海岸線をどこまでも西へ
海岸線を徒歩で忠実にたどり、そこに何があるかを見届けたい
◆第3日目(2013年9月19日) 伊東駅 〜 伊豆海洋公園
ようやく秋風が吹くようになったが、まだ少し暑い。7月以来の伊豆半島である。
伊豆半島は、南海の海底火山が日本列島にぶつかってできたというなんとも破天荒な生い立ちをもつが、そのことがひと目で理解できるシェーマを見つけたので紹介しておこう。出典は、
伊豆半島ジオパーク
である。
(http://izugeopark.org/より転載)
それにしても、南からはるばる旅をして、日本列島に体当りしてなお今も、地震が起きたり、火山が噴火したり、熱い温泉が吹き出したりして大暴れする伊豆半島、タダ者ではない。それもそのはずである。右下の図をご覧頂きたい。日本列島は、フォッサマグナを境として、東日本は北米プレート、西日本はユーラシアプレートに乗っているのだが、島を除けば、唯一、伊豆半島だけはフィリピン海プレートに乗っているわけである。まさに日本にあって日本ではない、異端の地というほかないのだ。
(http://izugeopark.org/より転載)
今日は、伊東からの出発である。つまり、JRから伊豆急行に変わる境界の伊東駅は、伊豆半島という異次元の世界への入口なのである。普段、北米プレートの上にすむ私は、今まさにこの足でプレートの境界を超えてフィリピン海プレートの上に降り立ったわけである。
今日は天気の良い連休の初日で観光客の姿が目立つ。出発は8時53分である。
1 伊東駅 2 国道135号線に出る
3 取り壊される海の家 4 伊東海岸の夏の終わり
伊東駅を出て、フィリピン海プレート(しつこい!)を東へ向かうと、海岸に出た。夏が終わり、海の家が解体されているという、なんとも秋らしい哀愁のある光景に出会った。
5 なぎさ公園 その1
6 なぎさ公園 その2
芝生のある埋立地の公園を過ぎると、川を渡る。その先は伊東港である。
7 伊東大川河口 8 伊東港東海汽船大島初島航路待合所
ここからは、初島への航路があるらしい。コンテナに、食料品を詰め込んでいた。多分初島のホテルや住民向けなのだろう。このコンテナが初島の命綱である。
初島といえば、若いころディンギー(エンジンなしの小型ヨット)で伊東沖に出たら島が見えたので、無謀にもあそこまで行ってみようということになった。潮の流れが思いのほか早くて焦ったが、初島の近くまで行ってアンカーを下ろし、そこから泳いで上陸した。その岩場にサザエがいたので、海水につけて食べたらコリコリしてやたらと美味かったのを覚えている。密漁と密入国で間違いなく犯罪であるが、もう20年以上前なので時効である。
港の東側は漁港で、魚市場があった。
9 伊東港 10 伊東魚市場
その先の神社のところから、旧道に入ってみる。
11 新井神社 12 旧道の風情
ここで、内陸部に向かう国道に別れを告げて海側の分岐から川名方面への県道に入る。
13 川名方面への分岐 14 宇佐美方面を望む
左手に伊東海岸からも見えていた島が近づいてきた。沖に浮かぶ
手石島
である。手石島は釣りやダイビングスポットとして有名らしいが、その名を上げたのは近くでおきた1996年の
海底火山
の噴火だろう。当時、こんな観光地の近くで噴火があったことに驚いたが、今になって考えれば、最初に書いたとおり、伊豆は未だに現役活動中の暴れん坊半島であることの証左である。
15 手石島 16 汐吹公園案内図
駐車場があり、汐吹公園と書いてあった。汐吹岩というものがあるらしいので海岸へ降りてみると、洞窟のような穴が開いていた。たぶんあれが汐吹岩だろう。ただし、潮位と波の関係か、汐吹きは見ることができなかった。
17 汐吹公園 18 汐吹岩
19 汐吹岩から北方面を望む
20 川奈へ その1 21 川奈へ その2
立派ではないが、細くもない中途半端な道幅の川奈への道を歩く。汐吹隋道の内部は、写真23のように伊豆半島の活発な火山活動のせいで、マグマで真っ赤になっている。隧道の中は、火傷しそうに熱い。
22 汐吹隧道 23 隧道内部
って、んなわきゃない。よくあるオレンジ色の照明であるが、カメラだと強調されて、溶岩が流れているような強烈な色に写っていた。この高速道路でよく見かけるオレンジ色の照明はなんだろうと思って調べてみると、低圧ナトリウムランプというものらしい。霧や塵などによる光の散乱が少ないことと効率がよい、つまり省エネということでよく使われているようだ。
24 隧道出口 25 川奈へ その3
26 汐吹隧道をふり返る
一本道を歩き続けていると、岬が見えてきた。川奈崎である。先端に白い灯台が見えるので、そこまで行ってみよう。
27 川奈崎
28 川奈いるか浜公園 その1 29 川奈いるか浜公園 その2
川奈漁港には、ダイビングの若者が多い。左折して川奈崎へ向かおう。
30 川奈港 31 川奈港付近
32 川奈崎へ その1 33 川奈湾を振り返る
34 ボンベ倉庫 35 川奈崎へ その2
ほとんど人通りがなくなる崎への道を行く。ボンベがたくさん並べてある倉庫があった。プロパンガスではなく、なんとダイビング用のボンベだ。
36 手石島
37 川奈崎へ その3 38 川奈崎へ その4
やがて道は登山道のような細い道になる。
39 川奈崎へ その5 40 川奈崎へ その6
雑草と蜘蛛の巣地獄を抜けて行くと、写真41のようにゴルフ場の敷地で立入禁止になってしまった。
41 川奈ゴルフ場行き止まり 42 川奈崎へ その7
もう道も殆どわからないような別の獣道を這いずるようにして進む。灯台の近くにきているはずだが、樹木と雑草で見えない。ようやく、写真43の地点で灯台が見えた。しかし、この先には残念ながら進めなかった。ここで、撤退である。一応灯台を確認したので良しとしよう。後から調べてみると、川奈崎灯台は、ゴルフ場の敷地からでないと行けないらしい。しかし、ゴルフ場に入ることは不法侵入になるので、ここは諦めるしかないだろう。しかし、歩いていく道がない灯台というのも珍しい。初めての経験である。
43 川奈崎灯台 44 県道109号へ その1
再び川奈港に戻ってきた。ここから先の海岸線はゴルフ場になっているので、一般人は通行できない。内陸部を通る県道に出るルートしかないのである。
落ち葉を片付けている地元の方に道を聞くと抜けられるということなので、階段を上っていく。
45 県道109号へ その2 46 県道109号へ その3
写真47のように道端に突然1基だけのお墓があった。山の中にあったお墓の横の道を広げたのだろうか。
47 道端のお墓 48 静岡県道109号伊東川奈八幡野線
49 川奈ホテルへ その1 50 伊豆高原ステンドグラス美術館 その1
県道に出て南に向かうと、ヨーロッパの貴族の館のような建物が現れた。伊豆高原ステンドグラス美術館と書いてある。地図には載っていないがなぜだろう。イギリスの田舎をモデルにしたようなどこかで見たことのある建物のデザインである。が、今日は中に入る時間がないので外観だけ写真に撮って先を急ぐことにしよう。
51 伊豆高原ステンドグラス美術館 その2
52 伊豆高原ステンドグラス美術館 その3
53 伊豆高原ステンドグラス美術館 その4
さらに進むと、
川奈ホテルゴルフコース
の看板があった。あの川奈崎から南の広大な海岸線を占有しているゴルフ場である。ゴルフをやっている人なら知っているだろうが、このコースは、伊豆、いや日本でも有数の絶景コースで、1928年に出来た歴史ある名門コースである。なんと専用の神社まであった。
54 川奈ゴルフコースエントランス 55 あらかし神社
富士と大島の2コースがあり、下の図のように広大な面積を占めている。
56 川奈ゴルフコースクラブハウス
57 クラブハウスから見る相模湾
となりは、
川奈ホテル
である。こちらも日本を代表するクラシックホテルである。元は帝国ホテルやホテルオークラで有名な大倉財閥の別荘だったそうだ。伊豆でも最高クラスの高級リゾートホテルなので、駐車場はベンツとBMWばかりかと思ったら、そうでもなかった。平日ならば庶民でも泊まれるのかもしれない。現在、ホテルとゴルフ場は投機に走った親会社のバブル崩壊による倒産によって、プリンスホテルの経営となっているので、超高級路線一本槍というわけにはいかないのだろうか。それにしても、優雅なたたずまいはさすがである。現在でも伊豆を代表する格式のホテルであることは間違いないだろう。と偉そうなことを書いているが、もちろん泊まったことはおろか、中に入ったことさえない、情けない筆者である。
58 川奈ホテル
59 富戸へ その1 60 東三の原バス停
のんびりした伊豆らしい明るい道を富戸に向かって歩いていく。屋根のついたバスのこないバス停は、休憩に丁度良い。
光海丸通りという標識があった。紛らわしいが、正式なものではなさそうだ。
61 光海丸通り 62 おしゃれな動物病院
意外なことに、伊豆急行の線路がすぐ隣を走っている。昔、鉄道を通すときに東急の五島慶太が駅を作る提案をしたところ、大倉側は、騒がしくなるし、鉄道で来る様な貧乏人は相手にしないので、必要ないと答えたという。鉄道どころか、とぼとぼと歩きで来る、私のような貧乏人は、やっぱり川奈ホテルに泊まってはいけないのである。
63 伊豆急行 64 木の家
65 ペンション? 66 富戸へ その2
小学校が近くなって歩道が現れ、坂道を下っていくと富戸駅の入り口である。
67 富戸小学校 68 富戸駅分岐
69 城ヶ崎海岸へ その1 70 城ヶ崎海岸へ その2
71 城ヶ崎海岸へ その3 72 宇根展望台分岐
さらに城ヶ崎海岸に向かうと、宇根展望台の案内板があったので、寄ってみた。
73 宇根展望台へ 74 産衣石
75 産衣石解説板
76 宇根展望台
由緒ある石の先にある展望台に登ると、そこには思いもよらない素晴らしい光景が待っていた。
77 宇根展望台から北を望む その1
78 宇根展望台から北を望む その2
79 宇根展望台から北を望む その3
エメラルドブルーの入江と美しい柱状節理の知られざる絶景である。溶岩が舌状に海に流れ出して、急激に冷えて固まったのだろう。
80 宇根展望台から大島を望む
81 宇根展望台から南を望む
82 宇根展望台の解説板
83 城ヶ崎海岸へ その1 84 城ヶ崎海岸へ その2
海岸線を城ヶ崎海岸に向かう。
85 宇根展望台を振り返る
86 富戸港案内板
富戸港のさきからいよいよ城ヶ崎海岸が始まる。伊豆東海岸を象徴する観光地である。人もがぜん多くなってきた。海岸沿いに遊歩道が整備されている。
87 富戸港を望む 88 城ヶ崎ピクニカルコース入口
89 ぼら納屋へ その1 90 ぼら納屋へ その2
最初に見えるのは、魚見小屋であるが残念ながら、小屋まではいけないようだ。
91 魚見小屋解説板
92 魚見小屋
93 ぼら納屋へ その3 94 ぼら納屋
ぼら納屋は、飲食店になっている。
95 門脇埼へ その1 96 門脇埼へ その2
青い海と空、緑の松、黒い溶岩が織りなす荒々しくも懐かしい、昔の映画会社のオープニングのような日本人好みの海岸風景である。もちろん、先ほどの解説にあったようにわずか4千年前、つまり縄文時代末期の大室山の噴火による新しい溶岩台地だ。噴火の時には、溶岩が荒海に流れ出して、ものすごい水蒸気が上がる、激しい火と水の戦いが繰り広げられたことだろう。
97 門脇埼へ その3 98 砲台跡
99 砲台跡解説板
100 門脇埼へ その4
101 門脇埼へ その5
船から見る城ヶ崎海岸も素晴らしいだろう。
102 門脇埼へ その6
103 門脇埼へ その7
サスペンスドラマにもよく出てくる、海岸にかかっている吊り橋としては日本一有名な門脇吊橋に着いた。
104 門脇埼へ その8 105 門脇吊橋 その1
106 門脇吊橋 その2 107 門脇吊橋 その3
108 門脇吊橋から陸地側 109 門脇吊橋 その4
110 門脇吊橋からみる柱状節理
吊り橋の先にロープが張られていたが、その下には写真111のような献花があった。おそらくここから身を投げたのであろう。ドラマの影響だろうか、自殺の名所になっているのかもしれない。
111 崖の上の供花 112 門脇埼灯台 その1
113 伊豆東部火山群の分布解説板
灯台に登ってみる。展望台は窓が開かない。
114 門脇埼灯台 その2 115 門脇埼灯台 展望台
116 展望台から見た城ヶ崎海岸 117 伊豆海洋公園へ その1
城ヶ崎海岸の中心とも言える吊り橋と灯台を過ぎて、伊豆海洋公園へ向かう。遊歩道はよく整備されていて歩きやすい。
118 伊豆海洋公園へ その2 119 門脇埼灯台を振り返る
120 伊豆海洋公園へ その3 121 伊豆海洋公園へ その4
122 伊豆海洋公園へ その5 123 伊豆海洋公園へ その6
124 伊豆海洋公園へ その7 125 伊豆海洋公園へ その8
126 伊豆四季の花公園 127 城ヶ崎海岸駅へ その1
15時15分、海洋公園の手前にある伊豆四季の花公園に到着した。そのまま、伊豆海洋公園を経て城ヶ崎海岸駅へ向かう。
128 城ヶ崎海岸駅へ その2 129 城ヶ崎海岸駅 その1
伊豆高原のリゾートにマッチしたログハウス風の駅舎である。
130 城ヶ崎海岸駅 その2 131 熱海行き普通列車
GPSによる本日の歩行経路
GPSは途中で電池カバーが外れてしまい川奈港から富戸までのログが取れなかった。
今日は伊東から川奈を経て、東伊豆
海岸のハイライトである城ヶ崎海岸を歩いた秋の一日であった。その素晴らしさは見ていただいたとおりであるが、写真と文章では伝えきれないもどかしさがある。ダイナミックな溶岩台地とどこまでも青い海が、明るい伊豆東海岸の輪郭をくっきりと際立たせているのだ。
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城ヶ崎海岸