相 模 川 探 訪           

 山中湖を源流として相模平野を潤し相模湾に注ぐ神奈川県を代表する一級河川
◆第3日目(2007年11月8日)  小倉橋(相模原市城山町川尻)〜相模湖

 神奈川県の母なる川 「相模川」の3日目 である。橋本駅からバスに乗り、小倉橋に到着。ここが今日の出発点だ。相模平野から山岳地帯に入ってきた。ここからは湖が連続する津久井地区になる。以前は津久井郡であったが、現在は相模原市、ここが近く政令指定都市になるといわれても困るようなところである。
 今日の予定では、津久井湖の北岸をトレースしようと考えているが、事前調査によると道路事情が「相当」悪いらしい。生きて帰れるかどうか心配である。(これを書いているということは無事じゃないか!というつっこみは無しにして....)



 1 小倉橋袂から下流を望む                2 新旧小倉橋
   



 小倉橋は幅が狭いが、通行量が激減したおかげで、歩いて渡り、橋の上から写真を撮ることも出来る。

 3 小倉橋から新小倉橋を望む               4 小倉橋から下流を望む
   



 対岸から新小倉橋を渡って左岸に戻る。新小倉橋は4車線、さすがに立派である。橋の上からは発電所が見える。

 5 津久井発電所                     6 発電用水排水路?
   

 7 新小倉橋から上流を望む               8 新小倉橋全景
   

 台地の上に登ると、発電所の管理事務所があり、さらに行くとダムの管理事務所もある。

 9 相模川発電管理事務所                10 城山ダム管理事務所
   

 津久井湖に到着。津久井湖記念館で水没の歴史をみる。反対運動も激しかったらしい。水没前の写真を見ると数段の河岸段丘のようすがよくわかる。


 11 津久井湖記念館からみた湖             12 水没前の集落(津久井湖記念館所蔵)
   

 津久井湖をせき止めているダムの名称は津久井ダムではなく、城山ダムである。昭和40年の完成だ。ダムの上は富士吉田まで続く国道413号線で交通量も多い。湖畔は公園になっており、美しい湖を眺めることが出来る。

 13 城山ダムと津久井湖 その1            14 城山ダム
   



 15 津久井湖
 その1                 16 城山ダムから下流を見る
   

  城山ダム放流はなかなか迫力がある。動画

 17 城山ダムと津久井湖                18 津久井湖 その2
   

 三井大橋をわたる。外観は非常に美しい橋だが、道幅は狭く、歩道が無いため危険を感じる。現在、歩道を付加する工事が行われているようだ。津久井湖を二分する橋からのながめは写真のとおり最高である。

  19 三井大橋                    20 三井大橋から下流を望む その1
   

  21 三井大橋から下流を望む その2          22 三井大橋から下流を望む その3
   



 アメリカの砂漠にポツンとあるような喫茶店?がなぜか三井集落の中にある。ハーレーでツーリングする人たちのたまり場か?

  23 三井集落方面から三井大橋を望む          24 アメリカンな喫茶店?
   

  25 三井の里風景                   26 三井寺入口
   

  27 三井寺下                     28 三井集落から対岸を望む
   

 写真29のトラックは初めてみた。何という車種だろうか。このトロピカルな家をすぎると人家は途切れて、道幅が狭くなる。1.7mというのは、国産車でも大型車は無理だということである。一応県道だが、すれ違いは絶対に無理で、地元の人以外は車で入らない方がよいだろう。
 歩いている途中に車の運転席から「街に抜けられますか?」と聞かれた。抜けられるのは間違いないと思いながらも、いい加減なことを言ってもいけないと思い「地元ではないのでわかりません。」と答えた。地図を見て入ったのはよいが、よほど不安になったのだろう。


  29 三井集落外れのトロピカルな家           30 道幅制限の鉄柱
   

 車に気をつけながら県道を進むと名手の集落に着いた。ほっとする。

  31 県道515号線から対岸を望む           32 県道515号線から名手橋を望む 
   



 美しい吊り橋の名手橋まで降りる。手すりが低く、徒歩で渡ると危険を感じる。風の強い日と酔っ払った夜の帰り道には渡りたくない橋である。もちろん、橋から眺める景色は最高である。

  33 名手橋から上流を望む               34 名手橋
   

 橋から戻る途中にスペイン風の不思議な倉庫がある。建築関係の人が持ち主だろうか。

  35 印象に残る倉庫                  36 県道515号線車止めゲート
   

 名手から先の県道515号線は、ごらんのとおり車、二輪車は通行止めである。歩行者は入れないことはないが、あくまで自己責任だ。このサイトもこの道を推奨するわけではないので念のため。
 いきなり落石が道を塞ぐ。車が直撃されたら大惨事だ。通行止めになるのも頷ける。

  37 通行止め柵 その1                38 落石
   

 土砂崩れで路面は見えない。写真だと危険がないように見えるが、左側は、崖になっており、津久井湖まで一直線である。ガードレールが土砂をせき止めている状態である。土砂のない日当たりの良い場所は写真40や42のように、自然に還りつつある。路肩も至る所で崩れかけている。非常に危険な状態だ。
 驚いたことに、ここをジョギングしている人がいた。命知らずの人がいるものだ。おそるおそる尋ねると相模湖方面へ抜けられるという。まだ、道は完全には崩壊していないようだ。少し安心して先に進む。

  39 土砂崩れ その1                 40 植物の進入
   

  41 廃道からみる相模川                42 生い茂る木枝
   



 沼本ダムが見えた。このような場所にあるため一般の人にはほとんど知られておらず、なかなか全景を見ることが出来ない幻のダムである。特にこちらの左岸側から見るためには、この道を命がけでたどらなくてはならない。写真43は貴重なショットなのだ。
 ごらんのようにダムの上下で水位の差があるわけでもなく、なぜこのダムが存在しているのか謎である。調べてみると昭和18年の完成なので、津久井湖が後から出来て半ば水没したというのが真相のようだ。

  43 沼本ダム                      44 通行止め柵 その2
   

 水の流れる音が聞こえると思ったら、結構立派な滝があった。名前は不明である。
 この廃道の最大の難所は、2つの通行止め柵に挟まれた写真46の場所であろう。ガードレールが巨大な石をせき止めているが、足下が不安定で、人が乗って石が動いたらそのまま巨石とともに津久井湖にダイブすることになる。正直、ここはお勧めできない。車やバイクだけでなく、厳重な柵で人も入れないようにしているのは行政としては当然の措置だろう。
 道の途中には、滝まで流れていて、まさに秘境である。 動画

 46 最大の落石群                     47 通行止め柵 その3
   

 難所をなんとか乗り切り、人里に生還した。この道を車が走ることはもう二度とないはずだ。

  48 赤馬集落 その1                  49 赤馬集落 その2
   

 千木良という集落に入る。ここには桂橋という立派なアーチ橋が架かっている。写真51の後ろ左手の山の山腹を例の極悪道が通っているはずである。

 50 桂橋                         51 桂橋から下流を望む
   



 千木良から相模湖へは、国道20号線を行くしかないと思っていたが、地図をよく見ると支流の合流点付近に点線で道が記載されていることに気がついた。そこで県道を左折して、牛鞍神社へむかう。 

  52 桂橋から上流を望む                53 弁天橋入口の牛鞍神社
   

 登山道のようなところを降りていくと、赤いつり橋が見えた。お地蔵様もいる道なので古い道なのかもしれない。

  54 弁天橋遠景                     55 地蔵

   

 途中で、支流を渡る。後で調べたら底沢川という名前だということが判ったが、水が青く澄んでおりイワナがいそうなほど綺麗なのが印象に残った。

  56 底沢川                      57 底沢川の橋から相模川本流を望む
   

 写真58の碑の解説で、さっき見えた赤い橋が弁天橋ということ、そしてその由来がわかった。
 要約すると
昔は渡し船があったが、昭和22年の相模湖の出現により、唯一残った景勝地が弁天島。そこで、昭和27年、地元民が有料の橋を架けた。しかし、老朽化により橋が維持できなくなったので、県に移管し、無料になった。
 ということらしい。
 昔はここが島だったというのも驚きだ。地形図を見ると確かに相模川の流量が多ければ島になっても良い地形である。渡し船があったというから、やはりここは古くからの道で、お地蔵様があったのも頷ける。
 弁天橋は新しい感じで、県に移管してから新たに架橋されたものであろう。というより、そのために移管されたということかもしれない。

  58 弁天橋記念碑                    59 弁天橋上
   

  60 弁天橋から上流を望む               61 弁天橋   
   

 古くからの景勝地というだけあって、美しい渓谷で河原も広い。子供を遊ばせるのにもちょうど良い穴場である。車が入れないので目立たないのであろう。

  62 弁天橋袂から下流を望む              63 弁天橋の渓谷美
   



 弁天橋から相模湖方面に坂を上りきるとそこは旧小原宿である。ここには本陣が残っていると言うことで早速行ってみた。今時珍しく入場無料である。

  64 茶屋から弁天橋を望む               65 小原宿本陣門
   

 能書きは、いつものとおり、解説板を呼んでいただいた方が話が早い。管理人さんに話を聞いたところ、20年ほど前まで子孫のおばあさんが住んでいたが、そのおばあさんは今も関西に在住らしい。家が維持できなくなって町に寄付したそうだ。

 66 小原宿本陣解説板  

  67 小原宿本陣母屋                   68 御触書
   

  69 座敷                       70 2階
   

  71 母屋から玄関を望む                 72 籠
   

  73 大名専用の厠                   74 囲炉裏
   



 久しぶりに電車をみて、気分は江戸時代から現代に戻る。まもなく相模湖だ。

  75 中央本線                     76 国道20号線から相模湖大橋を望む
   

 77 相模ダム管理所                   78 相模湖大橋全景
   

 相模ダムは、昭和15年着工、昭和22年完成。日本の総合治水事業の先駆けらしいがその時期はまさに太平洋戦争と重なる。横須賀、相模原、横浜といった軍事的に重要な都市に電力や水を供給するため、地元反対運動に対して軍部が圧力をかけたこともあるらしい。
 また、長年の使用で堆砂が進んでいる。海岸に供給されるはずの砂がここに貯まってしまうのでは、湘南ビーチも痩せるはずである。

 ダムにかかる橋を渡るときに、橋とダムのコンクリートが劣化して砂利が露出したり、ダムから漏水しているのが確認できた。
 注:この指摘のせいではないだろうが、その後この橋は通行禁止になり修繕作業が行われたようである。ダム本体の修復は不可能だろうが...

 個人的に気になるのは、戦時中の物資も人も欠乏していた時代に急造された相模ダムの安全性である。太平洋戦争時のコンクリート構造物の大半はすでに風化、崩壊し戦争遺跡となっているのが現状だ。70年前の技術と安全性に対する認識、品質管理でつくられたにもかかわらず、未だに現役で使われているこのダムは大丈夫だろうか。地震に耐えられるだろうか。ステルス戦闘機が飛ぶ現代とゼロ戦の時代では、恐ろしいギャップがあるような気がする。
 もし、決壊したら、城山ダムも破壊されるだろう。人口が密集する下流域では、数十万人が死んでもおかしくないような、とんでもない災害になることは想像に難くない。単なる杞憂に終わればよいが...。

 ダムの寿命というものをちょっと検索しても、はっきり書いていない。100年とか、半永久的とか、適切な補修をすれば数百年とか書いてあるが、過去の事例以外は科学的根拠はなさそうである。福島の原発事故以来、専門家の言うことはあまり信用されなくなってしまった。鉄筋コンクリートの場合は寿命が50年と言われているが、ダムの場合は鉄筋は入っていないようだ。相模ダムは重力式なので、比較的安全性は高いらしい。津波の被害に隠れてしまったが、東日本大震災では、アース式ダムが決壊して死者が8人も出たことは記憶に新しい。相模ダムをよく見ると、現代のなめらかなコンクリートと違って、当時のコンクリートによく見られる大きな小石サイズの荒い砂利が使われている。当時の物資・資金不足、施工管理技術を考えると、迫りくる大地震に対して注意しておいて損はなさそうだ。大丈夫と言っていながら、爆発後には想定外と言い出した原発の二の舞にならないように、と思うのは私だけだろうか。原発と同様にダムの撤去は事実上不可能だし、この財政状況では大規模補修も困難だろうから、まあ、私が生きている間は大丈夫、と思うことにしておこう。

  79 相模ダム                     80 相模ダムから下流を望む
   

 心配ばかりしていても仕方がない。相模湖が出来てからもう60年。橋も湖もすっかり風景になじんでいる。

 81 相模湖大橋 

 82 嵐山洞門


 83 相模湖大橋から上流を望む              84  相模湖大橋から相模ダムを望む
   



 相模湖畔の公園には、漕艇場があり学生が船を手入れしていた。秋の相模湖の夕暮れは、なぜか安らぎに満ちていた。

  85 相模湖                      86 相模湖公園の発電所モニュメント
   

  87 御供岩の由来解説板                 88 御供岩
  

 89 相模湖夕景


 30分も電車を待ち、相模湖駅から帰途についた。

    90 相模湖駅

     



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