北千葉導水路2・手賀沼 探訪

 千葉県北部の利水、治水のために作られた、利根川と江戸川を結ぶ人工水路の大規模プロジェクト
2021年1月3日  北千葉導水路2 (手賀大橋〜豊四季駅)


 関東平野を横断して利根川の水を強引に江戸川に流してしまうというかなり無茶な大プロジェクト、北千葉導水路の徹底調査2日目である。
 前回は北千葉導水路の東端、利根川から手賀川沿いの広々とした干拓地を歩き、手賀沼の中央部、手賀大橋まで達した。
 今日も快晴の良い天気である。手賀沼南岸を引き続き西へ向かおう。

 我孫子駅からバスで道の駅しょうなんへ向かう。今日の出発地点はここだ。


  1 手賀大橋


 走る人、子供連れで寛ぐ人、暖かい冬の日を思い思いに過ごす平和な光景のすぐ下、この地下には、鉄の巨大な導水路が2本も埋められていることは、誰も知らない国家機密である....わけではないが、普段意識している人は皆無だろう。
 そんな無関心な人たちに数千億円の費用と26年もの年月を費やしたこの国家的プロジェクトをすこしでもアピールすべく、橋の下にはいくつかの看板が立っている。



 2 手賀大橋下の北千葉導水路
     

 子供とお父さんにとっては、すぐ下の導水路など直接関係ないといえば関係ない。しかし、水路が開口式ではなく、地下埋設管であることは、子供の危険防止という点では、なんの心配もいらないし、こうしてその上の土地を市民のために有効利用できることは良いことである。

 3 手賀大橋を望む


 手賀沼の湖岸にはヨシ原が広がっている。

 4 上流へ


  5 空気弁室とふれあい緑道
     

 対岸の我孫子市街は、沼越しにこうして遠くから眺めるほうが美しい。湖面に映る夜景もたぶんきれいなのだろう。

 6 対岸の我孫子市街地を望む




  7 ふれあい緑道                   8 ふれあい緑道と並走する導水路
   

 気持ちの良い青空の下を、美しい景色を見ながら歩けるこの広い歩道はかなりの人気らしく、コロナ禍の中の正月休みとあって、多くの人と自転車で賑わっている。神奈川県南部住民にとっての、江ノ島-茅ヶ崎間の海岸沿いのサイクリングロードと同じ役割である。潮の香りはしないが、風で砂が飛んでくることがない点は、こちらのほうがよいかもしれない。

 手賀沼は日本有数の汚れた湖沼であるが、ドブ臭いとかの悪臭は全く感じられない。夏場はどうなのだろうか。

 9 手賀沼西部


 写真10の地点は、遊歩道が分岐していた。送電線の鉄塔を挟んでいるためらしい。

  10 手賀沼から離れるふれあい緑道
     

 11 ヒドリ橋


 ヒドリ橋という美しいカーブを描いた橋で、大津川を渡る。

  12 大津川第二制御弁室               13 ふれあい緑道
   

 橋を渡ると湖岸の歩道とサイクリング用の舗装路が並行していた。



 14 ふれあい緑道と時計と導水路


 左側には平坦な農地が広がっているが、もちろん干拓地である。つまり昔はここは沼の中だったわけだ。

  15 導水路看板 その1               16 導水路看板 その2
   

 再び広告看板が立っている。この北千葉導水路は公共事業としてもかなりアピールしているが、果たして全線を通して歩く人はいるのだろうか。
 少なくとも検索では引っかかってこない。一般人が歩くには、ルートの確定が少し難しそうである。もちろん全線に歩道が整備されているわけでもないので、ハイキングコースとしての案内もこの手賀沼周辺に限られている。ということは、全線を踏破すれば世界初ということになる。がぜんやる気が出てきた。
 上等だ。利根川から江戸川まで全部歩いてやろうじゃないか。とわけのわからない見当違いの意欲を見せ、歩き続けるモチベーションの足しにする。
 このようなプロジェクトは、途中で活を入れないと挫折しがちなのは、自分自身が経験上一番良くわかっているのである。ただし、今回のような水路沿いを歩くのは、登山と違って坂道がないので、体力的には随分と楽である。



 走行しているうちに左前方に巨大な建物が見えてきた。この導水路を象徴するメインの施設とも言うべき場所である。

  17 ゲート前の水路                 18 注水樋管ゲート
   

 利根川から地下を延々と流れてきた水は、まずこの着水井に入るらしい。井と行っても地下ではなく、池である。

 19 着水井解説板


  20 着水井                     21 着水井から手賀沼へ流れ込む水
   

 この着水井と言う名の池に溜めた利根川の水の一部は、写真21から写真18のゲートを通って手賀沼の上流端に流れている。手賀沼の水は結局利根川に流れ込むのに、なぜ、そんなことをするのだろうか。それは、手賀沼の水をきれいにするためらしい。日本一汚れた湖沼という地位がよほど嫌だったのだろうか。
 とは言っても、要するに利根川の水で希釈するだけなので、あまり根本的な解決になっていないような気がする。
 では決め手となる下水道の整備状況はどうだろうか。手賀沼流域下水道事業という、まさにそのものズバリの事業がある。我孫子市・柏市・流山市・松戸市・鎌ケ谷市・印西市・白井市の流域7市にまたがる広域下水道である。処理場は、手賀沼と利根川の間にある。この企画の第1日目に対岸からみた、田んぼの中にある大きな施設で、写真28にちゃんと写っている。手賀沼終末処理場が稼働したのは、昭和56年(1981年)とかなり昔であるから、一応行政も手は打っているのである。現在の処理人口は57万人だそうである。
 では、肝心の下水道普及率はどうだろうか。手賀沼流域下水道事業地域全体の普及率は最新のものが見つからなかった。しかたがないので、市町村別の平成30年の数字をみると、我孫子市84.1%、柏市90.2%、印西市84.9%と悪くはないが、首都圏の都市としては良くもない数字である。例えば、神奈川県の下水道普及率は96.7%なので、それと比べても、もう少し頑張ってほしい気もする。
 これだけ莫大なお金と時間をかけた結果、手賀沼の水はきれいになったのだろうか。現在の全国湖沼汚染度(COD)ランキングは第3位でワーストワンは何とか脱したようだ。ちなみに第1位は宮城県の伊豆沼、2位は近くにある印旛沼である。

 千葉県が公表している、水質の経年変化を見てみよう。

              
出典 https://www.pref.chiba.lg.jp/suiho/kasentou/teganuma/documents/s-2.pdf

 下水道が稼働した昭和56年から平成7年頃までの10年間は、それほど大きな改善は見られていない。平成7年にはむしろピークを迎えており、下水道の普及より人口増と宅地開発のスピードが上回ってしまったように思える。しかし、平成8年以降は急激にCODが減少しており、開発スピードの低下と下水道の普及のバランスが逆転したようだ。しかし、平成15年以降現在までは、ほぼ横ばいで改善は見られず、環境基準は未達成のままである。

 さて、北千葉導水路が果たした役割はどうだろうか。水路は平成12年に完成したが、上のグラフでわかるようにその頃にはほぼ現在の水準になっており、その後は横ばいなので、水質浄化に貢献したと、胸を張って言えるわけでもなさそうである。
 
 もう一つ、意外な盲点がある。ここまでわさわざ引っ張ってきて手賀沼に流している利根川の水質であるが、下流ではCODが5を超えているようだ。つまり、改善した手賀沼の水質と大して変わらないのである。この点は、北千葉導水路の存在意義の根幹を揺るがすポイントなので、行政や関係者の反論を聞いてみたいものである。

 導水路の効果について、国はPR動画を作っている。それをみると水質改善と利根川からの導水開始の関係をグラフで説明しているが、平成12年の事業開始以前に、すでに手賀沼の水質は大きく改善していることがちゃんと動画に写っており、注意深く見れば自ら墓穴をほっていることが確認できる。学者は監修していないのだろうか。土木の専門家だけで、環境の専門家はいなかったのかもしれない。

 まあ、この手の公共事業は莫大な費用と長い年月がかかるので、完成した頃にはすでに時代遅れになっていることはよくあることだ。

  22 第二機場                    23 第二機場のタワー
   

 北千葉導水路の中で市民の目に触れる最大のアピールポイントである、第2機場であるが、PR施設である北千葉導水ビジターセンターが併設しており、とても立派な建物だ。ぜひ見学したかったが、お正月とコロナで閉館していた。



  24 第二機場流量計室                25 柏ふるさと公園
   

 第2機場をこえると、公園が広がっており、たくさんの人がくつろいでいた。子供連れも多い。

 26 北千葉導水路の解説板


 27 ふれあい緑道解説板 その1


 28 ふれあい緑道解説板 その2


 この公園は、導水路の整備とともに作られたようで、案内掲示板にも導水路の紹介がある他、写真29のように、本物の導水路の鉄管が輪切りになって展示されているなど、これでもかというほどのアピールがすごい。鉄管は住金製らしく鹿島で作られたのだろう。

  29 導管のモニュメント               30 住友金属製?
   

 手賀沼の最上流地点がここで、大堀川という川が流れ込んでいる。導水路は手賀沼に別れを告げて、この大堀川とともに、更に上流に向かって並走している。

 31 手賀沼の大堀川流入地点


  32 導管のモニュメント その2           33 北柏橋
   



  34 空気弁室
     

 35 桜並木


 北柏橋についた。直接は見えないが、ここからは北柏駅が近いらしい。

  36 大堀川と
北柏橋
     

 37 北柏橋から上流、常磐線を望む


 常磐線の下を進む。

  38 常磐線の下へ                 39 常磐線
   



  40 常磐線から上流へ               41 木崎橋
   

 時 分、木崎橋に着いた。上の地図を見ていただくとわかるが、青い破線で示されている導水路はこれまで手賀沼、大堀川の南側を通っていたが、ここでその破線が北側に移っている事がわかる。つまり、この橋の付近で対岸に渡っているので、そのための施設なり、地上の痕跡が必ずあるはずである。

  42 木崎橋から上流を望む             43 導水路の横断地点橋へ
   

 写真44の施設が対岸に導水路をつなぐための施設であるが、かなり大規模である。導水路が川の底を横断するわけなので、工事もかなり大規模なものだったのだろう。

  44  右岸側施設                  45 対岸を望む
   

 写真45の下を導水路が横断しているはずだ。左岸側にも大きな空気弁の施設がある。ここからは、導水路は大堀川の左岸側(北側)を通ることになる。

  46 左岸側施設                  47 左岸をさらに上流へ
   



  48 水道橋から手賀沼方面を望む           49 松ヶ崎橋へ
   

 大堀川の河畔もなかなか良い感じの道が続いている。特にこちら側は導水路を埋めてあるためか、スペースがゆったりしており開放感がある。
 川の水量はそれほど多くない。これも手賀沼の水質が悪い原因だろう。この流量では、手賀沼の水が入れ替わるのにかなりの時間がかかりそうである。都市化と下水道の普及も、大堀川の水量の減少に拍車をかけているはずである。

  50 松ヶ崎橋から下流を望む             51 松ヶ崎橋から上流を望む
   



  52 導水路の上の芝生                53 大堀川
   

  54 空気弁施設                   55 昭和橋へ
   

 導水路の上は芝生になっているところが多い。

  56 昭和橋                     57 昭和橋から上流を望む
   

  58 高田橋へ                    59 高田橋から上流を望む
   

  60 導水路上の歩道
     



 61 うなぎの水切場解説板


 手賀沼ではいくらでも取れたであろう「うなぎ」も、乱獲と環境破壊によっていまや絶滅危惧種になってしまった。

  62 うなぎの水切り場                63 勝橋から上流を望む
   

  64 新堤橋へ                    65 新堤橋から上流を望む
   

 66 新橋
     

 67 新橋から上流を望む


 大堀川の水は、見た目もこのように清流というわけではなく、これでは手賀沼の水質改善も難しそうだ。

  68 青葉橋へ                    69 桜並木と空気弁施設
   



  70 青葉橋から上流を望む              71 駒木橋へ
   

 緩やかに蛇行する大堀川をのんびりと歩く。平和である。

  72 まだ若い桜                   73 広々とした導水路上
   

 74 駒木橋から上流を望む


  75 河畔のベンチ                  76 大堀川注水施設へ
   

 老人の日向ぼっこにちょうど良さそうなベンチをすぎると、前方に茶色の施設が見えてきた。大堀川注水施設である。

  77 大堀川注水施設                 78 新駒木橋から下流を望む
   

 ここまで導水された利根川の水は、写真79から大堀川に戻されて川の流量の確保と手賀沼の浄化に使われる水と、さらに地下を流れて南へ向かう水に分けられる。今日は、大堀川に注水されている水はないようだ。

  79 注水口                     80 新駒木橋から上流を望む
   

 ここ、大堀川注水施設から、導水路は90度左折して、こんどは南に向かっている。



 地図にも青い破線が南に続いているが、地上にはそれらしき敷地や施設は見当たらない。豊四季駅に向かって道路が続いているだけである。そもそもかなりの急坂で、地下に水路を埋められそうにない地形である。
 ここからは豊四季シールドという地下トンネルとなっているらしい。つまり、地上から管を埋めるのではなく、トンネルを掘ったというわけである。下の図を見ると、かなりの深さがありそうである。

        
  81 豊四季駅へ                   82 豊四季駅
   

 坂を登りきって、東武アーバンパークラインの豊四季駅についた。豊四季シールドはこの駅の真下を貫いているらしいが、もちろん地上にはなんの目印も看板もない。念の為、反対側にも回ってみたが、ありふれた駅前の風景が広がっていた。
 今日の行程はここまでにして、豊四季駅から帰途につくことにする。

  83 豊四季駅から坂川方面を望む
     



 今日は、手賀沼から大堀川を経て豊四季シールドの中間地点である豊四季駅まで、美しい風景の中を歩くことができた。次回はいよいよ豊四季シールドから北千葉導水路の西端部、江戸川へと向かう。

 本日の歩数 21,779歩

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 関連サイト ◆2020年12月29日  利根運河 (利根川〜江戸川)
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