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東京都一周 三国山から山梨県境である笹尾根を北に向かって、奥多摩の山々を目指す
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◆第2日目(2012年1月28日)大羽根山分岐 ~ 槙寄山
今日のスタート地点は、笹尾根の途中、大羽根山分岐である。
檜原村の浅間尾根登山口入口に行くバスは、7時10分武蔵五日市駅発だ。寒い冬の朝の4時起きは辛いが、頑張って始発に乗る。武蔵五日市駅から、我先にと殺到する中高年団体で満員になったバスに乗り、ようやく辿り着いたバス停を降りると、周りの景色は2週間前に来た時とは様変わりしていた。
1 浅間尾根登山口バス停 2 浅間尾根登山口バス停
まさに雪国である。この寒々しい冬景色。ここが東京都だといっても誰が信じるだろうか。しかし、この寒さと雪にもかかわらず、5,6人が降りる。全員登山客だが、なぜか、反対側の浅間尾根方面に行ってしまう。笹尾根に登るのは自分一人だけらしい。まあ、バス停の名前からしてそうなのであるが。
実は、今日の東京都一周を実行するかどうか、かなり迷った。数日前に降った雪が原因である。本格的に雪の積もった山を歩いた経験は殆ど無い。しかし、迷ったら前に進めというのが我が家の家訓である。それに、この県境シリーズ初めての雪山ということで、変化があって良いかもしれない。幾つかの装備を試してみることも出来る。人里が近く、人も多い低山なので素人が万が一遭難してもなんとかなるだろう。という訳で、今日の無謀な都県境登山を決行することにしたのである。
この大羽根山のルートはどちらかと言えばマイナーなルートであるため、もし、踏み跡がついていないと登るのにかなりの困難を伴うことが予想された。バス停で数人が降りたので大丈夫かと思ったら、あてが外れてしまい、胸の奥のかすかな不安が大きくなる。
ここで、チェーン式の軽アイゼンをつける。初めての実地での使用だ。スパッツは電車の中で装着済である。
3 登山口の雪
4 雪山装備
ウールの手袋の上から、アウトドア用の手袋をして防寒対策は万全かと思ったが、足が冷たい。靴下をもっと厚手のものにすればよかったと後悔する。気温は0℃であるが、雪のおかげてもっと寒く感じる。
5 手袋 6 登山口気温
8時25分、出発である。登山道へ入ると、トレースはついていた。ラッキーである。山に入ったのは一人だけのようだがまだ新しい。昨日か一昨日だろう。この足跡が炭焼き小屋で途切れないことを祈るだけだ。
7 大羽根山へ その1 8 大羽根山へ その2
雪道を登っていく。先人の足跡に合わせて足を運ぶので、歩幅が合わず、ペースが出ない。しかし、新雪を初めて歩いた人の苦労がよくわかる。それにしてもたった1週間前の落ち葉の積もった道と比べて何たる変わり様であろうか。
雪に気を取られて、いつの間にか右手の中指の感覚がまったくなくなっていることに気付く。凍傷になるのはマズイ。ポケットの中に手を入れて温めながら指を動かす。指の感覚が戻ったので右手に見える三頭山の写真を撮った。
冬の山は、なんといっても体が温まるまでの登り始めがとにかく寒い。
9 大羽根山へ その3 10 登山道からみえる三頭山
11 大羽根山へ その4 12 大羽根山
9時30分、大羽根山に着いた。やはり、通常時より時間がかかる。
13 大羽根山から三頭山を望む
前回とは全く異なる、雪の奥多摩三山である。
14 大羽根山から御前山、大岳山と浅間尾根を望む
それにしても寒い。気温は−4℃。ただし、風がないのが幸いだ。これで強風だったら耐えられないだろう。
15 大羽根山の気温 16 笹尾根へ
10時12分、笹尾根に到着した。さすがにここまで来れば、たくさんのトレースがあり、楽に歩けるだろうと思ったら、その楽観的な予想は、とんでもない間違いだった。ここまでトレースを付けてくれた登山者はここを左折して、笛吹峠方面へ行ったらしい。槙寄山・三頭山方面のトレースは古そうで、半分風化している。しかも、一段と雪が深くなっている。正直、かなりの不安を覚えたが、ダメなら引き返せば良いと思い、思い切って雪の中に入っていった。いよいよ都県境を先に進むのである。
17 笹尾根合流地点(大羽根山分岐) 18 数馬峠へ その1
日影の北斜面は心細い。相変わらず雪で足をとられて、いたずらに体力を消耗していく。普段山道を何気なく歩いていたが、雪のないありがたみを少しもわかっていなかった自分が情けない。感覚的には、時間と体力は2倍以上必要な感じである。これで、登りの急斜面だったら諦めるのだが、それほどでもないため、撤退する踏ん切りもつかない。
19 数馬峠へ その2 20 深い雪
距離的にはそれほどでもないのだろうが、気分的には長い時間だったような気もする。突然目の前が開けて、素晴らしい景色が飛び込んできた。
21 数馬峠へ その3 22 数馬峠
数馬峠である。南側斜面は雪が少ない。
ちょうど反対側から山男風の体格のいい男性がきたので、話をする。よく見ると途中から同じバスに乗ってきた人だ。槙寄山から来たそうである。ということは、そこまではトレースがあるということだ。彼も雪の深さに驚いており、浅間峠までの予定は無理だと言っている。そんな人でも難儀なのに、山の素人の私がコースタイムどおりに歩けるはずもない。密かに三頭山まで行こうと思っていた私は、地図を見なおして、今日の目的地を手前の槙寄山に変更しようかと考える。楽な方に流れてしまったが、冬の山での疲労と時間切れは何としても避けなければならない。さっきは、迷ったら前に進む、と書いたが、前言を翻すことにする。家訓よりも命のほうが大切なのである。
23 数馬峠から西南方向の富士山と権現山を望む
それにしても、ここから向かって左側の展望は素晴らしい。
24 数馬峠から南方向の丹沢を望む
25 数馬峠から富士山ズーム
人に会って気が楽になったのと、雪に慣れてきたこともあって、気分よく槙寄山に向かう。ようやく、周囲の雪景色を楽しむ余裕も出てきたようだ。気のせいか、トレースもはっきりしてきたように思う。もちろん、先刻数馬峠で会った人が歩いてくれたおかげである。平で見通しの良い尾根だということも心を軽くしてくれる。
26 笹ヶタワ峰付近 27 道標
28 田和峠へ その1 29 田和峠へ その2
30 田和峠 31 田和峠から富士山を望む
次の峠に出る。地図には載っていなかったが後で調べると田和峠というらしい。向こうから二人連れが歩いてきた。この人達もバスに乗っていた。考えることは同じで、本数も少ないので、皆同じバスなのである。
驚いたことに登山地図には載っていない上野原側の田和方面からの道にも踏み跡があった。
32 田和峠から大寺山方面を望む
薄日の差す中、なんだか雪の中を歩くのが楽しくなってきた。スノーハイキングである。
33 西原峠へ 34 西原峠
西原峠に着く。ここも十字路であるがすべての方向でトレースが付いており、かなりの人が通っていることがわかる。
35 郷原方面への登山道 36 数馬方面への登山道
ここから、登ったと思ったらすぐに槙寄山についた。時間は11時50分、標高は1188mである。
37 槙寄山へ 38 槙寄山 その1
山頂は雪が一段と深い。テーブルを見ると40cm位積もっている。
39 槙寄山のテーブル 40 山頂標識
初老の男性が二人いた。挨拶をしてベンチの片隅に座らせてもらう。イスが濡れている。
ここからの眺めは素晴らしい。もう後は降りるだけなので、ここで少しのんびりすることにする。ここから三頭山までは通常でも2時間20分かかり、しかも標高差350mの長い登りである。この先、雪が増えることはあっても減ることはないだろうから、どう考えても私の体力と技術では無理だ。
男性二人組ものんびりとお湯を沸かして、ラーメンやコーヒーを作ってくつろいでいる。
41 槙寄山から富士丹沢方向を望む
天気がよく、南側が開けており、日がさしているためとても暖かい。気温計を見ると10℃もある。いくらなんでもそんなに高ければ雪は溶けてしまう。おそらく直射日光があたって高く出ているのだろうが、ポカポカして気持ちが良いのは確かである。極楽だ。思い切って来てよかった。
正面の富士山を見ながらカレーパンを食べて寛ぐ。アルミ水筒のジュースを飲もうとしたら、シャーベットになっていた。こんな日は、雪目になってはいけないので、先日買ったサングラスをかけた。最近のサングラスはかけていることを忘れるほど軽くてフイット感もあり、なかなかいい。
バスは、14時25分数馬発なので、13時前に下ればよいだろう。自分撮りをしたりしながら時間を潰す。山頂から携帯が通じるか試してみると、圏外だが、場所によってはかろうじてメールは可能であった。
42 雪目対策 43 槙寄山山頂気温
写真44のとおり、曇ってきたので出発する。天気予報では午後から曇りだ。
44 槙寄山の空 45 数馬へ その1
雪の積もった下り道がこれほど楽しいとは知らなかった。白いクッションの道をどんどん降りていく。多少の凹凸は雪が覆い隠してくれる。富士山の砂走りの感覚だ。転んでも痛くなさそうだが、調子にのると危ないので、走ってはいけない。途中で階段が出現して転びそうになる。
46 深い雪 47 数馬へ その2
48 下山路から北方向の山々を望む
49 数馬へ その3 50 石碑
道端に石碑があったが、よく読めない。しかし、傍らに国定忠治が遠見した木と書いてある。石標のある写真52の松の木がその木らしい。
51 木の解説 52 国定忠治が遠見した木
53 数馬へ その4 54 大平分岐
分岐に着いたが、大平方面へのトレースはない。ここは素直に仲ノ平方面に向かう。
55 大平方面 56 冬の谷
一部、地形の関係で雪の少ない所があり、凍っていた。今回はずっと、モンベルのチェーンスパイクという軽アイゼンをつけていたが、気温が低いため雪が溶けず、凍っている場所は少なかったので、必ずしも必要ではなかったかもしれない。しかし、この軽アイゼンは4本爪よりも歩きやすく、ずっとつけていても問題がない。むしろ、すべらないという安心感があってなかなか良いギアである。
57 雪が少ない場所 58 鹿柵
山間の集落が見えた。何故かホッとする。
59 眼下の南沢集落 60 南沢集落 その1
61 薪置き場 62 軽アイゼンを外す
除雪された舗装道路にでたので、軽アイゼンを外す。チェーンスパイクは外すのも簡単なのでこの点も素晴らしい。
それにしても、ここはれっきとした東京都であるが、ここでの冬の生活はどんなものだろうか。
63 冬の茶畑 64 南沢集落 その2
65 観音堂? 66 南秋川
昔から変わらない懐かしい山里の冬の景色がまだまだ残っている集落である。橋をわたって数馬の集落に出る。
67 軒のつらら 68 数馬集落
分校の跡があったので、訪ねてみた。校庭も今はまっ白である。
69 数馬分校記念館 その1 70 数馬分校記念館 その2
71 数馬分校記念館 その3 72 数馬バス停
14時17分、バス停に着いた。
GPSによる今日の歩行経路
GPSによる今日の高度記録
今日は、雪の山を歩いた。低山とはいえ、当分銀世界は残りそうである。積雪のため距離は伸びなかったが、貴重な体験が出来た。また、単調になりやすい都県境の尾根の景色も今日はまた違った趣があったので、旅の記録に変化をつけるという意味でも良かったと思う。普段なかなか体験できない雪遊びを存分にさせてもらった感じである。
厳冬期を迎えて、三頭山までなかなかたどり着けないが、季節を楽しみながら、少しつずつ進んで行こう。都県境は逃げるわけではないのだから。
この体験をきっかけに、雪の低山ハイキングにハマりそうな自分が怖い。それにしても、3000m級の雪山にテントと食糧とピッケルとザイルを持って登る本当の登山家がいかにスゴイものか、改めて実感する。
(本日の歩数:23350歩)
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