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神奈川県一周 境川から尾根を辿って、神奈川県最北端を目指す初めての山岳地帯
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◆第21日目(2011年5月4日) 境川源流 〜小仏峠
神奈川県境の長い旅も、今日から新たなステージに入る。多摩丘陵の尾根から境川を遡り、その源流まで来たが、今日はそこからいよいよ山岳地帯に入っていくのだ。大袈裟に言えば登山である。疲れるし、時間はかかるし、アプローチの交通は不便だし、靴や雨具などの装備にも一応気を使わなければならない。体力的には大変そうだが、山を楽しむ気持ちで臨むことにしよう。
横浜線の相原駅からバスに乗って、青少年センター入り口で降りる。4年ぶりになるだろうか。どこか懐かしい気がする、町田の最奥部の山里である。
1 青少年センター入口 2 青少年センターへの道
清らかな境川源流を横目に歩いていくと、大地沢青少年センターについた。ここまで来る途中で、県境は山の尾根に上がっていくのだが、残念ながら道はない。しかし、青少年センターの前に草戸山に向かうハイキングコースの入口があった。青少年センターなので、中年は中に入ってはいけないかとも思ったが、ハイキングコースの地図をくれると書いてあるので、もらっておく。その簡単な地図によると、ここから尾根に直登して県境に出る道があるようだ。しかし、地形図にも登山用の地図にも書いてない。境川源流の谷から登って草戸峠経由で登ろうと思ったが、予定を変更する。ラッキーだ。
3 大地沢青少年センター 4 草戸山へのハイキングコース入口
尾根に出ると、気持ちの良い尾根道が続いていた。こんなしっかりした道なのに、なぜ地図に載っていないのか不思議である。そのせいか、歩く人はいない。
5 都県境尾根道 6
草戸山への道標 その1
この尾根が県境であることは、しつこいくらいにある石杭からも明らかである。それにしても、写真7のように道の真ん中に突き出ているので、ちょっと邪魔である。
7 都県境石杭 その1
8 草戸山へ その3
最初の目的地である草戸山を目指す。尾根道で道標が完備しているので、迷うことはなさそうだ。
9 草戸山への道標 その2 10 都県境石杭 その2
県境の石杭は道の真中に大きく突きでており、あくまで通行者の邪魔をするつもりらしい。この尾根が県境であることを主張しているのだろうか。
11 都県境石杭 その3 12 3級基準点のピーク
3級基準点というものがあったが、標高は書かれていない。
13 3級基準点接写 14 草戸山への道標 その3
草戸山に着いた。標高364m、町田市の最高所らしい。もちろん、今までの21日間の県境の旅における最高高度到達地でもある。
南側が開けており、展望台がある。しかし、残念ながら写真16のように湖は殆ど見えない。木が大きくなってしまったようだ。ここまでは体力的にも問題なく、快調なペースである。
15 草戸山 16 草戸山から城山湖方面を望む
17 草戸山山頂案内図
18 ふれあい休憩所へ 19 2級基準点
今度の基準点は標高が書いてある。357.4mだ。草戸山からは人の数も増えてきた。
20 2級基準点標識 21 ふれあい休憩所
左手の道から中年の夫婦が登ってきて道を聞かれる。地図を持っていないらしい。整備されたハイキングコースとはいえ、山の中を歩く時は、やはり地図を持った方が良いと思うが、地図なしで歩いている人は結構多いように感じる。
22 城山湖からの道合流地点 23 合流地点の道標
24 三沢峠手前のピーク 25 三沢峠
三沢峠に到着。南側は津久井湖のはずだが、木々に遮られて谷底の湖は見えない。
26 三沢峠道標 27 まき道の道標
尾根道は小さなピークをいくつか越えながら西に続くが、ところどころに巻き道がある。
西山峠に着いた。「梅の木平」というところから来る道が合流している。このあたりは、道標がこれでもかというほど整備されているが、この「梅の木平」という地名がやたら出てくるので不思議に思い、調べてみた。ここは一見ありふれたハイキングコースだが、実は「関東ふれあいの道」またの名を「首都圏自然歩道」というスケールの大きな道だというのである。この道を作った、というよりもルートを設定したのは、あの泣く子も黙る環境省である。つまり、お国が定めた天下の公道なのである。環境省のサイトの説明を見てみると
関東地方、一都六県をぐるりと一周する長距離自然歩道で、総延長は1,665kmです。東京都八王子梅の木平を起終点に、高尾山、奥多摩、秩父、妙義山、太平山、筑波山、霞ヶ浦、九十九里浜、房総、三浦半島、丹沢などを結んでいます。美しい自然を楽しむばかりでなく田園風景、歴史や文化遺産にふれあうことのできる道です。より多くの人々が利用できるよう10km前後に区切った日帰りコースを144コース設定し、それぞれの起終点が鉄道やバス等と連絡できるようになっています。
とある。全部を踏破した人がいるのか気になるところだが、環境省によると平成15年の時点で30名の踏破者がいるらしい。関東各都県にもホームページがあり、申請すると踏破記念の認定証をくれるらしい。ところが、千葉県だけは、踏破「気念」制度というらしく、他県とはひと味違う制度になっている。ページのトップに太字で堂々と書かれており、単純に誤字だとは思わせない「気」と「念」を感じることができる。
(注: 2013年1月現在は、修正されている)
話が千葉県で盛り上がってしまったが、本題に戻ると、首都圏自然歩道の起点が「梅の木平」なのである。道理でなんども出てくるはずだ。
28 西山峠 29 杉林
走って登る元気な人がいた。
30 走る人 31 展望の良い休憩所
草戸山では展望がきかなかったが、ここでは、南方向に神奈川県相模原市の景色が大きく広がっていた。津久井湖の上流部分である。写真だけ見せてここが政令指定都市だと言っても、信じる人はいないだろう。
32 31地点から道志川方面を望む
33 31地点から三ケ木方面を望む
34 三井水源林標識 35 中沢山直下の休憩所
この急斜面の真下には、あの廃道になった湖岸の道があるのだ。その道を2007年に苦労して通ったことを思い出した。
36 中沢山への道標 37 中沢山への道
中沢山は、コースからすこし登ったところにあった。494mの山頂には仏像が鎮座していた。県境の旅における最高高度を更新である。
38 中沢山山頂 39 中沢峠
40 急斜面 41 美しい森
42 大洞山へ その1 43 大洞山へ その2
大洞山に着く。休憩しているひとが多い。標高536mで、また県境の旅における最高高度の更新である。
44 大洞山山頂 45 大垂水峠へ
46 進入禁止の脇道 47 大垂水峠橋
大垂水峠についた。標高は392mである。ハイキングコースは、陸橋で国道20号線を渡る。
話はそれるが、子供の頃に2階からコンクリートの上に飛び降りて踵を骨折し、その後遺症で中学生の時にアキレス腱炎になってしまった。それが、去年の秋の交通事故による骨折以来、40年ぶりに再発して困っている。普段は大丈夫なのだが、激しい運動をすると痛むのである。山登りに耐えられるのか正直不安だった。そして、駄目だった場合のエスケープルートに設定しておいたのが、この大垂水峠である。少ないがバスの便もある。
しかし、幸いなことに足の痛みはなく、快調である。時間はまだ12時を廻ったばかり。ここでリタイアする必要はなさそうである。
48 大垂水峠橋上 49 大垂水峠
しかし、ここでトイレに行きたくなった。城山までまだ距離もあるし、おそらくトイレも混んでいるだろう。ということで、峠の近くで飲食店を探すと、富士屋というラーメン屋さんがあったので、入ってみる。
50 大垂水峠から橋を見上げる 51 富士屋さん店内
先ほど、サンドイッチを食べたし、ダイエット中ということもあるので、ラーメンはやめて、餃子とビールにする。まだ、先があるのに、ここでのアルコールはご法度なはずだが、思いの外、順調に来たので気が緩んでしまった。もう危険なところもなさそうだし、注文も餃子だけというわけにもいかないだろう。
というわけでここの女性経営者らしき人に注文する。その人をよくみると、年齢は私よりも上だろうが、峠のラーメン屋さんというよりも、銀座の画廊かブティックの女主人がよく似合うような上品な人であった。背もすらりと高い。
注文はしていないが、写真51のように水が入った大きなびんが出てきた。ここの湧き水で、ラーメンもその水で作っているらしい。店内に資料があったので読んでみる。
水のことを聞くと、色々と話してくれた。何でもこの水を飲んでいるおかげで保険証を使ったことがないそうだ。お父さんの時代から、湧水を使ってドライブインを経営し、高速道路ができるなど時代の変化と共にラーメン屋さんになったが、自慢の湧水はずっと使っているらしい。
そして、昔、美空ひばりと一緒に撮ったという写真を見せてくれた。この峠で映画のロケが行われたそうだ。そこには、美空ひばりと一緒に、背がスラリとした美少女が写っていた。個人的な感想ではあるが、はっきり言って、美空ひばりよりも美人である。美空ひばりが20代の時の写真だというから、本人はまだ十代だろう。「ひばりさんより綺麗ですね。」といったら、「そっちは見ないで」と照れていた。美空ひばりは昭和12年生まれだから、本人は戦後の生まれだろうか。その頃の美少女の面影を残している峠のラーメン屋さんの女主人であった。
52 富士屋の旧建物 53 大垂水峠の消防署員
ビールを飲んでしまったので、足どりを確かめながら再び歩き出す。
消防署員の姿がみえた。訓練だろうかとおもったが、エンジンの音を響かせてヘリが上空を飛んでいる。青いジャンパーを着た男性が行方不明になっているらしい。「家族が心配しています。本人は名乗りでてください。」と言っているが、本人が名乗り出ることができるくらいなら遭難ではなく、笑い話になるだろう。
ここは高尾山に近く、人が多いが、低山だからと言って舐めてはいけないのだ。崖から落ちたり道に迷ったら死ぬのは低山でも同じである。
ここでも女性の親子に道を聞かれた。地図を持っていない人が多いのも、遭難事故の原因である。また、アルコールを飲んで山に登るのもすこぶるよろしくない。良い子は決して真似をしないように。
54 城山へ その1 55 高尾山からの道と合流
高尾山からの道と合流して、ますます人が多くなる。
56 城山への登り 57 城山山頂 その1
最後の階段を登り切ると、標高670.3mの城山に着いた。本日の最高高度である。
城山という名の山はあちこちにあるので、区別するために、ここは小仏城山と呼ばれているらしい。
58 城山山頂 その2
花も人も賑やかである。
59 城山山頂 その3
見事な花の下で、まるでお祭りのような華やかさである。眺めもさることながら、高尾山から尾根伝いに1時間のハイキングで着くという立地条件の良さも、この城山が賑わう理由だろう。
いまどきの若いお姉さんが雑誌を見て研究し、最新のアウトドアブランドのファッションに身を包んで「山ガール」としてデビューするのが、この高尾山から城山までのコースである。つまり、田舎から出てきた女の子にとっての原宿、スキーヤーやスノーボーダーにとっての苗場、サーファーにとっての湘南海岸と同じポジションにあると言ってよいだろう。そこに、親子連れ、山好きの中年やジジババが加わるのだから、この混雑も当然のことである。
60 城山山頂から高尾山方面 61 城山山頂のトイレ
それにしても、山の上で男性用のトイレにまで列が出来ているというのは初めて見た。
62 城山山頂の消防署車両 63 城山山頂 その4
先程の遭難騒ぎのせいだろうか、消防署の車両がとまっていた。立派な電波塔もあるので、ここまで車道が続いているということである。
64 城山山頂の甲州街道案内図
65 城山山頂から相模湖方面 66 しいたけ
作業場があるが何をやっているのだろう。シイタケと原木らしきものがあったので、椎茸栽培が行われているようだ。しかし、無造作にシイタケが入っているダンボール箱の産地は、なぜか福島県になっていた。放射能の影響で、福島県での椎茸栽培が出来なくなり、余ってしまった箱を有効利用している、と推理した。
67 城山山頂の作業場 68 城山山頂付近の消防署員
道は広く平坦で、赤やピンクのザックやウェアが行き交う賑やかなコースを小仏峠へ向かう。
69 小仏峠へ 70 小仏峠手前の休憩所
休憩所を過ぎて少し下るととすぐに小仏峠に着いた。
71 小仏峠 72 小仏峠道標
73 明治天皇休憩所 74 古い道標
木々に囲まれて鬱蒼とした峠であるが、広場になっていて、いろいろなものが建っている。
ここだけではなく、あちこちでよく見かけるのが明治天皇の行幸碑である。天皇が休憩したというだけで、いちいち立派な石塔を建てるというのは、現代では考えられないことだ。交通機関が発達した今と違って、当時は天皇が外出するというのは大変なことであり、今よりもずっと神格化されていたということだろう。
75 小仏峠標識 76 小仏峠のお地蔵様
時間はまだ早いが、ここ、小仏峠が本日の最終目的地である。右折して小仏の里へ降りる。
77 小仏峠から高尾駅方面 78 作業車両
途中から登山道が林道に変わり、そのまま飲むのがちょっと怖い湧水を過ぎると、駐車場があり、人里に降りたことが実感できる。
79 湧き水 80 一般車両終点
バス停は人が多く、バス1台では乗りきれないほどであった。高尾駅から鉄路で帰路に着いた。
81 小仏バス停 82 高尾駅
今日から、いよいよ県境の旅が神奈川県最北部の山岳地帯に入ったことになる。しかし、県境自体は、それほど高い山ではなく、尾根沿いのハイキングコースとなっており、人も多いので、ちょうどいい練習になった。ここからだんだんとハードな山登りになりそうなことは、地図の等高線が教えてくれている。
県境をたどるという目的で歩くのではなく、ちょっとした山歩きとしても実に楽しいコースであった。レポートも県境の旅というより、ハイキングガイドのような感じになってしまった。
次回も高尾山奥の山が続く。神奈川県最北端への到達も、だいぶ現実的なものになってきたようだ。
(本日の歩数:28349歩)
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