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◆第25日目(2011年9月12日) 奥牧野 〜 月夜野
前回は、相模川を渡ったが、予定した道志川までは到達できなかった。計画の甘さが原因である。今回は、秋山川の谷に広がる奥牧野から、道志川の集落である月夜野を目指す。
藤野駅8時25分発の奥牧野行きバスに乗る。これを逃すと13時06分までバスはない。
1 奥牧野バス折り返し場 2 奥牧野バス停
バス周回場のある終点の奥牧野で降りる。が、前回乗ったバス停を通り過ぎたようなので、写真2の地点まで戻る。なぜか、このバス停も「奥牧野」になっている。同じ名称のバス停が2箇所あるのだろうか、と思って写真を見直すと富士急のバス停のようである。前回は自由昇降バスだったので、神奈中バスが乗せてくれたのかもしれない。
バス終点をさらに西に行くと、境橋、その名のとおり県境である。山からこの谷に沿って県境が降りてくるのである。
3 神奈川県側から見た境橋(県境)
4 境橋から下流の県境を望む
5 山梨県側から見た県境 6 石塔群
県境から少し戻って、石塔が並ぶ古そうな細い道に入り、秋山川に架かる吊り橋を渡る。現在は、車は通れず、自転車と歩行者専用の道になっている。
7 前川橋
木製のしっかりしたつり橋で、歩いて渡る分には、多少揺れるが何の問題もない。県境は、写真9の方向にしばらく川沿いに続いている。
8 前川橋上 9 前川橋から上流を望む
秋山川を離れた県境は尾根伝いに南へ伸びているが、残念ながら道はない。そこで、県境の東側を流れる綱子川に沿った道を南下することにする。
10 前川橋から下流を望む 11 綱子川右岸の歩行者専用道 その1
12 奥牧野城山解説板
現在の県境は、戦国時代の国境であり、関東の北条と甲斐の武田の勢力が火花を散らした場所でもあったようだ。おそらく、ここの西側、地形図の278m地点あたりが城山だったのだろう。
13 南の空を見上げる
車道に出る。とはいっても、林道のような山の中の道である。川を挟んで右手には、県境の尾根が青い空の下に続いている。
14 車道合流地点 15 西の県境の山々
突然、大きな建物が現れた。老人ホームらしい。
16 藤野さつき学園 17 林道分岐点
18 峯山解説板
19 綱子川右岸を南下する 20 綱子川
老人ホームと別荘があるだけで、人家は全くない。
21 湧水 22 別荘
道路が通行止めになっていた。栗が落ちていて人里が近いことがわかる。
23 綱子集落手前の通行止め標識 24 栗
綱子の集落に着いた。奥牧野以来の久々の人里である。が、道路の崩落により、奥牧野側からの道路は寸断されている。
25 綱子集落 その1 26 路肩の崩壊
平家の落人伝説でもありそうな、山奥の集落である。公民館がなんとも言えない味を出していた。
27 綱子集落 その2 28 綱子公民館
右手には、県境の山々が続いている。
29 西の県境の山を望む その1 30 西の県境の山を望む その2
それまで道のすぐ右を流れていた綱子川が、左手に移った。地形図を確認すると、ちょうどこの地点で綱子峠へ登る道が右に分岐しているはずである。GPSの座標もその地点であることを示しているが、それらしき道標は見当たらない。
ふと足元をみると、写真31の道標が朽ちて倒れていた。その先には草の生えた道らしきものが続いているので間違いなさそうだ。
31 綱子峠分岐点の倒壊した道標 32 綱子峠へ その1
朽ちたジープがあった。手作りの道標があり、その登山道を登っていく。
33 廃ジープ 34 綱子峠道標
35 綱子峠へ その2 36 綱子峠へ その3
37 綱子峠中腹から丹沢方面を望む
登山道はわかりやすい。
38 綱子峠へ その4 39 綱子峠へ その5
10時22分、標高515mの綱子峠に到着した。久々の尾根の県境に復帰である。ここから南へ尾根伝いに行く予定であったが、足元を見ると554m大平山、その下に小さく奥牧野と書かれた手作りの標識が目についた。せっかくなので県境を北に戻ってみることにした。
40 綱子峠 41 大平山への道標
微かな踏み跡を尾根伝いに歩く。
42 大平山方面 その1 43 大平山方面 その2
急坂を登ると標高から見て大平山頂らしき所があったが、標識はない。その先は緩やかに下る県境の尾根が続くが、踏み跡が無くなったので、引き返すことにした。多少の危険を冒せば、標識にあるように奥牧野まで行けるのかもしれない。
44 大平山? 45 北へ続く尾根
46 鉄塔下
綱子峠に戻り、県境を南へ進むと鉄塔が見えた。
47 鉄塔から北方向を望む
48 鉄塔から東方向、神奈川県方面を望む
鉄塔の周囲は、木が切り払われており、眺めが良い。
49 鉄塔から西方向、山梨県方面を望む
写真49の山並みを地図で確認してみると、右手の尖ったピークはこの尾根の北西に平行している尾根の最高峰、阿夫利山(729m)である。左手、高圧線の先にあるのは、この尾根と北西の阿夫利山の尾根が合流した先のピーク、御牧戸山(1048m)だろう。あの尾根は遙か都留市まで続いているようだが、途中から県境から外れるため、今回歩くことはない。
次の目的地は、入道丸という714.4mのピークである。杉林を行く。
50 入道丸へ その1 51 入道丸への道標
52 入道丸へ その2 53 入道丸
入道丸は明瞭なピークではない。南西にも、もう一つのピークがある。
54 入道丸南西のピーク その1 55 入道丸南西のピーク その2
56 平野峠へ その1 57 安寺沢への道分岐点
58 平野峠へ その2 59 平野峠道標
11時27分、予定よりも早く平野峠に着いた。
メインルートは、尾根を直進しムギチロという変わった名前の山へ続いているらしいが、そちらではなく、左へ降りて月夜野へ向かう。県境はここから左に急降下して月夜野へ向かっているが、道はない。
ところで、月夜野発三ケ木行きの最終バスは12時55分発である。冗談のようなダイヤだが本当である。そのあとは、東野まで歩いて16時05分発のバスに乗るしかない。まだ、1時間半あるので、ひょっとすると12時55分の最終バスに間にあうかもしれないという邪な思いが頭に浮かぶ。
しかし、この時、欲を出したことが、後でまずい結果を引き起こすことになったのである。
60 平野峠から月夜野へ その1 61 眼下の月夜野集落
月夜野への道は昭文社の登山地図によると「道荒れている」と書かれている。確かに、所々に崩壊地があり、一般的な登山道とは言えないかもしれない。
62 崩壊地 その1 63 崩壊地 その2
歩く人は少ないようだ。バスの時間が気になり、崩壊地の通過に時間を食われるのがもどかしい。
64 崩壊地 その3 65 不明瞭な道
66 野生動物の糞 67 崩壊地 その4
気が焦っていたのだろう。つい、現在地の確認を怠り、写真68の分岐点を倒木のある左へ行ってしまった。尾根の反対側に行くとは思っていなかったのであるが、これが失敗の原因であった。
68 569m地点手前の分岐 69 崩壊地 その5
崩壊地を過ぎて、尾根を降りて行くが、やがて傾斜が急になり、道がなくなった。道を間違えたことが確定である。このまま尾根を下りるかどうか迷ったが、おそらくこの下は急斜面になり、川に落ちて行くはずである。崖の上で立ち往生するのだけは避けたい。道に迷った時はもとの場所に戻るか、尾根に出るのが鉄則である。疲れるが尾根を登り返し、写真68の地点に戻ることにした。
70 道が消失した尾根
後で、GPSログで確認したのが下図である。
フラッグの間が道をロストした区間である。時間にして25分のロスだ。やはりバスの時間を気にして道を急ぐと、ろくなことはない。写真68の分岐点に戻ったのが、12時26分。ここで、12時55分月夜野発のバスは諦め、のんびり下ることにする。
71 丸木橋 72 平野峠から月夜野へ その2
73 鹿防止柵 74 平野峠から月夜野へ その3
鹿柵を通り抜けると人里についた。月夜野の集落である。
民家の裏に出てしまったので、恐縮しながら敷地を通らせてもらう。
75 民家の裏手に出る 76 車道へ
77 月夜野集落から見た黍殻山?
月夜野は、県境にある小さな集落であるが、景色がよく、日本情緒あふれるのんびりとした雰囲気の山里である。
目の前に、何故かリンゴがなっていた。昔のドラマで、常盤貴子が道端のリンゴをとろうとジャンプして転んでいる所に、背が高くて耳の聞こえない豊川悦司が現れて、リンゴを採って渡すという出会いのシーンがあったのを思い出した。といっても、そんな細かいことに気がついたのは、たまたま、最近、DVDで見たからである。ただし、舞台はこんな田舎ではなく、都内だ。1990年代のこのドラマの中のふたりは、若くて美しかった。
時代だといえば一言で片付いてしまうが、このドラマに限らず、テレビドラマ全体の視聴率も、ドラマとタイアップして売り出すビジネスモデルのCDセールスも、今思えばその頃が絶頂期であったように思う。
78 道端のりんご 79 月夜野集落の小径
もう12時55分を廻った。今頃バスは月夜野バス停を発車していることだろう。
80 携帯電話アンテナ 81 月夜野集落から国道413号線へ
写真80のアンテナは、住民だけでなく、このあたりの登山者にとっていざという時、非常に重要な施設である。
国道へ出ると両国屋という旅館?があり、キャンプ場の入り口の先の道志川には、両国橋が架かっている。県境である。
82 両国屋 83 道志渓谷キャンプ場入口
84 県境付近の道志川を望む
道志川の写真を撮っていると、その先にバスが見えた。もう13時である。発車時刻を過ぎているのになぜバスがいるのか、おかしいと思いつつも近づくとバスのドアが閉まって発車しそうになる。慌てて駆け寄ると、運転手さんも驚いていた。なぜなら、終点(始発)のバス停で最終バスの発車時刻を過ぎているのに、バスに乗ろうとやってくる客などありえないからだ。この山奥のバス停に時刻表を調べずにやってくる人は単なるバカである。
時間調整のため、5分遅らせて発車したらしい。もちろん乗客は一人だけだ。三ケ木経由で橋本駅までバスに揺られた。
というわけで、最後は写真が撮れなかった。しかし、ラッキーとしか言い様がない嬉しいアクシデントだった。結果オーライ、終わりよければ全てよし、というやつである。ここで、日頃の行いが良いからだ、などというと典型的自画自賛おやじ常套句になってしまうので、やめておく。
GPSによる今日の軌跡
GPSによる今日の高度記録
今日は入道丸が最高高度であったが、1000mには届かず、県境高度記録の更新はならなかった。
今日のコースは、交通の不便な本当の山奥だ。奥牧野、綱子、月夜野という、こんなところにも人が住んでいるのか、と驚くような、しかし、美しい集落を訪れることができたのは収穫であった。ただ、限界集落かもしれないので、数十年後にどうなっているのかはわからない。
綱子峠から平野峠の区間は、生藤山以来久しぶりの、尾根伝いの県境の山道であった。次回は、道志川を渡り、いよいよ本格的に丹沢山中に入っていくことになる。
(本日の歩数:23274歩)
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