神奈川県一周   県境はいよいよ道志/丹沢の山中へ

◆第24日目(2011年9月8日) 上野原駅奥牧野

 
  
 県境を歩く旅も後半戦に入った。今まで歩いた奥多摩/高尾山系を卒業し、相模川を渡って、今日から道志/丹沢山系に入ることになる。上野原市と旧藤野町の県境を辿るが、事前の地図調査によると、県境は、道のない川、沢、山を貫いており、忠実にたどるのは困難なようだ。それでも出来るだけ県境を忠実にトレースしていこう。
 上野原駅に降り立つ。天気は快晴といってもよいだろう。9月初旬の残暑厳しい季節である。



 1 上野原駅                      2 駅からの階段
   

    

 急な河岸段丘の階段を登って、段丘上の平地に広がる上野原市街地に出る。



 3 上野原市内の懐かしい商店


  4 中央高速道路
     

 国道20号線に出て、相模川に向かう。
 中央高速道路の下を過ぎると、JR中央線が見えてきた。上下線の線路の間に川が流れている。境川、つまり神奈川県と山梨県の県境である。写真5の左側が神奈川県だ。

 5 国道20号線から県境の境川と中央線を望む

 国道が境川を渡る。ということは、県境を越えて神奈川県側に入ったということだ。さすがに国道だけあって、県境標識には事欠かない。

  6 国道20号線が境川を越える県境          7 神奈川県側から県境を振り返る
   

  8 国道20号線から境川下流を望む          9 国道管理境界標識
   



 国道20号線を神奈川県に入って数百メートル歩くと右に谷に向けて降りる道がある。坂を降り切った所が境沢橋である。もちろんここも県境なので、再び山梨県側に入ったことになる。

  10 境沢橋                     11 境沢橋から上流を望む
   

  12 境沢橋から下流を望む              13 境川橋
   

 さらに行くと相模川を渡る橋、境川橋に出た。相模川を歩いたとき以来であるが、変わらぬ橋の美しい姿が懐かしい。当時の写真と比べてみると、紅葉がないことと水の色が茶色く濁っているところが大きく違う。台風の影響だろう。

  14 境川橋から山梨県側を望む            15 境川橋から相模川下流を望む
   

 県境は境川とともに相模川に合流する。写真15の左側の川の水が緑色になっている所が合流地点である。その後、県境は相模川を上流に遡っている。つまり、写真16が県境そのものである。

  16 境川橋から相模川上流を望む           17 境川橋から神奈川県側を望む
    

 18 神奈川県側から見た境川橋




 境川橋を後にして、河岸段丘を登り、右折して川沿いに上流側、上野原市の鶴島地区へ向かう道に入る。なぜかいきなり通行止めの看板があって嫌な予感がする。崩落という文字がヤバそうだ。

  19 通行止め標識                  20 鶴島地区へ向かう道
   

 由緒ある縁起の神社を過ぎると完全に車両通行止めになっていた。

  21 石楯尾神社                   22通行止め柵
   

 その原因はすぐにわかった。小規模な土砂崩れである。

  23 土砂崩れ現場                  24 崩壊した崖
   

 幸い、土砂があるだけで、路肩の崩落はなく、徒歩で難なく通過できた。誰も通らない寂しい道であるが、通行止めなので当たり前だ。

  25 土砂崩れ現場を振り返る              26 名倉沢橋(県境)
   

 北に大きく迂回した道は、再び相模川に近づいた。現地の銘板によると名倉沢橋である。ということはこの沢は名倉沢というのだろう。境川を南下し、右折して相模川を西に遡った県境は、ここで左折して今度はこの沢に沿って再び南へ向かう。つまりこの名倉沢橋が県境である。

  27 名倉沢橋から下流を望む             28 名倉沢橋から上流を望む
   

 29 鶴島地区から相模川と上野原市街を望む

 相模湖に堆積する土砂を浚渫する施設と船の向こうに上野原の市街地が見えるが、なかなか雄大な景色である。水が濁っているのが残念だ。



 浚渫した土砂は、近くのいかにも怪しい谷戸だったらしい埋立地に運ばれているようだ。本来は河口である湘南海岸に運ばれるべきだろうが、経費がかかりすぎるのだろう。

  30 浚渫土砂埋立地入口                31 浚渫土砂を運ぶトラック
   

  32 小さな石仏                   33 鶴島集落を南へ
   

 お寺のところで、左折し、南に向かって県境をフォローする。

  34 高台の集落から相模川県境を望む         35 青苔寺
   

 地形図では写真36の地点から写真41の地点へショートカットする破線、すなわち徒歩で行ける道があったのだが、残念ながら、あの邪悪な埋め立て工事のせいだろうか、通行止めになっていた。

  36 西の県境へ向かう                37 通行止め柵
   

 しかたなく、神社の下で大きな道路に出る。車道を湖南団地入口というバス停で左折して、県境に向かう。

  38 神明社                     39 湖南団地入口
   



 40 上野原市街を望む

 いかにも山奥といった雰囲気だったが、突然赤いとんがり屋根の家が見えて驚く。

  41 別荘?                     42 金剛山登山道入口
   

 金剛山への登山道入口があったが、草が深くて入る気にはならなかった。
 広い敷地にぽつんと家が立つ。ここが湖南団地なのだろう。高台の別荘地として開発された感じだ。

  43 湖南団地                    44 湖南配水池
   

 湖南団地のための水道施設を過ぎると、暗い谷に着いた。ここが県境である。沢を挟んで、山梨県と神奈川県の鳥獣保護区の標識が並んでいた。

  45 県境の沢の上流側を望む             46 山梨県側鳥獣保護区標識
   

  47 神奈川県側鳥獣保護区標識            48 県境の柵と舗装
   

 沢の下流側には、産廃の不法投棄を防止するためのフェンスが設置されているが、写真48のとおり、県境でフェンスの色が違う。よく見ると道路の舗装まで違っているのがわかる。標識がない代わりに、県境のサインはいっぱいだ。

  49 県境の沢の下流側を望む 
  誰も注目していない、寂しい県境である。



 神奈川県に入ってしばらくすると広々とした景色に出会う。旧藤野町、葛原地区である。

 50 相模原市葛原付近


  51 金剛山登山道入口                52 謎の球体
   

 再び金剛山の登山口があったが、あまり踏まれていないので通り過ぎた。

  53 芸術作品                    54 葛原神社
   

 葛原神社に着いた。芸術作品が並んでいる。旧藤野町は芸術の町を標榜していたが、相模原市に吸収されてしまった現在、芸術作品にも管理が行き届いていない感じである。
 ここですでに時刻は11時半を廻っている。県境を大きく迂回したルートのため、予想以上に時間がかかってしまったようだ。今日は出来れば道志川、つまり月夜野まで行きたかったのだが、このペースでは絶対無理である。予定を変更するしかないだろう。地図を再確認すると、秋山川の奥牧野まで行けば、バスの便がありそうである。ただし、バスの運行本数は厳しそうだ。
 
  55 県境の山を望む                 56 藤野方面を望む
   



 天神峠に着いた。目的地を奥牧野に変更し、時間的に余裕が出来たので、急遽、金剛山に登ることにした。この山は東西に細長く伸びており、その中央部を県境が南北に横断している。山頂は県境に近いはずである。

  57 天神峠                     58 金剛山への登山道 その1
   

 心配された登山道ははっきりしており、なんの心配もない。

  59 金剛山への登山道 その2            60 金剛山への登山道 その3
   

  61 見晴台
  見晴台に着いた。標高418mの小ピークである。

  62 見晴台から南方向を望む             63 小さな祠
   

 尾根道をさらに進むと、左側に白いガードレールが見えた。無粋だと思ったが、近づいてみると恐ろしい崖になっていた。転落防止のため付けられたのだろう。

  64 金剛山への登山道 その4            65 金剛山への登山道 その5
   

 66 金剛山山頂

 12時4分、金剛山山頂に着いた。標識によると藤野町15名山で、標高は456.4mだそうだ。

  67 山頂からの眺め                 68 気温計
   

 気温は28℃と、山奥の割にはかなり暑い。県境はもう少し西にあるようなので、少し進んでピークらしきところまで行ってから引き返した。後でGPSで確認しみると、県境は次のピークだったようだ。そこまで道が続いているかどうかはわからないが。
 山梨県側の湖南団地、写真41の地点から登れば県境を通れたかもしれない。

  69 金剛山から西へ                 70 道端のキノコ その2
   

 8月の雨のせいか、キノコが多い。

  71 道端のキノコ その3              72 日向の錆びた標識
   

 天神峠に戻って、次の目的地である金山川県境をめざす。山を回り込むと、日向(ひなて)という錆びた標識があった。この小さな集落の地名らしい。



  73 金山川に架かる橋
   金山川についた。名もない小さな橋を渡る。

 74 県境付近の金山川


 橋から金山川上流側を見ると、川が深い渓谷になり、岩にぶつかってU字型に曲がっている。地形図によると、金剛山の西側を超えた県境は山を下ってこのU字の頂点に降りてくるようだ。その後、県境はしばらく金山川に沿って上流に向かっている。ちょうど写真74の上端、写真76の崖がその県境が川に降りてくる場所である。
 写真でもわかるように、ここは、県境の名に恥じない険しい地形が見事だ。写真75は橋から下流側の真下を見たところである。ちょっとわかりにくいが、わずか幅1mの岩の切れ目が、10mほどの深さで垂直に切り立っており、このわずかな隙間を金山川が激しい飛沫を上げて流れているのである。思わず吸い込まれそうな地形である。この深い切れこみは、長い年月をかけて侵食されたのだろうか。だとするとこの上流は湖だったのかもしれない。

  75 深い峡谷                    76 県境付近の断崖
   

 77 県境付近の滝

 県境の川は、滝となって美しい渓流の姿を見せている。滝の向こう側は山梨県だ。

  78 県境を見上げる                 79 県境の金山川
   

 西へ向かうと橋があった。当然、県境であるが、ここは大きな標識があってわかりやすい。

  80 県境の橋                    81 橋から下流を望む
   

  82 橋から上流を望む                 83 川から南へ向かう県境付近
   

 県境はこのあたりで金山川から別れて、再び山に入り南下している。ちょうど写真83のあたりである。すこし山梨県側に入ってみると、小さな集落があり、なんとバス停があった。この山奥の道がバス路線だとは思わなかったので少し感激する。
 県境沿いには登山道もないので、再び神奈川県側に戻り、奥牧野をめざす。

  84 松葉バス停                   85 県境の金剛山を見上げる
   



  86 日影原付近 その1
  日影原に着いた。広々としたところである。

 87 日影原付近 その2

 高原のような癒される風景である。地形図によると、標高は280mほどだ。

  88 日影原付近 その3               89 日影原から奥牧野へ
   

 日影原から回りこんで到着した奥牧野は、意外なほどなだらかな斜面が広がる、のどかな山里であった。

  90 奥牧野の風景

 西にある県境を目指すが、その前にバス停の場所と時刻を確認する必要がある。ちょうど地元の中年男性がいたので聞いてみると、すぐそこが藤野駅行きのバス停だという。二人でその方向を見ると何と正面からバスが走ってくるではないか。おじさんは親切にもバスを止めてくれている。もちろん私も走って、なんとか乗込むことが出来た。乗る瞬間にこの親切な地元のおじさんの方を見ると、間に合って良かったな、という顔をしていたので、一礼してバスの人となった。
 最後の県境は確認できなかったが、これを逃すと次のバスはいつになるかわからないのでしかたあるまい。いや、こんな山奥ですぐバスに乗れたことはラッキーとしか言いようがないだろう。後で調べてみると、平日午後は1時間に1本程度運行しているようだ。
 バス停の写真も撮れなかったので、がらがらのバス車内の写真を撮る。バスは、狭い山道を走り、やまなみ温泉を経由して無事藤野駅に着いた。

  91 バスで奥牧野から藤野へ             92 藤野駅
   

 次回のために、奥牧野行きのバス時刻表の写真を撮り、駅前のホエールズショップで買ったビールを飲んでから、中央線で帰宅した。

 今日のGPSによる軌跡である。相変わらず非常に正確だ。県境を挟んでかなり迂回していることがわかる。歩行距離は21kmとなっている。この区間の県境は、川と山のピークを結びながら南下しているので、このような地形では、県境沿いの道など望めないだろう。

  

 今日の高度記録は、最低地点の相模川のレベルから最高地点の金剛山まで、なかなか面白いデータがとれていた。金剛山の標高は456mなので、今日のGPSの高度記録はかなり正確なことがわかる。




 
今日は、ついに相模川を越えたが、地形的に県境を忠実にたどることは困難だった。しかし、その分、こんな機会がなければ絶対に訪れることがないと思われる山深いところにある平和な里、名もない峡谷を見ることが出来た。おまけに金剛山登山もでき、なかなか楽しい旅であった。
 金剛山以外は一般道であり、特別な困難もない。このあとに歩かなければならない、険しい丹沢の山々までの助走期間といったところである。次回は、奥牧野から道志川をめざすことになる。

 
(本日の歩数:29734歩)

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