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塔ノ岳(とうのだけ) 標高1491m
自分の足で登らない山シリーズ第29弾 日本有数のメジャールート 丹沢表尾根 |
◆ 2014年11月23日
地元、神奈川県の山といえば丹沢であるが、今まであまり行かなかったのは灯台下暗しといった感もないわけではないし、まあ、私が紹介しないでも十分情報はあるだろうと。
しかし、今日は、丹沢でも最もメジャーなコース、表尾根に行ってみることにした。東京に住み、登山を始める人が、最初に行くのが高尾山、2番目が御岳山、3番目が大山とすれば、4番目あたりに行くのが塔ノ岳だ。そろそろ登山用のウェアや道具が欲しくなる頃でもある。
小田急線秦野駅から表尾根登山の起点となる標高761mのヤビツ峠までバスが出ていて、麓から登らなくてもいいので、まあこのシリーズに入れてもいいだろう。
というわけで、朝7時過ぎに丹沢の表玄関である秦野駅に着いてびっくり。快晴の天候のせいもあるのか、原色ウェアの長蛇の列で、このままでは末尾が駅のロータリーからはみ出て水無川まで届きそうな勢いである。
ただ、天下の神奈中バスも無策ではない。臨時便がガンガン出ているので、数台待ってなんとかバスに乗り込み、8時15分にヤビツ峠に到着した。
1 秦野駅 2 ヤビツ峠
ヤビツ峠の駐車場もトイレも満員である。
林道を下って、8時35分に富士見橋に着いた。焼け落ちた富士見山荘跡地はそのまま空地になっている。
3 富士見橋 4 富士見山荘跡地
左折して暫く行くと右に登山道の入口がある。今日の目的地である塔ノ岳まで6.1kmとあるので、結構遠い。普段楽ばかりしている体は大丈夫だろうか。
5 表尾根登山口 6 塔ノ岳6.1km標識
どの登山ガイドにも、たいてい富士見橋から二ノ塔までが一番きついと書いてある。富士見橋の標高が700m、二ノ塔が1144mなので450mほどを一気に登るわけである。
7 二ノ塔へ その1 8 二ノ塔へ その2
9 林道へ出る 10 登山道入口
11 二ノ塔へ その3 12 二ノ塔へ その4
まあキツイといえばキツイが、子供も登っているし、景色は良いし、紅葉もあるし、意図的にゆっくり登ったので、二ノ塔までの登りもそれほどハードではなかった。
13 二ノ塔へ その5 14 ヤビツ峠と大山を振り返る
15 二ノ塔直下 16 二ノ塔山頂 その1
9時34分に到着した二ノ塔には沢山の人がいて賑やかである。ここで休憩しない人はいないだろうからまあ当然であるが。富士見橋からの所要時間が59分、標準コースタイムが1時間なので、−1分という日本の鉄道ダイヤ並の正確さである。
そして、ここではすでに富士山がその限りなく絶妙な裾野のカーブを見せている。考えてみれば、富士山ほど毎日多くの人から見つめられている対象も珍しい。まるで日本人すべてが富士山に恋しているような熱狂ぶりである。いや、日本を訪れる外国人をも魅了する世界で最も秀麗な成層火山である。そして、5合目くらいまでの冠雪の具合も、この季節が一番バランスが良いと思う。
17 二ノ塔から見る富士山
18 二ノ塔山頂 その2 19 二ノ塔・三ノ塔間の鞍部
二ノ塔から北西に目を向けると、お椀のようなまるい山が正面に見える。次の目的地である三ノ塔である。二ノ塔を出発して下って行くと鞍部に橋がかかっている。
この鞍部は沢登りで有名な葛葉川の源頭である。そこから再び登りになるが階段がよく整備されている。好き嫌いはあるだろうが、植生保護と安全性は確保されるだろう。
20 葛葉川源流地帯を望む 21 三ノ塔へ その1
22 三ノ塔へ その2 23 三ノ塔尾根分岐
戸川から三ノ塔へ直接降りる尾根道の分岐を過ぎると、三角屋根が見えた。
24 三ノ塔山頂
10時4分、標高1205mの三ノ塔に到着である。二ノ塔からの標準コースタイムは15分のところ、14分かかったので、またもや−1分である。今後、登山地図を作る会社の人は、私の歩くスピードを世界標準タイムとしていただくのがよいのではないだろうか。
三ノ塔からの展望は定評があるといわれているが、たしかに期待を裏切らない素晴らしいものだった。
25 三ノ塔から見る富士山と箱根山
26 三ノ塔から見る塔ノ岳と蛭ヶ岳
27 三ノ塔から大山と相模平野を望む
三ノ塔からの絶景を見ながらふと気がついた。二ノ塔、三ノ塔と登ってきたが、一ノ塔は無かった。見落としたのか。いやそんなことはないはずである。そしてその疑問は今これを書いている時に氷解した。ズバリこちらで答えていただいている。しかもイラスト入りである。
万が一、このサイトが無くなってしまうといけないので、一応要旨だけは抜粋しておこう。
「丹沢表尾根・一ノ塔がないわけ」
その昔、毎晩のように山に何か光るものが現れたといいます。村人が不思議に思って見ていると、突然天空に大きなご神燈が輝きました。次に、山の上のピークに1つ、そして別のピークにもう1つの神燈が灯りはじめました。村人たちは驚き、最初のご神燈(一ノ燈)が灯った場所を神聖なところと感じて、神社を建てました。それがいまの秦野市横野にある加羅古(からこ)神社なのだそうです。そして、それぞれ神燈が灯ったピークを二ノ燈、三ノ燈といいました。それがいつか二ノ塔、三ノ塔の字を当てるようになったのだそうです。 |
28 烏尾山へ その1
三ノ塔を後にして、写真29のような雄大なロケーションの中、次の目的地である烏尾山に向かおう。
29 三ノ塔・烏尾山間から見る富士山と塔ノ岳
30 烏尾山へ その2
烏尾山は標高が三ノ塔より70mほど低いので、たぶん、眼下に見える山小屋があるところだろう。
31 三ノ塔・烏尾山間の鞍部 32 烏尾山へ その3
写真31の鞍部の標高は約1060mなので、烏尾山まで75mほど登り返す。
33 烏尾山へ その4
三角屋根と木の階段がメルヘンチックで、なんだか丘の上に建つ豪華な別荘に続く天国への階段のようである。
34 烏尾山直下
10時34分、烏尾山頂に到着した。三ノ塔から23分かかった。標準コースタイムは30分なので少し早すぎであるが、たぶん下りが多かったからだろう。
35 烏尾山山頂
トンガリ屋根のある烏尾山山頂は、メルヘンというには私を含めてオッサンが多すぎるが、まあ、景色に免じて良しとしよう。ここには簡易トイレがあった。
36 烏尾山から見る富士山
10分ほど休憩して、次の目的地である行者ヶ岳に向かう。
37 行者ヶ岳へ その1 38 行者ヶ岳へ その2
比較的平坦な道で、至極快適な尾根歩きである。
39 行者ヶ岳へ その3
40 行者ヶ岳へ その4
何故かここだけは樹木がなく広々とした庭園広場のような場所になっている。景色もいいため、休憩している人もいる。昔の茅場だったらしい。
41 写真40の広場から見る富士山
42 行者ヶ岳へ その5 43 行者ヶ岳へ その6
44 行者ヶ岳へ その7 45 行者ヶ岳山頂その1
11時3分に標高1188mの行者ヶ岳に到着である。烏尾山から18分かかった。行者ヶ岳は行者岳ともいわれるようだ。
46 山岳信仰の名残 47 新大日へ その1
次のピークは新大日である。このあたり、行者とか大日とか、仏教っぽい名前がついている。丹沢は鎌倉時代から修業の場として利用されてきたらしい。やはり、鎌倉から近いということが大きかったのだろうか。
48 新大日へ その2 49 行者ヶ岳・新大日間の鞍部
50 新大日へ その3
51 塔ノ岳を望む
正面に大規模な崩壊と地形図で1209mとあるピークが見える。崩壊のすぐ横に登山道の階段が続いている。
52 行者ヶ岳・新大日間の崩壊部
がその前に、渋滞がおきていた。鎖場らしい。
53 鎖場渋滞 54 鎖場 その1
とりわけ危険で時間がかかるというわけではないが、やはり登山者が多すぎるのだろう。特に、鎖場は交互通行なので向こうから来る人たちは悲惨である。それとも鎖が2本あるということは上下線で同時昇降してもよいのだろうか。
55 鎖場 その2 56 新大日へ その4
鞍部の痩せ尾根を越えると先ほど見えた崩壊部である。10年以上前に一度だけ通ったことがあるが、その時は人がおらず、風が強くて、手すりもなく、とんでもなく恐ろしい場所だと思った記憶がある。今日は天候も穏やかで工事現場のような手すりがあるおかげで危険はないが、なんだか過保護過ぎてスリルがないというのは贅沢な感想である。これだけ登山者が多いと、やはり昔のままの登山道というわけにもいかないだろう。
57 新大日へ その5 58 新大日へ その6
59 政次郎尾根分岐
1209mのピークで戸沢へ降りる道を分けると、写真60のように1340mの新大日への登りが始まる。
60 新大日へ その7
61 新大日へ その8
62 新大日へ その9 63 新大日山頂 その1
12時ちょうど、新大日に到着である。緑色の新大日茶屋は閉まっている。行者ヶ岳から55分かかった。標準コースタイムを5分超過したのは、鎖場渋滞のためだ。
64 新大日山頂 その2 65 木ノ又大日へ その1
写真65は、自然の尾根とは思えない水平な道だ。
66 木ノ又大日へ その2 67 木ノ又大日へ その3
ゆるゆると登って、12時15分に木ノ又小屋に着く。コーヒーの看板に惹かれるが、我慢して先に進む。
68 木ノ又小屋 69 木ノ又大日へ その4
木ノ又大日というところは目立たないピークでそのまま通りすぎてしまう。
70 木ノ又大日
71 塔ノ岳へ その1
写真72の部分は鞍部の崩壊が進み、北側に階段の迂回ルートが作られている。このコース全体に言えることだが、危険防止と自然保護のための登山道の整備に、神奈川県がかなりお金をかけている事がわかる。
72 塔ノ岳へ その2
73 塔ノ岳へ その3
もう正面に塔ノ岳山頂にある尊仏山荘が見える。すぐそこだ。
74 塔ノ岳へ その4 75 塔ノ岳へ その5
76 塔ノ岳山頂直下 77 塔ノ岳山頂
12時48分、塔ノ岳山頂に到着である。ヤビツ峠から4時間半もかかったが、途中でノンビリと景色を楽しんだので丁度良い時間である。
ところで、山の名前だが、ずっと塔ヶ岳だと思っていたが、塔ノ岳が一般的なようだ。
山頂は秦野駅の混雑そのままに大変な賑やかさだ。人が多いことを嫌う人もいるが、私個人的にはたくさんの楽しそうな人を見るのは嫌いではない。
78 尊仏山荘 79 尊仏山荘の鐘
ここからの展望は丹沢唯一を誇るだけあって、全方位の絶景である。
80 塔ノ岳山頂から富士山を望む
天気は良いが、午後になって富士山はやや雲が出て霞んでいる。やはり三ノ塔から見えたように、雲や太陽の角度のせいか、午前中のほうがきれいな富士山がみられるようだ。
81 塔ノ岳山頂から丹沢山・蛭ヶ岳を望む
神奈川県最高峰の蛭ヶ岳がよく見えるが、行ったことはない。神奈川県をテーマとしたサイトとしては、ぜひ一度は行かなくてはならないだろう。
82 塔ノ岳山頂から西丹沢を望む
山頂で40分ほどのんびりしたあと、13時25分に出発して大倉尾根を降りることにする。典型的なメジャーコースであるが、秋の日暮れは早いので、体力的にも時間的にも余裕があったほうがいい。
83 金冷しへ 84 金冷し分岐
85 花立山荘へ その1
人が大勢いて、のんびり下るが、景色を楽しむ余裕があってかえってありがたいくらいだ。
86 花立から大山・三ノ塔を望む
この大倉尾根、通称バカ尾根は標高差1200mを一気に登る、あるいは降りるので丹沢の初心者向けコースとはいえ結構キツイことで有名である。今日は下りだが、ここで、右膝が痛くなってきた。交通事故でタクシーに右膝を直撃されて骨折して以来、酷使に耐えられなくなってしまったようだ。杖をついてだましだまし降りて行く。
13時53分に標高1300mの花立山荘に到着し、痛む右膝を休ませた。
87 花立山荘 88 天神尾根分岐
小学生の遠足のように列を作りながら降りて行く。
14時32分に堀山の家に到着。さすがに丹沢のメインストリートなので若者も多く、服装もファッショナブルである。が、そんなことよりも、やっと半分を過ぎただけでまだ950mもある標高に、大丈夫か、と右膝に聞きたくなる。
89 堀山の家
90 大倉尾根紅葉 その1
この辺りは道も平坦になり、紅葉もきれいなので、膝のことも忘れて写真を撮った。
91 大倉尾根紅葉 その2
14時58分、標高900mの駒止茶屋に到着。道がなだらかだったので、堀山の家から50mしか下りていない。
92 駒止茶屋
93 大倉尾根紅葉 その3
94 見晴し茶屋へ その1
95 大倉尾根紅葉 その4
それにしても、この大倉尾根、こんなに紅葉が綺麗だとは知らなかった。なかなか良い雰囲気である。
96 大倉尾根紅葉 その5
97 大倉尾根紅葉 その6
98 大倉尾根紅葉 その7
99 見晴し茶屋へ その2 100 見晴し茶屋
見晴し茶屋に到着。時間は15時37分。標高は610m。
101 観音茶屋 102 大倉バス停
15時58分に到着して休憩した観音茶屋は標高350m、もう少しである。
そして、16時30分に大倉バス停に到着したが、そこは早朝の秦野駅に負けないくらいの混雑であった。売店やトイレ、靴洗い場もいっぱいである。しかし、降りてきた登山者の顔は誰も彼も疲れてはいるが、どこか楽しそうで、充実した日を過ごした満足感に満ちているように感じるのは私だけだろうか。
GPSによる本日の歩行経路 (歩数:27716歩)
GPSによる今日の高度記録
今日は、改めて紹介する必要もないくらいの丹沢の王道コース、表尾根を歩いた。人がたくさん歩いているが、人気があるということは理由があるわけで、いろいろな意味でやはり素晴らしいコースだと認めない訳にはいかない。交通の便の良さや、変化に飛んだコース、そして絶景が続く尾根やピーク、紅葉の下山路など、どれもさすがである。神奈川県が誇る、四季折々に誰もが楽しめる観光資源として改めて見直すことができた。
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