柏 尾 川 (かしおがわ) 探 訪
横浜市西部の丘陵地帯の水を集めて東海道線と並走し、戸塚・大船駅の横を流れて、藤沢市で境川と合流する
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第1日目(2012年2月12日)
境川合流地点
(神奈川県藤沢市)
〜 戸塚駅
(横浜市戸塚区)
江ノ島にある境川河口を遡ると、藤沢市街地で東から合流してくる川がある。柏尾川である。その名前を知らない人でも、藤沢・平塚方面から東京・横浜方面に通勤・通学している人なら、大船から先の左手に見える川だといえば、ああ、あの川か、とわかるだろう。
今回は、その柏尾川の全貌を確かめるのが目的である。人工的で水がきれいだとも思えない川であるが、一体どこから流れだしているのかは、筆者も含めて知らない人がほとんどだと思う。
というわけで、藤沢駅から東に少し歩くと、境川との合流点である。その合流地点は、写真1のとおり、笑ってしまうほど見事な鋭角になっている。ちょっとした公園のようになっており、合流地点の鑑のようだ。
下流に向かって撮った写真2の右側が境川、左側が柏尾川である。
1 境川合流地点 その1
2 境川合流地点その2
合流地点から右岸側の道を上流へ向かう。少し雑然とした感じの住宅地である。川幅は広く、3面コンクリートで覆われ緩やかにカーブする典型的な都市河川である。緑もなく、自然と潤いに欠けている。
3 合流地点から上流を望む
4
1級基準点
5 川名橋 6
川名橋から下流を望む
水も黒ずんでいて綺麗とはいえないが、これが江ノ島に流れ込んで、サーファーや海水浴客が嬉々として浸かっている水の本態である。世の中には知らないほうがいいことがあるのかもしれない。
7 やや黒っぽい水 8
川名東橋
川名東橋は比較的大きな橋であるが、頭上には未完成の高架道路がその断面を晒している。
9 川名東橋の未完成道路 10 川名東橋から上流を望む
11 小河川の合流地点 12 横須賀市水道橋
ここまで、右岸側には河畔にずっと道がついている。
13 藤沢市高谷付近 14
コイの群れ
標高は、7m弱とかなり低い。3.11並の大津波が来れば境川は溢れるということだろう。
15 海抜標識 16 白鷺
左岸側には、いくつかの小河川が流れ込んでいる。
17 新川合流地点
18 古舘橋から上流を望む
このあたりから工業地帯になる。神戸製鋼があるが、橋の名前もそのまま神鋼橋である。
19 神鋼橋から上流を望む
20 神戸製鋼藤沢事業所
神戸製鋼と川の間の道を行くと、バスの営業所らしき場所に着いた。まだ、新しく綺麗な感じの車庫である。運転手さんたちが運行の合間に談笑していた。
21 神戸製鋼横の河畔道 22 江ノ電バス藤沢湘南営業所
町屋橋には、営業所からでてきた江ノ電バスが停まっていたが、このバスは普通のサイズよりも小さいミニバスである。藤沢市、特に南部は道路の整備が遅れており、細い路地が多いので、大きなバスは通れないのである。道路が貧弱なのは、地価が高く、住民の権利意識が強い、もっとぶっちゃけて言えば....、いや、これ以上書かないほうが良いだろう。川名東橋の未完成道路がそれを物語っている。
23 町屋橋上の小さなバス 24 藤沢市宮前付近
JRの鎌倉車両センターに着いた。昔は、大船電車区といっていたような気がする。ということは、鎌倉市に入ったことになる。実際には、車両センターの中が
市境
になっているようだ。
25 右岸の細い路地 26 JR鎌倉車両センター
写真26の奥に赤い電車が見えるが、ここに所属する成田エクスプレスである。大船駅が始発になっているのも、この施設があるからだろう。東海道本線の電車からもよく見えるが、反対側から見るのは初めてである。
車両センターの前に架かっているのが長島橋だ。右岸の道はこの先、東海道本線で行き止りになっているようなので、左岸側に渡ることにしよう。
27 長島橋から上流を望む 28 東海道本線
写真28の地点で川沿いの道がなくなったので、南側の道路に沿って進む。
下水処理場を過ぎて、左折すると山崎跨線橋である。この橋は、東海道本線と柏尾川を一気に越える。
29 山崎浄化センター 30 山崎跨線橋から東海道線下り方面を望む
山崎跨線橋から見る柏尾川は市街地の中を直線的に流れており、あまり面白味はない。跨線橋をわたり、先程通れなかった東海道本線の鉄橋まで戻ることにした。写真28を反対側から見たのが写真32である。
31 山崎跨線橋から下流を望む 32 東海道本線を北側からみる
左岸に渡り、大船駅方面に向かう。大船変電所の横を通る。標識によると管理者は東電ではなく、JRだ。電車に電力を供給する施設らしい。
33 大船変電所 34 戸部橋から上流を望む
小袋谷川合流地点には驚くほどたくさんのコイが群れていた。毎日たくさんのパンくずが投げ入れられるのであろう。
35
小袋谷川合流地点 36 鎌倉市台1丁目付近
川沿いの道がだんだん賑やかになってくる。大船駅が近づいてきた。写真36のように、川を渡る白いきれいな橋が見えた。初めて見る橋である。
37 大和橋 38 バスターミナル陸橋
橋の行き着く先、川の反対側を見るとバスターミナルが出来たようだ。大船駅は、横須賀線や京浜東北線が分岐する大きな駅であるが、周辺の道路が整備されておらず、大きなバスターミナルもなかった。新しいバス停は駅から少し離れているが、この橋と陸橋を通って駅と連絡するようになったということだろう。調べてみると2011年10月に出来上がったようだ。デッキの上から大船観音がよく見える。
39 陸橋から上流を望む 40 大船観音
柏尾川は、大船駅前をかなりの幅を持って流れていく。確かこのあたりは駅前にもかかわらず過去に水害に遭っているはずである。そのまま、左岸を遡っていくと、自動車学校の横を通る。駅のすぐ横なので電車からはよく見えるが、反対側から見るのは初めてである。
41 大船駅西側 42 鎌倉自動車学校
自動車学校の境界が、鎌倉市と横浜市との境界である。
43 鎌倉横浜市境 44 横浜市境界標識
写真45のとおり、市境で護岸が明らかに違うのも可笑しい。
45 市境界の護岸 46 市境界
横浜市に入った。水の流れは相変わらず淀んでいるが、浅いせいか少し綺麗になったような印象を受ける。
47 横浜市栄区笠間1丁目付近 48 澄んだ水
49 鷹匠橋から上流を望む 50
笠間大橋
前方に柏尾川を跨ぐ大きな青い橋がある。笠間大橋である。ここで、左岸側の道は行き止りになるので、橋を渡る。
51 笠間大橋から下流を望む
52 笠間大橋から上流を望む
橋を渡って右岸側に出ると、大きなニコンの工場がある。
53 ニコン横浜製作所
54
ニコン前の橋から上流を望む
55 河川改修地質調査 56 飯島橋
飯島橋を過ぎると美しい緑道が整備されている。ジョギングや散歩の人が多い。左手は住友電工である。
57 右岸の緑道
58 関谷川に通じる水路合流地点
59 金井遊水池付近の緑道 その1
60 金井遊水池付近の緑道 その2
気持ちのよい緑道を歩く。ここには柏尾川の西側に造られている金井遊水池が広がっており、空が広くなって開放的になる。金井公園がおわると久保橋である。この橋からは、柏尾川と金井遊水池がコンクリートの壁で仕切られているのがよく分かる。
61 金井遊水池 62 久保橋から下流を望む
久保橋から上流の右岸側は栄区から戸塚区に入る。遊水池はまだ続いているようだ。
63
久保橋から上流を望む 64 金井遊水池付近の緑道 その3
65 金井遊水池付近の緑道 その4 66 柏尾川解説板
解説板があった。柏尾川というよりも境川の解説である。その横に写真67の柏尾川説明図があった。よくみると、一つおかしなことに気付く。柏尾川の各支流には全て別の名前が付いており、肝心の本流、柏尾川の名前がないのである。これでは、本流の最初、すなわち柏尾川源流が何処だかわからないではないか。
後日、ネットで調べてみたところ、驚くべきことがわかった。
そこ
には、「柏尾川は、戸塚区柏尾町の阿久和川と平戸永谷川の合流点から藤沢市川名で境川本流に合流するまでの延長約11kmの二級河川です。」と書いてある。お役所の公式ページなので間違いないだろう。つまり、
阿久和川と平戸永谷川の合流点より上流の
柏尾川本流は「ない」ということになる。
67 柏尾川流域説明図 68
金井遊水池付近の緑道 その5
少し頭が混乱してしまったが、とにかく上流を目指して歩き続けよう。
69 金井遊水池越流堤 70 金井遊水池北端
越流堤があった。柏尾川の水位があれ以上になると、こちら側の遊水池に水が溢れて、遊水池に溜まる仕組みである。越流堤を過ぎると金井遊水池の北端になる。その上流は親水施設になっていた。
71 柏尾川大橋付近の親水施設 その1 72 親水施設 その2
ここから上流側は、河川の両側を歩く事ができるようになっていた。
73 柏尾川大橋 74 栄第二水処理センターからの放流
桜並木が青空の下で整然と並んでいる。
75 豊田堤橋 76 河畔に降りる
直線的に改修された柏尾川は面白味はないが、工場地帯の中を貫くオアシスの役割は十分果たしているように思える。天気は良いが、川面に沿って吹く2月の風は意外と冷たく、思わずウインドブレーカーのチャックを上げた。
77 鴨ファミリー 78 川を跨ぐパイプライン
左岸にはマンション、右岸には日立の大きな建物が並んでいる。
79 高島橋遠景 80 高島橋から下流を望む
81 高島橋から上流を望む 82 右岸の桜並木
堤防上に上がるとまだまだ桜並木が続いている。ついでに、橋の名前も桜橋で、ピンク色に塗られている。
83 桜橋 84 桜橋から下流を望む
正面に見えているビル群は戸塚駅周辺だろう。
85 桜橋から上流を望む 86 戸塚ポンプ場
87 朝日橋遠景 88 釣り人
若者が釣りをしている。何を狙っているのかわからないが、柏尾川で初めて見る釣り人である。
89 朝日橋 90 朝日橋から下流を望む
朝日橋からは、戸塚駅のホームが見える。今日の柏尾川探訪は、ここ、戸塚駅までとしよう。
91 旭橋から上流を望む 92 戸塚駅西口
GPSによる本日の歩行経路 (時間:3h34m 距離:17.2km)
柏尾川は、大船駅前の景観を作り、遊水池や緑道、桜並木で都市の潤いを作り出しながら、戸塚駅に達する。東海道本線利用者にとっては、両駅をはじめ、戸塚−藤沢間でよく目にする身近な川といえるだろう。しかし、今日は、その柏尾川を初めてきちんと歩いて、電車から見える景色とは異なる、川の素顔を垣間見ることが出来たような気がする。
しかし、柏尾川の源流が何処かという点については、よくわからなくなってしまった。次回は、それを解決し、柏尾川最初の一滴をぜひ見届けなければならない。
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第2日目(2012年3月3日)戸塚駅 〜 源流
境川
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第1日目 河口(藤沢市片瀬海岸)〜宮久保橋(大和市上和田)
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