神奈川県一周   いよいよ丹沢の山岳地帯の最終章 菰釣山から山伏峠へ
◆第28日目(2011年11月3日) ブナ沢乗越山伏峠          

 今回の県境出発地は菰釣山手前のブナ沢乗越である。ここへのアプローチは、ひとつしかなく選択の余地はない。道志の森キャンプ場経由の登山道である。前回下ってきた道だ。問題は、前回と同様、交通機関である。ここはやはり同じ方法がよさそうである。というよりも、他の選択肢は事実上ない。今回は前回のような自転車のトラブルだけは避けたいが、幸いなことにCALSONIC号は見事に復活している。デポ地点は地形的に山伏峠しかないだろう。国道413号線は、山伏峠を越えると山中湖方面への下りとなってしまうからである。山伏峠から道志方面は下り一方である。ラッキーなことに山伏峠は標高が1100mもあり、県境の尾根からも近い。こうして目的地も決定した。



 11月2日は厚木で会議だったので、急いで帰り夜8時30分に出発する。車中泊は前回と同様、道の駅どうしである。前回は下半身が寒かったので、防寒タイツを履いて寝たら快適であった。しかし、夜中の騒音は前回以上にひどい。バイクの他に4輪が急発進急ブレーキでタイヤの音を響かせている。住民は何も言わないのだろうか。何度か目を覚ますが、前日の寝不足のおかげだろうか、不眠になることはなかった。

  1 車中泊                      2 早朝の道の駅どうし
   

 天気予報では、雲のち晴れということだったが、朝からどんよりと曇っている。結局、この日はほとんど晴れ間はなかった。

 





 まず、最初に車で山伏峠へ向かう。結構な上りである。トンネルの道志側に登山口があるので、CALSONIC号をデポして、道の駅どうしに引き返し、朝食をとる。7時25分、道の駅どうしを徒歩で出発した。


  3 道志川を渡る                   4 出迎えの犬
   

 早速放し飼いの犬がお出迎えである。

  5 道志の森キャンプ場                6 西沢林道標識
   

  7 キャンプ場内の分岐点               8 川になった林道
   

 相変わらず林道の崩壊はひどい。



 前回、滑って滝に落ちそうになった沢は、苔が掃除され、さらに写真9のように飛び石が配置されていた。

  9 対策された危険な沢                10 菰釣山案内板
   

 写真11の林道から登山道へ入る場所はわかりにくい。反対側から下ってくると自然に林道に出るので、この景色は記憶になかった。地図と赤いテープが目印である。写真12の水のある沢筋から左の涸れ沢に入るところも同じで、登りだと道がわかりにくい。

  11 林道から沢へ                   12 水場
   

 写真12に出る時に、前回は涸れ沢をそのまま下ったが、左手に登山道があるのを発見した。こっちを下ればよかったなと思って登って行くと、写真14で崩落しており、結局沢に合流してしまった。

  13 沢沿いの登山道                 14 登山道の崩落
   

 美しい林にかこまれた谷を登っていく。

  15 涸れ沢                     16 紅葉
   

 標高1,180mのブナ沢乗越に着いた。

  17 県境尾根へ                   18 ブナ沢乗越
   



  19 菰釣避難小屋へ その1             20 菰釣避難小屋へ その2
   

 紅葉を見ながら、菰釣避難小屋へ向かう。

  21 菰釣避難小屋                  22 菰釣避難小屋内部 その1
   

 早朝の尾根の林の中に建つ菰釣避難小屋が見えた。最初の計画で、泊まろうと思っていた場所である。外観も内部もきれいだ。毛布もある。ノートが置いてあったので見てみると、夕べの宿泊者は一人のようだ。環境は素晴らしいが、トイレがないのと水場が遠いのが難点である。なーんて書くと、キャンプ場じゃない、贅沢言うな、と怒られそうである。
 ところで、知らなかったのだが、はじめから計画して避難小屋に泊まってはいけないらしい。あくまで緊急避難用の施設なんだそうである。まあ、そのへんはパチンコ屋や麻雀と同様、建前と本音の世界かもしれない。そういう建前にしておかないと、グループでわざわざ避難小屋に来て、宴会を始める非常識な人が出てきてしまうのだろう。

  23 菰釣避難小屋内部 その2            24 菰釣山へ その1
   

 5分ほど休憩して、菰釣山へ向かう。

  25 菰釣山へ その2                26 菰釣山へ その3
   

  27 菰釣山                     28 観測装置
   

 9時55分、標高1379mの菰釣山へ到着した。出発地の「道の駅どうし」の標高が700mなので、680mの登りである。涼しいこともあって、疲労感はまだない。写真30の立派な道標には標高まで書いてあるのに、肝心の山名が書いてない。見かねて、誰かが山名をかいた札を掛けたようだ。山頂には神奈川県自然環境保全センターが設置したソーラーパネル付きの気象観測装置もあった。

  29 山頂ベンチ                   30 菰釣山標識
   

 ここから西方向に目を移すと、もし私が織田裕二だったなら、「キターーーー」と絶叫するだろう。ちょうどこんな感じである。
 この県境の旅で、頭はちょろちょろ顔を出していたが、ついに眼前に麓からのその全貌を現したのである。この眺めは素晴らしい。曇り空にもかかわらず、くっきりと見える。しかし、もう11月だというのに、冠雪がほとんどなく、夏の富士山のような印象である。左下に初めて山中湖が見えた。雲のお陰でSF映画のワンシーンのような雰囲気だ。あの山頂からいまにも噴火しそうな感じである。

 31 菰釣山から富士山を望む


 薄汚れた案内板を見ると山中湖まではまだ結構距離がある。

 32 山頂案内板


  33 菰釣山から御正体山を望む            34 ブナノ丸へ その1
   



  35 ブナノ丸へ その2               36 菰釣山北西の小ピーク
   

 菰釣山の北西にピークがあり、ベンチがある。それにしても、静かな尾根道である。曇っていることもあるのかもしれないが、ここまで一人も登山者に会わない。しかし、いくら一人では寂しいからといっても、クマさんには会いたくない。クマの糞は1箇所だけあったが、やや古い感じであった。

  37 ブナノ丸へ その3               38 ブナノ丸へ その4
   

 10時25分、次のピークのブナノ丸に到着。高度計は1340mを示している。菰釣山より40m低い。

  39 ブナノ丸                    40 ブナの丸高度
   

  41 油沢ノ頭へ その1                 42 油沢ノ頭へ その2
   

 次のピークである、油沢ノ頭に向かう。尾根道の所々に赤く色づいた紅葉があり、目を楽しませてくれる。

  43 油沢ノ頭へ その3               44 油沢ノ頭
   

  45 油沢ノ頭標識                  46 樅ノ木沢ノ頭へ その1
   



 紅葉は赤い木もあるが、全体的にははっきりしない感じがする。気温のせいだろうか。

  47 樅ノ木沢ノ頭へ その2             48 樅ノ木沢ノ頭へ その3
   

 紅葉を楽しみながら、次のピーク、標高1306mの樅ノ木沢ノ頭に、11時24分に到着した。標識によると山伏峠まで、あと3.9kmである。まだ、1時間30分以上かかりそうだ。

  49 樅ノ木沢ノ頭                  50 樅ノ木沢ノ頭標識
   

  51 西沢ノ頭へ その1               52 西沢ノ頭へ その2
   

 53 前方にみえる県境尾根と富士山

 54 西沢ノ頭へ その

  55 西沢ノ頭へ その
  しかし、美しい自然林である。  

 56 西丹沢の紅葉

 両県の麓には林道が走っており、植林の魔の手が伸びていたのだろうが、この稜線まではたどり着かなかったようだ。林業の衰退がもう少し遅れたら、このあたりも杉林だらけになっていたのだろうか。そうなったら、西丹沢のクマも絶滅していただろう。



  57 西沢ノ頭へ その5               58 西沢ノ頭
   

 11時46分、西沢ノ頭に到着した。

  59 赤い落ち葉                   60 紅葉
   

  61 石保戸山へ その1               62 階段
   

  63 石保戸山へ その2
        
 64 山梨県側の紅葉

  65 石保戸山                    66 石保戸山標識
   

  67 石保戸山三角点
     

 12時13分、三角点のある1297mの石保戸山に到着。



 これまで、たくさんの小さなピークを越えてきたが、この石保戸山を過ぎると、残すは、県境から山伏峠への分岐点、最後のピークである大棚ノ頭だけである。

 68 大棚ノ頭へ その1

  69 御正体山                    70 洞
   

 クマが冬眠できそうな大きな洞があった。


  71 大棚ノ頭へ
 その2               72 大棚ノ頭へ その3
   

 今日は疲労も少なく、まだ足取りも軽い。ここまで一人だけ中年の登山者に会った。山伏峠から菰釣山への往復だそうだ。物腰から見て、公園管理の関係者かもしれない。

  73 大棚ノ頭へ その4               74 大棚ノ頭へ その5
   

  75 大棚ノ頭へ その5               76 大棚ノ頭へ その6
   

  77 大棚ノ頭へ その7
        



 鉄塔の下に出る。夫婦でハイキングに来ている人がいた。お気に入りの場所だそうだ。確かにここからの眺めはなかなかのものである。西丹沢にはクマがいることを話したが、地元の人ではないので、最初はなかなか信じてもらえなかったようだ。

 78 箱根方面を望む

 79 大棚沢方面を望む


  80 山伏峠への分岐点(大棚ノ頭?)
     

 12時50分、山伏峠への分岐点に着いた。

    81 分岐点の案内板
   

  82 山伏峠へ                    83 案内板
   

 大棚ノ頭は分岐点からすぐのところらしいがよくわからないまま、山伏峠に着いた。ここから北側にそのまま行くと御正体山であるが、今日はもちろんトンネル東側の登山口へ向かう。

  84 山伏峠案内板                  85 登山口案内板
   



  86 登山口                     87 登山口から国道413号線を望む
 
  

 13時15分、登山口に着いた。舗装道路の跡が残っている。旧道だろうか。検索してみるとやはり登山口の向こう側に昔のトンネルがあったようだ。
 そして、昔の国道沿いの空き地に、朝デポしておいたCALSONIC号を確認した。真っ先にタイヤを確認したのは言うまでもない。しかし、その動作には余裕が感じられる。私のやっていることはバカだが、頭はそれほどバカではない。サル並みに反省して、前回の教訓から学び、ちゃんとリスク管理をしておいたのである。実は山伏峠13時59分の道志村方面行きバスがあるのだ。万が一自転車作戦がダメでもこのバスに間に合えば、車まで戻れるのである。まだ、45分の余裕があるので計算どおりである。
 しかし、こういう日に限って問題は起こらないので、ザックを背負ったまま登山靴でCALSONIC号に跨る。ここの標高は、約
1100m、車が停めてある道の駅どうしは700mなので、高さで400m、距離にして9kmを下ることになる。実際にほとんどブレーキしか使わず、20分で一気に駆け降りた。時速27kmである。むしろ、ブレーキが壊れないか心配になるくらいである。

  88 デポしたCALSONIC号              89 道の駅どうし
   

 道の駅どうしに無事到着し、車に自転車を積み込んで帰路に着く準備をする。車で同じ道を何度も走るのは芸が無いので、帰り道は山中湖、明神峠経由で帰ることにした。山伏峠を越えて、平野へ向かう途中で、例の山伏峠13時59分発のバスとすれ違った。

 GPSによる今日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録


 今日は、ついに山中湖に迫る山伏峠まで到達した。山深い西丹沢の核心部を踏破したことになる。神之川キャンプ場からここまで、険しい尾根道であったが、忠実に県境をトレースすることが出来た。そこでみたブナの自然林やクマの痕跡は神奈川県の奥深い自然を感じさせてくれた。また、大室山を頂点とする県境尾根とそこから派生する沢の地形をこの足と目で確かめることが出来た。なんだか、自分の筋肉と精神が一回りたくましくなったような充実感を感じた。
 しかし、まだまだ県境は標高1000m以上を保ちながら、先へと延びている。気を引き締めて踏破していこう。次回はいよいよ神奈川県最西端と静岡県県境が待っている。
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