狩 野 川 探 訪         

 伊豆天城山の山中を源流として北へ流れ、修善寺を経て柿田川を合流し、沼津で西向きに流れを変えて駿河湾に注ぐ美しい河川だが、その名を有名にしたのは昭和33年に来襲し多くの犠牲者を出した狩野川台風である。
◆第1日目 (2009年11月15日) 河口(静岡県沼津市)〜伊豆長岡駅(静岡県伊豆の国市)

 この企画では以前、日本で最も美しい川の一つといわれる柿田川を紹介した。柿田川は、直接海に注いでいるわけではなく、清水町で狩野川に合流して、駿河湾に注いでいる。その狩野川は、伊豆の最深部である天城山中から流れ出て、伊豆半島の中央部を北上している約46kmの一級河川で、狩野川台風と鮎釣りで知られた川である。
 今回は、久しぶりに箱根を超えて、この狩野川に挑戦することにした。どちらかというと海のイメージが有る伊豆半島だが、山と川の魅力を探しに行こうと思う。

 というわけで、秋晴れのある日に、河口を擁する沼津に赴いた。沼津市は伊豆半島の根っこの部分、駿河湾側にある、この地域の中心都市である。新幹線は沼津駅ではなく、となりの三島駅に止まるが、駅の風格は沼津駅の方が上のような気がする。駅の南口に出て、アーケード商店街を抜けて海に向かう。

   

  1 沼津駅                       2 沼津仲見世商店街
   



 最初の目的地である千本浜に着いた。この名前の由来は、狩野川から田子の浦まで続く駿河湾沿いの松林である、千本松原から来ている。

  3 千本浜公園                     4 千本浜公園案内図
   

 ここ千本浜公園が千本松原の東端だということになる。この景色は、白砂青松と富士山という日本人の美意識の原点とも言える要素を持っているため、多くの文化人の足跡があるらしい。
 機会があれば、この海岸をどこまでも歩いてみたいものだ。

  5 明石海人歌碑                   6 千本浜
   

 今日の天気は、写真7のとおり快晴だが、風が強く、富士山の頂上だけは強い上昇気流のためか、雲がかかっている。堤防がない時代は、海と松と富士が見事に調和した景色だったのだろう。

 7 千本浜から富士と駿河湾を望む

 千本浜を東に戻ると、狩野川河口に開かれた沼津港である。こちら側は鉄くずの取り扱いが多いようで、西側の美しい景色とは対照的な光景である。更に行くと、「びゅうお」という観光展望施設があった。

  8 沼津港 その1                  9 びゅうお
   

 びゅうおは、沼津港の入江をまたぐようにそびえ立っており、対岸に渡れるようだ。入ってみようとすると、まだ開館前で少し待てといわれたので、スルーすることにして魚市場の方に戻る。

  10 沼津港 その2                 11 沼津みなと新鮮館
   

 港の反対側には、土産物屋や観光船乗り場があり、結構賑わっていた。

  12 賑わう土産店                  13 狩野川河口
   

 そして、ついに狩野川の河口にたどり着く。強風で海が荒れており、川の色は茶色く濁っている。海の向こう、左側には伊豆半島の大瀬崎方面の山々が見えた。

  14 河川敷の整備                  15 河口遠望
   

 現役の渡し船があるが、今日は強風のため運行していない。そのまま右岸側を遡っていく。

  16 我入道の渡し案内図               17 渡し乗船場
   



 赤い橋がみえてきた。河口には橋がかかっていないため、一番海よりの橋ということになる。

  18 港大橋                     19 港大橋から下流を望む
   

 川は大きく湾曲しているため、港大橋から下流を見ても海は見えない。

  20 港大橋から上流を望む              21 永大橋
   

  22 永大橋から下流を望む              23 永大橋から上流を望む
   



 御成橋は、沼津の中心地に架かっており、対岸の賑やかな街と調和した美しい姿を見せてくれる。

 24 御成橋と沼津市街 

 橋の袂には狩野川の概要が書かれている古い解説板がある。

 25 狩野川解説板 

  26 御成橋から下流を望む              27 御成橋上
   

  28 御成橋から上流を望む              29 あゆみ橋
   

 あゆみ橋は歩道専用だが、毎日この橋を渡って通勤、通学する人が羨ましくなるような場所だ。沼津というところは、このように風光明媚、気候は温暖、魚も旨そう、そこそこ都会で、首都圏にも近い、と、住んでも結構いいところではないか、という気がする。

  30 あゆみ橋から下流を望む             31 あゆみ橋から上流を望む
   



  32 護岸工事                    33 三園橋から下流を望む
   

 対岸の護岸工事のため大掛かりな仮設桟橋が作られている。

  34 三園橋から上流を望む              35 黒瀬橋
   

 市街地で海が近い下流部にもかかわらず、水量が多く流れも速いことに驚く。

  36 黒瀬橋から下流を望む              37 香貴山
   

 市街地からやや外れると、香貫山が近づいてくる。公園になっており、五重塔は戦没者慰霊塔らしい。

  38 河畔から見る富士山               39 香貴大橋遠景
   

 のんびりした雰囲気の河畔の道を歩き、やがて正面にアーチが特徴的な橋が見えてくる。香貫大橋である。ここでは、裾野市方面から流れてくる黄瀬川が合流している。
 この橋から見る富士山も素晴らしいが、山頂だけは相変わらず雲がかかっている。

 40 香貴大橋から下流を望む              41 香貴大橋から黄瀬川を望む
   

  42 香貫大橋から上流を望む             43 香貫大橋近景
   



 清水町に入る。道は、大きく蛇行した川を一旦離れるが、水神さまの近くに溺死供養塔というなんともストレートな名前の碑が建っていた。狩野川台風よりも昔に建てられたような感じだ。

  44 溺死供養塔                   45 徳倉橋から下流を望む
   

 川沿いに戻り、徳倉橋を渡る。ここはやはりあの柿田川との合流点を押さえておくべきだと考えて、少し遠回りをすることにした。

  46 徳倉橋から上流を望む              47 柿田橋から柿田川上流を望む
   

 柿田橋から見る柿田川は、相変わらず真っ青に澄んだ水を湛えて、静かに流れている。

  48 狩野川・柿田川合流地点             49 合流地点から狩野川下流を望む
   

 50 合流地点から狩野川上流を望む           51 河川敷と富士山
   

 柿田川との合流点を後にして、徳倉橋に戻り、今度は左岸側を歩く。写真51のような広々とした景色がなんとも気持ち良い。

 52 境川排水機場                   53 松毛川排水機場
   

  54 境川排水機場解説板
    

 このあたりは、低湿地帯らしく、複数の排水ポンプ場がある。川のこちら側は三島市、対岸は沼津市であるが、三島市側は洪水に悩まされたのだろう。下の地図を見ると53の松毛川排水機場のところで、市境が蛇行しており、細長い池があることに気がつく。おそらく蛇行していた狩野川を直線的に改修したため、旧河川路の痕跡が残っているのではないかと考えられる。航空写真で見てもそれらしい感じである。



  55 新城橋から下流を望む              56 新城橋から上流を望む
   

 ここは、自然の山が防波堤のように細長く続いており、その一部を道路を通すために開削してある。そこは写真57のように門のようになっていた。いざという時に扉か板で塞げる構造になっているようだ。おそらくこれも洪水対策だろう。

  57 政戸地区の自然堤防と門             58 日守大橋と富士山
   

 日守大橋付近も広々とした光景である。

  59 柿園                      60 日の出橋遠景
   

  61 日の出橋近景                  62 日の出橋から下流を望む
   

  63 日の出橋から上流を望む             64 堤防上の道
   

  65 石堂橋遠景                   66 石堂橋近景
   

 石堂橋は、鉄道の鉄橋のような感じで、懐かしさを感じる。ここから右岸に渡った。



  67 石堂橋から下流を望む              68 石堂橋から上流を望む
   

 松原橋を渡り、再び左岸側に渡る。

  69 松原橋から下流を望む              70 松原橋
   



 左岸側に渡ったのには理由があるのだが、その目的地が見えてきた。狩野川放水路である。

  71 あやめ橋                    72 狩野川放水路管理所
   

  73 あやめ橋人道橋からあやめ橋を望む        74 あやめ橋から狩野川放水路を望む
   

 狩野川放水路は、1951年に建設が着手され、7年後の1965年に完成した。目的は、洪水の被害が頻発する狩野川の水を分流し、ここから西にショートカットして直接駿河湾に流すためである。しかし、工事中の1958年に伊豆地方を襲った狩野川台風には、間に合わなかった。
 狩野川台風は、記録的な豪雨のため、伊豆半島だけで1000人以上の犠牲者を出した歴史的な台風で、中でも避難所だった修善寺中学校がまるごと流されて、430人以上の人が亡くなったそうだ。ここに写真が載っているが、悲惨な状況が生々しい。

 さて、その放水路であるが、写真74のとおり、普段は水は流れていない。写真75のように、大男山を3本のトンネルでブチ抜き、駿河湾の直前でもう1つのトンネルを通って江浦湾に注いでいる。

  75 長岡トンネル入口を望む             76 本流・放水路分岐地点
   



  77 千歳橋                     78 千歳橋上
   

 放水路を過ぎると、再びのんびりとした河畔の道が続き、やがて鮮やかな青い色が印象的な千歳橋に着いた。

  79 千歳橋から下流を望む              80 千歳橋から上流を望む
   

 まだ時間は早く陽も高いが、駅が近いので今日はここまでとした。伊豆長岡駅は観光客で賑わっていた。

  81 伊豆長岡駅                   82 伊豆長岡駅の伊豆箱根鉄道電車
   

 松が映える海岸と港の狭間に注ぐ狩野川の下流部は、沼津市街の中心部を流れ、都市景観と調和した美しい川である。中流域は、普段は所々から富士山が望めるのんびりとした川で、あの柿田川も合流している。
 一方で、豊富な自然の中にも、洪水に悩まされてきた歴史の爪痕が所々にあり、降水量の多い伊豆半島の宿命を感じさせる川である。
 ほとんど河畔に道がついているため、歩くコースには事欠かないだろう。
 次回は、いよいよ中流から上流に向かうことになりそうだ。

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 関連サイト ◆三島湧水群・柿田川(2004年6月13日)三島駅〜沼津駅
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