千歳川・藤木川探訪

 箱根外輪山の南端、大観山を源流として、奥湯河原を経て静岡県境を流れて相模湾に注ぐ。源流の美しい滝、川沿いに湧いている数多くの温泉、湯河原温泉街の情緒を形作っている渓流が特徴的である。
◆2010年5月15日 河口(湯河原町)〜 源流

 湯河原に来た。湯河原は山に囲まれた扇状地、あるいは三角州といった方が良いのかもしれないが、その平地に人が住んでいる。その地形を作ったのが、東側の新崎川と南側の千歳川である。新崎川については、2008年2月24日に調査済みであるが、今日はもうひとつの千歳川を訪れた。なお、千歳川の上流の実質的な本流は藤木川で、そちらの方がいろいろと面白そうなので、途中から藤木川を遡る予定である。

  1 湯河原駅                     2 河口
   

 湯河原駅を降りて、海岸に向かう。下水処理場の横に流れているのが千歳川河口だ。水は、綺麗だとは言い難いが、汚いという感じでもない。沖には初島が見える。



 写真3の左側に見える青い標識が、神奈川/静岡県境である。そう、この千歳川は県境になっているのである。向こう側は熱海市だ。

  3 河口から上流を望む                4 千歳橋から上流を望む
   

 左岸、神奈川県側を遡っていく。しばらくは緑の公園が続く。なかなか気持ちの良いところだが、あまり人は歩いていない。

  5 川端公園 その1                 6 川端公園 その2
   

 景色と天気は良いのだが、写真8のように生活排水が流れ込んでいるのはいただけない。下水道につながない人がいるのだろうか。

  7 土肥3丁目付近 その1              8 流れ込む生活排水
   

  9 山下橋                      10 土肥3丁目付近 その2
   

 しばらく、マンションと川と山の風景がつづく。

  11 高橋から下流を望む               12 高橋から上流を望む
   



  13 アオサギ                    14 土肥5丁目付近
   

 のんびりとしているが、どこか観光地的な刹那的雰囲気を漂わせる街並みである。

  15 下河原橋から下流を望む             16 下河原橋から上流を望む
   

 いくつかの橋をすぎると、新旧の東海道線鉄橋だ。

  17 中河原橋と東海道本線              18 東海道本線鉄橋
   

 西村京太郎の記念館があった。湯河原に住んでいるらしい。

  19 東海道新幹線                  20 西村京太郎記念館
   

 川の向こう側は静岡県であるが、この泉地区と呼ばれるところは、生活圏は完全に神奈川県である。こんな小さな川ではなく、山の尾根を国境にすればよかったのにと思うが、当時はそれなりの事情があったのだろう。

  21 宮上付近 その1                22 大橋から上流を望む
   

  23 宮上付近 その2                24 年金橋とウェルシティゆがわら
   



 少し静岡県に寄り道して、公園で休憩する。

  25 生長橋から上流を望む              26 泉公園
   

 27 宮上付近 その3

 川の佇まいも温泉街らしくなってきた。

  28 両国橋から下流を望む              29 双美荘付近の橋
   

 旅館や土産物屋が目立つようになってきた。

  30 29の橋から下流を望む           31 29の橋から上流を望む
   

  32 29〜31の橋                 33 落合橋
   

  34 落合橋から下流を望む              35 落合橋から上流を望む
   



 千歳川と藤木川の合流地点に着いた。千歳川は県境で西から流れてくるが、メインの流れはどう見ても藤木川である。川の長さも明らかに藤木川が長いようだ。名称はともかく、ここは藤木川をこの川の本流とみなすのが普通だろう。

  36 千歳川・藤木川合流地点             37 観光会館から上流を望む
   

  38 古い和菓子屋さん                39 権現橋
   

 古そうな建物、古き良き温泉街の面影を残す川並が続く。

  40 権現橋から下流を望む               41 光風荘
   

 こんな平和な温泉街にも血なまぐさい事件が起こったことを知る。

 42 2.26事件解説板 

 歴史の舞台となった老舗旅館が並ぶ。

  43 伊藤屋旅館                44 藤田屋旅館
   

 時代の流れの中で、旅館の中には、廃業したり、休業したりするところもあるようだ。
 それにしても、赤い橋と古い旅館と藤木川と河畔を彩る緑は実に絵になる。

 45 休業中の旅館 その1

  46 休業中の旅館 その2              47 休業中の旅館 その3
   



 いかにも温泉街の裏通りといった風情。

  48 湯元通り入り口                 49 湯元通り
   

  50 こごめ橋から下流を望む             51 こごめ橋から上流を望む
   

  52 中西さんの橋から下流を望む           53 巴橋から上流を望む
   

  54 広部橋から上流を望む              55 廃屋となった別荘
   

  56 栖鳳橋からだるま滝を望む            57 河畔の歩道
   

 竹内栖鳳の名前にちなんだ橋が、滝を伴っていた。少しづつ両側の山が迫ってくる。

  58 源泉 その1                  59 末廣橋から下流を望む
   

  60 末廣橋から上流を望む              61 源泉境解説板
   



 62 古い建物が続く温泉街               63 緑水橋から下流を望む
   

 64 不動滝入り口                   65 不動滝茶屋
   

 不動滝に着いた。茶屋の奥に、いかにも修行僧がいそうな滝が現れた。

 66 不動滝 その1                  67 不動滝解説板
   

 68 不動滝 その2

  69 源泉 その2                  70 源泉 その3
   

 このあたりは、川の向こうに温泉の源泉がたくさん有る。古くから温泉地として知られた湯河原の地名の由来そのままの光景である。川べりにはそのお湯を運ぶパイプがたくさん走っている。
 湯河原には、新崎川と千歳川/藤木川の2本の川が流れていることは、先に述べたとおりであるが、前者が水道水源、後者が温泉源泉と、うまく役割分担がなされている。まさに湯河原を支える2つの命の川といえるだろう。

  71 源泉 その4                  72 源泉 その5
   

 源泉の形にも様々なものがあるようだ。

  73 源泉 その6                  74 5段の滝
   

     75 5段の滝解説板         76 オレンジライン合流地点付近
   



  77 屏風岩付近                   78 池峯橋
   

 藤木川は、だんだん山奥の渓流の様相を呈してきた。

  79 池峯橋から上流を望む              80 椿ライン分岐点
   

 奥湯河原の中心部には高級旅館が立ち並ぶ。ここで、メインストリートである椿ラインに別れを告げて、パークウェイ方面に直進する。

  81 山翠楼前                    82 梅園橋
   

  83 梅園橋から上流を望む              84 重光葵記念館
   

 重光葵記念館があった。別荘だったらしい。

  85 源泉 その7                  86 紅葉橋から上流を望む
   

 ここで舗装道路とはお別れである。湯河原パークウェイは湯河原と箱根を結ぶ椿ラインのバイパス的な性格を持っているが、ほとんど通る車はないようで静かである。
 城尾橋から林道に入り、川の源流を目指す。

  87 パークウェイ入り口               88 城尾橋から上流を望む
   

  89 広河原林道 その1               90 藤木川の支流
   



 林道の終点には、開けた駐車場とトイレがあった。この先は天照山ハイキングコースとなる。鳥居がその入口らしい。

  91 広河原林道 その2               92 天照山ハイキングコース入り口
   

  93 ハイキングコース入口の鳥居           94 天照山ハイキングコース その1
   

 完全な山道となったが、川に降りられる場所もある。

  95 藤木川源流 その1               96 藤木川源流 その2
   

 藤木川をやや迂回した道も、写真98の橋で藤木川本流に復帰する。もう、源流そのものである。

  97 藤木川源流 その3               98 藤木川源流に架かる橋
   

  99 98の橋から下流を望む             100 98の橋から上流を望む
   



 坂を登っていくとT字路に突き当たったので、右折して去来の滝をめざす。いわゆる垂直に落ちる滝ではなく、何段かの岩を流れ落ちる急流といった感じの滝だ。水量はかなり少なくなってきたが、またまだ上がありそうだ。

  101 去来の滝                   102 天照山神社鳥居
   

 T字路にもどり天照山方面に進むと神社があった。山中にある静かな神社である。

  103 天照山神社                  104 神社の湧き水
   

 神社の脇をさらに行くと、白雲の滝の案内板があり。そのむこうに滝が現れた。

  105 天照山ハイキングコース その2         106 白雲の滝入口
   

 ご覧のように、奥深い箱根外輪山の中腹に現れた滝は、なかなか荘厳である。まさに山伏の修行場といった感じだ。温泉街の風情を形作っている藤木川の源流がこんなに神秘的な場所だとは、温泉に浸かっている多くの観光客も知らないだろう。

  107 白雲の滝




 階段のついた急坂を登ると、車道に出た。椿ラインである。ここにはなんと、天照山というバス停があった。
 椿ラインは、この箱根外輪山の山腹を横断しているので、藤木川の源流はこの道路と交差しているはずである。そこで、バス停から湯河原方面に戻って源流を探索してみることにした。

  108 天照山バス停                 109 椿ラインから下流を望む
   

 予想通り、水の流れがあった。写真110である。そこには、急斜面を駆け下りる源流の姿があった。水量は最後に見た白雲の滝よりもさらに少なくなっている。

  110 椿ラインから上流を望む             111 110地点の源流を見上げる
   

 この源流を確認した後、今度は逆に椿ラインを箱根方面に登っていく。というのも、地図を見ると、椿ラインは斜面をつづら折りに登っていくので、折り返してもう一度藤木川源流を横断している可能性があるからだ。もちろん、写真111をみると水量がかなり少ないので、途中で源流が途切れている可能性がないわけではない。
 これから目指す山の上には、ドームがあった。東京航空交通管制部の箱根レーダー局だ。眼下には奥湯河原に続く緑の谷が広がっている。

  112 箱根レーダー局                113 湯河原方面を望む
   

 予想通り、水流を発見した。道路の防護壁が途切れて、その奥に確かに水が流れているようだ。近づいてみると、岩肌から水が滴り落ちているではないか。たしかに最初の一滴である。岩の上や割れ目から僅かな湧水が集まって、道路の横に作られた溝に流れ込んでいるようだ。残念ながら、コンクリート壁に阻まれて岩肌に近づくことはできないので、ズームで写真を撮ったのが115である。ややわかりにくいが、濡れた岩肌と滴り落ちる水が写っている。
 2010年5月15日 12:59 ついに標高810m付近にある、藤木川の源頭に到達である。
 源流は、道路によってかなり破壊されているが、逆にこの道路がなかったら、たどり着けなかったかもしれない。

  114 藤木川源頭                  115 最初の一滴
   

 116 相模湾を望む

 117 水源の山並




 箱根外輪山の南端、大観山の中腹に端を発し、美しい滝や渓流となって流れ下り、河畔に数多くの温泉を湧出しながら温泉街の中心となってその景観の一部となる藤木川、そして県境となる千歳川と合流し、湯河原の明るい海に終わるその流れは、実に多彩な側面をもち、その意味では稀有な存在と言えるだろう。
 無理をすれば、その変化のすべてを感じながら、ほぼ全部を歩けないこともない。



 こうして、藤木川の源流に到達した訳であるが、そのまま椿ラインを下るのも芸がないので、この勢いでそのまま大観山まで行くことにした。せっかくここまで来たので、箱根外輪山の頂上に立つのも意義があるだろう。というわけでエピローグは続く。

  118 箱根レーダー局入り口             119 土肥の大椙跡
   

 結構山奥だと思っていたが、昔から道があったことに驚いた。

     120 土肥の大椙跡解説板
  

 椿ラインを歩き続けて1時間半、ついに標高987mの 大観山に到着した。箱根ターンパイクの終点でもあるここは、富士山と箱根中央火口丘と芦ノ湖が望める有名な展望スポットであるが、残念ながら天気が悪く、富士山の姿は望めなかった。風もあって、体感温度がかなり低く感じる。
 ドライブインは、タイヤメーカーのネーミングライツのようだ。曇り空にも関わらず、バイクと車が結構停まっている。ここまでバスで来る人も殆どいないと思うが、相模湾から徒歩でここまで登ってくるバカは、この建物にいる人の中では私ただ一人だと、神に誓って断言できる。自慢のバイクをとばしてここに来ている男たちの横で、缶コーヒーを飲みながら「俺はエンジンの力じゃなくて、自分の足で987mを登ってきたんだぜ...」と心の中でつぶやいて自己満足に浸っているバカオヤジの姿を、気にとめる人はもちろんひとりもいない。

 121 TOYO TIRESビューラウンジ           122 大観山標識
   

 123 大観山からの眺め

 さすがに、帰りは歩く気がしない。バスにのって湯河原駅へ。
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