目 黒 川 探 訪
桜並木で有名な東京を代表する都会の河川
◆第1日目 (2016年12月31日) 河口 〜 池尻大橋駅
目黒川は、全長8km程度の小河川であるが、首都圏在住者にとってはかなりの知名度がある。それは、ひとえにその流路が都内でもメジャーな地域であるからに他ならない。
河口は、港として栄え、品川の語源となったという説もある。また、落語の「目黒のさんま」の現場であるとか、目黒不動尊にお参りする江戸町民に親しまれた時代を経て、現在は、何と言っても桜の名所として有名である。
中目黒がメジャーになったせいか、
ドラマのロケ地
としてもしょっちゅう出てくる川である。源流は、上流の北沢川で世田谷区のようだが、現状は暗渠になっているらしく、詳細は不明である。現地で確かめることにしよう。
というわけで、久しぶりの川歩きである。河口は、天王洲アイルが最寄り駅であるが、乗り換えが面倒なので、品川駅で降りることにした。
1 品川駅 2 東品川橋から河口を望む
9時20分ころに
品川駅を出発し
、海洋大学の横を通って天王洲アイルからさらに東に進み河口を目指す。天王州公園の西側、東品川橋が一般人が徒歩で行ける目黒川の海に最も近い場所である。東品川橋から見えるのは京浜運河であるが、運河の上には首都高速羽田線と東京モノレールが南北に走っている。ここからは東京湾は見えない。
目黒川は典型的な都市河川なので、雨が降ったら突然増水するワケで、河口には立派なポンプ場が設けられていた。
3 東品川ポンプ場
4 東品川ポンプ場解説板
ここは写真のとおり、ウォーターフロントの美しい公園として整備されている。都会の公園らしく、無料でWi-Fiが利用できると書いてある。冬であるが天気がよく子供連れも多い。おそらくこの公園の地下は巨大な遊水池になっているものと思われる。
5 東品川海上公園
6 アイル橋 7 アイル橋から上流を望む
この公園まえの目黒川は、川というよりも運河といったほうがしっくりくる。公園の上流にある昭和橋からいよいよ川らしくなってくる。
8 東品川海上公園から品川方面を望む 9 昭和橋から上流を望む
10 昭和橋上流の河畔道 11 海抜標識
洲崎橋という名前がついている。まさに、昔はここが海岸であり遠浅の海が広がっていたのだろう。
12 洲崎橋から下流を望む 13 洲崎橋から上流を望む
10時14分に、品川橋に着いた。品川宿本陣もこの近くにあるらしく、寺社も多い。つまり、このあたりが江戸時代の品川の中心地であり、東海道が海沿いに続いていたところである。さぞかし賑わっていたことだろう。ちょうど
こんな感じ
である。
つまり、江戸時代の海岸線はこの品川橋と洲崎橋のあいだにあったわけである。ちなみに古地図によると、昔の目黒川はここから北上し、現在の北品川駅付近で海にそそいでいたようである。
14 品川橋 15 品川橋の東屋
16 品川橋の旧東海道地図
旧東海道はごちゃごちゃしていかにも古い街道であることを示している。18の先がずっと京都まで続いていると思うと不思議な感じである。
17 品川橋から旧東海道日本橋方面を望む 18 旧東海道京都方面
19 品川橋の歴史解説板
東海道が目黒川を渡るという歴史あるこの品川橋を後にして、さらに上流を目指そう。
20 鎮守橋
荏原神社
の真っ赤な鎮守橋を過ぎると、目黒川の上に作られた高架駅が見えてくる。京急新馬場駅である。
21 京急新馬場駅 22 東海橋から下流を望む
京急線の先にあるのが、国道15号、通称第一京浜で、目黒川に架かっているのが東海橋である。
都会ではあるが、事業所が多く、河畔を歩いている人が多いとはいえない。とはいえ、整備されていて気持ちよく歩ける道だ。そんなのんびりした川面であるが、実は河口から大崎までの目黒川の下には、首都高中央環状線が走っているらしい。
23 東海橋上流の河畔道 24 南品川付近
旧東海道の後、明治になり、新橋桜木町間、そして京都大阪方面まで伸びて、昭和のオリンピックの時に新幹線ができるまでの間、日本の大動脈であった東海道線、京浜東北線の下を潜る。流石にガードは低く古びていた。
25 日本ペイント東京事業所 26 東海道本線
27 三嶽橋と東海道新幹線 28 第一三共品川研究開発センター
御嶽橋に出た。既視感のある風景だと思ったら、
山手線一周
で歩いた道である。
29 三嶽橋から上流を望む 30 地域解説板
三嶽橋を渡り、左岸側に移って、東海道線とは違って立派な鉄道ガードの下を目黒川が流れている。新幹線と山手線と横須賀線である。
31 東海道新幹線と山手線 32 切断された管
33 山手線のガード 34 居木橋
山手線一周
では、ここから右に折れて、御殿山に登ってから品川に抜けたわけだが、今回は目黒川に沿って大崎方面へ遡っていく。
35 居木橋上流の河畔道 36 森永橋
37 森永橋から上流を望む 38 ゲートシティ大崎
近代的にビルが立ち並ぶようになるともう大崎である。
39 目黒川の冬の桜スポンサー看板 40 怪しい装置
目黒の冬の桜というイベントをやっているようで、スポンサーの名前と桜の木に縛り付けられた怪しげな装置が川沿いに見られるようになる。
41 謎の開花装置 42 小関橋上
冬に桜の花を咲かせるために、日照時間を調整して桜の木を騙して開花させるというすごいプロジェクトだと思いこんだ私は、桜の木につけられている装置がハイテクの塊に思えた。
しかし、後で真相を知ってがっかりした。単に桜の木をLEDで光らせるだけらしい。あちこちでやっているイルミネーションにすぎないのであった。
43 近代的な橋 44 登ってみる
45 橋から下流を望む
近代的なビルが並ぶ美しい街並みだ。
46 橋から上流を望む
47 橋から続く大崎ブライトタワー 48 鈴懸歩道橋
49 鈴懸歩道橋から上流を望む 50 御成橋から上流を望む
再開発が進み新しいビルが立ち並ぶ目黒川流域である。
51 御成橋上流の河畔道 52 山本橋
53 山本橋から上流を望む 54 五反田ふれあい水辺広場 その1
水辺が開けた場所に出た。もうここは五反田エリアである。この広場は、テレビのロケにも使われそうな明るく開けたところだ。休憩するには最高である。これで目黒川護岸がコンクリートでなく、水が清流なら素晴らしいのだが、都心でそれを望むのは酷である。
55 五反田ふれあい水辺広場 その2 56 ふれあい水辺広場から上流を望む
57 山手線 58 東急池上線
K字橋という不思議な名前の橋に出る。上から見ると確かにKの形をしている。この橋の袂で何か喋りながら同じ場所を何度も往復している年配の女性がいた。たぶん認知症を患っているのだろう。夜になったらどうするのだろうか。無事を祈るばかりである。
59 ふれあいK字橋 60 池上線ガード下
五反田を過ぎて、目黒区に入ったかな、と思ったがまだここは品川区である。
61 大崎橋から上流を望む 62 本村橋から上流を望む
63 古そうな旅館 64 谷山橋と首都高2号目黒線
65 谷山橋から上流を望む 66 市場橋から上流を望む
亀の甲橋という異色な名前の橋を過ぎて、目黒線ガードを過ぎると左岸側に高層住宅が見える。マンション雅叙園である。立派な建物だが、新しくはなさそうだ。調べてみると、1970年、昭和45年に建てられたそうである。当時としては、これだけの高層マンションは珍しかったはずである。耐震性が心配だが、このロケーションであれば、たぶん現在も高級マンションなのだろう。
67 亀の甲橋 68 マンション雅叙園
このあたりで品川区から目黒区に入る。
69 目黒雅叙園付近 70 太鼓橋から上流を望む
71 目黒新橋 72 目黒新橋から上流を望む
目黒通りはアーチ型の目黒新橋で目黒川を越えている。
73 目黒新橋上流の河畔道 74 目黒区民センター付近
75 ふれあい橋 76 目黒区民センター
川沿いには区民センターがあり、センターからそのまま目黒川を渡ることができる。橋からは目黒川を挟んだ武蔵野台地の末端の高台が見える。
77 ふれあい橋から都心を望む 78 ふれあい橋から上流を望む
79 田道広場公園付近 80 田道橋から上流を望む
81 目黒清掃工場付近
82 中里橋から上流を望む
左岸側の美しい桜並木をあるく。もちろん今は桜が咲いていないので、のんびりと歩くことができる。川に沿って、清掃工場や防衛省艦艇装備研究所が並んでいるため、喧騒から離れた静かな散策路になっている。
83 河畔の桜並木
84 やや濁った水 85 中目黒公園付近
公園を過ぎると人通りも増え、少し賑やかになってきた。前方に円筒形の高層ビルが見える。
中目黒アトラスタワー
である。地上45階、地下2階建ての店舗、住宅複合マンションである。ちなみに賃貸だと、42階の2LDKが月42万円なので、まあたいしたことはないが、毎日水だけ飲んで、借金しても光熱費も払えそうにない。つまり、私の場合、この部屋を借りたとしてもいずれ餓死するので、宝くじが当たらない限り、あの円筒形のビルから夜景を眺めることはないだろう。
86 なかめ公園橋
87 なかめ公園橋から上流を望む 88 橋の案内モニュメント
89 田楽橋から上流を望む 90 目黒川船入場付近
川幅が広くなっているところがあった。船入場というらしい。まさに水運のために作られたのだろうが、現在は写真89の左側、すなわち右岸側が公園になっており、地下に調整池があるらしい。
ここは、開けているばかりでなく、中目黒駅にも近いことから、華やいだ雰囲気である。
91 目黒川船入場の工事中の橋 92 船入場上流の目黒川
93 駒沢通り歩道橋から上流を望む 94 駒沢通り都心方面
95 日の出橋 96 中目黒付近の河畔道
アトラスタワーと駒沢通りを越えると中目黒駅に着いた。東急東横線有数の
有名おしゃれ駅
である。
97 蛇崩川合流地点 98 中目黒駅
99 別所橋から上流を望む 100 桜橋から上流を望む
中目黒駅より上流は、都内によくある小さなビルや店舗がちまちまと並ぶ街並みである。
101 宿山橋上流の河畔道 102 朝日橋から下流を望む
橋の上に堂々とメニューを掲げる飲食店があるなど、アットホームで隠れ家的な感じの川筋で、小さな橋が連続していることがその雰囲気を盛り上げている。看板は明らかに違法だが、実害がないので警察も大目に見ているのだろう。
103 朝日橋上のメニュー看板 104 朝日橋から上流を望む
105 天神橋から上流を望む 106 千歳橋から上流を望む
107 青葉台付近 108 目黒川の桜記念碑
目黒川の桜のルーツの記念があった。目黒川の桜並木は昭和初期から始まったことが記されている。
109 記念碑解説 110 南部橋から上流を望む
111 中の橋 112 中の橋から上流を望む
113 目黒橋(山手通り) 114 上目黒付近
山手通りを渡る。地下には首都高中央環状線があるらしい。湾岸から渋谷新宿方面を結んだ画期的な道路で、目黒川の河口、湾岸線から大崎までは目黒川の下を通る世界一長い高速道路のトンネルであり、日本一長い道路トンネルでもある
山手トンネル
である。
115 東山橋から上流を望む 116 氷川橋から上流を望む
117 謎のドーム
ローマのコロシアムのような巨大な円筒形の謎の構造物が現れた。その巨大な姿に好奇心が抑えられなくなり近寄ってみると、拍子抜けするほど簡単に中に入れた。駐車場があり、その先にあったのは闘技場ではなく、公園とグラウンドである。何人かの子供が遊んている、なんだか異次元に迷い込んだような不思議な光景である。オーパス夢広場というらしい。
ただ、巨大なコンクリートの壁やフェンスに囲まれていて、ちょっと重苦しい感じがする広場である。
118 オーパス夢広場 119 目黒天空庭園へのエレベーター
何気ないエレベーターがあり、そこには目黒天空庭園という大げさな標識があった。早速登ってみよう。
120 目黒天空庭園解説板
121 目黒天空庭園 その1
まさに庭園である。景色の良さは言うまでもないが、人も少なく、お弁当を広げたくなるような穴場である。
122 目黒天空庭園 その2
123 目黒天空庭園 その3
田んぼまで作ってしまったのはやりすぎである。
124 目黒天空庭園 その4
案内板にもあるように、図書館がある区の施設の大きなビル、
クロスエアタワー
の9階に通じており、不思議な公園だ。
さて、この天空公園と夢広場を作るためにこの巨大なドームの建物を作ったのだろうか。んなわけないだろう。後で調べてみると、本来の目的がわかった。
目黒川と山手通りの地下を貫通している中央環状線山手トンネルと東名高速に接続する首都高速道路3号渋谷線とを結ぶ
大橋ジャンクション
がその正体である。地上約35m、地下約36m 高低差約71m、一周約400m、4層構造で国立競技場とほぼ同じ大きさの巨大な構造物である。
騒音対策がされているためか、広場や天空公園では車の騒音は聞こえず、全く気づかなかった。もとは、東急玉川線の車庫だったらしい。
不思議な体験を終えて、目黒川にもどろう。このあたりも昔は、水車のある川だったらしい。無機質なコンクリートの垂直護岸になってしまった目黒川であるが、水車のあった頃は田園風景の広がる美しい素朴な川だったのだろう。
125 万代橋から上流を望む 126 水車小屋モニュメント
127 常盤橋から上流を望む 128 大橋(首都高3号渋谷線)
国道246号線である。東名高速から都心に入る時にいつも利用している首都高3号線の下だ。ここは、大橋という地名である。その名のとおり、江戸時代にここに目黒川を越える大きな橋を架けたことから始まった地名である。そのすぐ西には池尻大橋という駅があるが、これは、池尻と大橋という2つの地名を合わせたもので、池尻大橋という橋があったわけではないようだ。
その手前左岸側には、ある説明板があった。目黒川の水量が減ってしまったので、東京都新宿区にある落合水再生センターの処理水を、地下水路を通じて流しているという内容だ。目黒川の実質的な源流は下水処理場という衝撃的な結末であった。
129 池尻大橋駅
今日も河口から随分歩いた。13時15分でまだ早い時間だが、キリが良いのでここまでにしよう。東急田園都市線池尻大橋駅から帰途についた。
東京都心の西側を流れ桜並木で有名な目黒川の品川の海に注ぐ河口からここまで歩いたが、まさにアーバンライフを彩る都市型河川といったところだろうか。次回は支流に分け入り、(昔の)源流を確かめることができると良いのだが。
本日の所要時間 (時間:3h56m 歩数:27223歩)
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第2日目(2017年5月6日)池尻大橋 〜 北沢源流跡
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