東京都一周   積雪の中、槙寄山から山梨県境である笹尾根を北に向かって、三頭山を目指す
◆第3日目(2012年2月4日) 槙寄山 ~ 三頭山  

 1週間前に、積雪のため断念した奥多摩の盟主、三頭山への登頂であるが、今日はそのリベンジである。なにしろ、その単純な性格で、雪の中をここまで来てしまったのだから、行くしかないだろう。お調子者の悲しい性である。

 冬の朝、暗いうちにベッドから出る時は、休みの日くらい、温かい自宅でゆっくり過ごしたいという誘惑と、なぜこんなことをやっているのだろうという微かな疑問が頭をよぎるが、そこは思考を停止して体が自然に動くのに身を任せる。利口な人はこんなことはやらないだろうが、バカはこういう時は都合がいい。

 今日も4時に起きて始発に乗り、武蔵五日市駅からバスに乗って、仲の平バス停で降りる。写真を見ていると、また行きたくなる雪山であるが、現地へ行ってみるとやはり寒くて辛い。喉元過ぎると寒さを忘れるという良い例である。
 数馬の里は東京都といってもおそらく最も冬の寒さが厳しい人里だろう。霜柱も都会のものとはその迫力が全く違う。

  1 南橋                       2 霜柱
   



  3 南沢集落                      4 雪のない登山道
   

 まだ雪の残る南沢の集落を過ぎてチェーンスパイクを付けて登山道に取り掛かると、以外なことに写真4のとおり登山道には雪がない。この1週間で明らかに雪が少なくなっている。少しずつ溶けているのだ。それでも、高度を上げると雪が復活してきた。足元の軽アイゼンも活躍の場ができて喜んでいる。

  5 西原峠 その1                  6 西原峠へ その2
   

 まあ、トレースがあればそれほど苦労しない登りであるが、写真7の所では、何とトレースが消えている。先日の強風で雪が飛ばされたのだろう。ルートを失わないように慎重に歩くが、時々ズボッと足が潜るので難儀する。バス停では数人が降りたのだが、どこへ行ったのだろう。少なくともこのルートを今日はじめて歩くのが自分であることは間違いない。

  7 西原峠へ その3                 8 西原峠直下
   

 400m以上登ると西原峠である。やはり前回よりも雪がかなり少なくなっている。

  9 西原峠                      10 滑り止めのおとしもの
   



  11 槙寄山へ                    12 槙寄山 その1
   

 9時40分に槙寄山に到着した。誰もいない。前回と同様、富士山の眺めは素晴らしい。ここからが本日の東京山梨都県境のスタートである。

  13 槙寄山 その2                 14 槙寄山から富士山を望む
   



 今日の笹尾根最終ラウンドの目的地はいうまでもなく、前回断念した三頭山である。都県境に聳え、奥多摩のどこからでも見える山だ。今日の懸念材料は、三頭山までの急な登りが凍りついていないか、トレースが付いているか、雪で体力を使い果たさないか、という点である。

  15 大沢山へ その1                16 大沢山へ その2
   

 まず、三頭山の南にある標高1482mの大沢山を目指す。雪はもう新雪ではなく、それほど深いわけではないが、ここでも写真17のように、強い風でトレースが消えて心細い気がする。この数日間はまだ誰も笹尾根を歩いていないわけである。屋根を外して谷に降りないように気を付けなければならない。天気が良く、サングラスは必需品である。

  17 大沢山へその3                 18 大沢山へ その4
   

  19 大沢山へ その5                20 県境石杭
   



 写真21からいよいよ急坂が始まるので、フリースを脱ぎ、水分を補給する。いよいよ三頭山南壁の雪の壁を攻略するのだ.....と大袈裟に言うほど実際は困難ではなく、スパッツとチェーンスパイクがあれば特に問題もなさそうである。

  21 大沢山へ その6                22 大沢山へ その7
   

 写真23、24のように、途中で岩の急坂があるが、慎重に足場を選べば何とか登れるレベルである。しかし、ここで予想外の事態が発生した。数日前に強い冬型の気圧配置で強風が吹き、トレースが消えたが、今日も空を鳴らす不吉な唸りと共に強い風が間欠的に吹いている。こんな所で強風に吹かれると気持ちが不安になるが、太陽が顔をのぞかせていることと、ゴアテックスのウェアが風を遮ってくれることで、なんとか登り続けることができる。ここが今日の最難所だろう。これで雪が深いと難しいのだろうが、写真のように岩が見えているレベルなので助かった。

  23 大沢山へ その8                 24 大沢山へ その9
   



  25 大沢山へ その10               26 大沢山へ その11
   

 強風に吹かれながら痩せた尾根の急坂を登りつめると、右手からの尾根が合流し、三頭大滝方面への分岐点があった。しっかりトレースもついている。ここからは、都民の森のエリアに入るからだろう。逆に言うと、この積雪の中で、殆どの人は都民の森エリア内で行動するだけであり、笹尾根縦走をする人は殆どいないということである。標高が高くなったからだろうか、雪はかなり深い。

  27 三頭大滝方面分岐                28 三頭大滝方面への道
   

 ここからの富士山は絶景である。風も幾分弱まってきた。

 29 三頭大滝方面分岐から富士山を望む


  30 大沢山へ その12               31 標高1400m付近
   

 なだらかな尾根道である。地形図、標高から見ても、難所は過ぎたようだ。標高1400mということは、大沢山まであと80m、三頭山まであと130mである。雪道を目の前のピークを見上げながら登っていく。

  32 大沢山へ その13               33 大沢山へ その14
   



  34 大沢山 その1                 35 大沢山 その2
   

 特に際立ったピークではない、標高1482mの大沢山に到着した。11時25分である。積雪で難航するかと思われた三頭山南斜面も、意外とスムースに登れたようだ。

  36 大沢山 その3                 37 三頭山避難小屋へ
   

 大沢山からの下りは急で非常に雪が深い。ここで、見覚えのある男性にあった。先週、数馬峠で言葉を交わした人だ。彼も、雪の笹尾根にはまってしまったらしい。挨拶をしたが、こちらがサングラスをかけていたためか、向こうはわからなかったようだ。
 降り切ると、綺麗なログハウスの三頭山避難小屋に到着した。中に入ってみる。2組4名が中にいた。男性二人組はガスで何かを作っているようだ。夫婦らしい二人は、私と同時に出発する。

  38 三頭山避難小屋外観               39 三頭山避難小屋内部
   

 すぐにムシカリ峠に到着する。人が多くなってきた。

  40 ムシカリ峠 その1               41 ムシカリ峠 その2
   

 42 ムシカリ峠の案内図




 ムシカリ峠からは三頭山はもう一登りである。幸い風も収まって、白い雪が眩しい。

  43 三頭山へ その1                44 三頭山へ その2
   

  45 三頭山へ その3                46 三頭山西峰 その1
   

 11時57分、無事標高1524.5mの三頭山西峰に到着した。もちろん、現時点での東京都一周の最高地点である。ここ三頭山は、笹尾根の最北端であるが、同時に東京都側は檜原村と奥多摩町の境界、山梨県側は上野原市と小菅村の境界である。

 47 三頭山西峰から見た富士山


 48 三頭山西峰から見た富士山ズーム


 さすがにここからの富士の眺めは噂どおりの素晴らしさである。人が多く、ベンチの空きもないほどだ。みな、思い思いに寛いでいる。寒さの中で、雪道を少しだけ苦労して登ってき人たちの特権だ。やっと空いたベンチに座って足を投げ出していると、若い登山者は道具に興味が有るようで、靴を見る人が多い。いや、靴と云うよりも、青いゴムのチェーンスパイクを見て、これは何だ?という顔をしている。そこで、他の登山者たちの足元を観察してみると、ほとんどが普通の6本爪の軽アイゼンである。紐の色を見るとカジタックスが多いようだ。しかし、今日の岩が多い急坂でも、チェーンスパイクで何ら問題はなく、その歩きやすさや着脱の容易さは、6本爪アイゼンよりも明らかに優れている。
 装備の話ついでだが、今日は、登りでは長袖速乾下着、厚めのハーフジップシャツ、ゴアテックスという服装、平坦な場所や休憩時には、ゴアテの下に薄いフリースを着る、といった感じで丁度良かった。風があっても大丈夫である。笹尾根や三頭山といった積雪のある低山で、気温が0℃前後、天気の良い日という条件付きではあるが。もちろん冬用の防水手袋やスパッツ、耳を覆う帽子は必需品である。靴は、ゴアテックス入りのタイオガブーツで耐水性も保温性も問題ない。本格的な登山靴でなくても、最近のトレッキングシューズは十分な性能を持つということだろうか。

  49 三頭山西峰 その2               50 三頭山西峰 その3
   

 北側には、これから登る都県境の頂点に当たる雲取山の姿も見える。

 51 三頭山西峰から雲取山・鷹の巣山方面を望む


 気温は氷点下だと思ったが、4℃で、意外と高い。30分ほど頂上で過ごした後、都県境を離れて鞘口峠方面に下る。雪がなければ、このままの勢いで都県境沿いにそのまま奥多摩湖まで行けるだろうが、距離がある上に途中に急坂があるらしく、トレースも怪しそうなので、今日は無理をせず、最短距離で下山することにした。東側には、三頭山の名前の由来となった残り2つのピークがあるらしい。

 52 三頭山山頂の気温                 53 三頭山西峰から中央峰へ その1
   

     


 三頭山から東に続く尾根は雪が深い。     

  54 中央峰へ その2                55 中央峰へ その3
   

 中央峰に着いた。標高は1531mで、三頭の中でも一番高い。なお、中央峰と東峰には異論もあるようだが、東京都が建てた立派な標識がある以上、現状のまま定着するだろう。

  56 中央峰へ その3                57 三頭山中央峰
   

 東峰に到着。1527.5mで、西峰よりも少しだけ高い。ここには展望台があり、東側のパノラマが広がっている。

  58 三頭山東峰                   59 三頭山東峰の展望台
   

 60 展望台から大岳山・あきる野市方面を望む 

 雪は深いが、多くの人が歩いて踏み固められ歩きやすくなったブナに囲まれた快適な道を下っていく。

  61 鞘口峠へ その1                62 見事なブナ林
   



  63 気温                      64 見晴らし小屋
   

 見晴らし小屋に着いた。東斜面のためか、何故か気温は氷点下になっている。

  65 鞘口峠                     66 木材工芸センター
   

 鞘口峠を下ると除雪された工芸センターの道に出たので、チェーンアイゼンを外す。6本爪のおじさんがいたが、アイゼンを外すのに時間がかかっており、お先に失礼する。数馬のバスの時間までまだかなりあり、温かいものが食べたくなったので、森林館で舞茸天ぷらそばを食べる。

  67 都民の森森林館 その1             68 都民の森 その2
   



  69 都民の森駐車場                 70 都民の森から数馬方面を望む
   

 下の駐車場に着く。標高は1000m程度だろうか。雪がかなり少なく感じる。道路は除雪されており、チェーンも必要無さそうである。何人かの登山客が車に乗り込んでいて、ここに車を止めて三頭山に登る人がほとんどのようだ。下のバス停に向かう人は皆無である。笹尾根を歩く人がいない理由の一つにこの事があるだろう。冬の間はバスが運休するので、交通機関が車しか無く、三頭山に登ってもここに戻ってこなくてはならないからである。
 奥多摩道路の脇には、写真71のように数馬方面への登山道があるが、踏み跡が少なく、急坂のようなので、車道を歩くことにした。

  71 数馬方面の登山道                72 奥多摩周遊道路
   

  73 足王様                     74 兜家旅館
   

 数馬の里は、昔ながらの山里の生活が残っているような雰囲気で、なかなか楽しい。時の流れが完全に止まっているようだ。

 75 民家


 15時23分に数馬バス停に着いた。15時42分のバスに乗る。バスはなぜか2台で出発する。途中のバス停でたくさんの登山者が乗ってきてあっという間に満員になったので、なるほどと思いながらバスに揺られて武蔵五日市駅に着いた。このバスの本数と寒風の中では、お客さんの積み残しは許されないということだろう。

 76 数馬バス停                    77 バス2台の運行
   

 GPSによる今日の歩行経路


 GPSによる今日の歩行経路 (Google earth 3D)


 GPSによる今日の高度記録


 今日は、前回の経験に味を占めて、再び雪の山にチャレンジし、目標の三頭山に達することが出来た。冬の笹尾根を歩ききったという達成感がある。雪があるので、通常よりも踏破する距離が短くなるが、それは仕方が無いだろう。槙寄山から都民の森までの笹尾根の区間は、歩く人が皆無ですこし不安になったりしたが、三頭山周辺は人が多く、気軽な雪のハイキングといった感じである。いい年の大人がおおっぴらに雪遊びが出来るのは、実にありがたい。
 さて、三頭山よりも先には、急坂の難所があるそうで、積雪量やトレースの有無、氷結していないかなどもう少し情報を集める必要がありそうだ。それに、冬の間は都民の森までのバスが運休しており、アプローチの交通機関をどうするのかも課題である。しかし、様々な困難をすこしずつ克服していくのも都県境の旅の醍醐味である。
 
(本日の歩数:29363歩)           

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