海岸線をどこまでも 本州一周 (になるかもしれない旅)  千葉県を踏破中    
◆第12+9日目(2008年9月13日)  大貫駅 〜 金谷港


 夏は終わったはずだが、まだ暑い。基本的に筆者は数日前から天気予報をチェックし、天気が保証されないと出かけない。(そういう意味では、前回は例外である。)
 今日は天気がよい9月中旬なので、気温も30℃近くまで上がり、結果として「暑い」ということになる。が、もちろん、盛夏と違って、歩いていて倒れそうになるほどではない。

       本日の気象衛星写真 (日本気象協会 tenki.jp)
   

 今日の大貫駅までのルートは迷ったが、結局、前回同様、時間的に速いルート、つまり、横浜駅から高速バスに乗り、木更津駅で内房線下りに乗る。1時間に1本という内房線のダイヤを考えてバスの時間を選んだので、乗り換えはスムースだ。3連休の初日ということもあり、実家に帰る子供とお母さんという組み合わせが目立つ。
 改札を出るときに、ひとつ小さな失敗をしていた事に気づく。うっかり木更津駅でスイカで入ってしまったのだ。大貫駅には、なんとスイカの簡易改札機がない。幸い、駅員さんがいて、後で精算しろということで、証明書をくれた。
 民間になってずいぶん経つが、JR駅員は相変わらずぶっきらぼうである。デパート並とはいわないが、もう少しサービス業で使う敬語を練習する必要があるかもしれない。

 1 大貫駅ホーム                 2 大貫駅駅舎
   



 駅からのんびりした道を歩き、海岸をめざす。

 3 岩瀬付近                   4 レストラン
   

 何となく土地がゆったりしているが、写真5の碑を読むと、昔、国から払い下げを受けた原野を開拓したとのこと、海岸は、東京湾とは思えない雰囲気である。

 5 岩瀬共有財産整理組合の碑            6 岩瀬海岸のおばあさん
   

 7 岩瀬海岸から富津岬方面を望む          8 岩瀬海岸から磯根崎方面を望む
   

 砂浜には、小学生がたくさんいた。ビーチバレーだろうか。もしそうなら、ネットくらい立ててあげればと思う。

 9 球技大会?ビーチバレー?           10 大貫漁港近くの神社鳥居
   

 事前の地図上の検討によると、鉄道や道路はここで内陸部を南下する。海岸に山が迫っているかららしい。そして、地形図をよく見ると、山の中を海岸線沿いに走る点線が目に付いてしまった。なにやら冒険心をそそられる道である。しかも、この道を行けば、この先のビーチへ抜けられそうである。これは行くしかないだろう。ただ、道が実線ではなく、点線であることと、山の斜面の等高線が密であるのが気に掛かる。



 この道のアプローチは港の先から始まるが、上の地形図の11〜13の地点をもう一度見てほしい。怪しげなループが見て取れる。写真11では、まさにこの謎のループの入り口に立っている。

 11 謎のコンクリート高架橋           12 佐貫町駅方面へ向かう山道 その1
   

 実際の道は写真12のように、かなり幅が広く、整地され、左カーブのループになっている。舗装すれば、そのまま車道として使えそうである。明らかに大規模な土木工事がなされている。写真13は、ちょうど写真11の立体交差の上の部分にあたる。ここもまだ、整地されている。
 やがて、季節のせいもあるだろうが、藪が濃くなり、歩くのに苦労するようになる。しかし、踏み跡は確かである。
 この不思議な道は、おそらく、車道として途中まで工事されたものの、何らかの理由で、計画が中止になったものだろう。あるいは、中断しているだけかもしれないが。
 どなたかこの謎の道の正体を知っていたら教えていただきたい。

 13 佐貫町駅方面へ向かう山道 その2      14 佐貫町駅方面へ向かう山道 その3
   

 やがて、人々の記憶から忘れ去られたような不気味な鳥居を過ぎると、整地も怪しくなってきた。すでに登山道の様相を呈している。

 15 浅間神社鳥居                 16 佐貫町駅方面へ向かう山道 その4
   

 暑いので、半ズボンで来てしまったことをここで後悔した。後で、脛をみると真っ赤に腫れ上がっていた。が、この時は、道なき道を行くのに夢中である。あまりの道の酷さに、後悔が頭をかすめる。
 もう一つ悩まされたのが、おびただしいクモの巣である。顔や頭にまとわりついて、どうしようもない。しかも、写真17のとおり、ここのクモはそろいもそろって黒と黄色縞の立派なクモで、したがってクモの巣も、トンボ程度なら簡単に捕まってしまいそうな強力なやつである。こんなものが数メートルおきにあるのだからたまらない。
 落ちていた木の枝を拾い、足でへし折って、杖を作り、剣道のように振り回して進む。からみつくクモの巣を振り払いながら行く、なかなかハードなサバイバルだ。

 17 大きなクモ                 18 佐貫町駅方面へ向かう山道 その5
   

 写真18の地点で、やっと池のある開けた場所に出る。ここで、細いが車の通れそうな道と合流したので、地図で現在地点を知るが、道が酷すぎて、時間の割にはあまり進んでいないことを知る。まだ、先は長い。



 19 山中の池                  20 佐貫町駅方面へ向かう山道 その6
   

 幸い、写真20のように、藪はなくなり、比較的歩きやすい道になったので、ホッとした。

 21 山を見上げる                 22 海岸から直接切り立った山
   

 道がついていたので安心して進むと、写真22のように海が見える広場のようなところに出た。東京湾沿いの海岸とは思えない、まるで北海道の岬のようなダイナミックな風景である。広場から続く道は海岸の方に続いているが、それは恐ろしい結末を迎えることになった。その道の先は、写真23のとおりである。
 命知らずの若者ならばこの道から崖を降りられるのかもしれないが、おそるおそるのぞき込んでも、道はない。その下は砂浜と海だ。この道はカモシカでないと無理だ。少なくとも、中年男が一人で行くのは100万円もらってもいやだ。1000万なら、少し考えてみてもいいが....
 どちらにしても、この企画に100万円はおろか、100円でも出してくれるスポンサーはいないので、引き返す。しかし、目指す方向には写真24のような厳しい地形があるだけで、ついに道は発見できなかった。

 23 断崖をのぞき込む              24 断崖の向こうに見える新舞子海岸方面
   

 落胆して、写真19の地点まで引き返し、国道に出ることを覚悟する。地形図では、ちゃんと点線が続いているのだが、時期的に藪が深く、歩く人もほとんどいないのだろう。
 下の航空写真のとおり、空から見てみると広場と断崖はこんな感じである。上から見ると現地の険しさはあまりわからない。航空写真をみると、なんとか浜まで降りられれば、ビーチ沿いに歩けそうな気もする。
 このように航空写真が簡単に見られるのも、インターネットのおかげだが、検索したら、なんと動画まで発見してしまった。リスペクトをこめてリンクをはらせていただく。 動画
 この空中からの様子を見ても、この断崖を普通に降りることは、できそうにないことがわかる。



 崖に阻まれ、仕方なく引き返し始めたが、21と22の地点の間に、草に隠れた細い踏み跡を発見し、チャレンジしてみる。すると、この道は、地形図の91mのピークらしき地点を通る、明らかな登山道というか、ハイキングコースというか、要するに写真25のようなまともな道になっていた。ラッキーである。あきらめないことが肝心だ。航空写真だと、道がよく確認できる。
 山道はきついが、道なりに調子よく進んでいくと、左前方に巨大な異物が見えた。写真26の東京湾観音である。

 25 佐貫町駅方面へ向かう山道 その7      26 山道から見える東京湾観音の背面
   

 このあたりでもし道に迷っても、これだけ目立つランドマークがあれば助かるだろう。山間からは、東京湾も見えて、サバイバルに半ば勝利したことを自覚した。

 27 山道から見える東京湾            28 佐貫町駅方面へ向かう山道 その8
   

 道は、東京湾観音の南側を通って新舞子海岸方面に抜けられるはずなので、進んでいくが、途中から登りが続くようになる。おかしいと思いながらも、ほかに道がないので写真30のようなところを登っていく。

 29 山道から見える東京湾観音          30 急斜面を登る
   

 すると、突然写真31の広場に出た。なんと、ここは東京湾観音まえの駐車場兼芝生広場であった。誤算である。しかし、せっかく登ったので、予定外だが、観音様を見ることにする。

 31 山道から出てきた広場            32 東京湾観音正面
   

 昭和30年代に作られた、巨大なコンクリートの観音様である。誰にも会わない山道を歩いてきたので、俗世間の光景に少しホッとする。観音様の後ろの展望台から見る景色は、写真34のとおりの絶景だ。

 33 観音台座部分                34 観音横の展望台から見る富津岬方面
   

 ここからは車道を下り、途中から右に折れて山道に復帰しようとしたが、山は緑に覆われてもう道は発見できなかった。途中に断層の露頭を見つけた。房総半島も長い間にもみくちゃになっていることがよくわかる。
 そうこうしているうちに、予定外だが、佐貫町駅に着く。暑さと疲労で、しばらく駅の待合室で休憩した。

 35 断層断面                 36 佐貫町駅
   



 37 佐貫町駅構内                  38 大坪付近の農地
   

 田舎駅の哀愁漂う佐貫町をあとに県道を海岸方面へ歩く。広々とした農村地帯だ。

 39 道端の稲荷                40 川向橋から見る染川
   

 ちょうど神社のお祭りにぶつかる。裃を着た武士のような人たちがいるが、若者の姿はなく少し寂しい。老人ホームの前を右折すると、ついに新舞子海岸へ着いた。いかにも海辺の民宿兼海の家といった建物があった。

 41 鶴峰八幡神社               42 新舞子海岸の民宿兼海の家
   

 海岸から観音様が見える。数時間前に、あの山の中で悪戦苦闘したことを思い出す。あの断崖から見えたビーチに、今やっと立っているのだ。
 ところで、衝撃的な光景の下の写真44を見てほしい。この海岸は政府公認のヌーディストビーチではないが、なぜか、全裸の若い女性がいる。不思議である。ここは、ニューギニアの海岸でも、モナコのプライベートビーチでもない。法治国家日本国内である。このような風紀を乱す行為には、千葉県警が黙っていないはずだが、この女性はなぜか平然とビーチでくつろいでいる。いい度胸だ。
 ( ...と冗談で書いていたら、磯根崎を本当にハダカで楽しむ人がいるらしい。確かに、陸路で行きにくいので格好の場所かもしれないが、とにかく世の中にはいろいろな人がいるものである。) 

 43 新舞子海岸から磯根崎方面を望む       44 新舞子海岸でくつろぐ全裸の若い女性
   

 美しい海岸を後にして、県道に戻る。ビーチ沿いに進んでも良いのだが、明確な道がないのでこここは素直に車道を歩く。

 45 おしゃれな道標               46 立派な和風の家
   

 このあたりは、リゾート地帯らしく、明るい家が点在していて、湘南海岸を素朴にしたような雰囲気である。

 47 洋風の家                 48 リゾート施設?
   

 49 企業の保養所               50 公民館?
   



 公民館の建物や赤いポストが、なかなか良い味を出している。


 51 懐かしいポスト               52 マムシ?の赤ちゃん
   

 53 湊地区の水田               54 上総湊駅前バスターミナル?
   



 上総湊駅に着く。この駅舎は外観も中の作りも、屋根の瓦までもが佐貫町駅とそっくりであった。バスターミナル?や駅前通りは、素朴な中にも歴史を感じさせる雰囲気である。

 55 上総湊駅                  56 駅前通り
   

 ここは、湊川の河口であり、漁港もある。砂浜は広いが、果たして新舞子海岸からビーチを歩いてここまでこられるのだろうか。地形図を見ると微妙であるが航空写真だとビーチが続いているようにも見える。

 57 国道沿いの豪邸               58 上総湊海浜公園(海水浴場)から北を望む
   

 59 上総湊海水浴場から南を望む         60 漁港から湊川を渡る内房線鉄橋を望む
   

 湊川を渡る内房線の鉄橋が、まるで鉄道模型のストラクチャーのようだ。

 61 漁港防波堤から北方面を望む         62 湊橋から河口と鉄橋を望む
   

 湊橋を渡ると富津警察署があった。富津岬のあたりにあるものと思っていたので意外であった。というよりも、これだけ歩いてもまだ富津市内だったのかということが驚きだが、地図を確認すると確かにそうである。むしろこのあたりが、地理的には真ん中である。富津市の広さには驚くべきものがある。

 63 湊橋から湊川上流を望む           64 富津警察署
   

 65 海良地区の農村風景             66 内房線普通列車
   

 67 内房なぎさライン十宮地区海岸        68 十宮地区から磯根崎を振り返る
   

 このあたりは、国道127号線沿いに美しい海岸線が続く。内房渚ラインというらしい。漁船が放置されているあたりが、千葉県らしい。

 69 海岸に建つ新しい住宅            70 船を守るヒーロー?
   

 海岸線の今来た方向を振り返ると、よくぞここまで来たものだと我ながら感傷的になってしまう景色だ。

 71 国道沿いの漁船               72 新舞子海岸方面を望む
   

 73 海鳥の楽園                 74 竹岡保育園の大きな木
   



 写真75のとおり、古い釣り道具屋さんがあった。今まで見た釣り道具屋の中では間違いなく一番古い。
このあたりは、海岸や川、田園風景と変化に富んだ街道沿いになっている。

 75 つり道具屋                 76 千歳橋から白狐川下流を望む
   

 77 燃える田圃                 78 城山親子トンネル
   

 田舎の国道だが、トンネルも含めてちゃんと歩道が付いているのがありがたい。

 79 大浜地区の海岸               80 国道127号線
   

 81 レンタルショップではない蔦家(ツタヤ)   82 荻生海岸と荻生漁港
   

 興味深い海岸風景が続く。それにしても写真84の家は理解できない。どちらが先に作られたのか。

 83 海岸に群れる海鳥              84 国道のフェンスになぜか食い込んでいる軒先
   

 85 竹岡駅入り口の廃屋             86 荻生漁港
   

 ヒカリモ発生地はちょっとした観光地になっており、地図にも載っている。しかし、光っているのはどれなのかはわからなかった。地元の人たちは黄金井戸と呼んでおり、バス停の名前にもなっている。

 87 ヒカリモ発生地 全景            88 説明文
   

 89 発生地の湧水(黄金井戸)          90 洞の内部
   

 91 豪華な名前のバス停             92 海に突きだした空き家
   

 94のトンネルらしき穴は理解できない。穴から中途半端な階段が付いているが、どう考えてもあそこまで登れそうにないのだ。

 93 岩場と砂浜                 94 打越トンネル手前の不思議な穴
   



 ジッポーだけを売っている店は初めて見た。商売になるのだろうかと余計な心配をするが、建物はきれいである。

 95 駐車場から見る東京湾            96 ZIPPOショップ
   

 なぜか豪邸が続く。千葉県版の葉山といったところか。

 97 海岸に並ぶ豪邸?高級別荘?その1      98 その2
   

 99 海辺の湯、かなや              100 路傍の花
   

 ついに金谷という地名が出現し、フェリーも発見。ゴールは近いと言い聞かせながら、疲れた足を引きずって歩く。途中で、緊急の仕事の電話が入るが、若い人が何とかうまく処理をしてくれたようだ。携帯電話のおかげで、仕事はどこにいても追いかけてくるようになってしまった。便利だが、疲れる。

 101 金谷海岸の向こうに見えるフェリー     102 金谷海岸から見る夕日
   



 トンネルの脇道を越えると、フェリーターミナルに着いた。

 103 大日トンネル横の小径 その1       104 その2
   

 なんとか、房総のジャングルから無事生還を果たした充実感を胸に、フェリーの一番前の席で缶ビールを開ける。至福の時だ。

 105 フェリー客席
     

   

 前回の予告通り、フェリーの料金は100円値上げされていた。
 それにしても、富津市は広い。結局今日は最後まで富津市を出ることはできなかった。
 今日のコースはハードであったが、房総半島の厳しい地形とむき出しの自然、そして美しい景色を十分堪能することができた。磯根崎以南の山道は、決して一般のハイキングにはおすすめできないが、物好きな人、サバイバル指向の人は歩いてみるとおもしろいかもしれない。

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