狩 川 探 訪

 箱根外輪山から流れ出て、湧水を集めて足柄平野を下り、酒匂川に合流する水量豊富で清冽な川
◆第2日目 (2010年5月1日) 矢倉沢 〜 源流

 狩川の2日目はいよいよ箱根外輪山に分け入って源流にむかう。
 小田原駅から伊豆箱根鉄道大雄山線で足柄平野を縦断し、終点の大雄山駅に降り立つ。かなりの数の登山客がいるが、皆、最乗寺行きのバスに乗ったようだ。矢倉沢に行くバスには登山客はいない。

  1 大雄山駅                           2 内山行きバス
   

 矢倉沢でバスを降り、川入林道に入る。のどかな山間の林道歩きである。時間はまだ8時を廻ったところだ。

  3 矢倉沢バス停                         4 川入林道 その1
   



 すぐに眼下にマス釣り場が現れる。結構人がいるようだ。

  5 狩川マス釣り場 その1                    6 狩川マス釣り場 その2
   

  7 狩川マス釣り場 その3                    8 狩川マス釣り場 その4
   

 マス釣り場があるくらいなので、完全な清流だが、ごらんのように流量はかなり豊富だ。

 9 狩川マス釣り場 その5

  10 矢倉沢浄水場                       11 川入林道 その2
   

 マス釣り場の上は浄水場だ。南足柄市民はこの清らかな水を飲んでいるらしい。さぞかし美味しい水道水だろう。

  12 林道から見る狩川 その1                  13 林道から見る狩川 その2
   

 林道は狩川のかなり上を通っている。左折して明神林道に入り川入橋をめざす。

  14 林道から見る狩川 その3                  15 川入橋から上流を望む
   



 川入橋から見る狩川は、美しい渓流である。
 ところで、さきほどから、妙な唸り声のような音が響いていたのだが、川入橋についてその正体が判明した。途中でバイクに乗って追い越していった、おじ(い)さんである。釣りの監視員らしい。ちなみに、このあたりで渓流釣りをする場合は、入漁料を払う必要があるのだ。彼の歌う謡曲?が唸り声の正体であった。

 16 川入橋から下流を望む


  17 豊富な水量                         18 湧き水
   

 水量は相変わらず豊富で、流れ込む湧水にも事欠かない。川入橋からもどってさらに上流を目指す。

  19 明神林道                         20 林道から見る狩川 その4
   

 21 狩川の谷と矢倉岳

 振り返ると、矢倉岳と箱根外輪山の間に狩川が作った谷がつづき、その向こうには丹沢山地が見えた。

  22 明神林道のゲート                      23 林道の看板
   



 上の地図をみると、狩川の左岸側に点線の道が見える。これを遡ろうと、林道からのアプローチ地点を探すが、見つからない。点線の道は、廃道になってしまったのだろうか、などと思いつつ歩いていると、ようやく写真24の地点で下に降りる道を見つけた。釣り人が利用する道らしい。これなら川まで降りられそうである。

  24 狩川へ降りる道 その1                   25 狩川へ降りる道 その2
   

 急坂を苦労して下りきると、そこには狩川の源流が、圧倒的な水量でワイルドな手付かずの自然の世界を形成していた。

  26 狩川へ降りる道 その3                   27 狩川源流部 その1
   

 ひんやりとした空気と、水の音だけがする静寂の世界である。

  28 狩川源流部 その2                     29 狩川源流部 その3
   

 30 狩川源流部 その4

  31 狩川源流部 その5                     32 狩川源流部 その6
   

  33 狩川源流部 その7                     34 狩川源流部 その8
   

 残念ながら、源流の左岸側を遡上する道、地形図の点線の道は確認することができなかった。歩く人が少ないので、廃道状態になってしまったのだろうか。上流に向かうアプローチの道がなくなり、ここで、狩川の源流の探索は諦めなくてはならない。結果として写真34が最後に確認できた最後の狩川となった。
 左岸側点線の道を遡って、その勢いで明神ヶ岳まで登ってしまおうと思っていたが、大自然の急峻な地形はそれを許してくれなかったようだ。以前は道があったことが地図から伺えるだけに、残念である。

 源流への旅は一応ここで終了となる。最後はやや不完全燃焼ではあったが、足柄平野を流れる美しい狩川を探索することができ、幸運なことに、途中の美しい桜を十分楽しむことができた行程であった。狩川の水量は豊富で、飯泉取水堰に流れ込む主要な水源でもあるが、それは巨大な箱根外輪山が我々に与えてくれる恵みでもある。

 ただし、このあたりの山は、杉や檜の人工林が多く、行政や地主も未だに換金樹木に固執しているようだ。もはや経営的に成り立たず、永遠に税金による管理を必要とするばかりか、保水力に疑問があり、さらに国民病とも言える花粉症の原因にもなっている無益な杉の植林をやめて、本来の植生を回復して欲しいところだ。単一植生の暗い杉林は自然ではない。人の都合で杉ばかりが植えられたあげく、お金にならないからといって放棄された木材生産工場の廃墟である。昆虫も鳥も野生動物も生息できない。そろそろ野生動物や虫たちが戻ってくる自然環境の保全を考えるべきではないだろうか。せっかく森林に貴重な税金を使うのであれば、人工林の解消を目指すべきだと思う。管理をしない地主と大赤字に苦しむ官民の林業部門が抵抗するのなら、トラストや行政の自然保護部門などで山林を強制的に安く買い上げる仕組みを作る時期に来ている。自然環境保全と水資源確保の観点から十分に説明がつくだろう。


 話が硬い方向にそれてしまったので本題に戻るとしよう。この時点で時刻はまだ10時である。予定外に早く幕を閉じてしまった狩川の源流探索の続きを考える。明神林道を登って仙石原にでるという選択肢もあるが、ここは下って同じ酒匂川の支流の水源地である夕日の滝を見に行くことにした。
 写真36をみると、矢倉岳の麓から頂上近くまで、黒く見える杉の人工林が侵食しているのがわかる。

  35 箱根外輪山                         36 矢倉岳と地蔵堂の集落
   



 林道を歩いていると、初老の男性から夕日の滝はどこかと聞かれたので、Uターンを奨める。まちがってこちらの林道に入ってしまったらしい。

 37 黒白林道と狩川の谷を見下ろす


 夕日の滝に行くためにまず、地蔵堂という集落を目指す。突き当たりを左折すると夕日の滝だ。

  38 土産物屋と矢倉岳                      39 夕日の滝への道
   

 この集落は、内川の最上流部にあたり、典型的な山村風景が見られる。

  40 里の風景 その1                      41 なぞの干し物
   

 何が山村風景かというと、例えば見上げた道端に猪の皮が干されていたりする。それも1頭ではない。

  42 猪の皮?                           43 山間の田圃
   

  44 内川                            45 夕日の滝バンガロー
   



 キャンプ場があった。家族連れが楽しそうにバーベキューをしている。

  46 キャンプ場内の橋                      47 橋から下流を望む
   

  48 橋から上流を望む                      49 夕日の滝への道 その1
   

 林の中を進んでいくと、滝の音とともに、冷たく湿った空気が周りを支配しているのが感じられた。

  50 夕日の滝への道 その2                   51 夕日の滝 その1
   

 52 夕日の滝 その2


 滝のすぐ傍まで行くことができる。なかなかダイナミックな滝だ。滝つぼも大きく迫力がある。

  53 夕日の滝 その3                      54 夕日の滝 その4
   

  55 夕日の滝 解説板
   

 ここでは、中年女性の2人に道を聞かれた。今日はよく道を聞かれる日だ。金時山方面に行きたいらしい。差し出された地図は、パンフレットであった。道に迷うのも無理はない。しかし、地図も持たずにこれから金時山に登るのはすこし無謀のような気もする。
 地蔵堂のバス停を目指して、里の小径を降りていく。

  56 里の風景 その2                      57 土産物屋
   



  58 里の風景 その3                     59 金太郎遊び岩 その1
   

 大きな岩は金太郎の遊び場だそうだ。

  60 金太郎遊び岩 その2                    61 菜の花畑
   

  62 地蔵堂集落と矢倉岳                    63 地蔵堂
   

 地蔵堂についた。足柄峠を超えて静岡県に向かう山道の神奈川県側の最後の集落である。次のバスまで1時間ほどあるので、ビールを飲むことにした。茅葺きの屋根につられて写真64の店に入る。結構混んでいた。

  64 万葉うどんの店                      65 猪汁
   

 生ビールのつまみを何にしようかとメニューを見る。うどんが名物らしい。よく見ると店の名前も「万葉うどん」である。が、うどんを食べる気にはならない。隣の人を見ると、豚汁のようなものを食べている。メニューを確認すると豚汁ではなく、猪汁らしい。これを注文することにした。潜在意識の中に、さっきの皮になった猪があったのかもしれない。汁には黒っぽい小さな肉片が数個入っていた。小さすぎて味はよくわからない。話の種にはなるが、個人的には猪肉が数切れ入った猪汁より豚肉が沢山入った豚汁の方が好みだ。まあ、そう言ってしまうと身も蓋もないのであるが....店員さんからうどんは頼まないのかと聞かれてお断りしたが、うどんが自慢の店なのに申し訳ないことをしてしまったようだ。
 バス停に戻ると、さきほど金時山方面への道を聞かれた派手な女性二人組を見かけた。結局登らなかったらしい。賢明な判断である。地図なしに山に登ってはいけないのだ。
 地蔵堂からバスにのって、大雄山駅に戻った。途中で小さな挫折はあったが、天気もよく、充実した一日だった。

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