大栗川(おおぐりがわ) 探訪

 八王子市鑓水付近の谷戸を源流とし、多摩ニュータウンの北部を流れて、乞田川に合流し、多摩川へ
2011年9月19日  多摩川合流地点 〜 源流(八王子市鑓水)

 9月10日に、多摩ニュータウンの中心部を流れている乞田川を訪れたが、乞田川は多摩川の直接の支流ではなく、大栗川の支流である。本流から支流の順番で探索していく、というのが、このサイトのポリシーなので、早速大栗川に行ってみることにした。
登戸駅で小田急線から南武線に乗り換え、分倍河原駅から京王線に乗り、聖蹟桜ヶ丘駅に着いた。この駅に降り立ったのは学生時代以来だから30年ぶりである。当時は、なんてかっこいい名前の駅だろうと思った。当時の駅前は緑が多くて美しかったような記憶があるが、今はビルが多いだけの印象である。

  1 聖蹟桜ヶ丘駅                    2 多摩川を渡る京王線

   

 駅から住宅街の中を通り抜けると、すぐに空が広がり、多摩川が見えてくる。



 関戸橋を過ぎて、さらに多摩川の土手を下流に向かい、大栗川との合流地点を目指す。

  3 関戸橋                       4  多摩川・大栗川合流地点へ
   

 左手に多摩川、右手に緑の丘陵を見ながら歩いていると、一人の老人の姿が目に止まった。

 5 老人と河


 なかなかいい写真が撮れた。将来小説を書くときにその本の表紙にしようと思う。タイトルは「老人と河」である。英題は「The Old Man and the River」だ。ストーリーは、「腕の良い漁師だった男が、多摩川で豊漁だった鮎を持って帰る途中に、野良猫に食べられてしまい、骨だけが残った、という過去を回想する。」というのが良いだろう。どこかで見たことがあるという感想を持たれた方は錯覚だと思う。それに、芸術の第一歩は偉大な先輩の模倣から始まるのである。

  6 警察犬の訓練                   7 合流地点の野鳥観察施設
   

 河川敷は広く、警察犬の訓練をやっていた。交通公園の突端にある野鳥観察施設の先が合流地点であるが、実際の合流地点はかなり先の方で、ここからではよく見えない。大栗川起点の0キロポストが立っている。

  8 多摩川・大栗川合流地点               9 合流地点から大栗川上流を望む
   

 合流地点付近の大栗川は流れがよどみ、対岸が緑の丘になって、絶好の釣り場になっているようだ。対岸の丘の上はゴルフ場になっているらしい。

  10 合流地点付近の大栗川 その1          11 合流地点付近の大栗川 その2
   

  12 交通公園の子供たち               13 報恩橋
   



 上流に、緑の小高い丘が見える。住宅地の中にそびえ立つ緑の姿がなぜか非常に印象的だ。川は気になるその丘に向かって続ている。

  14 報恩橋から上流を望む              15 向ノ岡大橋から下流を望む
   

 大きな橋から乞田川の合流地点がよくみえる。先週来たところなのでさすがによく覚えている。

  16 向ノ岡大橋から大栗川・乞田川合流地点を望む   17 新大栗橋から合流地点を望む
   

 聖蹟桜ヶ丘駅に近い賑やかな大栗橋から上流、右岸側を歩く。切り立った崖であるが、その崖は完全に住宅となり、写真19のように崖を利用したマンションまで出来ている。駅から近いだけに、この大栗川の侵食によって出来た崖も開発の圧力には逆らえなかったようだ。

  18 大栗橋から上流を望む              19 崖に造られたマンション
   

  20 宅地になった崖                 21 桜ヶ丘への坂道
   

 位置的に見て、この崖の上が、先程川の延長線上に見えた小高い緑の丘だろう。桜ヶ丘というらしい。その丘に登る坂道は、写真21のようにどこか懐かしい道である。
 さて、遠目からも目立つこの丘、そして、北側は大栗川による断崖絶壁、要塞としても物見台としても絶好のこの場所を昔の人が見逃すはずはない。ここ、桜ヶ丘は城山とも呼ばれ、関戸城跡とされているらしい。分倍河原の合戦は有名だ。

 地図によると、丘の南側は住宅地になってしまったようだ。



  22 霞が関橋から上流を望む             
23 京王桜ヶ丘寮と背後の丘
   

 京王電鉄の本社は、ここ聖蹟桜ヶ丘にあるらしい。したがって、立派な寮も大栗川の横に立っている。裏の斜面は桜ヶ丘だ。京王電鉄といえば、駅や電車のシーンでドラマに出てくる回数がやたらと多い気がする。

  24 東寺方橋から上流を望む             
25 東京都水道局和田水源
   

 野猿街道は宝蔵橋で川を越える。

  26 宝蔵橋から上流を望む            
  27 新堂橋から上流を望む
   

 新堂橋から上流は、これでもかというくらい直線化された川になっている。写真28,29は暗渠化されてしまった支流だと思うが、もしかしたら蛇行していた旧流路かもしれない。

  28 支流合流地点?                 
29 支流跡
   



  30 並木公園                    31 殿田橋から上流を望む
   

 駅から離れたせいもあるのだろう。高い建物もなく、周囲の雰囲気もどことなくのんびりしている。

  32 中和田橋公園付近               
 33 澄んだ水とコイと河床
   

 公園も多い。

  34 和田公園付近の桜並木             
 35 横倉橋から上流を望む
   

 宮田橋から上流の河畔道はついに舗装もなくなり、なかなか良い感じになってきた。

  36 宮田橋へ続く河畔道               
 37 宮田橋から上流を望む
   



  38 
堰場橋と多摩モノレール大塚・帝京大学駅     39 堰場橋から上流を望む
   

 大きな橋の上は、多摩モノレールの駅になっていた。川の水はかなり澄んでいて、河床がはっきりみえる。直線的な川と郊外の単調な景色が続くが、洗馬川橋から雰囲気が変わる。

  40 堰場橋付近の河床              
  41 洗馬川橋
   

 花に彩られた洗馬川橋から上流は、写真42のとおり、美しい緑道があり、人通りも心なしか多くなった気がする。前を歩く若者3人組もなんだか楽しそうである。

  42 河畔緑道                    43 堀之内番場公園
   

  44 新道橋から上流を望む
  歩いていて楽しくなる花と緑の河畔の道である。

 45 緑道を彩る花

 緑道を歩いていた人たちは、いつの間にか、左折していった。京王堀之内駅に向かうのだろう。よこやまの嶺をトンネルで抜けた京王多摩線は、永山駅から乞田川沿いを走るが、多摩センター駅を過ぎた後にトンネルで一山超えて、今度は北側の谷、すなわち大栗川の谷に出てくるのだ。しかし、それもつかの間、今度は大栗川支流の大田川とともに西へ向かい南大沢駅に至る。そして、トンネルで分水嶺を越えて、多摩境駅から相模原台地へと出て橋本駅へ繋がっているのである。

  
46 八王子市堀之内3丁目付近の緑道         47 大栗川橋から上流を望む
   

 正面に大田川との合流地点が見えてきた。

  48 大栗川・大田川合流地点             49 合流地点から見た大栗川公園
   



 合流地点を過ぎてもまだ緑道は続いている。

  50 
内田橋                     51 八王子市松木付近の緑道 その1
   

 9月とはいえ、まだ暑いので木陰がありがたい。

  52 大竹橋から上流を望む            
  53 八王子市松木付近の緑道 その2
   



  54 大片瀬歩道橋付近の緑道             55 刈りこまれた植え込み
   

 写真55の左側に写っているが、不自然なほど見事に刈りこまれた植木が続いている。なぜだろうか。理由を考えてみた。おそらく、左上にある道路から河畔の道を見通せるようにしたのではないだろうか。夜も道路側の明かりが届くだろう。つまり、防犯上の理由で刈り込んでいると思われる。

  
56 河畔のテラス                  57 河畔の花壇
   

 この緑道は花の溢れたテラスのようになっている。天気の良い朝にここで紅茶でも飲んだら最高だろう。イスや灯籠は個人が置いたのだろうか。河川管理上問題がないとは言えないが、まあ、黙認できる範囲だ。
 こんな美しい緑道も、大田平橋からは、アスファルトの普通の道に変わってしまう。ただの灰色のコンクリートで固められた川になってしまった。
 地図ではこのあたりは南大沢駅の北側、首都大学東京の裏手に当たる。

  58 大田平橋から上流に続く河畔道
          59 前田橋から上流を望む
   

 川の彩りがなくなった代わりに、周囲はだんだんと緑が多くなってきた。対岸の右岸側には緑の森がみえる。

  60 八王子市上柚木付近               
 61 神明橋から上流を望む
   

 森は運動公園のようだ。

 62 上柚木公園案内図




 雰囲気がだんだん変わってきた。はっきり言えば「田舎」っぽくなってきた。昔の峠道に近づいたということだろうか。

  
63 境橋付近                     64 都道20号線の暗渠出口
   

 しかし、大栗川は突然暗渠となり、平行してきた都道の反対側に行ってしまった。水は済んでいるが水量はかなり減ってきたようだ。

  65 暗渠上から下流を望む               66 暗渠上
   

 暗渠の上流側は、嫁入橋だ。この北側にあるのが嫁入谷戸である。名前の由来を調べてみると江戸の豪商から嫁を迎えたのでこの名がついたらしい。

  67 都道20号線の暗渠入口              68 嫁入橋から上流を望む
   



 さて、このあたりの地名を鑓水(やりみず)というが、絹の資料館の標識があったり、豪商の嫁入り話があったり、御殿橋という橋があったり、なにか歴史がありそうな土地だ。
 明治時代の日本の主力輸出品は生糸で、その集散地である八王子から横浜まで生糸を運んだ経路が絹の道である。その交易で活躍したのが、絹の道沿いに住んでいた、ここ鑓水の商人で、巨万の富を築いて豪邸が建っていたらしいが、鉄道の開通と共に栄華の夢は消えてしまったそうだ。

  69 御殿橋                   
  70 北側の源流
   

 御殿橋である。ここは、大栗川の3つの源流が合流する場所である。上の地図でもわかるように、ここから上流に向かって3本の源流がある。一番長いと思われる南側の源流は大学の構内になっているようなので、ほとんど破壊されているだろう。北側の源流も道路が通じており、開発が進んでいるような感じである。そこで、行き止まりになっていて、一番自然が残っていそうな真ん中の源流を遡ることにした。ちなみに、北側の谷を巌耕地谷戸(げんこうちやと)といい、今回探索するのは子ノ神谷戸(ねのかみやと)という名がついている。

  71 子ノ神谷戸からの細流              72 子ノ神谷戸へ その1
   

  73 子ノ神谷戸へ その2              74 谷戸への道を横切る源流
   

 行き止まりになっているせいだろうか、車が通らない静かな道を谷戸の奥に進む。源流は細いコンクリートの溝になってしまったが、まだ、流れはしっかりしている。

  75 子ノ神谷戸最奥集落付近             
76 子ノ神谷戸の道路終点
   

 道路が行き止まりになり、人家が途絶えた。畑の中を源流が流れている。

  77 源流の最後の橋                 78 77の地点から下流を望む
   

  79 77の地点の源流                80 77の地点から上流を望む
   



  81 子ノ神谷戸内                  82 子ノ神谷戸最奥部
   

 谷戸の奥へと進んでいく。左側に源流はあるはずだが、見えない。写真82の地点で道がなくなり、進めなくなった。尾根が見える。地図では尾根の頂上に八王子バイパスが走っているが、道路は見えず、車の音も聞こえない。ただ、緑の壁と静寂が立ちはだかる谷戸の最奥部である。写真82から少し戻った所に谷戸の南側へ行く踏み跡があったので行ってみると、勘が当たったようだ。墓地の斜面の下に草に隠れて源流が流れていた。13時40分、ついに大栗川源流を突き止めることが出来た。

  83 子ノ神谷戸内の源流 その1           84 子ノ神谷戸内の源流 その2
   

 内部を覗き込むと、コンクリートの構造物になっている。墓地の造成の時に、谷戸の源流にも手が加えられてしまったのだろう。しかし、コンクリートの割れ目から水が湧いており、間違いなく大栗川の源流のひとつである。
 谷戸から尾根を見上げると、谷戸の北半分は本来の姿が残されているが、南半分は墓地の造成によって破壊されてしまった事がわかる。

  85 84の内部接写                 86 84の地点から尾根を見上げる
   

 斜面をよじ登り、霊園に上がる。墓参りに来ている人から出口の方向を聞いて歩いて行くと、ちょうど橋本駅行きのバス停があった。バスを待つ間の西陽が暑かった。

  87 谷戸横の霊園                  88 鑓水バス停
   

 GPS軌跡ログ


 GPS高度ログ


 多摩川から、聖蹟桜ヶ丘を経て多摩ニュータウン北部を縦断し、八王子市境の分水嶺まで、大栗川を歩いた。都会から、古き良き多摩の面影を残す谷戸まで、変化に富んだ川筋を楽しむことが出来た。河川改修が徹底されており、源流を除けば人工的な河川になってしまっているが、その分、河畔の道が途切れることはない。
 京王堀之内駅を中心にかなり長い区間で緑道が整備されており、都民の憩いの散策道になっている。この区間の大栗川は、花に彩られて、ニュータウンらしい明るい雰囲気に満ちている。

 (本日の歩数:28766歩)

 
関連サイト 多摩川 乞田川
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