入笠山 (にゅうかさやま)  標高1955m 登山開始地点標高1780m

       自分の足で登らない山シリーズ第13弾 南アルプスの北端に位置するゴンドラで登れる山
 
◆ 2013年5月26日

  南アルプスの北端、山脈がフォッサマグナに落ち込んで終わる場所に、最後の山らしい山、標高1955mの入笠山がある。「いりかさやま」または「いりがさやま」と読むのが普通であろうが、なぜかWikiと山と高原地図では、「にゅうがさやま」となっており、ここのゴンドラを運営している富士見パノラマリゾートの公式ウェブサイトでは、「にゅうかさやま」となっている。どちらにせよ、『重箱読み』であることには違いがなく、読みにくい名前であることは確かだ。



 さて、この山、先ほどゴンドラと書いたが、そう、それで標高1780mまで登れてしまうのだ。入笠山山頂まで、あとたった175mである。これを手抜き登山と言わずして何と言おう。いや、登山とはいえないかもしれない。これは、このサイト的には見逃せないだろう。

 八王子から乗った特急あずさの自由席は満席だったが、大月から座れた。今日の最寄り駅は、山梨県境に近い長野県の富士見駅である。新宿から90分の距離だ。

  1 富士見駅に着いたあずさ3号             2 富士見駅
   

 富士見駅は、高原の駅らしく、メルヘンチックである。駅前には、シャトルバスが待っていた。出発の10時までまだ時間があるので観光案内所に寄ると、ゴンドラの割引券付きのパンフレットをくれた。ラッキーである。
 ほぼ満員のマイクロバスは、出発してあっという間に、富士見パノラマリゾートに着いた。

  3 シャトルバス                   4 富士見パノラマリゾート
   



 往復1600円のところ、1400円に割引になったゴンドラの往復チケットを買う。階段を登ると、マウンテンバイクを脇に抱えた派手な人たちとすれ違った。

  5 富士見パノラマリゾートゲレンデ          6 ゴンドラ乗り場
   

 冬はスキー場なのだろうが、今はゴンドラを待つ人の半分以上がMTBの人だ。冬も夏も稼げる効率のよいリゾートである。係員の人が、MTBの人は写真7、トレッキングの人はビニールシートを巻き上げた写真8の状態にして、振り分けている。

  7 ゴンドラシート その1              8 ゴンドラシート その2
   

 山麓駅の標高は1050mだが、ゴンドラはぐんぐん高度を上げて、あっという間に1700mを超える。

  9 ゴンドラ頂上駅へ                 10 標高1700m越え
   



 10分ほどで標高1780mの山頂駅に着いた。700m以上の標高を一気に稼いでしまったようだ。時刻は10時30分である。

  11 ゴンドラ頂上駅から登山口へ
     

 12 案内図

 MTBのコースも充実しているようで、リフト沿いにいくつかのコースが設定されている。

 13 MTBコース案内図

 山頂駅から、まず湿原を目指す。       

  14 入笠湿原へ その1               15 入笠湿原へ その2
   



 ちょっと下り、林道と鹿柵を越えると、そこは「入笠湿原」だ。

  16 入笠湿原入口
     

 17 入笠湿原 その1


  18 入笠湿原 その2                19 入笠湿原 その3
   

 尾瀬を1/100の規模にしたような、標高1800mの高原の楽園である。まだ、短い夏には少し早く、花は咲いていないようだ。

  20 入笠湿原 その4                21 入笠湿原 その5
   

    22 入笠湿原解説板
   

 湿原のすぐ上には山小屋があった。林道の横に標識と登山道があり、そちらに足を踏み入れる。

  23 山彦荘                     24 御所平へ その1
   



 アップダウンのある比較的平坦な道を行くと、車両規制のおじさんがいた。鹿柵のゲートから中に入ると、そこが御所平のお花畑ということらしいが、どうみてもスキー場のゲレンデである。

  25 御所平へ その2                26 御所平のお花畑入口
   

 ゆるい斜面をジグザグに登って鹿柵を出て西側の登山道に合流した。

  27 御所平お花畑                  28 入笠山へ その1
   


 ここからいよいよ登山道らしくなる。     

  29 入笠山へ その2                30 入笠山へ その3
   

  31 入笠山へ その4                32 分岐案内図
   

 分岐が現れた。右が岩場、左が迂回路らしい。

  33 分岐                      34 入笠山へ その5
   

 岩場と言っても特に危険なところはない。さすがに森林限界を越えることは無さそうである。

  35 鎖場                      36 入笠山の植生
   



 あと標高で50mくらいかな、と思いつつ登っていると、思いがけなく突然大量の老人に出会う。出発するところらしい。ここが頂上だ。11時25分。山頂の標高は1995mだと思っていたら、1955mなのであった。記憶力の衰えを感じる。年は取りたくないものだ。

  37 山頂直下                    38 入笠山山頂 その1
   

  39 入笠山山頂 その2               40 入笠山 山頂 その3
   

 くつろぐ人達で賑わう入笠山の頂上は青空が広がって気持ちがいい。しかし、最大のセールスポイントである360度の展望は、やや霞んでいて冴えない。八ヶ岳と3つのアルプスと富士山は、いずれもほとんど雲の中である。

 41 山頂から八ヶ岳方面を望む


 42 山頂から富士山・南アルプス方面を望む

 43 入笠牧場方面を望む


 44 山頂を後にする


 ここから、大阿原湿原まで行ってみたいと思っていた。帰りのシャトルバスが15時発なので、山頂にはあまり長居できない。11時45分、出発である。



  45 大阿原湿原への道標               46 大阿原湿原方面分岐
   

 まず、首切清水という恐ろしい名前の場所を目指す。

  47 首切清水へ その1               48 首切清水へ その2
   



 下って行くと、佛平峠というところで、舗装された道路に出る。

  49 佛平峠                     50 林道へ出る
   

 ここからしばらくは、林道歩きである。

  51 首切清水へ その3               52 首切清水解説板
   

 12時ちょうど、首切清水に到着した。水は出ているが、ちょっと直接飲む雰囲気ではない。昔はこのあたりにも山賊がいたのだろうか。

  53 首切清水                    54 大阿原湿原へ
   

 車が停まっていたが、タープを張ってくつろいでいる。この林道は、8時から15時までは交通規制があるので、朝早く来て夕方までいるのだろう。



 12時10分、大阿原湿原の入口に到着した。

  55 大阿原湿原入口
     

 56 大阿原湿原案内図


 湿原の最南端と書いてある。つまり、暖かいところには湿地はあっても湿原はないのだろうか。素朴な疑問の回答はここに書いてあった。
「湿原とは過湿・貧栄養の地に発達する自然草原である」とある。ポイントは、「貧栄養」である。水が綺麗でなければならないことはもちろんだが、もう少し詳しい解説があったので抜粋してみると

「湿原は、冷涼な地域で典型的に発達する。その原因は、気温が低いために有機物の分解速度が遅く、特に過湿な条件では有機物分解されずに堆積して泥炭が形成されるためである。泥炭が形成されると、有機物に含まれている栄養塩類は放出されずに埋没してしまい、植物が吸収することができない。」

ということらしい。ここが湿原の最南端なのは、標高が1800mの冷涼な高地にあるからだろう。

 湿原一周の所要時間は約30分。行くかどうか迷う。3時のバスに乗るには、2時までにゴンドラの山頂駅に戻れば良いだろう。現在時刻は12時11分。GOである。

  57 大阿原湿原一周 その1             58 大阿原湿原一周 その2
   

  59 大阿原湿原一周 その3             60 大阿原湿原一周 その4
   

 先にはアウトドア雑誌から抜け出してきたような女性二人が歩いていて、テレビの旅番組のような光景である。この湿原は、尾瀬のような沼というか、いわゆる水浸し状態ではなく、結構乾いていて、一見牧場のような感じである。

 61 大阿原湿原一周 その5



 湿原の最上流部に着いた。木橋で沢を渡る。

  62 大阿原湿原一周 その6             63 大阿原湿原一周 その7
   

 64 テイ沢 その1

 この沢の水と苔の美しさは写真のとおり特筆モノであった。

 65 テイ沢 その2


  66 テイ沢 その3                 67 大阿原湿原一周 その8
   
 湿原の南側に渡り、入口方向に戻っていく。  

  68 大阿原湿原一周 その9             69 大阿原湿原一周 その10
   



  70 大阿原湿原一周 その11
     

 71 現在位置


 大阿原湿原を周って、帰路をとることにした。入笠山には登らず、首切清水から東側の山腹の林道でゴンドラ山頂駅に向かおう。

  72 入笠山国有林
     

 73 ビューポイントから八ヶ岳を望む


 途中の八ヶ岳ビューポイントからは、頂上付近が少しだけ見えた。



  74 幽霊のような木                 75 御所平へ戻る
   

 不気味な針葉樹を発見した。帰って調べてみるとナガサルオガセというする糸状の地衣植物のようだ。道に迷って暗くなりかけた時にみるとかなり不気味だと思う。

 76 入笠湿原へ戻る

 入笠湿原の真ん中を右折して、ゴンドラ山頂駅のあるアカノラ山に直登する。

  77 電波塔                     78 ゴンドラ頂上駅へ
   

  79 頂上駅から見た八ヶ岳              80 本日の気温掲示
   

 山麓駅に降りてきた。気温の掲示があった。山麓18℃、山頂15℃とある。意外と涼しいものだ。

  81 ゴンドラへ向かう少年ライダー          82 駐車場のMTBチーム
   

 相変わらず自転車部隊が多い。みんな楽しそうだ。レストランでソフトクリームを食べながら観察するが、モーターバイクと違って、中年はいないようだ。女性もいる。MTBのレンタルもあるようで、これだけの標高差のあるダウンヒルコースを駆け下りてみたい衝動にかられる。しかし、おじさんがコケたら悲惨なことになるだろう。

  83 MTBインフォメーションセンター         84 レンタルバイク
   

 シャトルバスを待っていると、雲行きが怪しくなってきた。山のほうで雷鳴がとどろき、大粒の雨まで降ってきた。早めに下山して正解である。

  85 富士見パノラマリゾートを後にする        86 富士見駅
   

 富士見駅で、特急あずさの指定席を買おうとすると、満席であった。これでは自由席でも座れないのは間違いないだろう。仕方なく、その前に来た塩山行き普通列車に乗る。新宿や高尾行きではないので、甲府あたりで乗り換えかと思っていたら、車内放送で小淵沢で快速と接続するとアナウンスしていたので、降りる。

  87 富士見駅から普通列車に乗る           88 小淵沢駅の特急はまかいじ
   

 小淵沢で、あずさとはまかいじをやり過ごした。はまかいじとは変な名前だが、その名のとおり横浜行きである。あずさと違ってはまかいじの方は席が空いていた。踊り子号と似ていて、あずさとは違う車両を使っているようだ。その後に、さっきすれ違った2階建ての電車が入ってきた。ビューやまなしだ。昔東海道線の普通列車として走っていたことを思い出した。懐かしい2階席で、甲斐の国の景色を眺める。

  89 小淵沢駅の快速ビューやまなし          90 ビューやまなし車内
   

 小淵沢駅で買った地元のお酒で反省会をしていると、カップの中に字が書いてあった。

  91 地酒賞味会兼反省会               92 カップの中のデータ集
   

 そこには、鉄道駅の標高が書いてあり、「野辺山駅1346m(日本一標高の高い駅)」「中央本線 富士見駅956m 上諏訪駅762m 松本駅585m」とある。なんと富士見駅は、中央本線の最高地点らしい。ということは、....改めて地図を調べてみると、富士見駅、というよりも今日行った富士パノラマリゾートはまさに分水嶺なのであった。ここから南は、釜無川経由で富士川に注ぎ、北は、諏訪湖経由で天竜川に注ぐ。ここは、南アルプスと八ヶ岳を繋ぐ峠なのである。

     

 GPSによる本日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録


 こうして楽しい一日が終わってしまったが、入笠山は、首都圏からも近く、湿原や展望の良い山、花の山として人気が高まっているらしい。MTBのメッカとしても日本有数のコースを誇っているようだ。ゴンドラを使えば、頂上はあっという間で、体力のない人でも大丈夫だ。

(本日の歩数:21642歩)                        

関連サイト 入笠山(積雪期) 1955m 長野県伊那市/諏訪郡富士見町 2014年3月12日

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