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西吾妻山 標高2035m
自分の足で登らない山シリーズ 第35弾 吾妻連峰最高峰の火山 |
◆ 2019年8月18日
昨年の夏は涼を求めて東北地方に遠征し、月山に登ったのは、まだ記憶に新しい。このシリーズでは、東北地方の山はまだまだ未開拓で、安達太良山、月山に次ぐ東北の山第3弾は、西吾妻山である。位置的には、安達太良山の北西、磐梯山の北側になり、これらの山が形成する火山帯の最高峰である。
月山のときと同様、ベースキャンプを置いて、そこからいくつかの山に登ろうと計画をたてた。キャンプ地は、風光明媚な高原リゾートとして有名な、裏磐梯である。人気のリゾートである裏磐梯だが、ホテルが最も混むこの時期しか休暇が取れない。
しかし、休暇村裏磐梯のキャンプ場はなんとか予約が取れた。月山のときも、同じ系列のところを利用したが、休暇村は設備も良く、利用料金も安い。4泊5日で7000円でお釣りが来るほどである。
8月15日から3泊4日を予定していたが、あいにく台風10号が来ているので、余裕をみて19日までの4泊5日に延長した。おそらく登山ができる天候の日は、限られるだろうという予測である。それに、設営日と撤収日はできれば雨が降ってほしくない。
結果的には予想どおりになり、15日の午後から17日までは天候が悪く、五色沼や明治時代に噴火した磐梯山火口を見に行ったり、会津若松観光や喜多方ラーメンを食べたりして過ごす。車があれば、楽しめることはたくさんある。また、雨対策として、ワンタッチタープを用意したので、雨のベースキャンプ生活も快適である
そして、18日、会津地方にもやっと夏空が戻ってきた。
さて、今回の登山予定候補は、磐梯山、西吾妻山、東吾妻山の3山であるが、日程的に一つ選ぶしかない。磐梯山はいつでも登れそうなので、西吾妻山に登ることにした。実は、この3つの山の中では、2035mと最も標高が高いが、おそらく最も簡単に登れそうな山だ。というのも、1800mまでリフトで行けるという、まさに究極の自分の足で登らない山の代表らしいのである。
というわけで出発である。裏磐梯から、米沢方面へ向かう山道は、幹線道路ではあるがかなり険しい。白布峠を超えるとそこからは山形県であるが、なんと標高は1400mもある。
1 白布峠(福島・山形県境) 2 天元台ロープウェイ湯元駅
白布峠から下って、右折すると、温泉があり、更に奥に天元台ロープウェイの湯本駅が現れた。標高は約930m。駅にいるのはほとんどが登山客である。が、ロープウェイは動いていない。
6月7日(金)、突風によるロープウェイゴンドラの支柱接触により、現在ロープウェイ運行を休止しているとのこと、残念ながら運休であるが、代わりにワゴン車でピストン輸送をしていた。ところが、もたもたしているうちに最後の一人になってしまい、ワゴン車が満員になってしまった。しかし、社長さんが自ら送ってくれるというので、社長車に乗せてもらう。社長さんから話を伺うが安全第一とはいえ、いろいろ大変なようだ。ちなみに、白布峠は険しすぎて冬季通行止めになるそうで、山形県からしか入れなくなるそうだ。
天元台・西吾妻山概念図
出展 天元台高原HP
狭い道を登って無事天元台に到着。山の上に突然広い平地が現れた。スキー場の施設やペンションがある。ここの標高は1350m、時刻は9時ちょうどである。
3 天元台高原 アルブ天元台 4 リフト乗り場遠景
5 ペンション街 6 リフト乗り場
ここから3本のリフトを乗り継いでいく。ちなみに、湯本駅で買った往復のリフト代は、3000円だった。
7 リフトから
8 リフトを乗り継ぐ
9 正面に中大巓を望む 10 リフトを降りる
9時53分、リフト終点の北望台についた。標高は1810m。楽をし過ぎて良心が痛む。まず、中大巓というピークの頂上付近にある、カモシカ展望台を目指す。
11 北望台 リフト終点 12 カモシカ展望台へ その1
樹叢はかなり高山っぽくなっている。
13 カモシカ展望台へ その2 14 カモシカ展望台
10時14分、カモシカ展望台に到着した。すでに標高は1940mで、森林限界ギリギリという植生で高い木はないので、展望も素晴らしい。
15 カモシカ展望台から白布峠方面を望む
16 カモシカ展望台から北方面を望む
17 凡天岩・天狗岩を望む
せっかく中大巓近くまで登ってきたが、登山道はここから100mほど下って、次のピークである凡天岩を目指す。このあたりの山は、なぜか全部なだらかな山容である。まさに2000mの高原だ。
18 凡天岩へその1
19 凡天岩と湿原
20 人形岩分岐
21 湿原への下り
緩やかな斜面を南に向かうが、ここは樹木がなく、草原、湿原になっていて、木道を気分良く歩いていく。
22 凡天岩へ その2
23 中大巓を振り返る
青い空と湿原となだらかな山々、まるで夏休みの絵日記そのものである。
24 東吾妻山方面を望む その1
水場をすぎると、急登が始まる。距離は短いが、衰えた体力の持ち主にとっては結構辛い。
25 水場 26 凡天岩への急登
27 東吾妻山方面を望む その2
28 凡天岩直下
岩場に立っている人が間近に見えるようになった。あれが凡天岩だろう。湿原を横目に登っていく。
29 凡天岩下の池塘
30 凡天岩下 31 凡天岩
岩場を登りきったところが、標高2004mの凡天岩で、11時19分に到着した。
32 凡天岩から西吾妻山を望む
金峰山の山頂に似た、巨石が並ぶ場所である。昼前だが、事前情報によると、西吾妻山山頂は展望がないとのことなので、昼食にする。
ここから少し進むと、岩の大きさが小さくなり歩きやすい平坦な場所に出た。ここが天狗岩である。現在時刻は、11時40分。
33 凡天岩道標 34 天狗岩
35 吾妻神社
天狗岩から西吾妻山へ登る道は2つあるが、せっかくなので周回することにしよう。まず、西吾妻避難小屋へ向かう。
36 西吾妻避難小屋へ
小高い丘のような西吾妻山山頂が見える。
37 西吾妻山を望む
38 西吾妻避難小屋 39 西吾妻山へ
避難小屋を右手に見て、左折すると山頂への道である。
40 西吾妻山山頂への分岐 41 西吾妻山直下
森林限界ギリギリの木々をみながら上りきると山頂である。
42西吾妻山頂上 43 天狗岩へ
12時8分、2035mの吾妻連峰最高峰の西吾妻山に到着である。事前情報のとおり、展望はなく、そのまま北へ向かう。
44 山頂付近の立ち枯れ
45 天狗岩と湿原 その1
山頂と天狗岩の間は、美しい湿原になっている。この山は、なだらかなせいだろうか、あちこちに小さな湿原が広がっていて、小さな楽園が連続する夢の世界である。
46 天狗岩と湿原 その2
47 天狗岩から西吾妻山を振り返る
天狗岩まで少しだけ登り、西吾妻山を振り返ると、曲線で構成され、湿原に囲まれた女性的な山、西吾妻山を振り返ることができる。
48 天狗岩から中大巓を望む
標高2000mの雲上に広がるたおやかな風景を目に焼き付けておくことにしよう。
49 池塘を横目に下る
車で来ている宿命で、同じ道を引き返すが、ここは二度歩く価値がありそうだ。
50 カモシカ展望台から西吾妻山を振り返る
14時にリフト乗り場に着いた。
51 北望台に帰着 52 裏磐梯への帰り道に遭遇した野猿
白布峠へ帰る途中に野生動物を発見して、思わず写真を撮った。ただし、車の窓は締めたままである。
文明の利器が1800mの亜高山帯まで連れて行ってくれる現代、おそらく昔は普通の人がたどり着くことさえ困難であったであろう吾妻連峰の最高峰である西吾妻山まで、簡単に登れて、その美しい湿原や景色を気軽に楽しむことができるようになった。
このありがたい時代を体験しないと損をしたような気分になるのも、自分が年を取り、体力が衰えて、やがてこのような地上の楽園に来ることができなくなる日が、確実に近づいていることを、意識の片隅で意識するようになったからだろうか。
そういった個人的な感傷はともかく、この西吾妻山は、リフトのおかげで簡単に登れて、美しい東北の高山風景を楽しめる、隠れた穴場であることは、ここまで読んでいただいた方には理解していただける筈である。
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