神奈川県一周 
第15日目(2011年1月2日) はるひ野駅 〜 柿生駅


 2011年の最初に歩くのは、多摩地区であった。どちらかといえば近場であるが、まだリハビリ中ということもあり、無理をすることもないだろう。
 前回は久々に神奈川県一周を再開したが、初めての内陸部への道のりでルートファインディングに苦労した。今日も都県境をトレースすべく、はるひ野駅から歩き始める。

    

  1 はるひ野駅                    2 京王相模原線

   

 まず目指すのは、京王線の車庫である。県境はその中を貫いているのだ。



 道路の上から電車庫を見下ろす。丘を削って無理やり平地にした感じの車庫である。この中を県境は走っているが、地形が変わっているため分かりにくい。県境にそって尾根があったのかもしれない。
 車庫の反対側、すなわち西側は雑木林の中に県境があるが、こちらは写真4のとおり、それらしい木杭があったり、地形的に尾根になっているのでなんとなくわかりやすい。

  3 京王電鉄若葉台車両工場              4 京王線車庫から伸びる県境
   

  5 都県境道路標識                  
6 北側から都県境を見る
   

 尾根上には道路が出来ているが、カーブの手前、ちょうど写真7の地点が川崎市、稲城市、多摩市の境界である。尾根は写真8の地点から90度曲がって今度は南西に伸びている。当然県境も追従している。

  7 県境のカーブ                  
 8 多摩よこやまの道起点
   

 この尾根が曲がっている場所は、写真9のとおり実に良い眺めである。

 9 8の地点から西の多摩市方面を望む



 10 8の地点からよこやまの道(尾根の県境)を望む


 そして、ここは「多摩よこやまの道」というハイキングコースの起点でもあり、多くの人が歩いていた。

 11 多摩よこやまの道案内板


 12 多摩よこやまの道解説


  13 関東の鎌倉古道解説板
   

 県境の道がこれ程気持ちのいい歩道になっているとは実にラッキーである。

 14 多摩よこやまの道 その1




  15 多摩よこやまの道 その2             16 多摩よこやまの道 その3
   

 どこまでも歩いて行きたい気分である。

  17 
多摩よこやまの道 その4             18 多摩よこやまの道 その5
   

  19 県境のコンクリート杭              20 多摩よこやまの道 その6
   

 足取りも軽く進んでいると、三角点に着いた。標高144mの諏訪ヶ岳である。とはいってもなだらかな尾根がここだけ少し高いかなと感じる程度で、山というほどのものではない。この三角点は、人通りが多いせいか、大切にされている感じである。

  21 4等三角点(諏訪ヶ岳144.3m )
      



 22 黒川の解説                        23 瓜生黒川往還解説
 

 解説板も親切に数多く立てられている。

  24 古代東海道と丸山城解説板
  

 県境を挟んで、川崎市側は自然が残り、多摩市側はニュータウンとして大規模に開発されている。

  25 多摩よこやまの道 その7

  尾根道はまだまだ続く。 

 26 多摩よこやまの道 その8


  27 防人見返りの峠
   景色のよい峠に着いた。 

 東国から防人の任につく男達が、故郷を振り返った峠であるという。富士山が見えるとほっとするのは、日本人のDNAのせいだろうか。

 28 防人見返りの峠から西方向の丹沢と富士山を望む


  29 多摩よこやまの道 その9            30 多摩よこやまの道 その10
   



 案内板を見ていると、隣にいたご夫婦に「どこまで行くのですか?」と聞かれた。まさか、「県境をたどってどこまでもいくんです。」などと答えると変人扱いされかねないので「とりあえず国士舘大学あたりまで」とお茶をにごす。「それならすぐそこですよ。」と言われた。

   31 分倍河原合戦解説              
32 並列古道の謎解説
     

 この素晴らしい道にも一つ欠点がある。それは県境であるために、写真33のように所々でコンクリート杭が飛び出しているのである。つまずいてケガをしないように注意しなければならない。

  33 
県境杭                     34 国士舘大学
   

 さきほどの会話のとおり、ほどなく国士舘大学に着いた。よこやまの道はそのまま続いているが、県境はここから左に90度曲がって南東に向かう。
 しかし、それらしい写真35の道は、残念ながら大学の敷地になっており進入禁止である。仕方がないので、少し戻って写真36の道を川崎市方向に向かう。

  35 県境に向かう道                 36 三沢川源流方面へ向かう農道
   

 ここは、昔ながらのいわゆる谷戸が残っている。奇しくも、よみうりランドと若葉台の近くで県境を流れていた、あの三沢川の源流地帯だったのである。
 地図によると、一つ南側の谷戸の最奥部に県境があるようだ。写真38がその県境のある谷戸である。県境の向こうは大学のグラウンドだ。しかし、残念ながらこちら側からのアプローチは道がないので無理なようだ。

  37 黒川の三沢川源流の谷戸              38 三沢川源流地域と国士舘大陸上競技場
   



 反対側(南東側)からのアプローチを試みる。ここは、雑木林であるが、現在、明治大学の農場にする工事をしている。左手には変電所が見えるがそこに行く道は工事中で通行止めである。

 39
 南東からのアプローチ               40 西東京変電所
   

 まず、地図にある138.8mの三角点を目指す。一般的に、三角点は測量に好都合な見通しのよい場所、つまり、そのあたりで最も高い場所にある。尾根が県境となっている場合、当然三角点が県境の目印になるわけである。

  41 三角点入口                   42 三角点
   

 この写真41の三角点の入り口は非常に分かりにくかったが、藪の中で最も高い場所を探すと、写真42の三角点を発見できた。
 正面から来た県境は、ここで直角に曲がって、三角点の反対側の道路に沿って南に延びているが、まず直進して、さっき行けなかった県境を目指して写真44の道を進む。

  43 南に伸びる県境                 44 川崎市麻生区黒川・町田市小野路町境界
   

 左側には大学の立派なグラウンドが見える。

  45 国士舘大学陸上競技場              46 県境の道の行き止まり
   

 ここで、写真46のように立ち入り禁止の標識が現れた。この先に侵入するのは明らかに違法行為だろう。しかし、どんな法律も「はたしてこの先の県境には何があるのか。」という気持ちには勝てない。しかし、堂々と公開するわけにもいかないので、どうしても見たい、という方は自己責任で下の47をクリックしていただきたい。そこには、通行止めにするのも頷ける意外な光景が広がっていた。

     47(クリック)                  48 南へのびる県境
                          


 さきほど来た道を引き返して、48の地点にもどり、南に向かう。138.8mの三角点のあった場所の近くである。道が行き止まりなので、外部の人は誰も入らないところで、大きな犬がたくさん飼われているなど、怪しげな集落だ。完全に招かれざる客状態で、数人のおじさんがじっとこちらを見ている。勇気を振り絞って南に向かうと、写真49で行き止まりになった。谷に降りる道は見当たらず、たとえ下りることができても、工事中の反対側の丘に行くことは不可能だろう。現在位置はここである。地図によると、この先で県境は直角に左折して西東京変電所の中を通っているようだ。
 絶望的に踏破不可能な県境を目の前にして、川崎市側の谷戸に戻り迂回することにする。谷戸の風景は相変わらずのどかだ。

  49 黒川の行き止まり地点               50  川崎市麻生区黒川の谷戸
   



 谷戸から町田市真光寺町にぬける峠への道をたどる。

  51 町田市真光寺町への道               52 黒川から真光寺町への峠
   

 写真52の小さな峠に着いた。県境である。県境に沿って両側に階段があるようだ。

  53 52の峠から西側県境をみる           54 52の峠から東側県境をみる
   

 峠を降りると、今までの谷戸の風景から急にどこにでもある住宅地に景色は変貌する。やはり、県境の壁は意外と大きい。住宅地から道路を挟んだ小高い丘にあるのが真光寺公園だ。

 55 真光寺公園 その1


 真光寺公園の背後を県境は走っているので、公園から尾根に登っていく。なかなか気持ちの良い公園だ。

  56 真光寺公園 その2                57 真光寺公園 その3
   

 写真57の地点で尾根に復帰した。落ち葉と戯れる子どもがいた。

  58 NTT電波塔                    59 真光寺公園裏 その1
   

 尾根筋には、携帯電話の電波塔が立っていることが多い。地形的に考えて当然のことではあるが...。これも当然のことであるが景色は良い。

  60 真光寺公園裏の尾根からの景色         
 61 真光寺公園裏 その2  
   

 地図によると、このあたりに標高126.9mの三角点があるはずなので、尾根の公園フェンス沿いに探すがなかなか見つからない。こういう時は落ち着いて周りを見渡して、どこが一番高いかを冷静に見極めなければならない。そして、目をつけたのは写真62の場所である。フェンスの向こうの草むらを覗き込むと、そこに三角点があった。これは分かりにくい場所だ。まあ、見つかったのでよしとしよう。

  62 真光寺公園裏の三角点設置地点          63 3等三角点(126.9m)

   



 雑木林に囲まれた尾根道が続く。栗木緑地というらしい。

  64 真光寺公園裏 その3              65 栗木緑地 その1
   

 歩きやすい尾根道だが、県境の石杭が所々で飛び出しており、気をつけなければならない。マウンテンバイクで走る人がいた。

  66 栗木緑地 その2              
  67 栗木緑地 その3   
   

 写真67の地点で尾根を歩道が横切っており、左右に階段が付いている。川崎市側はハイテク工業団地、町田市側は住宅地と、ここでも県境を挟んで対照的な景色が広がる。そして、この尾根道だけは細長い緑の回廊として、まるで異次元空間のような不思議な世界を作っている。県境の旅もなかなか楽しいものだと思いながら歩いていく。

  
68 67地点から町田市側              69 67地点から川崎市側
   

  70 栗木緑地 その4                71 栗木緑地 その5
   

  72 栗木緑地 その6                73 桐光学園野球場
   

 川崎市側に学校が現れた。桐光学園である。小学校は尾根の川崎市側を完全に侵食しており、自然の地形は破壊されていた。私有地なので仕方が無いのかもしれないが、このままでは将来この貴重な緑豊かな尾根地形も消滅してしまうかもしれない。

  74 桐光学園前のベンチ               75 桐光学園小学校
   

 尾根には、桐光小学校のフェンスができてしまったようで、せっかくの風景に水をさしている。

  76 栗木緑地 その7                77 76地点から町田市側を望む
   



 写真78の地点で栗木緑地は終わりになるが、峠道の向こうにはひき続き緑の歩道が続いている。鶴川台尾根緑地である。

  78 栗木緑地終点                  79 鶴川台尾根緑地 その1
   

 尾根の地形が急であったためだろうか。住宅地にならないでよく残っていたものである。鶴川台尾根緑地はすぐに終わってしまい、写真81の地点に出る。

  80 鶴川台尾根緑地 その2               81 鶴川台尾根緑地終点
   

 ここからの川崎市側の景色は、写真82のとおり、懐かしい山里といった感じである。

  82 81の地点から北方向の川崎側を望む


 しかし、ここから先の尾根筋は、残念ながら住宅と畑になってしまった。地形が平坦であったためだろう。

  83 神明神社                    84 
川崎市麻生区片平・町田市広袴町境界
   

 県境とは思えないような平凡な道であるが、左側は写真85のとおり川崎市にある国有地、右側は東京都の水道が来ている住宅であり、この道が県境であることが確認できる。

  85 県境東側の国有地                86 東京都営水道メーター
   

  87 能ケ谷町住宅地                 88 町田市側から麻生総合高校をみる
   

 住宅地に入り、県境沿いの道が無くなってしまった。

  89 川崎市側の畑                  90 住宅池の中の県境
   

 分かりにくいが、写真90のように住宅地の中を複雑に県境がはしっている。写真90の右側端の家は町田市、道路を挟んで反対側のカーブミラーは、写真91のとおり川崎市麻生区である。

  91 写真90のカーブミラー             92 町田市立能ケ谷大地の丘緑地
   



 このあたりは崖が県境になっているようだ。地形と県境は複雑に入り組んでいるが、つぎに、このあたりで一番高い標高82.8mの三角点をめざす。

  93 県境の崖                    94 三角点入口
   

 それらしい藪の切れ目に分け入ると、写真95のとおりその三角点はあった。夏だったら見つからなかったかもしれない。ラッキーである。
 さらに行くと尾根の上に遺跡があった。

  95 三角点                     96 仲町遺跡入口
   

 仲町遺跡である。昔の人にとっても尾根の上に住むのは快適だったのだろう。縄文時代なので、海岸沿いだったのかもしれない。

  97 仲町遺跡解説板
  

 さらに住宅地の中を進むと、企業の立派なグラウンドに突き当たった。この地点である。このグラウンドの中を県境はくねくねと曲がりながら続いているようだ。写真98をみるとグラウンドのフェンスも県境を挟んで異なっているように見えるのは気のせいだろうか。

  98 商船三井柿生グラウンドの中に入る県境      99 川崎市麻生区のカーブミラー
   

  100 商船三井柿生グラウンド             101 柿生住宅概念図
    

 ここは、柿生住宅であるが、珍しく神奈川県側と東京都側が一体となって開発されたようである。その概要は、写真101のとおりで、青と赤の部分が区画になっているが、道を挟んで神奈川県民と東京都民が仲良く?暮らしているらしい。町内会は別なのか、学校はどうするのかなど、どうでも良いことが気になる。
 住宅地から柿生駅への近道という看板に沿って坂道を降りていくと、そこにあったのは、黄色の怪しげな車止めである。

  102 柿生住宅から柿生駅への道の県境        103 102の地点の都県境杭
   

 怪しいと睨んだとおり、動かぬ証拠を見つけた。写真103のコンクリート杭である。「都県」という文字が見える。その下には「境」という漢字が埋れているに違いない。
 それにしてもよくみると実にわかりやすい県境である。杭の他にもご丁寧に黄色の車止めがあり、おまけに舗装まで境界がはっきりしているのだ。この地図を見るとわかるように、ここで県境は右に直角に曲がっているのだが、写真105のようにちゃんと舗装の境界も直角に曲がっているのだ。可笑しいくらい地図に忠実である。曲がった後、県境は山の上に伸びているが、現実にもコンクリート柱の境界が上の方に続いている。

  104 102地点の県境西方向            105 102地点の県境南方向
   

 県境は私有地に入ってしまったし、柿生駅も近いので、ここで神奈川県側に入ってそのまま柿生駅を目指す。
 途中に川崎市立柿生小学校があったが、柿生住宅の東京都側に住む小学生は、この小学校に通えないのだろうか。

  106 川崎市立柿生小学校              107 柿生駅
   

 柿生駅から小田急線に乗って家路に着く。

 

 今日も複雑な県境に翻弄されて、あまり距離は伸びなかったが、なんといっても、よこやまの道、栗木緑地、鶴川台尾根緑地という自然と歴史が残る緑の尾根の道を歩けたのは、望外の収穫だった。大した上り下りもなく、実に楽しく歩ける県境の道である。内陸部に入った県境の旅は、単調かと思っていたら、なかなか変化に富んだ楽しいものだということがわかってきたので、次回も新たな発見がありそうだ。楽しみである。

 (本日の歩数:26423歩)

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