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北横岳 標高2480m 登山開始地点標高2240m
自分の足で登らない山シリーズ第3弾 ロープウェイで簡単に登れる北八ヶ岳の2500m級の火山 |
◆ 2012年8月26日
那須(茶臼)岳、乗鞍岳と続いた「自分の足で登らない山シリーズ」第3弾は、北八ヶ岳である。一気に2240mまで登れる北八ヶ岳ロープウェイに乗ってみよう。目指すは、北八ヶ岳の主峰のひとつ、標高2480mの北横岳である。その差わずかに240m、このシリーズの趣旨にピッタリの山である。
八ヶ岳といえば、赤岳を中心とする険しい南八ヶ岳が有名であるが、その北側には北八ヶ岳と呼ばれるなだらかな火山が連なる美しい山々と無数の湖沼が広がっており、避暑にはもってこいのイメージである。
いつものように、前進基地となる茅野に前泊する。朝一番のバスで、まず、標高1771mの北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅を目指す。8時45分についた山麓駅は、見事なチロル風の駅舎だった。
1 茅野駅 2 北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅
ロープウェイの従業員は全員、ハイジのような衣装である。若い人は似合っているが、さすがに切符売り場のおばちゃんや整列整理のおじさんは違和感有りだ。が、仕事のユニフォームなので仕方ない。ここは、最近までピラタス蓼科ロープウェイという名前だったが、北八ヶ岳ロープウェイに変えたらしい。お客さんは年寄りがますます多くなるだろうから、こちらのほうが覚えやすくていいだろう。
天気は最高で、ここからも南八ヶ岳がよく見える。今日は展望が期待できそうだ。ロープウェイのゴンドラは100人乗りであるが、ほぼ満員だ。
3 山麓駅から見た南八ヶ岳 4 ロープウェイ
一気に山を登ったゴンドラは、7分後に山頂駅につく。駅前は、平らで、まさに庭園が広がっていた。沢山の人がいるが、中には軽装の観光客もいる。
5 山頂駅から見下ろす 6 山頂駅前
7 山頂駅から縞枯山を望む 8 山頂駅
駅前には、2237mと2240mの2種類の標識があった。9時10分、GPSロガーのスイッチを入れ、腕の高度計を補正してから北横岳へ向かって出発である。とりあえず、空気が薄い感じはしない。爽やかな風と突き抜けるような青空が広がる別天地だ。
9 山頂駅から北横岳方面を望む
駅前に広がる芝生の広場を過ぎ、溶岩でできた数十メートルの崖を登っていく。
10 坪庭と縞枯山
崖を登り切ると、奇景の溶岩台地が広がっている。ここが坪庭だ。高い木がなく、ハイマツと高山植物の世界である。
11 坪庭から山頂駅を見下ろす
坪庭の正面は雨池山2325m、右手は縞枯山2403m、目指す北横岳は左手である。
12 坪庭から雨池山を望む
13 坪庭
写真14の分岐地点で登山客は左へ、観光客は右へ行く。溶岩のゴツゴツした登山道を進んで行く。
14 北横岳登山道分岐 15 北横岳へ その1
16 北横岳へ その2 17 クジャクチョウ
写真17はあまりにも美しいので撮った。和名はクジャクチョウというらしい。蛾かと思ったが蝶で、名前の由来は見てのとおりである。日本に生息する亜種の学名は、Inachis io geisha つまり、クジャクチョウ亜種芸者である。派手な色が芸者さんに見立てられたらしい。本州中部では高山にいるが、北海道では平地にもいるそうで、高山だけというものでもないらしい。つまり、涼しいところが好きというゲイシャガールである。メスかどうかは知らないが...
写真18の沢を越えると、いよいよ本格的な登りとなる。坪庭の標高2250mから尾根の2400mまでの150mだが、急坂なので、途中で休む人が多い。乗鞍岳にくらべると呼吸が楽である。500mの違いだろうか。
18 北横岳へ その3 19 北横岳へ その4
20 登山道から縞枯山を望む 21 北横岳へ その5
写真21の最後の急登を終えると、写真22の分岐になる。雨池山方面は軽装者は入らないようにとの注意が書いてあった。岩場があるらしい。
22 雨池山分岐 23 北横岳へ その6
雨池山分岐を過ぎて平坦な樹林帯を少し歩くと、北横岳ヒュッテが見えた。ここからは右へ降りて七ツ池に通じる道があるが、今回は先を急ぐ。その理由は、雲が出てきたからである。前回の乗鞍岳と同様、朝は晴れているが、日中は気温の上昇とともに上昇気流による雲が出てくるというパターンらしい。ヒュッテの上の青空にも雲が出始めている。
24 北横岳ヒュッテ 25 北横岳へ その7
最後の標高差50mを登り切って、森林限界を超えると視界がひらけてすぐに山頂に着いた。10時8分、標高2472mの北横岳南峰に到着である。ロープウェイからの標高差は230m、1時間かかった。本格的に登山をやる人には物足りないだろうが、気楽なハイキングとしてはちょうど良い登りである。道もよく整備され、初心者でも安心して登れる。しかし、普段運動していない人にはやはり辛いらしく、途中で、辛さを親のせいにして泣いている小太りの女の子を抜かしてきた。小学校高学年くらいだろうか。結構大きいのに幼児のように大声で泣いていて両親も困っていた。
それにしても、こんなに簡単に2500m級の山に登れるのも、ロープウェイのおかげである。
26 北横岳南峰直下 27 北横岳南峰山頂 その1
高度計は10m程度の誤差があるようだ。
28 北横岳南峰山頂 その2 29 南峰山頂高度計表示
予想外に雲が上がってくるのが速く、残念ながら写真30のように南八ヶ岳の鋭い岩峰は雲に隠れてしまった。残念である。
30 北横岳南峰から南八ヶ岳を望む
31 北横岳南峰から小海方面を望む 32 北横岳北峰ヘ
すぐ向こうに見える北峰に行ってみよう。
33 北横岳北峰頂上
北峰の標高は2480mで南峰より少し高い。
34 北横岳北峰頂上から蓼科山を望む
北峰からは、蓼科山の火山らしい丸みを帯びた雄大な山体が見えた。あそこまで何時間かかるのだろう。(答えは3時間)
そばにいた人が、西に広がる雲をさして、あっちの方向にはなんという山があるのか、と聞くので、どうせ見えないからと思いつつ、中央アルプスか南アルプスじゃないですか、と適当に答える。あまりのいいかげんな答えに、隣の人が、あっちは上高地、穂高つまり、北アルプスだと訂正していた。
ちょっと気になったので、ロープウェイのパンフレットで確認してみると、どちらも正解であった。ここから西を向くと右側つまり北側に蓼科山、その左に北アルプス、中央アルプス、南アルプスと続き、左手、すなわち南側に南八ヶ岳、が見えると書いてある。今日は蓼科山しか見えないが、雲がなければこんな大パノラマが見えるらしい。
同じ道で北横岳を降りて、北横岳ヒュッテに戻る。ここから北側に降りて、七ツ池に行ってみよう。
35 北横岳ヒュッテ 36 七ツ池へ
山の裾野に隠れるように、神秘的な美しい池が現れた。七ツ池である。実際は、2つの池の一部にしか行けないので、本当に7つの池があるのかどうかわからない。一周できる道はないようだ。原生林を映す湖面は鏡のように静まり返っている。
37 七ツ池 その1
38 七ツ池 その2
39 七ツ池 その3
40 七ツ池 その4 41 北横岳ヒュッテ温度計
七ツ池をあとにして、ヒュッテに戻ると、温度計があった。気温は、18.5℃。下界とは違う、さわやかな高原の気温である。冷涼、極楽だ。
42 坪庭から雨池山を望む
坪庭に戻ってきた。一周する一方通行の道をぐるりと回って、ロープウェイの駅に向かう。この時間になると、一般客、特にお年寄りが多い。
43 坪庭登山道分岐点に戻る 44 坪庭
11時35分に、山頂駅に着いた。まだ時間的には余裕である。喉が渇いたが、手持ちのスポーツドリンクを全部飲むわけにはいかないので、駅で500mlのペットボトルのジュースを飲んだ。250円であるが、冷たくて旨い。山頂駅は水道はないが、電気は来ているようだ。水がないので、トイレは有料である。
しかし、このままロープウェイで降りるのでは、いくら脱力登山といっても、あまりにも芸がない。時間的に順調で、体力的にも問題ないので、麦草峠へ行く事にした。
ここから麦草峠に行くには、3とおりのルートがある。ひとつは、東回り、雨池峠から雨池を経由して行くルート、2つ目は、縞枯山、茶臼山を超えていく真正直正面突破ルート、3つ目は、西側を迂回する平坦なコースである。今日は、麦草峠からの帰りのバスの時間の制約があるので、余裕を見て3番目のルートにしよう。それに、もし、麦草峠に着いて時間があったら、行ってみたい場所があるのだ。
45 雨池峠分岐点 46 麦草峠方面へ
木道を歩く。残念ながら空は曇ってきたが、かえって涼しくてよいかもしれない。
47 森林浴展望台へ その1 48 森林浴展望台へ その2
49 森林浴展望台 50 スキーコース標識
展望台からの眺めは雲のため残念。このコースは冬はクロスカントリースキーのコースになるらしい。
12時15分、縞枯山へ登る道の分岐点に着いた。縞枯山を見上げると、その名前の由来となった縞枯れ現象がはっきりと判る。この現象の原因については、未だに諸説あるようだ。
51 縞枯山を見上げる 52 縞枯山方面分岐
足元は、写真53のように何故か濡れている。理由はよくわからないが、霧が多いということだろうか。道端には、写真54のような美しい苔が広がっており、やはり湿度が高いことは確からしい。
53 濡れた笹の葉 54 美しい苔の道
55 東屋 56 出会いの辻へ その1
変化に富んだ美しく平坦な道を歩いていく。北八ヶ岳らしい、なんだか癒される道である。
57 出会いの辻へ その2 58 出会いの辻
12時47分、出会いの辻という三叉路に着いた。ここまではゆるい下りだったが、ここからは登りになる。といっても大したことはない。名前とは違って、中年の3人組に抜かされた以外は、特に出会いはなかった。残念だ。
59 オトギリ平へ 60 オトギリ平
笹原や沢筋に続く登山道を歩く。オトギリ平、大石峠までは軽い登りである。
61 大石峠へ 62 大石峠
大石峠から木道を歩くと、景色が急に開けた。茶水の森と書いてある。池がありその先に道路が見えた。
63 茶水の森標識 64 茶水の森
65 国道299号線へ
国道299号線。麦草峠である。
バス停を探したが見当たらない。が、とりあえず峠から東にある国道で2番めに高いという地点を目指す。道路は、写真66のとおり青空の下をまっすぐ伸びている。あの先に国道299号線、別名メルヘン街道の最高地点となる場所があるのだ。
66 夏の麦草峠
標高2127mの最高地点についた。クルマや自転車が停まっている。中には記念写真を撮る人もいて、結構なメモリアルポイントになっているようだ。全国で最も、ではなくて、2番目、というのが渋いではないか。それにしても標高が高い。空気が薄くて、立っていられないほどである、というのは冗談だが、東京都の最高峰である雲取山よりも100m以上高いのである。
ところで、ここにも麦草峠の標識がある。どちらが本当の麦草峠なのか、謎である。10年くらい前に車で通ったが、寂しい峠という感じだった。今回のほうが人がたくさんいて賑やかである。
時間はまだ、2時前だ。ここで、白駒池に行ってみることを決断する。麦草峠のバスが3時20分発、麦草峠−白駒池往復は登山地図標準所要時間で1時間かかるので、2時を過ぎたら行くのをやめようと思っていたが、大丈夫だ。
67 麦草峠最高地点 68 白駒池入り口
ドライブインのようなところから、遊歩道に入る。
69 白駒池へ 70 白駒池 その1
残念ながら天気が悪い。青空の下だったらもっと綺麗だろう。
71 白駒池 その2
72 青苔荘 73 苔
遊歩道を戻り、麦草峠方面の登山道に入る。
74 麦草峠方面登山道分岐 75 白駒の奥庭標識
白駒の奥庭という場所があった。地図に載っていなかったのだが、思いがけない素晴らしい景色だ。坪庭に通じる、日本人の好みの箱庭、盆栽風の自然の庭園である。石や流木、盆栽を飾る日本の庭をそのまま自然がスケールアップしたような、奇跡の光景である。
76 白駒の奥庭 その1
77 白駒の奥庭 その2
78 白駒の奥庭 その3 79 黒曜の森標識
黒曜の森の標識があった。フウリンゴケを一瞬、フリンゴケ?不倫後家か?と思った私は、やはりエロオヤジなのだろうか、と13秒ほど悩んでしまった。
80 黒曜の森 81 麦草ヒュッテへ
森を抜けて、笹原の草原に出る。なぜか一部分だけが真っ赤な木があった。もう、麦草峠の秋がここから始まっているのだろうか。
82 紅葉? 83 82の拡大写真
84 麦草峠の笹原 85 鹿よけ柵
鹿よけ柵を過ぎると、広場にちょうどバスが入ってくるのが見えた。唯一の今日中の帰宅手段である。15時ちょうど、予定どおり麦草峠に到着である。
86 麦草ヒュッテへ 87 麦草ヒュッテ
国道にバス停が見当たらない理由がわかった。ここ、麦草ヒュッテの前の広場がバス停兼転回所兼ドライバー用トイレなのである。
ここからはシモネタなので、嫌な人は読み飛ばして欲しいのだが、私もトイレにいくと、出た液体の色は赤に近い茶褐色であった。血尿である。それほど疲労した感じはなく、水分も採っていたのだが、限界を超えてしまったようだ。しかし、バスが来たのでもう歩かなくて良い。
88 茅野駅行きバス
茅野駅でもう一度トイレに行くが、まだ赤い。茅野駅からの特急は混んでいて座れなかったが、水分補給に努めた結果、八王子駅では尿の色が元に戻っていたので、一安心だ。
行軍血色素尿症といい、足の裏への衝撃で赤血球が破壊されるらしい。男性だけにみられるらしいが、この説明はちょっとエビデンスに乏しそうである。高山病との関係があるのだろうか。
GPSによる本日の歩行経路
GPSによる今日の高度記録
北八ヶ岳は、高山、池、樹林帯、展望と山と高原の魅力満載の場所だった。その穏やかでやさしい自然に簡単に触れ合えるのも、ロープウェイのおかげである。北横岳だけなら1時間ほどで登れてしまうが、それだけではもったいない素晴らしい北八ヶ岳の自然である。夏空の下にまっすぐ伸びる麦草峠の国道は夏の風景の1ページになった。
(本日の歩数:26861歩)
関連サイト 北横岳(積雪期) 2480m 長野県南佐久郡佐久穂町/茅野市 2014年3月15日
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