大岳山(おおたけさん) 標高1267m 登山開始地点標高820m

        自分の足で登らない山シリーズ第17弾 ケーブルカーで御岳山から登る奥多摩三山の一つ
 
◆ 2013年10月27日             

  大岳山、御前山、三頭山を奥多摩三山と呼ぶらしい。三頭山は、雪がある時期に登った。たしか、そこから東方向に見えた山が大岳山だろうと記憶している。

 三頭山から大岳山を望む (2012年2月4日撮影、左の方にあるラクダのコブのような山)


 さて、都民の裏庭、奥多摩で、乗り物で登れる山は、御岳山である。高尾山にもケーブルカーがあるが、なぜかあそこは奥多摩ではないらしい。その御岳山を調べてみたが、さすがにそこだけでは、一日が潰せない。残り時間のほうが少なくなった人生で、天気の良い秋の休日をムダにするわけにはいかないので、その先の大岳山まで登ってみよう。標高差は440mなので、結構楽ができそうである。



 奥多摩は、神奈川県南部からだと交通の便はあまり良くない。距離的には遠回りだが、湘南新宿ラインに乗り、新宿で7時44分発のホリデー快速奥多摩1号に乗り換えて御嶽駅へ向かう。時間的にはこれが一番早い。休日の観光列車の割には、車両は通勤電車そのものであるのがイマイチではある。

  

 この日は、26日に接近した台風が過ぎ去って秋の青空が広がっていた。考えることは皆同じである。というわけで、
御嶽駅のホームは写真1のように山手線の通勤時間帯並に混んでいた。はっきり言って予想を上回る人の多さだ。
 山手線との違いは、乗客の服装と持ち物である。日本人も、普段こんなカラフルな格好で通勤したら楽しいのではないか。災害時も、雪の日も安心である。ザックの中には水も食料も防寒着も入っているので、帰宅困難になっても大丈夫である。登山靴であれば、地震で道にガラスの破片が落ちていても大丈夫だ。都会のサバイバルにこれほど適したものもないだろう。もし日本人全員ががこんな格好で通勤するようになれば、アウトドアメーカーは大儲けである。しかし、ブランド物のスーツやカバン、時計や靴が売れなくなると困る。だいたい、仕事と遊びのけじめはどうする、天気の良い日は仕事が嫌になってみんな山に行ってしまったらどうなる、など日本経済に与える影響が大きすぎるので、この提案は却下である。
 とにかく、こんなにたくさんの登山者を駅のホームで一度に見たのは初めての経験であった。

  1 御嶽駅ホーム                   2 御嶽駅前
   

 駅を出てトイレに行こうと思ったが、長蛇の列なので諦めて、バス停に向かう。
 



 停まっていたバスが発車するが、まだバス停は長蛇の列である。ケーブルカーの上まで一体どれだけの時間がかかるのか、不安になるが、おとなしく並ぶ以外に方法はなさそうだ。幸い、程なくして次のバスが来た。ピストンで複数のバスがフル稼働しているらしい。

  3 御嶽駅前バス停                  4 ケーブルカー滝本駅
   

 ケーブルの下の駅、滝本でも列に並ぶ。階段でリュックを下ろしたら、後ろの女性にぶつかったらしく、連れのピアスをした若者に怒鳴られてしまった。女性に謝ってしばらくするとやっと列が動き出す。なんとSUICAが使えるのは素晴らしい。わざわざチケットを買わなくてすんだ。ETCと同様、混雑緩和には効果があるだろう。
 この御岳山のケーブルカーは、正式名を御岳登山鉄道という。京王グループだ。なんと開業は昭和9年。古い!!。もちろん、当初の目的は登山のためではなく、参拝客のためだろう。

  5 ケーブルカー御岳山駅               6 ケーブルカー
   



  7 御岳山駅                     8 御岳平
   

 9時36分、御岳山駅についた。駅前は、御岳平という展望台になっている。ここの標高は、820m、滝本駅は400mなので、420mの標高を稼いだ。麓にあれほどいたたくさんの登山客はどこへ行ったのかわからないが、山頂の駅はそれほどの大混雑ではない。

 9 御岳平から都下を望む


  10 御岳山へ その1                11 御岳山?
   

  12 御岳ビジターセンター              13 宿坊丸山荘
   

 ケーブルカーの駅から、御岳山までは、登山道というよりも山の上の集落の生活道路といった感じである。大山のように麓に宿坊があるのは普通であるが、天上にあるのは珍しい。ケーブルカーが戦前に開通したのもわかるような気がする。

  14 半茅葺屋根                   15 御岳山へ その2
   



 高い山の上にこうした集落があり、そのほとんどが宿泊施設らしい。これだけの建物があるということは、ケーブルカーだけでなく、車道も通じているはずである。調べてみるとたしかに通じてはいるが、軽自動車しか入れないものすごく危険な道らしい。ここに詳しく書いてあるので、興味のある方は読んでいただきたい。

  16 御岳山診療所                  17 御岳山荘看板
   

 何と、診療所があった。診療受付時間は、火曜、金曜の14時25分〜3時までで、急患は間に合いそうにない。お年寄りが、定期的に血圧を測ったり、持病をみてもらう程度だろう。

  18 昭和の建物                   19 神代ケヤキ解説板
  

 車道としては細い道を登って行くと大きなケヤキがある。

 20 神代ケヤキ




 ケヤキを過ぎると、いよいよこの御岳山のシンボル、というよりも御岳山そのものと言って良いだろう、武蔵御嶽神社が見えてくる。なんでもここには、国宝が2点、平安後期の鎧と鎌倉時代の馬具があるらしい。関東有数の歴史がある神社なのである。

  21 御岳山へ その3                22 御岳山へ その4
   

 その歴史ある神社も今はハイキングをする若者のグループで賑わっている。高尾山と並んで、都心に近い山ガール入門コースという感じだ。

  23 御岳山へ その5                24 御岳山へ その6
   

  25 御岳山の紅葉                  26 御岳山山頂
   

 周囲には高い場所はなく、神社そのものが山頂らしい。人で賑わう本殿の横をさらに登って行くと、一番高いところに小さな神社があり、その横に929mと書かれた柱が立っていた。10時10分、御岳山山頂である。山頂というよりも神社そのものであり、御岳山登山というよりは、ケーブルカーを使った神社の参拝といったほうが正しいだろう。



  27 山頂神社の解説板                28 大岳山へ その1
  

 参道を降りる途中に、写真28の大岳山への分岐がある。



 ここから舗装がなくなりやっと登山道らしくなるが、まだ道幅も広い。

  29 大岳山へ その2                30 長尾平分岐
   

  31 素朴な売店                   32 ロックガーデン分岐
   

 天狗の腰掛杉では、外国人のお父さんが奮闘していた。

  33 天狗の腰掛け杉                 34 大岳山へ その3
   

 台風の影響で水が多く、登山道まで溢れだしていた。

  35 湧水の多い道                  36 大岳山へ その4
   



  37 湧水                      38 大岳山へ その5
   

  39 大岳山へ その6                40 大岳山へ その7
   

 川を渡るとやっと本格的な登りになる。登り切ったところが、芥場峠(あくばとうげ)である。休憩する。標高は1067m。

  41 芥場峠                     42 大岳山へ その8
   



  43 大岳山へ その9                44  大岳山へ その10
   

 峠から少し歩くと、滑落注意の看板が出てきて、道が険しくなる。

  45 大岳山へ その11               46 大岳山へ その12
   

 台風の影響で岩が濡れているのがちょっと怖い。

  47 大岳山へ その13               48 大岳山へ その14
   

  49 大岳山へ その15               50 大岳山へ その16
   

  51 大岳山へ その17               52 大岳山荘 その1
   

 岩場を通り抜けると、広場と鳥居があり左手に廃屋があった。大岳山荘である。標高は1150mだ。



 山荘は今にも潰れそうだが、裏手に立派な建物があった。ここまで道路が通じているのだろうか。ここにはトイレもあった。

  53 大岳山荘 その2                54 大岳山荘の裏の建物
   

  55 大岳山へ その18               56 大岳山へ その19
   

 鳥居をくぐり、大岳神社を過ぎて、登っていく。標高にしてあと100mちょっと。頂上も近そうだ。

  57 大岳山へ その20               58 大岳山へ その21
   

 再び岩場である。しかも、岩の上からおばちゃんが睨んでいる。ストックをしまって、萎縮しながら手を使って登っていく。こういう場所でいちいち写真を撮るのは、実はものすごく面倒なのである。登ることに集中できれば楽なのだが。しかも、人が多いので、岩場で停滞するわけにもいかない。

  59 大岳山へ その22               60 大岳山へ その23
   



 そんなこんなで岩場を抜けると、紅葉の向こうにたくさんの人が見えた。

  61 大岳山頂直下                  62 大岳山山頂 その1
   

 12時4分、標高1267mの大岳山の頂上に着いた。とにかく人が多くて賑やかだが、空いている岩になんとか腰を下ろす。



  63 大岳山山頂 その2               64 大岳山山頂 その3
   

 快晴の空に、南から西にかけての展望が素晴らしい。かつて歩いた神奈川県境や東京都境の尾根や山々が遠望できて懐かしさがこみ上げてきた。

 65 大岳山山頂から南方向の浅間尾根、笹尾根、大山、蛭ヶ岳、檜洞丸、大室山、甲相国境尾根を望む


 66 大岳山山頂から南西方向の浅間尾根、笹尾根、御正体山、富士山、三ツ峠山を望む


 67 大岳山山頂から西方向の三頭山、大菩薩嶺、御前山、奥秩父、飛龍山を望む


 あちこちでガスを燃やして料理が始まるが、それを羨ましそうに横目で見ながら、出発の準備だ。時刻は12時24分で、山頂にはわずか20分しかいなかったが、この先のほうが距離が長いので、早めに出発しよう。

  68 大岳山山頂 その4               69 大岳山山頂 その5
   

  70 大岳山山頂 その6               71 鋸山へ その1
   

 今日の予定は、鋸山を経て奥多摩駅に直接出ようというルートだ。疲れたら南側の檜原村に出ようと思っていたが、体力的には余裕である。予定どおり鋸山を目指すことにする。しかし、鋸という名前はなんとなく嫌だ。恐ろしい地形でなければよいが。



 山頂直下は急で鎖もついていた。

  72 鋸山へ その2                 73 馬頭刈尾根分岐
   

 写真73が檜原村へのエスケープルートの最後の分岐点である。もちろん直進して鋸山に向かおう。

  74 鋸山へ その3                 75 鋸山へ その4
   

  76 キノコ                     77 鋸山へ その5
   

 比較的なだらかな尾根道が続く。笹が多くて歩きやすい。大岳山から先は、人が少なくなった。静かである。

  78 鋸山へ その6                 79 鋸山へ その7
   



 尾根の左前方に高い山が見える。鋸山まであんなに登るのかと思ったら、御前山だった。

  80 鋸山へ その8                  81 御前山方面分岐
   

  82 鋸山へ その9                 83 鋸山へ その10
   

 岩場を少し登ると鋸山である。

  84 鋸山へ その11                85 鋸山山頂 その1
   

 13時40分、鋸山に到着した。大岳山から1時間16分かかったことになる。おじさんがひとりいたので挨拶した。そのおじさんは、山頂になぜ丸い石があるのかという。川でなければ、丸くなるはずはないと。ごもっともであるが、ベンチや標識を建てた時に一緒に運んだんじゃないですか、とテキトーな事を言う。
 まあ、根拠はないが、どうみても今座っているガッチリとコンクリートで固められた鉄製のベンチや標識の資材を担ぎあげるのは無理である。山頂の表土が流れてベンチが浮いてしまうのを防止するために、ヘリで運んだものだろう。

  86 鋸山山頂 その2                87 鋸山山頂 その3
   





  88 御前山方面分岐                 89 鋸尾根 その1
   

  90 鋸尾根 その2                 91 鋸尾根 その3
   

 写真91の標識では奥多摩駅まで5kmと書いてある。状況によるが山道の5kmは意外と遠い。しかも、不安なのは、これから通る鋸尾根は、登山用地図上で、危険マークがついているのである。

  92 1046.7mピーク三角点              93 鋸尾根 その4
   



  94 鋸尾根 その5                 95 鋸尾根 その6
   

 ついに来た。鋸尾根がそのノコギリの恐ろしい本性を現したのである。

  96 鋸尾根 その7                 97 鋸尾根 その8
   

  98 鋸尾根 その9                 99 鋸尾根 その10
   



  100 鋸尾根 その11               101 鋸尾根 その12
   

 しばらく平坦だと思ったら、再び鉄梯子の連続である。水で濡れて滑るので通過に時間がかかる。

  102 鋸尾根 その13               103 鋸尾根 その14
   

  104 鋸尾根 その15               105 鋸尾根 その16
   

  106 鋸尾根 その17               107 鋸尾根 その18
   

 岩場である。写真には写っていないが、実はここは、ヤセ尾根で左右に垂直の壁があり、そっちのほうが恐ろしい。心細い状況ではあるが、前方におばさんがいると気が休まる。申し訳ないが、オバちゃんでも登れるんだ、と思うと気が楽になる。人間は孤独だと明らかに不安が大きくなるのである。
 登り切ったヤセ尾根の上には、石仏が並んでいた。さっきのオバちゃんが休んでいたので「結構険しいですね」と声をかけてみる。オバちゃんは体力的にも精神的にもかなり参っているようで、座り込んだまま「危ないわね」と言うのがやっとである。この狭い絶壁の上で休憩する気にはなれなかったので、写真を撮ったらそのまま降りて行く。

  108 天狗石仏                   109 鋸尾根から西を望む
   



  110 鋸尾根 その19               111 鋸尾根 その20
   

 標高700mよりも下になるとやっとヤセ尾根から写真111のような安全な尾根道に変わって、気楽に歩ける様になった。

  112 鉄塔と携帯基地                113 ようやく見えた集落
   

 鉄塔や携帯のアンテナが見えると人里が近いことがわかる。



 15時32分、登計峠に着いた。もう人里である。愛宕山を越えると近道らしいので、そのまま直進して神社の中へ入っていく。

  114 登計峠                    115 愛宕神社 その1
   

 116 愛宕神社記念碑


  117 愛宕神社 その2               118 愛宕神社 その3
   

  119 愛宕神社下の平和の鐘             120 五重の塔
   

 神社から下に降りる途中の階段が結構恐ろしい。階段の幅が狭くて急なので、思わず手すりに捉まってしまった。

  121 愛宕神社参道階段               122 鋸尾根登山口
   

 123 愛宕山周辺案内図


 124 愛宕山公園案内図


 登山口に着くと、後ろから追いつかれた若者グループが、温泉はどっちだといってもえぎの湯の方向に元気よく歩いて行った。オジサンは反対側に向かって多摩川を渡る。



  125 多摩川を渡る                 126 奥多摩駅
   

 16時5分、標高350mの奥多摩駅に到着した。駅の周りでビールを売っている売店かコンビニを探すが、見つからない。お預けである。16時27分発のホリデー快速奥多摩2号があったので、新宿まで一直線である。帰りも行きと同じルートだ。なんとこの快速電車は東京駅まで行くらしい。

 GPSによる本日の歩行経路


 GPSによる今日の高度記録


 雑誌などで高尾山とともに都内の初心者向けのコースとして取り上げられる有名な御岳山のケーブルカーに初めて乗ることができた。御岳山は登山ではなく、参拝である。ケーブルカーを使えば、標高差も少ない大岳山は手頃な山だ。とくに丹沢から富士山、奥秩父まで見渡せる山頂からの眺望は特筆に値する。人が多いと、なんとなく安心で、気楽に歩けるのもいい。しかし、奥多摩駅に行く途中の鋸尾根は、ちょっと緊張する場所だった。
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 後日談
 これを書いている11月4日、足にはギプスがハマっている。2日にテニスをやっていて、ケガをしてしまった。年を考えずに暴れてはいけないのである。全治1ヶ月くらいかかりそうなので、当分放浪の旅に出られないかと思うと残念だが、しっかり治して復活の日を待つことにしよう。