狩 川 探 訪
箱根外輪山から流れ出て、湧水を集めて足柄平野を下り、酒匂川に合流する水量豊富で清冽な川
◆第1日目 (2010年3月20日)
酒匂川合流地点
(小田原市)〜
矢倉沢
(南足柄市)
富士山に端を発して、丹沢と箱根を分ける深い谷を刻み、足柄平野を形成して最後に相模湾に流れこむ酒匂川には2つの大きな支流がある。ひとつは酒匂川の北側、西丹沢の山々の水を集めて丹沢湖を経て左岸に合流する河内川であるが、もうひとつは南側、箱根外輪山から流れ出て右岸側に合流する狩川である。
今回はその全長15.6kmの狩川に挑戦してみよう。箱根外輪山の源流とはどんなところなのだろうか。
箱根は太古の昔、推定標高2700mという巨大な成層火山で、その中央火口丘が陥没して外側に残った山々が箱根外輪山であるという。その雄大なスケールを感じられたらうれしいと思う。
さて、酒匂川と狩川の合流地点は足柄平野の真ん中である。小田原駅から伊豆箱根鉄道大雄山線に乗り、井細田という小さな駅で降りた。大雄山線は単線であるが、車両はステンレス製で江ノ電ほど前近代的な印象はない。
1 小田原駅大雄山線 2 井細田駅
飯泉橋に着いた。酒匂川と狩川の合流地点である。下流側は、神奈川県民の貴重な水源地の一つである飯泉取水堰である。つまり、数百万人の人たちが、この酒匂川と狩川の水がブレンドされた水を飲んでいることになる。
3 飯泉橋 4 飯泉橋から下流を望む
上流側の二筋の流れは、右側が酒匂川本流、左側が狩川である。
5 飯泉橋から上流の酒匂川と狩川(左側)を望む 6 飯泉橋上流からみた狩川
合流地点のすぐ上流側は下水処理場であるが、その敷地はよくあるように公園となっていて、小田急線の鉄橋がみえる。ここで、少し鋭い方なら、取水堰のすぐ上流に下水処理場があるのは、衛生上はともかく、感情的には問題があるのではないか、といわれるかもしれない。実は以前に調べたことがあるのだが、下水処理水は、ちゃんと取水堰の下流に放流されているので、心配することはないようだ。
7 扇町しらさぎ広場 その1 8 扇町しらさぎ広場 その2
9 狩川橋 10 狩川橋から上流を望む
11 蓮生寺橋から下流を望む 12 蓮正寺橋上流
左側に箱根外輪山を望みながら、足柄平野を歩く。支流とは思えないほどの広々とした流れに1本の松が生えている、いや、映えている。
13 小田原市穴部新田付近 14 河畔の松
15 水道橋 16 水道橋から上流を望む
水はそれなりに綺麗だ。カモたちも気持ちが良さそうである。
17 仙了川合流地点 18 カモたち
いくつかの橋を越えていくと、やがて、さきほど乗った大雄山線が左手から近づいてきて、並走するようになる。のんびりした足柄平野の一風景だ。正面左手、写真19だと電車の上になるが、こんもりと盛り上がったおにぎり型の山が見える。矢倉岳である。
19 飯田岡駅手前の伊豆箱根鉄道大雄山線と狩川
飯田岡駅についた。なんとも簡素な駅である。
20 飯田岡橋から上流を望む 21 飯田岡駅
しかし、その駅の先、小田原市から南足柄市に入った川辺には、写真22のような素晴らしい光景が広がっていた。
22 沼田の桜並木 その1
地元の保存会によって維持されている素晴らしい桜である。まさか、この時期に満開の桜が見られるとは思わなかった。誰も花見をしていないのも静かで好感が持てる。
23 沼田の桜並木 その2 24 桜並木の下で刃物を研ぐおじさん
なぜか、桜の木の下でおじさんが刃物を研いでいる。絵になるいい風景だ。おじさんも結構その気だったりするのではないだろうか。
25 沼田の桜並木 その3
26 白鷺 27 相模沼田駅
相模沼田の駅は、公民館のような懐かしい建物である。
28 山道橋から下流を望む 29 山道橋から上流を望む
30 要定川合流地点 31 洞川合流地点
左岸側に合流する数本の川を過ぎると、大雄山線がみえてきた。
32 岩原橋から上流を望む 33 塚原橋
34 塚原橋から上流を望む 35 大雄山線鉄橋
河畔の道は線路で塞がれている。写真36では、線路通行禁止の白い看板が写っているが、どうみてもみんなが渡っているような雰囲気だ。駒千代橋付近は、河川敷が人工的に改変されている。
36 通行禁止の線路 37 駒千代橋から上流を望む
38 3つに分かれた川 39 左岸から神明橋を望む
40 神明橋から上流を望む 41 右岸の桜並木
42 南足柄市塚原付近 43 仲屋敷観世音
44 山下橋銘板 45 山下橋
山下橋は昭和29年架橋で、その古びたコンクリートが郷愁をさそう。
46 山下橋から上流を望む 47 左岸の遊歩道 その1
48 花下橋から上流を望む 49 左岸の遊歩道 その2
様々な花に囲まれた河畔である。
50 チューリップ畑 51 左岸の遊歩道 その3
緑の鉄のアングルが印象的な神崎橋を越えると、そこは天国のようなところであった。
52 神崎橋 53 桜まつり その1
川の両岸には、早咲の桜が咲き乱れている。沢山の人が川岸を歩き、屋台のテント村では、ビールなどを飲む人も。
54 桜まつりポスター
55 桜まつり その2
対岸、つまり右岸側には、大きな工場が見える。富士フィルムである。ここ、南足柄市は富士フイルムの企業城下町と言っても過言ではないだろう。
ちなみに、小田原市から南足柄市にかけて、足柄平野の西側には、化学・製薬系の工場が多い。その理由は、ズバリ、箱根山によって涵養される豊富な地下水と酒匂川の伏流水のおかげだ。そのうち地表に湧き出た一部がこうして狩川となって流れているということだろうか。
56 桜まつり その3 57 桜まつり その4
川には写真58のように臨時の橋が架けられようとしていた。
58 桜まつり その5 59 菜の花
60 大雄橋から上流を望む 61 万葉集歌碑
桜並木を過ぎて、元の静かな川に戻った狩川は、このあたりからやや急流になってくる。地図によると標高は約60mほどだ。
62 大橋から下流を望む 63 大橋から上流を望む
64 南足柄市広町付近 65 上山下橋から下流を望む
田んぼにヤギがいた。雑草を食べさせているのだろうか。隣にいてヤギを見つめるおじさんの目は限りなく優しいように見えた。
66 上山下橋から上流を望む 67 やぎを飼うおじさん
68 パークゴルフ場下の桜並木 69 上河原橋から下流を望む
ミニゴルフ場を過ぎると、周囲は山がちの雰囲気になってくる。
70 上河原橋から上流を望む 71 新上河原橋から上流を望む
72 道端の石仏 73 小川口橋から上流を望む
もう、山村の光景と行ってもいいだろう。湧水が流れ込む狩川は、ますます清らかな水となってきた。
74 流れ込む湧水 75 小川口橋
76 安沢川合流地点 77 南足柄市狩野付近
正面の矢倉岳はずいぶんと大きくなってきた。
78 渡場橋から上流を望む 79 河畔の農道
80 日影橋から上流を望む 81 一色橋
河畔を歩けるのは、一色橋までであった。
82 一色橋から下流を望む 83 一色橋から上流を望む
もう川沿いには歩けないので、一度県道に出て、再び川に向かっておりていくと、関下橋である。
84 茶畑 85 関下橋から下流を望む
この橋の側には、写真87のように素晴らしい桜の木が今まさに満開の時を迎えようとしていた。
86 関下橋から上流を望む 87 関下橋右岸の桜
再び県道に戻ると、本日の目的地矢倉沢バス停である。関本行きのバスは30分後なので、周囲を歩いてみる。見事な桜が山の麓にあった。
小さな丘を挟んですぐ北側には、内川という酒匂川の支流が流れていた。ここが矢倉沢の集落の中心で、矢倉岳への登山口にもなっているようだ。このあたりの標高は約250mである。
88 矢倉沢の桜 89 矢倉沢バス停
登山客で満員のバスにゆられて、大雄山駅についた。この駅で降りる人は多くない。殆どの人が松田駅まで行って、小田急線で帰るのだろう。
90 大雄山駅
今日は、足柄平野を流れる狩川の、のんびりとした田園風景を楽しむことができた。また、思いがけない早桜の姿を堪能することができたのは、天からの思いがけないプレゼントである。今日歩いた区間は、上流を除いて殆ど河畔の道を歩ける。季節によって様々な花や自然が楽しめそうだ。ただ、この川も、南足柄市中心部では例に漏れず重機が入って河川敷を掘り返したり整地したりしており、残念ながら、河川本来の自然環境はかなり破壊されている。せっかく水に恵まれた環境なのに惜しい。むしろ田舎のほうが、このような無駄な土建工事が残っているのは気のせいだろうか。このような地方振興策は、地方の自立と財政を確実に蝕んでいるような気がしてならない。
次回は、いよいよ箱根外輪山の源流地帯に挑むことになる。山岳地帯に入りハードな道程が予想されるが、体力が持つか心配だ。
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第2日目(2010年5月1日)矢倉沢〜源流
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