海岸線をどこまでも西へ   海岸線を徒歩で忠実にたどり、そこに何があるかを見届けたい
◆第1日目(2013年1月2日) 千歳橋(神奈川/静岡県境) 〜 網代駅     

 北へ向かって、福島県までたどり着いた「海岸線をどこまでも」であるが、諸事情により北上を一時断念し、西へ転進することになった。
 2013年の最初から2番めの日、その記念すべき第一歩を踏み出す時が来た。神奈川県の海岸線は「神奈川県一周」で歩いているので、今日は、神奈川/静岡県境からの出発である。湯河原駅に降り立ち、快晴の空を仰ぎながら千歳橋へ向かった。

 1 湯河原駅                      2 千歳橋 
   

     



 この千歳川が県境である。これから、まず伊豆半島を一周することになる。首都圏から近い、代表的リゾート地である。楽しみだ。
 橋を渡ると静岡県の標識とともに左に分岐する道路があった。熱海ビーチラインである。この道が最も忠実に海岸線をたどっているが、残念ながら自動車専用道路なので、一般道の国道135号線を南下していくことになる。

  3 神奈川/静岡県境                 4 国道135号線
   

 伊豆半島は、観光地なので、交通網が発達している。特に、東側海岸、いわゆる東伊豆は、地形が複雑、山がちで断崖絶壁も多いにもかかわらず、国道135号線の他にいくつかの有料道路、そしてなんといっても下田まで、海岸線にそって伊豆急行が通じているのが心強い。
 しかし、心配な点もある。伊豆半島は急峻な地形のため、一般道路が断崖の中腹を通ることが多い。そのため、古い国道の拡幅が難しく、歩道が無いところが多い印象があるのだ。伊豆は交通量が多く、危険性は高い。特にトンネルは鬼門である。しかし、その心配は静岡県に入ってすぐの区間では杞憂だった。写真4のとおり、狭いながらもちゃんと歩道がついている。

 5 真鶴半島を振り返る

 ビーチラインはその名のとおり、海岸線ギリギリを走っている。

  6 熱海ビーチライン料金所              7 山側の道に入る
   

 しかし、国道をただ歩くだけでは面白く無いので、写真7でその上の生活道路に入ってみた。

  8 伊豆山へ その1                 9 路傍の柑橘類
   



 道は、みかん畑の中を山腹を縫うように続いている。旧道だろうか。眺めが良い。

  10 みかん山から相模湾を望む            11 鳥に食べられたミカン

   

 美味しそうなミカンが無防備になるこのあたりは、イノシシや鳥たちにとっては天国なのだろう。

  12 野生動物捕獲用檻                13 真鶴半島を望む
   

 地図では道は続いているが、写真14の廃屋でなぜか道が途切れてしまった。しかたがないので、国道に降りて行く。

  14 行き止まりの廃屋                15 大黒崎バス停
   



  16 伊豆山へ その2                17 落石防止工事箇所
   

 のんびりとした幾つかの集落やバス停を越えて歩く。

  18 竹林と海                    19 洗濯物干し場
   

  20 泉集落                     21 稲村バス停
   


 傾斜が緩んできた。             

  22 彫刻のある空き家                23 身代わり不動尊
   

 写真22は、閉鎖された美術館だろうか。美術品がおかれたままになっており、少し不気味である。

  24 伊豆山神社参道                 25 伊豆山交番
   

 伊豆山神社の入り口に着いた。この神社は非常に歴史があり格式の高い神社らしく、特に源頼朝との縁が深いらしい。
 時は平安時代末期の平家の世、伊豆に流された頼朝は、伊東を本拠地とする伊東祐親(すけちか)という豪族の監視下にあったが、祐親が京都に行っている間に、なんとその娘、八重姫とデキてしまい、子供まで生まれる。激怒した祐親は、その子を殺し、頼朝も追われるが、その頼朝が逃げ込んで九死に一生を得たのがこの伊豆山神社である。その後、頼朝は韮山の北条時政を頼り、今度はその娘の政子とデキてしまうが、そのデートの場所もこの伊豆山神社だったらしい。二人は結婚し、やがて鎌倉幕府の成立へとつながっていく。
 つまり、頼朝さんは、究極の遊び人、伊豆のビーチボーイだったのであるが、そのナンパの舞台でもあったということになる。それにしても当時は火遊びも命がけである。たいへんな時代だ。
 しかし、残念ながら時間の関係で今日は神社には寄らずに先を急ぐ。



 地元の有志が作った庭園を過ぎるとちょっとした温泉街になる。側溝からは湯気があがっている。

  26 寅吉ガーデン                  27 伊豆山集落
   

 やがて熱海駅へ向かう道と、海岸へ降りる道がわかれるY字路にでた。

  28 熱海へ                     29 足川交差点
   

  30 国道から見た熱海海岸              
31 KKRホテル熱海
   



 海を見下ろす大きな旅館や病院が立ち並ぶ斜面を降りていく。一部は廃墟のままだ。

  32 春日町交差点                  33 海岸を望む廃墟
   

  34 熱海市街 その1                35 熱海ビーチライン合流地点
   

  36 熱海海岸 その1                37 熱海市街 その2
   

 国道を歩道橋で越えると、華やかな熱海海岸である。

  38 熱海海岸 その2                39 熱海海岸 その3
   

 40 熱海市街 その3

 豪華なホテルやリゾートマンションが立ち並ぶ、これぞ熱海という光景である。ちなみに、新婚旅行の定番といえば、昭和30年代は熱海であった。昭和40年代は宮崎、50年代はハワイ、平成になってからはオーストラリアという感じだろうか。日本人がだんだん豊かになっていく象徴である。



 海は意外なほどエメラルドグリーンで透明感がある。

 41 熱海海岸 その4

  42 ジョナサン
     

 時間は早いが、海岸のファミレスで昼食にする。
 寄るのを忘れていたが、熱海といえば、お宮の松である。テーブルに来たアルバイトの女性に場所をきくと、よくわからないという返事だったが、レジで男性にきいたらさすがに知っていた。それは国道を北に少し戻った場所にあった。

  43 貫一お宮像                   44 お宮の松
   

 45 お宮の松解説板


 46 金色夜叉解説板


 金色夜叉といえば、熱海の名前を全国的に轟かせ、後に人気観光地としての発展の要因となった小説であるが、なにせ、明治時代である。もちろん、筆者も読んだことはない。
 ただ、男性が女性を足蹴にするというのは、現代の感覚では違和感がある。明らかに行き過ぎた暴力、いわゆるデートDVであり、今だったら完全にNGだろう。そのうち、フェミニストの団体が像を撤去しろとクレームをつけてくるかもしれない。



 47 熱海海岸 その5


 砂浜を過ぎると、ヨットハーバーである。

  48 初川                      49 熱海港ヨットハーバー
   



 ヨットハーバーの先、後楽園の手前が熱海港で、伊豆大島航路が開設されている。

  50 熱海港                     51 錦ヶ浦へ
   

  52 魚見崎から熱海港を望む             53 錦ヶ浦への分岐点
   

 国道135号線は、海から再び高度を上げてこの魚見崎をトンネルでショートカットしているが、ここは写真53を左に入って、岬を回ろう。薄暗いトンネルは古そうである。想像だが、おそらくこの道は旧道なのだろう。

  54 観魚洞トンネル                  55 ホテルニューアカオ
   

 そのトンネルを出たところが、ホテルニューアカオである。



  56 ニューアカオから熱海市街を望む         57 錦ヶ浦の展望台
   

 このあたりを錦ヶ浦というが、熱海市街から近いにもかかわらず、素晴らしい絶景が広がっていた。

 58 錦ヶ浦 その1


 59 錦ヶ浦 その2


 60 錦ヶ浦から南を望む


 錦ヶ浦の特徴は、海岸をすべてホテルニューアカオが所有していることだ。施設は、道路から海岸までの崖に作られ、海岸までは、ホテル利用客しか行けないようになっている。

 61 錦ヶ浦 その3


  62 国道へ                     63 ロイヤルウイング
   



  64 熱海城を見上げる                65 国道135号線へから左へ
   

 錦ヶ浦の山の上には熱海城が建っている。もっとも、単なる観光施設で歴史的建造物ではない。国道に出て再び左折する。

  66 ホテル駐車場横を進む              67 熱海城を望む
   

 68 錦ヶ浦 その4


 断崖の上に写真69のような眺めの良いテラスがあった。寒いので誰もいないが、「伊豆一の絶景カフェ」と書いてある。これから伊豆半島を一周しようとしているのに、初日から「伊豆一」では、その後の旅が色あせてしまうかもしれない。これは、本当かどうか、確かめなくてはならないと思ったが、カフェはどこにあるのだろう。
 入口は、テラスの下、断崖の途中にあった。

  69 海の見えるテラス                70 花の妖精店内
   

 もちろん、ホテルの経営だろう。登山者のような汚らしい格好で単身乗り込んだが、明らかに場違いである。入口で、ウェイターの人に一瞥されたが、明らかに怪しんでいる。しばらくして、柱の影の一段低まった場所の小さなスペースに案内された。お忍びか二人きりの世界に浸りたいカップル向けのテーブルであるが、怪しいおっさんを隔離しておくのには最適のスペースだ。さすが、ホテルマンである。客は明らかに金持ちそうな年寄りと中年ばかりである。

 71 窓際の席
      

 大きなガラス越しに望む海岸は確かに素晴らしい。
 一番安そうなケーキセットを頼む。紅茶とケーキの味は、さすがにホテルグレードである。
 さて、ここが本当に伊豆一の絶景カフェなのかどうかは、まだわからない。伊豆を一周し終わって初めて比較ができるのだから、当たり前の話だが、確かにそうかもしれないと思わせるクオリティではある。

 72 錦ヶ浦 その5



 再び国道に出ると、蘇我浦である。      

  73 再び国道へ                   74 蘇我浦大橋 その1
   

 立派な橋がかかっているが、写真75のように反対側上り車線を見ると古そうな洞門があった。多分、山側の道が先にあって、海側の橋を後から架けて車線を分離し、幅員を確保したのではないだろうか。そして、海岸側には赤いレンガの美しい歩道が続いている。

  75 蘇我浦大橋と洞門                76 蘇我浦大橋から南を望む
   

 77 蘇我浦の歩道
      

 蘇我浦もホテルの所有になっているようだ。

 78 蘇我浦と蘇我浦大橋を振り返る




  79 アカオハーブ&ローズガーデンバス停       80 途切れた歩道
   

 写真79のバス停で海岸沿いに続く美しい歩道が途切れた。ニューアカオホテル関連の施設がここまでということなのだろう。つまり、この歩道は、ニューアカオが設置したと考えられる。海岸を買い占めているということは、功罪両面があると思うが、少なくともここまで歩道を設置していただいたことに感謝しなくてはならないだろう。
 この先は、歩道がなく、怖い思いをする。特に、写真81のような洞門やトンネルは最悪である。

  81 蘇我浦片隧道四号                 82 洞門解説板
   

 赤根トンネルは再び左に旧道があったので、助かった。

  83 赤根トンネル                  84 トンネル手前を左へ
   



 赤根崎のリゾートマンションを過ぎると再び国道と合流する。下り坂となり人家が増えた。伊豆多賀である。

  85 シャトーテル赤根崎               86 伊豆多賀へ
   

  87 伊豆多賀海岸 その1              88 伊豆多賀港
   

 熱海高校は県立だが、ヨット部の艇庫を新築していた。静岡県もかなりのお金持ちらしい。

  89 熱海高校艇庫新築掲示              90 熱海高校ヨット部艇庫
   



  91 伊豆多賀海岸 その2              92 伊豆多賀から網代方面を望む
   

 伊豆多賀の海岸は松が植えられた開放的な海岸である。

  93 伊豆多賀駅入口                 94 長浜海浜公園 その1
   

 伊豆多賀駅の入り口に着いた。時刻は14時9分。まだ時間はあるし、地図を見ると網代駅はここから近い。海岸線の先に見えるあたりらしいので、行けるだろう。網代駅を今日の目的地にすることにした。



  95 うみえーる長浜
      

 長浜海岸という美しいビーチがあった。

 96 長浜海浜公園 その2

  97 海岸の松並木
  ビーチを過ぎると再び松並木だ。

 98 松並木から北を振り返る



 埋立地になり、クルーザーが並んでいた。「番長」というユニークな名前のクルーザーが置いてある。暴れん坊の船長なのだろうか。しかし、その数隻先には、ちゃんと県警のクルーザーがあったので、海で番長が喧嘩をしても、取り締まってくれるに違いない。

  99 クルーザー番長                 100 県警クルーザーはやぶさU
   

 と、気軽に書いているが、実はここに書く前に、「番長」というクルーザーについて検索しておいたことは言うまでもない。なぜなら、もしこのクルーザーが怖い人のものだと、迂闊に情報をネット上に書けないからである。まあ、さすがにその筋の人が「番長」とネーミングすることは考えにくいが、これでも結構慎重な性格なのである。
 ところが、意外なことがわかった。この船のオーナーは、釣り好きで有名なあの梅宮辰夫さんらしい。本人がその筋と付き合いがあるのかということは別にして、船名は「不良番長」という映画の題名からとったものだろう。クルーザーの件は、すでに公になっていたので、こうして安心して書けるのである。

  101 網代駅入口                  102 網代駅へ
   

 網代港を過ぎ、国道を横断して網代駅入口の標識を右折する。少し歩くと、土産物屋が現れた。駅も近いのだろう。

  103 網代駅前                   104 網代駅
   

 14時47分、網代駅に到着した。小さな駅である。14時51分の踊り子号を見送って、15時01分発の熱海行き普通列車に乗り込んだ。

  105 網代駅構内                  106 特急踊り子
   

  107 熱海行き普通列車
   

 GPSによる本日の歩行経路


(本日の歩数:31703歩)

 海岸線の旅もついに西へ向かう日が来た。その第一歩、伊豆半島を一周する旅が始まったのである。海と山と温泉、そして美しい自然をこの足と目で確かめたいと思う。

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