川間ドッグ:世界唯一の機構美 「貴重な産業遺産」に保存の声−−横須賀 /神奈川
◇初のれんが積み式だった…−−匠の技、世界唯一の機構美
住友重機の旧川間工場(横須賀市西浦賀町)で84年まで使われ、現在は大半が水没している通称「川間ドック」が日本初のれんが積み式ドックだったことが、岡山理科大の若村国夫教授(技術史)の調査で分かった。世界に現存するれんが積み式ドックに比べ、内部の階段が細かく整備されているといい、「貴重な産業遺産」と保存を求める声が上がっている。【内橋寿明】
◇岡山理科大・若村教授「日本人独自のアイデア」
同市では、住友重機浦賀工場跡地の「浦賀船渠(せんきょ)1号乾(かん)ドック」が世界に4カ所しか現存していないれんが積み式ドックのうち最大級であることが若村教授の調査で最近判明。同式ドックを巡る貴重な発見が相次いだ形だ。
川間ドックは全長137メートル、幅16メートル、深さ10メートル。1898年、石川島播磨重工業の前身「東京石川島造船所」が建造し、船が入る時だけ水門を開け、通常は海水を抜くことから「乾ドック」と呼ばれた。浦賀船渠1号乾ドックと同じく、オランダとドイツの技術を採用。明治時代には国内で約30基の乾ドックが建造されたが、れんが積み式はこの二つだけで、大半は丈夫な石積み式だった。
川間工場は84年に閉鎖され、跡地はヨットクラブになった。若村教授は02年春から調査を始めたが、ドックには既に海水が入り、現存している状態ではないため、文献や写真をもとに分析。一つの階層に設置されている階段がオランダのドックは4列しかないのに、12列が交差状に整備されていた。若村教授は「日本人独自のアイデアの証しで、世界で唯一の機構美」と評価する。
地元住民らは川間ドックと1号乾ドックについて勉強会を開いて価値を確認し、保存運動を始めている。近くに住む小川一男さんは「明治期の建造当初から全く手を加えていない、貴重な産業遺産。水を抜いた元の形で保存してほしい」と話している。現在、ヨットクラブを所有するユニマット不動産(東京都)は「川間ドックの価値については初めて聞いた。(ドックの一部を)マリーナの外壁として使っており、港湾部分も含めて手を入れる計画は今のところない」とコメントしている。
2007年6月12日 毎日新聞