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八海山 標高1654m 登山開始地点標高1210m
自分の足で登らない山シリーズ第24弾 ロープウェイで登れるお酒と天地人で有名な越後の霊山 |
◆ 2014年7月6日
八海山といえば、プレミアが付くほどの有名な日本酒である。若いころ、職場での酒盛りをやるときに、パシリとして酒屋に行かされたのだが、その時に買っていたのがたしか八海山だったような気がする。田舎の酒屋なのになぜおいてあるんだろう、と先輩達が不思議がりながらも喜んでいた記憶がある。日本酒なんてどれも同じような味だと思っていた若き日の私であるが、もちろんその時は八海山という山がほんとうにあるとは知る由もなかった。
後年、八海山を飲む機会が増えたが、やはり旨い。一度、何を思ったか、妻が一升瓶で買ってきてくれて、家でも飲んだが、確かに旨いものの、いつでも飲めると思うと有り難みも半減である。人間とは便利と贅沢にはすぐ慣れてしまい、それが無くなると不平をいう動物なんである。
さて、八海山というキーワードでGoogle検索をすると、最初に日本酒のサイトがヒットしてしまう、というほど主従が逆転している八海山だが、確かに八海山という山が実在し、しかもロープウェイで登れるのであれば、酒を飲みに、じゃなかった、行って確かめなくてはならないだろう。
使命感に燃えた私は、上越新幹線に乗ることになる。7月初旬、梅雨の合間に晴れの天気予報が出ているので、ここはひとつ、早起きをしようというわけである。ターゲットの列車は東京駅7時48分発のMaxときだ。
パソコンでいくつかの操作をすると簡単に電車の時刻がわかってしまう便利な世の中であるが、パソコンがなかった時代はみんな時刻表で調べていたわけで、そのうち時刻表の使い方がわからない人が大部分になるだろう。これは、カーナビやスマホの発達で紙の地図が売れないのと似ているが、そんな私も、カーナビ無しでは首都高を走れないので偉そうなことは言えない。
話が脱線したが、八海山にもどろう。
1 東京駅のMAXとき307号 2 越後湯沢駅の特急はくたか4号
八海山ロープウェー行きのバスは、六日町駅から出ており、発車時刻は9時30分である。越後湯沢駅で9時14分発のはくたか4号に乗り換えれば、9時28分に六日町駅につく。バスへの乗り換え時間は2分しかないが、多分小さな駅だから、大丈夫だろうという予測である。そんなに列車の本数はないだろうから、おそらく、特急列車の到着を待ってから発車するだろう、という読みもあった。
しかし、現実はそう甘くなかった。駅の階段を降りた時に、バスの姿が見当たらない、いや正確には、それらしいバスの後ろ姿を駅前のロータリーからまっすぐのびる道の向こうに見た時には、力が抜けた。はくたかの到着が数分遅れたのが致命傷だったようだ。それにしても、バス停からはホームが見えるというのに気が利かないバス会社である。
しかし、いつまでもワールドカップの試合に負けた選手の様に落ち込んでもいられない。すぐに、リカバリーしなくては。まず、客待ちのタクシーの運転手さんに、八海山ロープウェーまでいくらかかるか聞いてみた。3500円とのこと。まあ、今日一日を無駄にするよりはマシな値段であるが、ロータリーの向こう側に、同じ特急で降りたもう一人の男性を見つけたので、走って後を追いかけた。相乗りの交渉成立である。途中でバスを追い越し、結局、山麓駅までは4170円だったので、お一人様2100円だった。もし、六日町駅前のタクシー運転手さんが3500円と言ってもだまされないように...
3 八海山ロープウェー山麓駅 4 八海山ロープウェー
ロープウェーは、西武の経営だった。箱根駒ケ岳でわかったのだが、西武では、ロープウェイではなくてロープウェーなのである。料金は往復で1800円である。
5 ロープウェーからみる八海山 6 山頂駅
あっという間に、標高1147mの山頂駅に着いた。
7 山頂駅の案内図
残念ながら空は曇っている。ロープウェーの係の人から、天候の急変と落雷には十分気をつけるようにとの注意があった。遠くでごろごろが聞こえたらすぐに引き返すように、とのことである。
GPSのスイッチを入れ、カメラやトレッキングポールの準備をしていると、オバちゃんの団体に写真を撮ってくれといわれる。大人数なので時間がかかる。撮り終わると、もう一人が違うカメラで撮ってくれと言ってきたので、さすがに断った。天候や帰りのバスのことを考えるとそれほど時間の余裕があるとはいえないのである。図々しいオバちゃん達の観光にいつまでも付き合っている訳にはいかない。10時16分に登山口を出発する。
8 登山口 9 避難小屋
すぐ上に避難小屋と天狗の像があり、尾根伝いに八海山まで登山道が続いている。
10 天狗像 11 女人堂へ その1
まず、標高1370mの女人堂を目指そう。
12 女人堂へ その2 13 女人堂へ その3
14 女人堂へ その4 15 霧による視界不良
比較的なだらかなコースであるが、残念ながらますます雲がかかって視界不良になってきた。やはり、梅雨の時期は展望はダメである。
16 四丁目石標 17 女人堂へ その5
18 女人堂へ その6 19 女人堂へ その7
20 道端の紫 21 雲の切れ間から下界をみる
22 女人堂へ その8 23 女人堂へ その9
ハシゴがでてきて、やや急坂になり、その上に三角屋根が見えた。多分あれが女人堂だろう。
24 女人堂へ その10 25 女人堂へ その11
11時20分、女人堂に到着である。バイオトイレがあった。昔はここまでしか登れない女性用の小屋があったのだろうが、現在はもちろん、ただの避難小屋になっている。
26 女人堂 その1 27 女人堂 その2
28 女人堂の内部 29 薬師岳へ その1
30 薬師岳へ その2 31 薬師岳へ その3
水の音が聞こえ始めて、登山道は沢を渡るが、その先には灰色になった雪があった。それほど標高は高くなく、もう7月だというのに雪渓があるとは、さすがに豪雪地帯である。8月にならないと消えないのだろう。雪渓のあるところは木も生えていない草原になっている。そして、ここから解け出した豊富な水が魚沼産コシヒカリを育てているのだろう。
32 薬師岳へ その4
33 雪渓からみる魚沼地方
34 薬師岳へ その5 35 薬師岳へ その6
結構キツイ道が続くが、とうとう大きな岩を登る鎖場になった。
36 鎖場 37 頂上直下
鎖場を登り切るとすぐにヒョッコリと山頂に着いた。薬師岳、1654mである。
38 薬師岳頂上 その1 39 薬師岳頂上 その2
40 薬師岳頂上 その3
その向こうに霧の中に浮かぶドームが見えた。千本檜小屋だ。
41 薬師岳頂上付近の雪渓 42 千本檜小屋直下の鎖場
沢山の人がいて賑やかである。
43 千本檜小屋 その1 44 下山禁止の屏風道コース
下山禁止の屏風道コースとは、どれほど険しいのか、恐ろしい。
45 千本檜小屋 その2
ロープウェイを使った手抜き登山の割には、結構疲労感がある。普段の不摂生のせいだ。が、このまま先に進んでも景色は期待できそうにないと思うと、やる気が全く出ない。本当は、天地人のオープニングで妻夫木聡が立っていた地蔵岳に立ってみたかったが、この展望では行っても無駄だろう。
46 地蔵岳方面を望む
というわけで引き返すことにした。
47 下山 48 鎖場の渋滞
49 越後駒ケ岳方面を望む
50 魚沼地方を望む
51 漕池とロープウェー山頂駅方面を見下ろす
写真51の真ん中辺りに、池が見えたので帰りに寄ってみることにした。
52 漕池 その1 53 漕池 その2
54 大倉口分岐 55 スキー場でバスを待つ
56 明治時代の絵地図
レストハウスでバスを待つ。そこにかかっていた明治時代の絵地図は、屏風道がメインの参拝ルートになっていた。恐ろしく険しい道なのは下山禁止になっていることからも明らかである。
そして、異様に喉の渇きを覚えた私は、八海山泉ビールという素朴なラベルの瓶ビールを見つけて、思わず買ってしまった。店員さんも心得たもので、栓を抜いてくれたので、ベンチに座ってさっそくラッパ飲みにする。うまい。この瞬間が、今日一番の感動で心が打ち震える時間だった。
電車の中で飲むのにちょうどよい小さな瓶の日本酒の八海山も売っていたが、温まってしまうので後で買うことにする。ビールの軽い酔いが覚めないうちに15時25分発のバスが来た。
57 八海山泉ビール 58 六日町駅行のバス
59 六日町駅
六日町駅について、時間があったので、八海山を買おうと駅前の土産物屋に行ってみた。しかし、残念ながら置いてなかった。
次に、駅前のスーパーに寄ってみた。はたして地元の人は八海山を飲んでいるのか。それとも人気があるので、みんな首都圏に出荷されてしまうのか。その答えは、写真60である。しかし、どうしてブラジルワールドカップなのか、よくわからないし、結構重そうなので結局買わなかった。結論として、八海山は地元の人の日常の晩酌用にはなっていないといえる。なぜなら、一升瓶では売っていなかったので。おそらく、米どころなのでもっと安くて旨い酒があるに違いない。
60 駅前のスーパーで売られていた八海山 61 六日町駅から越後湯沢駅へ
といわけで、八海山の帰りに電車の中で八海山を飲むという野望は見事に失敗に終わったのである。
GPSによる本日の歩行経路
GPSによる今日の高度記録
残念ながら梅雨時の八海山は、妻夫木聡がみた素晴らしい展望を見せてくれることはなかったが、八海山で八海山(日本酒ではなくてビールだったが)を飲むことができた、幸せな一日であった。
コースとしては、標高差はそれほどでもなくだれでも登れるが、結構きつかったのは日頃の怠惰のせいだろう。
(本日の歩数:18143歩)
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