仙丈ヶ岳 第2日目  標高3033m 登山開始地点標高2030m  

  自分の足で登らない山シリーズ第30弾  南アルプスで最もイージーな初心者でも登れる3000m級の山
 
◆ 2015年8月4日
 当然のことながら自家発電機しかない山小屋は暗い。    
  
 トイレに行くとしても、枕元のメガネをとるにしても、ライトが必需品である。町田から来たという隣の人は、古い電球のライトを使っていたが、これをみて明るくていいですね、という。PETZLやBlackDiamondと言ったメーカーが有名だが、今回使ったヘッドライトとハンディライトは、単三電池1本でどちらも1000円以下で買えたというすぐれものである。もちろん、LEDなので明るい。

 隣に寝ている若者のいびきに悩まされたが、涼しいこともあって朝方は何とか熟睡することができた。起床時間とされている4時に目が覚めたが、まだ寝ている人もいるので、4時半まで布団の中にいてから起きた。もちろんまだ夜は開けていない。日の出が4時50分くらいだというので、外に出てみる。昨夜の恐ろしいほどの雷雨が嘘のように、良い天気である。

 1 馬の背ヒュッテから見る日の出


 4時57分、甲斐駒ヶ岳の右側の谷からオレンジの光が広がっていく。隣で、本格的な三脚で写真を撮っている若者がいた。この人は、昨夜も食事の写真を三脚を立てて撮っていたので、多分取材だろう。朝日を受けて馬の背ヒュッテの周囲の森が赤く輝く。月も出ていてなかなか幻想的な光景である。

 2 朝日で赤く染まる森


 朝食では、味噌汁をおかわりして、歯を磨いてから出発の準備をする。ゴアテの雨具その他は重いので、山小屋にデポさせてもらうことにした。山小屋の人に昨夜の雷雨について聞いてみた。この時期は、早朝は晴れ、午前中からだんだん雲が出てきて、午後は霧、夕方は雷雨というのが、パターンなんだそうだ。つまり、昨日もいつもどおりの天気だったわけである。これは、山頂で青空を見るためには早朝に登らなくてはならないことと、雷雨が来る前の午後のできるだけ早い時間に山小屋に入る必要があるということを意味している。

  3 馬の背ヒュッテを出発
        

 5時43分に馬の背ヒュッテを出発する。荷物が軽く、体調も足の筋肉も快調である。今日は登らずに帰ると言っていた隣の町田から来た人からは、根性がありますね、と言われたが、青空の頂上にもう一度立ってみたいという衝動は押さえられない。

 4 馬の背から見る仙丈ヶ岳




 晴れ渡る天国のようなハイマツの馬の背尾根を歩く。気温も20℃くらいだろうか。下界の暑さは記憶から飛んでいる。さわやかな道であるが、それをぶち壊される衝撃的な出来事がおこった。登山道のすぐ横で、二人組のおばさんの排泄(大)の現場に遭遇してしまったのである。吐きそうになって、先を急ぐ。腹が立つが、とにかく一刻も早く忘れよう。

 5 仙丈小屋へ その1


 振り返るともう日はかなり高く登って、甲斐駒ヶ岳の急斜面が逆光のシルエットとなっていた。

 6 甲斐駒ヶ岳


 それにしても、素晴らしい景色である。仙丈ヶ岳は順光になるので朝日でひときわ輝いている。

 7 仙丈小屋へ その2




 8 仙丈小屋へ その3


 高度が高いので、楽というわけではないが、それほど急斜面でもないので景色を楽しみながらゆっくりと登っていく。一晩寝て高度順化したのだろうか。

 9 仙丈ヶ岳へ その4


 思わずテントを張りたくなる地形だ。

 10 仙丈小屋へ その5


 仙丈小屋がだんだんと近づいてきた。

 11 仙丈小屋へ その6


 12 仙丈小屋へ その7




 13 馬の背を見下ろす


 藪沢沿いにさっきから爆音を響かせてヘリが飛んでいる。荷揚げのようだ。

  14 荷揚げのヘリ                  15 ヘリが運んでいたもの
   

 6時35分に仙丈小屋に着いた。ヘリが運んでいたのは、こんな高山で、高い料金を払ってでもビールを飲みたいという人間の愚かで哀しい欲望を満たすためであった。そういえば、私も昨日山小屋でビールを頼んだら冷えていないのでがっかりしたという、どうしようもない俗人である。仙丈小屋には冷蔵庫はあるのだろうか。いや、さっき通った水場の手が切れるような冷たい水で冷やせば、旨いビールが飲めるな、などとしょうもないことばかり考えてしまうのは、人間が卑しいわけではなく、空気が薄くて疲れているからに違いない。

  16 仙丈小屋
     



 仙丈小屋の前での小休止の後、いよいよ最後の上りである。もう頂上はカールが削ったなだらかな曲線のすぐ上にある。

 17 仙丈ヶ岳へ その1


 18 稜線から甲斐駒ヶ岳を望む


 仙丈小屋の上の稜線に出た。

 19 仙丈ヶ岳へ その2


 6時57分、地蔵尾根分岐である。松峰と書いてある、仙丈ヶ岳から西に延びて伊那に至る稜線であるが、現在はメインルートでないためあまり歩かれていないようだ。

  20 地蔵尾根分岐
     

 21 地蔵尾根




 22 仙丈ヶ岳へ その3


  23 仙丈ヶ岳へ その4
     

 24 仙丈ヶ岳へ その5


 青空の下、頂上はもうすぐである。時折吹く涼しい風は、それほど強くなく、信じられないほどの心地よさである。



 25 頂上直下から大仙丈ヶ岳を望む


 右手に大仙丈ヶ岳の尾根を見ながら7時15分に頂上に到着した。

  26 仙丈ヶ岳頂上
       

 わざわざ今日も登ってきた甲斐がある、素晴らしい景色である。

 27 頂上から中央アルプス方面を望む


 南東に目を向けると、逆光のシルエットで、日本で1番と2番、3番目に高い山が見える。北岳と間ノ岳はいつか登ってみたいものだ。

 28 頂上から北岳・間ノ岳と富士山を望む


 29 頂上から間ノ岳・塩見岳方面を望む


 東には鳳凰三山と地蔵岳のオベリスクのとんがりも見えた。

 30 頂上から鳳凰三山方面を望む


 北側に見える甲斐駒ヶ岳と鋸岳は、異様に険しくゴツゴツしている。

 31 頂上から甲斐駒ヶ岳と鋸岳を望む


 カールには雪渓が1箇所だけ残っていた。いつまでも眺めていたいが、高校生が到着して頂上が混み合ってきたので、7時40分に後ろ髪を引かれながら山頂を後にする。

 32 頂上から藪沢カールを見下ろす




 8時18分に仙丈小屋に戻ってきた。

  33 仙丈小屋へ戻る
       

 まだ8時35分だが、仙丈ヶ岳を振り返ると左側からもう雲が湧いている。

 34 標高2750m附近から仙丈ヶ岳を振り返る


 9時過ぎに、馬の背ヒュッテについて、荷物を詰める。その下に藪沢新道の分岐があり、どちらから降りるか迷ったが、藪沢新道は北沢峠への登り返しがあるようなので、素直に藪沢大滝ノ頭経由で降りることにする。

  35 藪沢新道分岐                  36 藪沢を見上げる
   



  37 藪沢小屋
     

 38 甲斐駒ヶ岳




  39 藪沢大滝ノ頭へ その1             40 藪沢大滝ノ頭へ その2
   

 馬の背ヒュッテから藪沢大滝ノ頭までは、平坦な道である。藪沢大滝ノ頭には10時に到着した。

  41 藪沢大滝ノ頭                  42 巻き道を北沢峠へ
   

 藪沢大滝ノ頭からやや急坂になり、下りきって再びなだらかになるのが2合目だが、帰りは尾根道ではなく、ここから右に入る巻き道で北沢峠へ向かう。



 11時28分、無事北沢峠に到着である。広河原行のバスは、13時30分で、あと2時間もあるので、こもれび山荘の前で時間を潰すことにした。車の運転があるので、ビールが飲めないのが辛い。仕方なく、200円のジュースを2本立て続けに飲んだ。

  43 北沢峠                     44 こもれび山荘
   

 ベンチでぼんやりしていると、縦走してきたという人がいた。茶臼岳からだという。地図を見ると南アルプスの南端に近い山ではないか。きっと大井川源流の薙第一ダムから入ったんだろう。昨夕の雷雨の時はビバークしたと言っていた。すごい人もいるもんである。

 次に隣に座った若者は、タコライスを注文して三脚で写真を撮っていた。そのあと、タコライスについて山小屋の主人にいろいろ聞いている。
 昨日、同じ山小屋にいた青年だ。来年の夏の山岳雑誌の取材だそうだ。明日は、甲斐駒ヶ岳に登るが、朝早く出ないと良い写真は撮れないですねなどと話をしていると横浜市に住んでいるそうで、話が盛り上がった。山小屋の弁当を食べたとのこと、さらにタコライスだときついと言っていた。タコライスを食べませんか、と言われたが遠慮しておく。
 アウトドアも趣味なら良いが、仕事だとどうなんだろうか。

  45 北沢峠の広河原方面バス停
     

 13時30分のバスで北沢峠を後にする。北沢峠からは、乗り合いタクシーで芦安温泉の駐車場まで行き、車で中央高速に乗った。

 GPSによる本日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録 (本日の歩数:16227歩)


 南アルプスの中でも最も初心者向けと言われる仙丈ヶ岳であるが、確かに危険なところもなく、ある程度の体力がある人なら、一泊すれば大丈夫、という結論になるだろう。高低差1000mは、丹沢の塔ノ岳に登れる人ならOKといったところか。
 それにしても、3000mの山らしい景色と山頂からの眺めは素晴らしい。しかし、霧やら雷雨といった夏の高山特有の条件があるので、青空の下で登りたければ、どこかの山小屋で一泊して、早朝に登る、という行程が必要だということがわかった。

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