丁は約109mなので、周囲は900m弱ということになるが、実際は600mもないらしい。昔の人はいい加減なのである。六丁池よりも八丁池のほうが言いやすいし、縁起も良さそうだからに違いない。

 93 八丁池 その2

 以外にも、八丁池には誰もいなかった。この天城山頂にある美しい火口湖を独り占めだ。

 94 八丁池 その3
     

 95 八丁池 その4


 少しだけ青空が覗く。狩野川の源流をたどってここを訪れたのは、2010年5月4日なので、ちょうど4年ぶりの再訪である。

 狩野川探訪 第4日目  道の駅天城越え〜源流

 96 八丁池 その5



  97 八丁池 その6                 98 八丁池口バス停へ その1
   

 トイレを過ぎると、林道がバス停まで通じている。

  99 八丁池口バス停へ その2            100 八丁池口バス停へ その3
   

  101 八丁池口バス停へ その4           102 八丁池口バス停へ その5
   



 林道をショートカットする下りの登山道では、久しぶりなので膝が痛くなった。バス停に着いたのは15時35分である。

  103 八丁池口バス停へ その6           104 八丁池口バス停
   

 唯一のバスは、16時20分発だが、運行日注意だ。修善寺に出て伊豆箱根鉄道で三島駅まで行き帰途につく。

 GPSによる本日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録


 天城山は、展望はそれほど望めないが、ブナ林をはじめとする環境は素晴らしいものが残されている。車で登山口まで来て、万三郎岳を往復するだけの人が多いようだが、むしろ、素晴らしいのはそこから八丁池へ向かう道である。距離はあるが、高低差はそれほどでもない、伊豆の本来の自然環境を楽しめるコースだ。

 今日は、楽をして伊豆半島の最高峰を征服したので、もう思い残すことはない。下田の先まで来た伊豆半島一周も再開する日が近い気がした。
(本日の歩数:25670歩)          

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