神奈川県一周
酒匂川を越えて、足柄山地から箱根外輪山へ
◆第31日目(2011年11月26日)
駿河小山
〜
乙女峠
前回、県境の旅は駿河小山に達した。県境はついに丹沢山地の尾根を後にしたのである。今日は酒匂川沿いの町、駿河小山から足柄山地を経て箱根外輪山の盟主である金時山を目指す。前回も大変お世話になった、
富士箱根トレイル
の駿河小山以南ルートを見てみよう。
富士箱根トレイル 駿河小山−金時山間ルート図 (小山町公式HPより抜粋)
富士箱根トレイルの駿河小山から足柄万葉公園までは、県境尾根のすぐ西側の谷を南下し、足柄万葉公園で県境尾根と合流して、そのあとは金時山まで、県境の上を続いている。昭文社の登山地図では、駿河小山−足柄万葉公園間の県境に登山道はない。
今日歩く予定の山
は足柄山地と呼ばれている。
足柄山地は、北は酒匂川、東は足柄平野、西は御殿場線、南は箱根外輪山に囲まれた山域である。丹沢山地と箱根山地の間にあり、その中央、足柄万葉公園から金時山にかけて県境尾根が続いている。わかり易くいえば、金太郎、つまり坂田金時が遊んだと云われる山々の総称が足柄山地だと思えば良い。足柄山という固有の山はない。いや、正確には、「現在はない。」である。
江戸期に造られた伊能図
をみると、当時は金時山を足柄山と呼んでいたようである。
1 駿河小山駅前 2 右折地点
8時45分、駿河小山駅を出発する。
県境は、リバーサイドサカワゴルフコースの西側を通っているが、残念ながら明瞭な道は無いようだ。今日は最後に金時山に登らなければならないので、あまり時間的な余裕もない。ここは素直に富士箱根トレイルを行くことにしよう。
3 小山ムジナクボ 4 東名高速道路
林道は、舗装路からやがて未舗装路へ変わり、すこしずつ高度を上げる。
5 遊女の滝へ その1 6 遊女の滝へ その2
7 遊女の滝へ その3 8 遊女の滝入口
9時35分に最初の目的地である、遊女の滝の入り口に着いた。大きな看板があるのですぐにわかる。
9 遊女の滝解説板
急坂を降りると美しい滝がそこにあった。
10 遊女の滝
写真11の地点には、東の県境方面へ向かう送電線の管理用道路があった。地形図によるとここを登って行くと、標高633.7mのピークにでられそうだ。そこから南は、地形図に破線がついている。行けそうな感じもするので、時間がある時に再度チャレンジしてみてもよさそうだ。
さらに行くと茶色の毛の塊が落ちていた。イノシシだろうか。だとしたらなぜこんな道の真中に....
11 東の尾根へ向かう送電線管理道 12 野生動物の毛?
大奥澤入口の手前の林道に、沼津ナンバーの軽トラックが停まっていた。一人の年配の男性が、道の奥に入り、何か確認している。林業関係者かなと思いつつ通りすぎようとすると、もう一台の車、ジムニーが到着した。中からもう一人の男性が下りてきて、ダメだとか何とか話している。その人達に挨拶すると、彼らは軽トラの上の物を指さす。
13 大奥澤入口へ 14 イノシシ
そこには、今日の彼らの獲物である2頭のイノシシが横たわっていた。写真15のように針金のワナで獲ったそうだ。なかなかの大物で、彼らもどこか誇らしげである。有害鳥獣駆除かと聞いたら、もう猟期なのだそうだ。沼津ナンバーがなぜ神奈川県の山でイノシシを獲るのかと疑問に思ったが、よく考えたらここは県境の西側、静岡県なのであった。この林道のすぐ横にも、ワナをしかけていたのだろう。危ないので、道を外れて歩かないほうがよさそうだ。最後にイノシシの写真を撮らせてくれたことにお礼を言うと、「こんな奴らがいるからお気をつけて」と言われた。
あのイノシシはどうなるのだろう。箱根か伊豆の旅館で名物の猪鍋になるのだろうか。
15 イノシシのワナ 16 大奥澤入口
17 大奥澤 18 足柄万葉公園へ その1
林道は終点になり、登山道になる。ここからは地形図に載っていない道である。小山町が富士箱根トレイルで標識を整備してくれたお陰で、迷うこと無く安心して歩ける。
19 林道から登山道へ 20 足柄万葉公園へ その2
21 足柄万葉公園へ その3 22 足柄万葉公園へ その4
地形図上で776mのピークにでた。県境である。
ここから北側は地形図では破線が北に延びているが、写真23のとおり、明瞭な道はないようだ。行けるかもしれないが、今日は南へ足を進めよう。神奈川県側は、山北町から南足柄市へ変わっている。
23 北へのびる県境尾根 24 足柄万葉公園からみた矢倉岳
足柄万葉公園に入った。おにぎりの形をした
矢倉岳に行く登山道がここから東に分かれている。
25 足柄万葉公園 その1
26 矢倉岳方面分岐点
27 足柄万葉公園 その2 28 足柄万葉公園道標
久しぶりに岩田さんの道標をみたが、結局、これが見納めになった。ここまでが、岩田さんの活動範囲なのだろうか。
29 足柄峠へ その1 30 クマへの注意喚起
静岡県道・神奈川県道78号御殿場大井線にでる。久々の車道だ。
足柄街道、矢倉沢往還とも言われ、古い道である。800年までは日本の東西を結ぶ主要街道であったが、富士山の噴火で通れなくなったため、箱根路が開かれたそうだ。
31 足柄峠解説板
32 足柄万葉公園バス停 33 足柄峠へ その2
バス停があった。残念ながら、ここまでバスが来るのは11月までである。紅葉の季節は過ぎているが、なぜかここだけは残っていて、目を楽しませてくれる。
34 県境標識 35 足柄明神社鳥居
36 足柄明神社解説板
11時5分に足柄の関跡に到着。久々に一般の観光客を見かける。ここで、老人数人のグループに矢倉岳はどこかと聞かれたので、左後の山を指差して道を教えてあげた。「ずいぶん遠いなー」などと呑気である。地図も持たず、装備も心もとないが大丈夫だろうか。まあ、ここからならそれほどきつくはないだろうが。
37 トイレと富士箱根トレイル案内板 38 足柄の関跡
39 足柄の関解説板
40 おじぎ石 41 足柄峠道標
箱根の関と同様なかなか厳重である。
42 日本武尊解説板
43 聖天堂 44 足柄城址入口
45 足柄峠解説板
階段で足柄城址に登ってみる。
46 足柄城址 その1 47 足柄城址 その2
ここからみる富士山は、素晴らしい....はずであるが、やや雲がかかっていた。それでもカメラの三脚を立てている人が何人もいる。これから登る金時山方面は、残念ながらガスがかかって暗い空である。
48 足柄城址の気温
風が強く曇っていて寒い。着込んで富士を眺めた。
49 足柄城址から見た富士山
それにしても、眺めの良い城だ。豊臣秀吉の小田原攻めを迎えて、この足柄城を守る北条方の武士の目に、この美しい富士はどのように映ったのだろうか。そう考えると、写真49の富士にかかる流れ雲も、戦乱の急を告げる雲に見えなくもない。
足柄峠を後にして、林道を北へ、いよいよ金時山へと向かう。
50 金時山へ その1 51 林道入口
歩いていると、金時山方面から登山者がたくさん降りてくる。さすがに、人気のある山で、若い人も多い。
途中、右手に再び富士山が姿を現した。今度は雲が少なくてよくみえる。
52 林道から見た富士山
53 孤高の紅葉
54 一般車通行止め地点
一般車が入れない場所には、登山者のたくさんの車がとまっていた。ここまで来れば、金時山への往復もあっという間だろう。
55 林道ゲート 56 金時山へ その2
車は通れるが、登りはかなりきつい。
57 金時山へ その3 58 猪鼻砦跡
12時35分、猪鼻砦跡に到着。この奇妙な名前の由来は下の解説のとおりである。広場になっており、眺めが良く、たくさんの人がいる。夕日の滝からの登山道がここで合流している。写真は明るく写っているが、実は正面に見える三角の金時山はガスがかかっていて暗い。金時山がこんな尖った形をしているのは、この山が単なる外輪山ではなく、火山だからだそうだ。
59 猪鼻砦跡解説板
残念ながら富士山は雲で見えない。
60 猪鼻砦跡から見た富士山 61 林道終点
62 山小屋の荷物運搬車 63 金時山へ その4
林道が終わった。山小屋専用の車もここまでである。ここからいよいよ金時山北側斜面の急登が始まる。
64 金時山へ その5 65 階段 その1
登山者が多い上に、時間的に登りと下りの人が交差して混み合っている。
66 金時山へ その6 67 金時山へ その7
立派な金属製の階段が付けられている。急な岩場を子供を背負った若いお父さんが降りてきた。お湯でやけどをしたらしい。カップラーメンでも食べようとしたのだろうか。
68 階段 その2
急斜面の途中から今までの道のりが見えた。
69 金時山中腹から北方面を望む
家族連れやグループが多く、明らかに普段山に登っていない人もいて、急坂に息も絶え絶えになっている。
70 登山者計測装置 71 金時山山頂直下
ソーラーパネルの計測器を過ぎると、頂上が見えた。
13時15分、標高1213mの
金時山
山頂に到着した。もちろん、箱根外輪山の中で一番高い。
72 金時山山頂 その1 73 金時娘の茶屋
74 強力のコミさん解説板
75 金時山解説板 その1
76 金時山解説板 その2
狭い頂上に、2軒の茶屋とトイレがあり、残りのベンチや岩場にたくさんの人がいてごった返している。南側は大きな岩があり、断崖になっている。
77 金時山山頂 その2 78 金時山山頂 その3
気温は8℃であるが、曇っていてやたらと風が強く、体感温度はもっと低い。あまりの寒さに茶屋に入っている人も多いが、満員のようだ。お湯を沸かしている人も多い。ここで、ついに、雨に遭わないので普段使うことのない、ゴアテックスの登場である。フリースやゴアテックスなど、現代テクノロジーの恩恵はありがたいものである。
79 金時山山頂の気温 80 金時山山頂 その3
カメラを構えている人もいるが、残念ながら相変わらず富士山の機嫌は悪いようだ。
81 金時山から南の県境の尾根を望む 82 金時山から見た富士山
83 金時山周辺コース案内図
ついに足柄山を経て箱根外輪山まで辿り着いた。ここからいよいよ箱根外輪山の西半分を縦断することになる。行政的には、神奈川県側は、南足柄市から箱根町に変わる。静岡県側はまだ小山町だ。
計画時に、今日の箱根外輪山からの下山口をどこにするか迷ったが、休日の国道1号線の混雑は避けたいので、仙石原ではなく、乙女峠から御殿場に降りることにした。時間的には順調である。
84 長尾山へ その1 85 長尾山へ その2
かなりの急坂を降りていく。
もう2時を過ぎているが、まだ登ってくる人がたくさんいる。苦しそうだ。
86 箱根火山中央火口丘を望む 87 長尾山へ その3
14時25分、標高1119mの長尾山についた。金時山から約100m降りてきたことになる。赤土の広い山頂であるが眺めはいまいち。ここは、静岡県側が、小山町から御殿場市へ変わる境界である。
88 長尾山 その1
89 長尾山 その2
90 長尾山 その3 91 乙女峠へ その1
景色を楽しみながら降りていくと廃屋のような建物が見えた。14時38分、標高1005mの乙女峠に到着である。長尾山からさらに100m降りてきた。ということは、ここから金時山まで、200mちょっと登れば良いことになる。意外と楽そうだ。
92 仙石原方面を望む 93 乙女峠
94 乙女峠から見た富士山 95 乙女峠解説板
乙女峠も富士山の眺めが良いらしいが残念ながらまだ雲がかかっていた。ここからは、右折して静岡県側に降りて、国道138号線の乙女峠バス停に向かう。
黒い溶岩がごろごろした暗い道を降りていく。
96 乙女峠バス停へ その1 97 乙女峠バス停へ その2
写真97の地点に分岐があり、乙女峠バス停への近道があったらしいが、通行止めになっていた。
98 林道合流地点 99 国道138号線
林道に降りて、左折するとすぐに国道である。15時8分、乙女峠バス停に到着した。
100 乙女峠バス停
先にプレミアムアウトレット行のバスが来たので乗る。アウトレットでノースフェイスを覗いてから、御殿場駅に出て帰路に着いた。
GPSによる今日の歩行経路
GPSによる今日の高度記録
今日のコースは、足柄山を北から南に縦断して、ついに金時山の高みにたった。金太郎の守備範囲である。前半の足柄万葉公園までは、県境を忠実に歩くことは出来なかったが、富士箱根トレイルのお陰で、ルートを迷うことなく、ありがたかった。登山者はいないが、滝があったり、獲物のイノシシを見たり、ちょっとした秘境気分を味わえた。
足柄峠から先は、人気の登山道である。なんといっても金時山の存在感は圧倒的である。今日は天気に恵まれなかったが、火山が創り上げた溶岩の険しい山と、頂上からの絶景は金時山ならではだ。
次回の県境の旅は、箱根外輪山の尾根である。地図で見るだけでも期待できそうなロケーションが、今から楽しみだ。
(本日の歩数:31772歩)
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