多 摩 川 探 訪
山梨県と埼玉県の県境、奥秩父の山中から流れ出て、奥多摩湖を経て、多摩地区を流れ、神奈川県と東京都の境界を下り、羽田と川崎の埋め立て地で東京湾に注ぐ大河
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第3+5日目 (2009年10月11日)
小河内ダム
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丹波山温泉
朝5時に家を出て、電車を乗り継ぎ3時間以上かけて奥多摩駅に着くと、奥多摩湖方面のバスは異常に混んでいた。1台では乗り切れないため、2台超満員にして同時発車である。奥多摩湖では乗客はほとんど降りない。この先まで乗る登山客がほとんどだからである。
1 水と緑のふれあい館 2 小河内ダム
そうしてたどり着いた、今日の奥多摩湖は、すがすがしい真っ青な空が広がっている。半袖では少し寒いくらいの気温である。
本日の天気図 (日本気象協会 tenki.jp)
3 採石場跡地解説板 4 採石場跡地
ここから、奥多摩湖を遡るわけであるが、ルートは両岸にある。ひとつは、湖の左岸側を行く青梅街道こと国道411号線、もうひとつは、右岸側の
奥多摩湖いこいの路
というハイキングコースである。当然、後者のほうが楽しいに決まっているが、複雑な湖岸を忠実にたどるため、非常に距離が長いのが難点である。湖の途中の、終点である山のふるさと村まで12kmもあるのだ。それだけで1日が終わってしまう距離である。仕方なく、距離の短い青梅街道を歩くことにした。
5 惣岳山方面 6 大麦代駐車場
静かな山奥の神秘的な湖と言いたいところだが、そうはいかない。ご覧のとおり、青梅街道は景色は良いのだが、大きな欠点が2つあった。ひとつは歩道がないこと、ふたつめはバイクとスポーツカーが異常に多く、ものすごいスピードと爆音で絶え間なく押し寄せてくることである。湖畔の駐車場は、そんな車とバイク、そして、それに乗ってきた、おじさんと若者たちであふれかえっている。
実は、私も若いころバイクに乗っていたが、スピードはあまり出さなかった。それでも、世間の皆さんにどれほど迷惑をかけていたかを、いまさらながらではあるが、恥じるばかりである。
7 大麦代駐車場からダムを望む 8 小河内郵便局
昔は、こんなことをするのは若者だけだったが、最近はそのまま年をとったおじさんも加わって、2輪と4輪の数が増える一方だ。それだけ奥多摩湖周辺は、走り屋にとって好条件がそろっているということなのだろう。当局も夜間通行止めにしたり、道路に凹凸をつけたりして対策をとっているようだが、今日のような休日の朝にスピード取締りをやってもらえると一網打尽でよいのではないだろうか。
延々と湧いてくるバイクに辟易しながらも、すばらしい湖畔の景色には感嘆せざるを得ない。
9 倉戸口付近からダムを望む
この道が出来た当時は、歩道をつけるという発想がなかったのだろうが、写真10のとおり、トンネルは怖い。逆にこの道に歩道がついていて安全に歩けたならば、騒音はともかくとして、どれだけすばらしい道になるだろう。現状では、特に自転車の人は命がけである。
10 熱海トンネル内部 11 奥多摩町原付近から対岸を望む
湖畔のススキの穂が秋を感じさせる。
12 原付近から上流を望む 13 湖畔の青梅街道
14 湖畔の空
短いトンネルが続く。その中に、写真16のとおり、気になる名前のトンネルがあったが、残念ながら周囲に露天風呂はないので期待しないように。
15 NTT小河内電話交換局 16 女の湯トンネル
17 峰谷橋
やがて、前方に美しい真っ赤な橋が見えてきた。峰谷橋である。緑の湖水と赤いアーチのコントラストが強烈な印象を放っている。
18 峰谷橋バス停 19 峰谷橋上
ここは、登山の起点にもなっているようだ。雲取山登山だろうか。
20 峰谷橋から奥多摩湖を望む 21 峰谷橋から峰谷川方面を望む
トンネルを抜けると、湖面に曲線を描いて伸びる麦山浮橋が目に飛び込んでくる。湖面に下りて、早速渡ってみる。
22 麦山浮橋 23 麦山浮橋解説板
わたってみると、なかなか面白かったので思わず
動画
を撮ってしまった。揺れるし、次の浮橋にわたるときの、音が結構うるさい。しかし、湖面がすぐ近くにあって景色は最高である。
24 麦山浮橋から下流を望む 25 麦山浮橋から上流を望む
浮橋の脇では、たくさんの小魚が群れていた。
26 浮橋の小魚たち 27 麦山浮橋を振り返る
写真28のように信じられない急斜面に人が住んでいる。湖の眺めは良いだろうが、大雨や地震のときは心配だ。
その先の麦山橋は、赤ではなくて、黄色く塗られている。奥多摩湖の橋は原色と決まっているのだろうか。
28 急斜面の民家 29 麦山橋
川野トンネルの手前で、湖側のわき道に入ってみた。お寺には、ダムで沈んでしまうために移設された石仏群が並んでいる。
30 麦山橋から上流を望む 31 浄光院と石仏群
この岬には数件の家がある。写真32のように、対岸にワイヤーが伸びているのはなぜだろうか。木材の搬出のためだろうか。
32 鉄塔 33 巣箱の団地
深山橋は緑とクリーム色だ。その先にある対岸の三頭橋は青い。
34 深山橋から三頭橋 35 深山橋から下流を望む
ここを左折して、橋を渡っていく車やバイクが多い。おそらく、奥多摩周遊道路を通って都会に戻るのだろう。
36 深山橋から上流を望む 37 上流側から深山橋を望む
小留浦の集落である。ここでも急斜面に家が建っている。留浦と書いて「とずら」と読むらしい。
38 太子堂 39 小留浦の民家
留浦の集落には駐車場があり、ちょっとした公園になっている。ここにも浮橋がある。
40 留浦の駐車場 41 留浦浮橋
42 留浦浮橋から下流を望む 43 留浦浮橋から上流を望む
地図をみると、対岸には深山橋から上流に向かって、湖畔に沿った山道らしき点線が書いてある。実は、先ほど深山橋を対岸に渡って歩けばよかったと気付いたが、戻るのも面倒なので、まあ、ここから歩けばよいだろうと思ったのだ。
しかし、対岸に着き、山道へ向かおうとすると、そこには思わぬ障害が.... 写真45の生物である。模様から見て間違いなく、毒蛇のヤマカガシである。太陽の熱を求めて、山から出てきたのだろう。
ここでは、山道に行くための選択肢は3つしかない。それは、
1.そのまま無視して毒蛇の横を通り過ぎる
2.引き返す
3.毒蛇を排除する の3つである。
このうち、1は咬まれる危険があり、リスクが高すぎる。2はリスクはないが、消極的過ぎる。したがって、残る3しか方法はない。そして、湖畔での毒蛇との激闘が、ここに始まったのであった。野生動物を虐めることは良くないが、ほかに方法はない。近づくのは危険なので、石という飛び道具を使い、遠隔からの威嚇作戦である。幸い双方ともに怪我はなく、ヤマカガシは湖の方に去っていった。
44 右岸から留浦浮橋を望む 45 湖畔のヤマカガシ
毒蛇との壮絶な命がけの戦いを終え、山道を行こうとすると、なんと46の無慈悲な看板が....
仕方なく引き返そうとすると、湖畔に逃げていった先ほどのヤマカガシが目の前にいるではないか。踏んだり蹴ったりである。やっとのことで、左岸に戻ってくると、先ほど対岸で繰り広げられた、猛毒を持った凶暴な爬虫類と人類との壮絶な暗闘を知らない人々が、写真47のようにのんびりとくつろいでいた。
戦いを終えた戦士は、心身ともに疲れたので、ここでコンビニで買ったいなり寿司を食べ休憩した。
46 右岸遊歩道 47 浮橋の右岸側の水辺
48 鴨沢橋と丹波山村鴨沢の集落 49 鴨沢橋から下流を望む
鴨沢橋に着いた。色はライトグリーンだ。ここは、ただの橋ではない。小袖川の流入地点であるが、実は、東京都と山梨県の境界なのである。ついに、東京都を離れる時が来たのである。東京都を縦断したといっても良いだろう。
50 鴨沢橋から上流を望む 51 鴨沢橋上の山梨県の県境標識
52 鴨沢橋から東京都側を振り返る 53 湖畔の旅館
山梨県に入ると、気のせいか、建物や周囲の雰囲気が田舎っぽくなったと感じるのは私だけだろうか。交通量が減ったからかもしれない。
54 鴨沢の雲取山登山口 55 鴨沢の古い家
ここ、鴨沢も雲取山の登山口となっているようだ。確か、今朝乗ったバスも西鴨沢行きだった気がする。街道沿いらしく、古い家がある。湖の幅もいつの間にか狭くなってきた。もう川といっても良いかもしれない。
さて、この川の名称だが、山梨県側、奥多摩湖より上流は、丹波川と呼ぶらしい。したがって、以後、ここより上流の多摩川は、丹波川と表記することにしたい。
山梨県に入って、初めての橋が諸畑橋である。東京都の原色の派手な色とは打って変わって、地味な茶色に塗ってある。
対岸には数件の民家があり、地図を見ると、山道が上流のお祭というところまで続いている。しかし、実際にいってみると、諸畑橋より下流側の道は閉鎖されており、上流側も怪しい。前回の例もあって断念した。
国道の電光掲示板によると、現在の気温は17℃である。
56 諸畑橋 57 諸畑橋から下流を望む
58 諸畑橋から上流を望む 59 所畑付近から丹波川を望む
写真58と59の間で、湖から再び流れのある川に戻ったようだ。車やバイクもだいぶ少なくなって、やっと静かになった。
「お祭」という変わった名前の集落に着く。民宿があるようだが、営業はしていなかった。上には、廃屋が数件あったので、すでにこの集落には、誰も住んでいないのかもしれない。
60 所畑付近の洞門 61 お祭の集落
地図によると、お祭の集落の先に、先ほどの諸畑橋からつづく山道へ降りる道と橋が書いてある。現在もあるかどうか、半信半疑で入り口を探す。それらしいガードレールの切れ目から山道を降りていくと、なんと、その幻の橋は現存していた。近づいてみると、結構立派な現役のつり橋である。旧青梅街道なのだろうか。残念ながら、橋の名前は書いていない。
62 お祭集落下のつり橋への道 63 お祭り集落下のつり橋
64 つり橋近影 65 つり橋から下流を望む
つり橋から久々に直接川を見ることが出来た。水はもちろんだが、河原も非常に美しい。
橋は、普段よく使われているようには見えない。お祭には人は住んでいないようなので、利用者は、釣り人か猟師くらいではないだろうか。写真66はどう見ても野生動物の糞だろう。対岸は、一応山道らしきものがついているが、踏み跡はかなり怪しい。
66 つり橋上の動物の糞 67 つり橋から上流を望む
ここまでくると、国道沿いにもかかわらず携帯の電波が圏外になってしまうという、本当の山奥である。
68 親川橋付近の丹波川 69 携帯電話の電波状態
毒蛇の次は熊かよ、と思わずつぶやいてしまった。ここも登山口である。ふと、山の上を見ると写真71のように信じられないところに家がある。仙人の集落に違いない。
70 サヨウラ登山口 71 山の上の集落
72 青梅街道と深い谷 73 天狗島橋からみる丹波川
74 保之瀬第一洞門 75 保之瀬の集落
洞門を過ぎると、保之瀬の集落が見えた。「ほうのせ」と読むらしい。保之瀬は、先ほどの山の上の集落とは逆に谷底の孤立した集落である。
76 保之瀬の斜面に立つ民家 77 下保之瀬橋
ここでも、信じられない急斜面に家と畑がある。集落に入っていくと、民家の犬が一斉にほえて、外からの見知らぬ訪問者に警告を発する。よそ者として拒絶されているような気分だ。
78 保之瀬橋の民家と柿の木 79 下保之瀬橋から下流を望む
丹波川は、清流となって、集落の中心を流れている。家は何軒あるのかわからないが、街道沿いというわけでもなさそうなのに、なぜここに人が住み着いたのだろうか。不思議である。
庭先で老人にあったので一応挨拶すると、返事が返ってきたのでほっとする。
80 下保之瀬橋から上流を望む 81 保之瀬の集落中心部
82 保之瀬橋 83 保之瀬橋から下流を望む
上流側の橋から、きつい坂道を登って国道に復帰する。しばらく歩くと、キャンプ場があった。車道がなく、リフトで荷物を運んでいるらしい。
84 保之瀬橋から上流を望む 85 甲武キャンプ場リフト場
地図を見ると、丹波山村の中心部に入る前に点線の山道と橋が書いてあるが、このキャンプ場の入り口から降りる道らしい。ぜひ行きたかったのだが、キャンプ場利用者以外の立ち入りを禁止すると書いてあったので断念し、さらに国道を行く。
先ほどの橋が眼下に見えた。つり橋のようである。そして、前方にはやっと今日の終着予定点である、丹波山村の中心部が見えてきた。
86 青梅街道からキャンプ場の橋を望む 87 道の駅たばやま
道の駅たばやま
についた。車が駐車場に入るために並んでおり、道中の静けさがうそのような賑わいである。
野生動物の恐怖と戦い、寂しく険しい道を延々と歩いてきた身には、この賑わいと美しい桃源郷のような景色が身震いするほどうれしい。道の駅への坂道を駆け出したい気分である。
88 道の駅から丹波川と丹波山温泉を望む
道の駅の下には、美しい丹波川が穏やかに流れていた。
89 ふれあいの橋から下流を望む 90 ふれあいの橋から上流を望む
つり橋をわたると丹波山温泉である。ここのもみじは、写真91のように先端部が色づき始めている。夜はかなり冷えるのだろう。
91 丹波山温泉「のめこい湯」 92 ふれあいの橋
バスの時刻を見ると、14時台のあとは16時台までない。景色を楽しんで、温泉にでも入ってのんびりしてから16時台のバスで帰るか、このまま14時台のバスに乗るか迷ったが、ここから家までの時間と明日の仕事のことを考えて、早いバスに乗ることにした。
後ろ髪を引かれながら後にする丹波山村の秋空は、写真93のように青かった。
93 道の駅から見る丹波山の秋空
今日は奥多摩湖を十分に堪能し、秘境めいた道をたどって、丹波山村までたどり着いた。美しい景色は、写真のとおりであるが、一般に薦められるコースではない。それは、歩道のない国道411号線をひたすら歩かなければならないからである。特に、猛スピードで爆音を響かせながら延々と押し寄せるバイクと車におびえながら歩く深山橋までは、最悪である。平日なら良いかもしれない。
ハイキングやウォーキング目的であれば、奥多摩湖の南岸を歩くと良いのだろうが、距離が半端なく長いのと、がけ崩れなどで途中で通行止めになっているおそれがあることに気をつけなければならない。もうひとつ、毒蛇と熊とスズメバチにも注意する必要があるだろう。
まあ、奥多摩湖から丹波山まで歩こうなどと考える人間は、普通はいないだろうから心配は要らないかもしれない。
丹波山温泉
は、別の機会にぜひゆっくり入りたいものだ。次回は丹波山村から先、バスも通わない本当の山奥を遡ることになる。交通手段も含めて、どうやって源流にアプローチするか、よく考えなければならない。
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第3+6日目(2009年10月23日)丹波山温泉〜一之瀬高原(甲州市)
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