三島・柿田川探訪
富士山の溶岩台地から湧出している日本有数の湧水群が狩野川に合流し駿河湾へ
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2004年6月13日
三島駅〜沼津駅
これまで神奈川県のいろいろな川の河口から源流までを紹介してきたが、今回は静岡県まで遠征である。日本一の湧水として有名な柿田川と水の都、三島市である。
まず、下の写真地図を見ていただきたい。下の方にある三島市と隣の清水町は 富士山とその寄生火山である愛鷹山の南端、箱根の南西に位置する。ここは、富士山の溶岩台地の南端部に当たり、溶岩台地にしみこんだ(というより地下の川状態になっているらしい)水が湧水となって大量に湧き出して、駿河湾に注ぐ場所なのである。
神奈川県内ではないが、このサイトのテーマである「水の旅」の趣旨にピッタリの三島・柿田川を紹介したいと思う。(このサイトのテーマ写真もここで撮影したものを使っている。)
空から見た富士山・箱根・三島市周辺
google mapより転載
まず、JR東海道線の三島駅に降り立つ。東京方面からは新幹線が便利だ。修善寺方面に行く伊豆箱根鉄道も発着する静岡県東部の交通の要所である。三島駅も溶岩台地の上にあるが、下の地図で判るように駅が標高40m程度、南の国道1号線が約20mなので、20mの差がある。つまり、標高30m程度のところに巨大な水脈があり溶岩台地の南端部でわき出しているということになる。
駅から南に少し歩くと、愛染の滝をすぎて、最大の湧水池として有名な白滝公園がある。写真2の上段に写真3の湧水があり、それが滝のように下の池に落ちていることからこの名前がついたらしい。現在は、周辺工場の地下水汲み上げにより、水量が減っているそうだが、季節によって差はあるものの今も滝のように湧き出ている。公園は溶岩がむき出しになっているが、ここだけでなくあちこちから水が湧き出ているのが見える。道路が出来る前は隣の楽寿園と一帯となって壮大な湧水地帯だったらしい。
1 白滝公園 その1 2 白滝公園 その2
3 白滝公園の湧水 4 白滝公園 その3
白滝公園からもう一つの湧水地点である菰池公園へ桜川を遡る。水は市街地の中を流れているとは思えないほど澄んでいる。川沿いは美しい遊歩道になっていて歩いていても楽しい。
5 白滝公園から菰池公園へ(桜川) その1 6 白滝公園から菰池公園へ(桜川) その2
7 菰池公園(桜川源流)その1 8 菰池公園(桜川源流)その2
9菰池公園から流れ出す桜川 10 菰池公園の湧水
また、白滝公園に戻り、今度は桜川下流に向かって歩くと三島大社につく。大きな神社である。何でも、源頼朝が源氏再興を祈願し、旗挙げをしたのがここ三嶋大社だそうだ。源氏の守り神であり、鎌倉幕府成立の発端となったわけだ。
11 白滝観音堂(白滝公園内) 12 白滝公園から三島大社へ(桜川)
13 三島大社 14 源兵衛川遊歩道 その1
三島大社から戻って、反対に楽寿園の南側を西に行くと源兵衛川である。楽寿園とともに一時は水が枯れたが、企業の余剰水を流すことにより、蘇ったらしい。現在は、緑に囲まれた美しい川のほとりに遊歩道が整備されている。しかし、駅からすぐの市街地にこのような川が残されているのは奇跡に等しいと思う。同時にこんなにも素晴らしい財産を身近に持つ三島市民をうらやましく感じた。
15 源兵衛川遊歩道 その2 16 源兵衛川遊歩道 その3
17 源兵衛川遊歩道 その4 18 源兵衛川遊歩道 その5
川の中をこのように歩けるところは、珍しい。昔は炊事の支度や後片づけ、洗濯をここで行っていたのだろうか。
19 源兵衛川遊歩道 その6 20 時の鐘付近の街角と源兵衛川
三島は東海道53次の宿場町でもあるが時の鐘はその中心部にあり、江戸時代の三島宿の面影を残している。
21 源兵衛川と時の鐘 22 源兵衛川と伊豆箱根鉄道橋梁
23 源兵衛川遊歩道 その7 24 源兵衛川遊歩道 その8
25 源兵衛川遊歩道 その9 26 源兵衛川遊歩道 その10
途中に、水の苑緑地という小公園があった。ここも写真28のように水が湧いている。
27 水の苑緑地 その1 28 水の苑緑地の湧水
ここから川を離れて東へ行くとすぐに三島梅花藻の里がある。ここは、解説板を呼んでいただいた方が話が早いだろう。
29 三島梅花藻の里 その1 30 三島梅花藻の里 その2
31 三島梅花藻の里 その3 32 三島梅花藻解説板
ちょうど三島梅花藻の可憐な花を見ることが出来た。
33 三島梅花藻の里 その4 34 三島梅花藻
35 源兵衛川遊歩道 その11 36 源兵衛川遊歩道 その12
源兵衛川をさらに下っていくと南田町広場という開けた場所に出る。桜の名所でもある美しいところだ。
37 源兵衛川遊歩道 その13(南田町広場) 38 源兵衛川遊歩道 その14(南田町広場)
国道1号線を横断すると、大きな池があった。人工のものらしい。その理由は、水が冷たすぎてそのまま田んぼに引けないので、ここでいったん暖めるためらしい。湧き水が清冽過ぎるとは、何とも贅沢な悩みである。しかし、この池は今では自然の一部として溶け込んで美しく澄んでおり、富士山が見えれば素晴らしい景色だろう。
39 中郷温水池 その1 40 中郷温水池 その2
このように三島は水の都の名に恥じない素晴らしい街だ。訪れる際には
こちら
も参考していただくと良いだろう。
さて、中郷温水池から国道を西に1kmほど行くと、大きなショッピングセンターがある。その反対側、国道の真下から柿田川は突然その姿を現す。日本3大清流として、その美しさはテレビなどでも取り上げられている。水中カメラで魚や水草が躍動する姿を見た人は多いだろう。
写真41の中央部と左側に砂を巻き上げているその湧出口の一つがある。それにしても、水と水草と周囲の緑の調和のとれた美しさには感嘆せざるを得ない。本来の川は昔は皆こうだったのだろうが、もはやこのような場所が残されていること自体が奇跡である。
41 柿田川湧水群 その1
写真42でも中央部に湧水口が見える。思わず飛び込みたい衝動に駆られるが、多分冷たくて泳げないだろう。
42 柿田川湧水群 その2
この動画
(写真43の拡大)は人工的に作られた湧水口だが、その青さには目を見張る。真ん中に砂を巻き上げているのが確認できる。この円筒の中に魚が泳いでいた。
43 柿田川湧水群 その3 44 柿田川 その1
このようにして突如出現した柿田川は、豊富な水量で流れていく。湧水量は100万トン/日で東洋一だそうだ。年ではなく1日あたりである。ものすごい量だ。相模川の神川橋における少ない流量の日に比べて、2倍から3倍くらいある計算になる。そのうち19万トンが周辺市町村35万人分の水道用、10万トンが工業用水、0.6万トンが農業用水、残りの70万トンが狩野川に流れ込んでいるそうだ。
この、柿田川も一時は工場排水で死の川となったらしい。おそらく、ショッピングセンターのあった土地は工場だったのだろう。よくここまで回復したものだが、周りは市街化が進んでおり、油断は出来ないとのことだ。
45 柿田川 その2 46 柿田川 その3
水草がこれほどまでに豊富な川は見たことがない。中には、三島梅花藻もあるのだろう
47 柿田川 その4 48 柿田川 その5
写真49の右側に見えるのは、水道施設である。消毒すればそのまま飲めるらしい
49 柿田川 その6 50 柿田橋からみた柿田川
51 柿田川湧水群解説板
柿田川は全長たった1.2kmしかなく柿田橋の下流で狩野川に合流する。青い澄んだ水が見られるのもここまでだ。この後狩野川沿いに沼津駅まで歩いた。
柿田川の流れ(動画)
参考 ◆
狩野川探訪
52 柿田川からみた狩野川合流地点 53 狩野川あゆみ橋
54 あゆみ橋から見た御成橋 55 JR沼津駅
今回は、日本でも有数の湧水とその清らかな流れを堪能することが出来た。この記録は2004年に訪れたものだが、このサイトを作ろうと思い立ったきっかけの一つであり、水と自然と人の営みを深く考える旅となった。機会があれば、みなさんもぜひ訪れてみて欲しい。
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