海岸線をどこまでも           
◆第12+7日目(2008年6月7日) 長浦駅 〜 木更津駅


 季節はもう6月である。だいぶ暑くなってきた。
 千葉駅で総武線から内房線ローカルに乗り換えて、長浦駅に降り立つ。早速、駅の写真をとるが何かがおかしい??? ピントが合わないのである。どうした、愛機 IXY 10! 天下のCANON!
 いろいろいじっているうちに、何となく大丈夫な感じになったので、旅を続行する。ところが、帰って写真をみてがっかりした。見事にピンぼけである。せっかくこのサイトをみていただく方には申し訳ないが、ほかに写真がないので、仕方なく載せることにしよう。

 1 長浦駅                  2 長浦駅前の水路
   



 長浦駅から海岸方面に進むと、すぐに水路が現れる。延々と続く旧海岸線である。今日もこの水路沿いに木更津方面を目指すことにする。
 水路の海側、すなわちは埋め立て地は緑の森になっている。遊歩道があるので、通ろうと思ったら、危険なため平日は閉鎖します、との看板。平日の昼間に人が歩けないなんて、どんだけ治安が悪いのか....と思いながら、水路沿い、すなわち旧海岸線の道を歩く。写真4などは、海岸線そのものの風景だ。

 3 袖ヶ浦市今井付近の水路             4 溝下橋から西方向を望む
   

 旧海岸線の水路は、写真5のように所々で東京湾につながっている。

 5 今井橋・東京湾方面を望む            6 溝下橋付近のプレジャーボート
   



 溝下橋をすぎると、大きな看板があった。そこには、漁港が廃止されたことが書かれていた。奈良輪漁港である。現在は、もちろん漁船はなく、写真7の通り汚らしい入り江になっている。写真8撮影時点で、カメラが復活。ピントが合うようになった。ホッとしてまた歩き出す。すると、今度は漁港ではなく、写真9のような池が現れた。珍しくコンクリート護岸がなく、水辺の自然が残っている。ここは、以前は海岸線だったはずなので、海跡湖なのかもしれない。

 7 奈良輪漁港跡                  8 漁港跡付近の水路
   

 9 高須付近の池                 10 路傍のやすらぎ
   

 真っ赤な新田橋を渡る。相変わらず対岸は埋め立て地ではあるが、なぜか景色が開放感あふれる感じになってきた。

 11 新田橋                   12 新田橋から東京湾方面を望む
   

 内陸部は、平坦な農地になっている。新田という名前のとおりだ。

 13 新田橋から木更津方面を望む         14 新田橋から内陸方面を望む
   

 やがて、南袖大橋に到着した。ここで、突然埋め立て地が途切れる。現れたのは広大な干潟だ。つまり、自然の海岸である。思えばここまで、ずっと東京湾は埋め立てられていた。自然海岸を最後にみたのは、いつだったかと考えてみた。横浜市の野島に少しだけ砂浜があったが、まともな自然海岸は、横須賀市以来である。正確に言えば、馬堀海岸から埋め立て地になり、横須賀港の護岸に続くので、最後の本格的な自然海岸は、走水海岸である。(そのときのレポートはここ
 こうしてみると、東京湾の浦賀水道より内湾は、ほとんどすべて自然海岸が失われていることがわかる。
 そういった意味では、久々の自然海岸、本当の東京湾の姿である。それにしても広い干潟だ。この浅い海と干潟があった故に簡単に埋め立てられてしまったともいえるだろう。昔の人々にとって、干潟など、海苔や貝などの零細漁業以外には何の価値も持たなかったのだ。今となっては貴重な原風景である。

 15 南袖大橋から望む東京湾           16 埋め立て地と干潟
   

 海跡湖か河口跡かわからないが、所々に池がある。集落も、昔の半農半漁の素朴な暮らしを彷彿とさせる、なぜか懐かしい雰囲気だ。

 17 排水池?                  18 牛込付近の集落
   

 牛込海岸に着いた。潮干狩りの真っ盛りで、大勢の人がいる。観光バスで乗りつける人もいるようで盛況だ。漁師さんも総出で一人1200円を徴収している。

 19 牛込海岸潮干狩案内板            20 潮干狩を楽しむ人々
   

 21 牛込海岸 その1              22 牛込海岸 その2
   

 整備された漁港があり、潮干狩りはその両側で行われている。

 23 牛込船溜                  24 水神様
   

 25 食堂・土産物屋               26 牛込海岸 その3
   



 潮干狩り海岸の向こうには、東京湾アクアラインが霞んでいる。昔ながらの漁村を思わせる集落が残っている。

 27 牛込海岸 その4              28 古そうな道
   

 久々の、自然海岸だが、ゴミが目立つのはいただけない。稲毛海岸や市原市付近の運河もそうであるが、千葉県の人たちは、水辺をきれいにしようという意識が少ないのか。県民性だろうか。

 29 牛込海岸 その5              30 牛込の耕作放棄地?
   



 31 新町船溜付近から袖ヶ浦方面を望む      32 新町船溜付近
   

 軒先に鶏が放し飼いになっていた。懐かしい光景である。昔は当たり前だったかもしれないが、今となっては貴重である。おいしい卵がとれそうだ。
 それにしても、海岸のゴミの惨状は目を覆うばかりである。ずっと海岸線を歩いてきたが、ここが東京湾でも最悪である。
 よそ者がふらりと来て勝手なことを..、と思われるだろうが、あえていわせていただく。
 「海は漁師の生活の場であり、海産物を無断でとるな」という大きな看板があちこちにあるが、そういうならば、漁協が率先して海を守ってほしい。古くからの漁師町ゆえか、あまりにも環境意識が低すぎる。東京湾にわずかに残された貴重な自然海岸なのだ。潮干狩りで儲けたお金の一部でも使ったらどうだろうか。民家の横に座り込むヤンキー風の少年と目が合い、睨まれたが、近い将来、この問題が解決しそうな予感はなかった。

 ...と少々厳しいことを書かせていただいたが、このゴミの件について、市原市在住の方からメールをいただいた。粗大ゴミはともかく、ビニール袋などの漂着ゴミは、対岸、すなわち東京や神奈川からのものも多いとのご指摘である。偏西風の影響で西風が吹くことが多いので、東京湾のゴミは千葉県側に漂着してしまうのだ。日本海沿岸にハングル文字のゴミが漂着するのと同じ理屈である。
 つまり、漂着ゴミの問題は千葉県だけでなく、東京湾岸の3都県、あるいはもっといえば、東京湾に流れ込む河川流域の埼玉県や北関東各県の問題でもある。私も神奈川県民として責任の一端があるので、改めて自戒するとともに、今後もこの問題に関心を持っていきたい。

 33 民家の軒先養鶏               34 海岸のゴミ
   

 35 新町船溜                  36 海岸の集落
   

 37 金田漁協裏の運河              38 運河のゴミ
   

 39 金田漁港                  40 呑堀船溜
   

 41 呑堀船溜から中島方面            42 呑堀船溜水門
   

 このあたりの海岸線は、船溜まりが多い。砂浜を掘り下げたのか、河口や入り江などの自然の地形を利用したのか、興味がわく。
 そして、いつのまにか、世紀の大プロジェクトである東京湾横断道路が間近に迫っていた。海ほたるは以外と近い感じだ。橋の部分は遠浅で大きな船は通れそうにない。だから海底トンネルにならなかったのだろう。

 43 東京湾横断道路(アクアライン)       44 アクアライン直下
   

 地元の子供が海岸で遊んでいると思ったら、親の手伝いをしていた。海苔をとっているらしい。

 45 アクアライン下から木更津方面を望む     46 海苔採集?を手伝う子供
   

 ここも潮干狩り場であるが、牛込よりも人は少ない。

 47 見立潮干狩場前                48 見立潮干狩場からみるアクアライン         
   



 橋からふと横を見ると、さっき派手な轟音とともに追い越していったスーパーカーの集団が止まっていた。撮影らしい。外車の横でほほえむのであろう、モデルさんもいる。撮影前らしく、モデルさんは、付き人か恋人か知らないが、若い男性と一緒に海ではしゃいでいた。その間にもスタッフのおじさんたちは撮影の準備に余念がない。

 49 見立橋手前の外車撮影            50 モデルさんと付き人?
   

 51 見立橋からみる東京湾            52 見立船溜
   

 53 見立橋から見るアクアライン          54 広大な干潟
   

 この一角に、埋め立て地の島があり、大きなホテルが建っている。立派な門があり、中には入れない。

 55 ホテル三日月方面を望む           56 ホテル三日月入り口
   

   

 海岸沿いに進めないので左折すると、木更津臨海公園という看板があるが、汚れたテニスコートのネットがボロボロになっているのが見えた。中には入れない。バブルの遺産なのか、廃止されてしまったようだ。公営だったのだろうか。これだけ大きな運動公園が廃墟になっているのは珍しい。

 57 木更津臨海公園跡地の裏           58 小櫃川近くの田圃
   

 やがて、小櫃川河口に着いた。河口に出るはっきりとした道はないようだ。
 広々した河口は、一面の干潟になっている。生物がたくさんいそうだ。が、足元を見るとここもやはりゴミである。ゴミばかり狙って写しているわけではないが、どうしても目に付いてしまう。

 59 小櫃川河口 その1             60 河口のゴミ その1
   

 ぽつんと捨てられたスクーターが寂寥感をかき立てる。そういえば、映画「木更津キャッツアイ」でも、ゴミのエピソードがあって、モンスターが登場していたが、シャレになっていないところをみると、案外あの映画のままの土地柄なのかもしれない。

 61 河口のゴミ その2             62 小櫃川河口 その2
   

  

 河口で川を渡る橋はない。川をはるばる遡って金木橋まで戻ることになる。

 63 かわいい案山子               64 小櫃川堤防
   

 65 小櫃川上流を望む              66 ヨットクラブ
   

 67 金木橋から下流を望む             68 久津間橋から下流を望む
   



 川を越え、県道を木更津市街地方面へ向かう。一部歩道がなくて歩きにくい道である。右手に、広大な自衛隊の基地が現れた。もちろん中には入れないが、外から写真を撮る。地理的にみて、首都圏防衛のための重要な基地なのだろうか。

 69 海上自衛隊航空補給処            70 陸上自衛隊木更津駐屯地前の水路 その1
   

 基地の中は、松林があり、昔の雰囲気を残している。

 71 陸上自衛隊木更津駐屯地前の水路 その2   72 吾妻公園
   



 公園があり、海岸に出ると唐突に港があった。木更津港である。さらに行くと、ファミレスが並ぶ開放的な雰囲気の港町になった。以外と大きな船があるのでびっくりする。正直、ここまで大きな港だとは思わなかった。

 73 吾妻公園から新宿水門を望む         74 木更津港とファミレス街
   

 遠くに、高い橋が見える。なかなかエキゾチックな雰囲気である。

 75 木更津港から中の島大橋を望む        76 結婚式場? 
   

 街路樹もトロピカルになってきた。写真だけなら、ここがハワイだと言っても.....やっぱり誰も信じないだろう。

 77 木更津港を西へ向かう            78 木更津港
   

 船は、砂利を運ぶような無骨なのが多いが、間違いなく港町の開放感は感じられる。

 79 トロピカルな港の歩道            80 木製の桟橋
   

 先ほど見えた橋のたもとにたどり着く。中の島大橋というそうだ。早速わたってみる。向こう側からわたってくる人がやたらと多い。みんな、何をしに行っているのだろうか。

 81 中の島大橋 その1             82 中の島大橋 その2
   

 83 中の島大橋からみた東京湾          84 中の島大橋からみた木更津市街
   

 85 中の島大橋からみた自衛隊基地        86 中の島大橋からみた干潟
   

 87 中の島大橋からみた君津方面         88 中の島大橋からみた富士見大橋
   

 橋の上から見た景色は、絶景である。千葉ポートタワー以来の展望だ。橋の下を貨物船が横切っていく。なかなか雰囲気がある。

 89 中の島大橋からみた芝生広場         90 中の島の係留ヨット
   



 中の島は、港と東京湾を隔てているが、東京湾側は干潟で潮干狩り場になっている。橋の上でみた、たくさんの人は潮干狩りの帰りだったのだ。港側は、芝生広場とヨットハーバーになっている。木更津市民の憩いの場になっていることがわかる。

 91 中の島芝生広場               92 木更津港内側の干潟
   

 93 芝生広場と自衛隊基地            94 木更津港から駅へ向かう富士見通り その1
   

 港から、メインストリートを駅方面に向かう。有名な料亭や古そうな寺がならぶ。昔は栄えただろうと思われる、なんとなくあか抜けない通りを突き当たると木更津駅である。横須賀線に乗ろうとしたら、1時間に1本しかない。時間つぶしに東口へ回る。来たのは2度目だが、こちらの方がにぎやかな繁華街になっているようだ。

 95 富士見通り その2             96 富士見通り その3
   

 97 木更津駅西口                98 木更津駅東口ロータリー
   

 99 駅構内の久留里線列車
   

 今日の行程は、出だしカメラの不調で躓いたが、なんとか木更津までたどり着いた。木更津という土地はドラマや映画にもなったが、なかなかおもしろいところだ。よい意味でも悪い意味でも、何となく、洗練されない、荒っぽい雰囲気が感じられる、ある意味で千葉県らしい風土なのかもしれない。これだけ南下すると、それだけ東京の影響が薄れてきたということだろうか。
 延々続いてきた東京湾の埋め立て地であるが、久々に自然海岸をみることができたのは収穫であった。潮干狩りのできる貴重な干潟を大切にしてほしいものだ。次回はあのとんがった富津岬を歩くことになるだろう。今から楽しみである。
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